第6話『乾杯』Part4   Part3に戻る

 二週間ぶりに帰宅する。七瀬も一緒に招かれた。
 七瀬もみずきも互いに幼いころから互いの家に上がって勝手知ったる場所。我が家も同然であった。

 居間に到着して思い思いの場所に座る。ふうとため息をついて瑞枝がほんわかした調子で言う。
「暑かったわねぇ…あらあら。みずきちゃん。汗びっしょりじゃない。シャワー浴びてらっしゃい」
 確かに汗まみれであった。女物の下着を嫌ったため地肌にTシャツを纏ったが、胸にぴったり貼りついて皮肉にも女の色気を撒き散らしていた。
 また単純に汗が嫌だったので素直にいく事にはした。

 バスルーム。姿見の前で自分の裸身を見つめるみずき。
 さらさらの髪。細いまゆ。華奢な肩。豊かな胸。くびれたウェスト。上向きのヒップ。折れそうに細い足首。
 白い肌は触って見れば肌は柔らかく木目細かかった。
「…本当に…女になっちゃったんだな…」
 発した声も少女の物であった。

 ボーっと…なにも考えずにシャワーを浴びていた。熱さが心地よい。
(そう言えぱ…病院じゃ体を拭くだけでまともに入浴してないな…気持ち良いな…)
 浴びるだけ浴びたら出た。現実の直視には耐え難かったので極力、姿見は見ないようにして服を着ようとした。
 ショーツが置いてあった。服も肩の大きく出たタイプのサマードレス。瑞枝が置いたのは間違いない。
(こんなのちっちゃいの履くのかよ…ずり落ちないか?)
 不安ではあったものの仕方なしにショーツに足を通す。腰まで引き上げた時にふと違和感…と言うか懐かしい感じがした。
 気になってみないようにしていた自分の体を見る。
「あ…あれ? ある!?
 無くしていた物が脚の付け根にはちゃんとあった。瑞樹は慌てて自分の胸板をたたく。
 平たい丸みを帯びた脂肪の弾力では無く筋肉質の堅い感触。
「ない!!」
 見るのを避けていた姿見を見る。そこにはまごうことなき少年の姿があった。
「も…戻った…男に戻った…や…やったぁ…戻れた。七瀬!! 親父!! オフクロ!! 薫!! 忍!! オレは男に戻ったぞぉぉぉぉォ」
 嬉しさのあまり下着姿でみんなのところへ出てしまった。そう。女物の。
「みんな!! 見てくれ。男に戻れた」
 喜色万面で叫ぶが、相手にして見ればいきなり女物の下着をつけた少年が乱入してきたのだ。
 反射的に行動にも出てしまう。
「変態!!」
 七瀬は飲んでいた麦茶を瑞樹に浴びせてしまった…そのあとで気がついた。
「あれ? 瑞樹…今あんた男じゃなかった…」
「そうだよ。だから見せに…この声…あれ…胸がある…なんで? 戻れたのに…待てよ。
 あの時も花瓶の水をかぶったし今は麦茶。戻った時は熱いシャワーを浴びていたし病院じゃ『入浴』はしていない…もしかして…」
 法則に気がついたみずきは確かめるべく浴室へと戻る。そして再び熱い湯を浴びると男に戻る。そして今度は水を浴びたら女になった。
「そうか…これはスイッチなんだ…どう言う原理かはわからないけれど、水をかぶると女になるんだ。そして男に戻るんだ…半分だけでも戻れた…」

「その後また見てもらったが男の時はいくら探しても子宮や卵巣と言う女の部分は無く染色体もXYだという。逆に女の時はやはり精巣もない。
 そしてだいたい三十℃以下で必ず女。四十℃以上で絶対に男。その間だとニュートラルで男から女になることもなく女から男に戻る事も無いとわかった」
「そうかぁ…別に中国の奥地で怪しげな修行をした結果じゃなかったんですね」
 ふざけていないから性質が悪い
「そういや赤星って頭いいんですよね。それならいくらでも学校は選べたでしょう。何もスカートが制服の無限塾じゃなくても制服の無い学校に行けば良かったのに」
 上条のボケを無視して真理が素朴な疑問を口にする。
「あのドジぶりでは隠してもばれるの時間の問題だろう。それに例え雨やスプリンクラーを避けても夏場の水泳の授業は避けられまい。
 まさか3年間全て夏だけ病欠させるわけにも行くまい。そしてばれたらばれたでいづらいのは間違いなく転校をくりかえす羽目になる。
 ならば逆転の発想だ。堂々と女姿を晒して行けば誰も本当は男と思わないだろう。既に変身しているのだから雨もスプリンクラーもプールも問題ない。
 瑞樹も相当悩んだが結局は自信がなかったらしくこの案を受け入れた」
「それにしたって…良く女としての生活を呑んだなぁ」
「もう一つ。無限塾を選んだ理由だが…実は私はあそこのOBでね。だから大らか…と言うか大雑把な少々の事では動じない校風は知っていた。あそこなら例え女が男に変わっても大した問題になるまい」
(いや…かなり問題だと…)
 口には出さずに突っ込む榊原。
「そして塾長なら味方になってくれる。心の支えになってくれると思ったんだ…あいつが女としての通学を決意したのもあの日かな…」

 願書提出の時期。ひたすら体質を隠して男として中学で振舞っていた瑞樹。肺炎だったのを逆手にとって水泳の授業は全部回避。なんとかここまで来た。
 そんな生活に疲れたのかもしれない。あっさり女としての通学を呑んだものの、最後の所ではまだ踏ん切りがついてない瑞樹だった。
 彼は…彼女は女の体で無限塾の前に父親と供にいた。シャツとジーンズ。男でも女でも通るそんな姿だ。
「ここが…無限塾…」
「そうだ。オレの母校だ。そしてこれから逢いに行く人物は我が師。ふふふっ。覚悟して置け。色々な意味で強烈な人物だからな」
 二人は校舎へと入って行く。

 立派な扉の塾長室。その重々しい扉の前で親子は立ち止まる。秀樹は腕で娘を制する。
「下がっていろ…」
「…オヤジ…」
 明らかに緊張している。そして…いきなり扉が壊れた。
「な!?」
 びっくりして尻餅をつくみずき。扉を壊したのは巨大な拳。まるで岩石でも飛んで来たような巨大な拳。
「はぁぁぁぁぁぁぁーーーっっっっ」
 それを気合と共にたくみに捌いたり避けたりガードしてやり過ごす秀樹。拳のように見えたのは拳のような形のオーラだ。
「とぉぉぉーっ」
 気合一閃。飛びあがると塾長室に飛び込む。どこに持っていたのかバットを取り出すとフルスイングしたが中の男には軽がると避けられる。
バットを投げ捨て右腕を繰り出す秀樹。相手も同じ行動を取る。
「むぅん」
「はぁぁっ」
 そして両者の拳と拳がわずか5ミリのところで止まった。にらみ合う秀樹と初老の男。だが初老の男はいかつい顔をしながらもにやっと笑った。
「腕を上げたか。赤星秀樹」
「塾長。ご無沙汰してます」
 秀樹もまたさわやかな笑顔で答え拳を引く。
「確かに久しぶりだな。一号生筆頭・赤星秀樹」
「1号生筆頭?」
 腰が抜けた状態ながらも思わず尋ねてしまうほと奇妙な言葉であった。
「この男はな…今から26年前。今で言う一年生のリーダーとして活躍していたのだ」
「よしてください。昔の話です」
 はにかんだように笑う秀樹。どうやら尊敬しているのは確かである。塾長…大河原源太郎はみずきのほうを一瞥すると
「娘。そんな所に座布団はないぞ。座るならこっちへ来い」と言った。
 ここでみずきは二人の迫力に押され、尻餅をついていたことを思い出して赤くなりながら立ちあがる。
 赤面する様子だけ見ているとまったくもって美少女にしか見えない。

「ふぅむ。電話で聞いてはいたが俄かには信じ難い話。だがお前が言うなら真実なのだろう」
 事情を改めて説明する秀樹に対する答えがこれだ。
「論より証拠ですね。お願いした物はありますか」
「用意させてある」
 片隅にジャーポットと水差し。そしてコップ。
「やって見せろ」
 そう秀樹に言われても見世物みたいでみずきにしては気が引けた。しかし説明のためにと割りきり上半身裸になる。
 未だに女物の下着には抵抗があるので、きつめのTシャツで胸を固定していたのだ。その戒めを解かれた胸がプリンのように揺れた。
 女が男に裸を見せる恥じらいは感じないものの、やはり抵抗はあるが『相撲取りの胸元』みたいに割り切った。
「なるほど。確かに女だ」
 若い娘が上半身を晒しているが塾長は厭らしく笑ったりせず平常心そのものだった。
 それで少し気持ちが落ち着いて次に移る。黙ったままだがジャーポットから汲んだお湯を頭から被り…
「熱―――――――――――っっっっっっ」
「馬鹿者…少しは水で温ませろ。火傷するぞ」
「先に言えよ…親父…」
 悪態をつくのは間違いなく少年。
「ほう…」
 さすがに塾長の表情も変わる。まるで見世物になったようで情けなくなる瑞樹。
「誰から見られると厄介だ。元に戻れ」
「こっちが、男の姿が『元』だ」
 それだけは拘りがある。だがもっともなので水をかぶって少女へと変わる。
「拭いて置け」
 あらかじめこうする事を前提にしていたのでバスタオルを用意していた。下着がわりのTシャツを纏った所で塾長が口を開いた。
「娘…いや。小僧。お前はとんでもなく不幸だが…同時にとんでもない幸運をも手にしているぞ」
「これのどこが幸運なんだよっ」
 後に一番のチャームポイントになる可愛らしい声に刺を混ぜてたたきつける。
「ふふふ。確かに男女どちらでもない半端者と解釈すればとんでもない不幸だろう。他人と一線を引いてしまった孤独もな。
 だが小僧。人は誰でも生涯男か女。一つの性しか選べぬ。男には女の愛はわからず。女には男のあらぶる心がわからぬ。
 しかしお前はその垣根を飛び越える事ができるのだ」
「えっ?」
 これはまったく考えなかった解釈だ。塾長はさらに続ける。
「『女になれ』とは言わん。だが長い生涯のたった3年間。その間くらい女として男を磨いてみろ」
「女として男を磨く?」
 まるで禅問答である。若いみずきには何を言っているのかまるでわからなかった。
 塾長は諭すように、厳しくも暖かい口調で語る。
「そうだ。男してのみ生きていたら見えないものを、女の目で見てみると良い。見えなかったものが見えてくるはずだ。同時に外からしか見ることのできなかった女を内側から見てみるのも勉強。
 お前は性別などと言うちっぽけな呪縛から解き放たれた幸運者だ。一個の人として成長できるだろう」
(塾長…相変わらずの人間の大きさ)
 秀樹は感服するがみずきには良くわからなかった。だがなんとなくもやもやは吹っ切れた。
「何か…凄く小さなことで悩んでいた気がする…世の中にはハンディをしょっても負けないでやっている人たちもいると言うのに、オレは女になったと言えど五体満足で高校にも行けると言うのに何をいじけていたんだろう。そう思えばなんか3年間くらい女で通すのも良い経験かもしれない。
 ひょっとしたら将来的にはこの体質が解明されて男で固定できるかもしれないし…
 よーし。やってやるぜ。こうなったら首席で合格してやるぜ
 みずきは完全に元気を取り戻した。
(場合によってはそのまま女として一生を過ごす訓練にもと思っていたが…どうやらこの様子じゃ自分で完全な男に戻る手段を探しかねんな)
 秀樹が女としての通学を薦めたのにはそう言う背景も会った。
「ふふ。我が校はその年の首席合格者に新入生代表を務めてもらっている。そうなったら新入生の宣誓をしてもらわねばならんな。わぁっはっはっは」
 豪快な笑い声。みずきはこの人物の元でなら生涯をたくせる気がしてきた。

 挨拶をして無限塾を後にしかけて意外な人物が校門にいた。
「七瀬…何してんだよ。こんなところで」
 そう。セーラー服姿の七瀬が無限塾にいた。彼女は悪戯っぽく笑うと封筒を見せた。
「これって…無限塾の願書じゃねーか。お前確かS女って」
「調べて見たらね」
 まるで踊るようにくるりと七瀬は回って見せる。どこか照れ隠しにも見える。秀樹は気を利かせてそっとその場を離れた。
「S女とここってどっちいってもレベルは変わらないのよね。それなら…」
「それなら…」
 みずきは言葉の続きを待つ。彼女もまた照れてしまった。七瀬は笑って
「またあんたのドジをフォローしてあげる。初対面の人があんたのドジをフォローしきれるはずがないわ。私以外に誰がフォローするのよ」
(さすがに『愛の言葉』が来るとは思わなかったが…これはあんまりだぜ)
 みずきは唖然とした。思わず悪態をつく。
「…おせっかい…」
 だが本音は違う。たぶん七瀬はみずきを半分、女にした責任を感じて世話のために進路を変更したのだろう。
 本当なら突っぱねるべきなのだろう。『オレに構わず自分の道を行け』と。
 しかしこれもまた七瀬の選択。そしてこれから女として高校生活を過ごす上で子供のころから一緒の七瀬がそばにいるのは心強かった。
(甘えているな…)
 でも七瀬の優しさが嬉しかった。とは言えど素直になれない。しかしそこは長い付き合い。七瀬も心得ていた。だから言い返す。
「子供のころからだもーん。おせっかいは直らないわよ」

 そして…月日は流れ桜の季節。赤星家。玄関では青いブレザーに身を包んだ七瀬が、みずきが出るのをまっている。だがそのみずきは
「ぜぇぇぇっっったぃやだ!! それだけは最後に残った男のプライドでつけない。
スカートだけでも変態になった気分なのにどうしてパンティーやブラジャーまで。これで良いよ」
既に女になったものの黒いTシャツと短パン姿でいた。
「わがまま言って私を困らせないで。みずきちゃん。そんな格好の上からスカートを履くつもり? こっちになさい」
 瑞枝は女物の下着の上下を差し出すがみずきは頑として受け入れない。
 登校のために女に変身するためのシャワーで着替えとしておいておいたものだ。しかしみずきはそれを無視した。だが脱いだ男ものを洗濯しに行った瑞枝が見つけてしまった。
「お姉ちゃん。子供みたいな事を言わないの。だいたいその胸のどこが男なのよ。背が低くて声高いし」
「これは相撲取りの胸と一緒だ。オレは元もと背が低いし声も高い。ちょっと肉の偏りが極端になっただけだ」
「百歩譲ってそうだとしてもスカートの中身を見られたらどうすんのよ。お姉ちゃん絶対転ぶわよ。ドジなんだから」
「ふっ。それは全て対策済みだぜ」
 自信有りげにみずきはスパッツを取り出して短パンと履き替えた。ちなみに短パン・そしてスパッツの中身はブリーフだ。歩き回って見せる。
「最近はスカートの下にスパッツつけてる女も多いらしいからな。Tシャツの上からブラウスや体操着をつければいいとしてスカートの中身対策はこれで良い。絶対に女物はつけねぇぞ。ほら。これで問題は…う…ごわごわする…痛い…」
 割と肌に密着するスパッツである。当然男ものの固い下着ではその感触が押し付けられて心地悪い。
 男ならともかく女で、しかも敏感な個所ゆえになおさら耐え難い。歩き回っていたのをやめてしまった。
「だから言ったでしょう。女の子はデリケートなんだからもっと優しくしなさい」
 文字通り身をもって知ったので諦めて浴室で履き替えてきた。
 それでも往生際が悪く上はノーブラでTシャツだが、四季隊・春日との戦闘時にそれが原因で苦戦したのは後の話。
 ブラウスとショーツと言う『悩殺スタイル』でうろつくみずき。やや苦々しい感じを抱きながらも優しく瑞枝は手招きする。
こっちにいらっしゃい。スカートの履き方を教えてあげるから」
 実はここまで女物は一度も身につけたことはなかった。覚悟は決めたものの踏ん切りはつかなかった。きちんと制服を着せられて髪にブラシを入れられる。
「ウン。とっても可愛いわよ」
 念願の『娘』にご満悦な瑞枝であった。みずきは立ち上がってみて…思わずスカートを押さえる。

喜ぶ母。ふてくされる「娘」

このイラストはオーダーメイドcomによって製作されました。クリエイターの参太郎さんに感謝の意をささげます。

「なんだこりゃ? すっげー無防備。やたらにスースーするし…外はまだ寒いのにこんな脚を剥き出しで歩くのか? 女って…実は凄い根性あるんじゃ…」
「早くしろ。七瀬ちゃんが待ってるぞ」
「あ…今行く」
 秀樹に促されて駆け出して…すっ転んだ。
「…これだ…」
 秀樹は誇張ではなく天を仰いだ。ほほを染めつつも無言で玄関へと急ぐみずき。
 真新しい空色のブレザーに身を包んだ七瀬が待っていた。
「待たせたな。七瀬」
「行きましょ。みずき」
 同じ制服を纏った二人の少女は高校生活の第1歩を踏み出した。

「まさしく…『人に歴史あり』でござるな」
 気がつけば誕生からここまでの十六年間を聞いてしまっていた。
「そうかぁ…あんなまったいらな講堂ですっ転んだのはスカートが纏わりつくのに馴れてなかったからなんだな…」
「まぁそこから先は君たちも知っての通りだ。卒業まで隠しとおすつもりだったのだが…ばれた相手が君達みたいな子で本当に幸運だった。
 正直な話…七瀬君と二人だけでは孤立するのではと心配だった。これだけ仲間がいるならあいつも心強いだろう」
 ふかぶかと礼をする秀樹。これにはみんな言葉に詰まる。照れ隠しか話題をすり替えにかかる真理。
「そういや…赤星は遅いな。女の着替えじゃあるまいし」
「女の着がえだよ…」
「まぁ下着からだし」
「一度裸にしてからじゃ時間もかかるよねぇ」
「ましてやきっとお化粧もさせられているから…なんだかみずきが気の毒になってきたわ…」

「みなさぁん。お待たせぇ」
 良く言えば朗らか。悪く言えば能天気な瑞枝の声が響く。奥からみずきが二人の弟に背中を押されて出てくる。みんな目を張った。
 榊原のプレゼントの下着セットは確かにプロボーションを数段美しく引き締めていた。そして姫子の贈ったワンピースがみずきの愛らしさを強調していた。
 また真理のメーキャップセットもみずきの唇をふっくらとみずみずしく見せ、丸い頬はすっきりと。アイシャドウが可愛いと言うより美しいと言う感じの少女にしていた。
 上条の贈ったリボンは短い髪の上でミッキーマウスの耳のように結われていた。
 手には綾那からのプレゼントのクマのぬいぐるみ。さすがにかんざしは無理だったが全員のプレゼントを身につけて見せた。
「これで良いだろ。義理は果たしたぜ。人を見世物みたいにしやがってよ」
 かなりレベルの高い美少女になったと言うのに、中身は相変わらずのぶっきらぼうだった。しかし一同は感嘆して言う。
「みーちゃん…綺麗…」
「ああ…贈ったアタイが言うのもなんだがここまで合うとはな」
「そうねぇ…良く似合ってるわね…」
「まさに小股の切れ上がった女っぷりでござる」
「めがねっ娘がめがねを外したら美少女と言うのは良くあるが…」
「正体を知らなかったらちょっかいかけたかもな」
 紛れもなくほめ言葉が並んでいるが、女に対しての物なので素直に喜べないみずきである。
「なんだよ…男が『強い』ならともかく『綺麗』『可愛い』なんて言われて喜ぶか?」
「そんな事を言わないの。みずきちゃん。ほら。どれくらい可愛くなったかみて見なさい。わざとそうしたのよ。気になるでしょう」
「…そりゃあ…随分いじられてたしな…」
 どんな顔にされたかは知りたかった。七瀬からの贈り物の手鏡で自分の顔を写す。
 そこにはいつもの自分ではない…まるで見違える美少女がいた。

「えっ?!…これがあたし…やだ…綺麗!! 可愛い!!」

 今回ばかしは姫子も一緒にずっこける。みずきは恍惚とした表嬢で鏡の中の美少女と対面していた。
「ちょ…ちょっと?」
「赤星って…ナルシーだったのか」
「ひょっとして…今日は赤星の中で眠っていた『女』の目覚めた日…『誕生日』になるんじゃないだろうな…」
「…みずき…女の体に心が影響されちゃったの…」
「ああ…我が息子ながら情けない…」
 一同が大ダメージで中々立ち直れぬ中

「キャー。あたしってば美少女。ボディラインがどんなかお風呂場で見てくるね」

 入学前より遥かに馴れてしまった女言葉でうきうきとした心を表現しつつ、浴室の姿見へと出向くみずき。それはそれは嬉しそうだった。
「ま…まぁプレゼントは気に入ってくれたらしい…」
「悩みは吹っ切れたようですわ」
「そ…そうね…あんなに嫌がってたのにすっかり女の自分を受け入れたみたい(心配だわ…やっぱりみずきには私が付いてないとダメだわ)」

 三つ子の魂百までも。子供のころから続くおせっかいと言うより、気苦労はまだまだ続きそうな七瀬であった。

次回予告

 炎に包まれてもだえ苦しむ女生徒は無限塾の制服を纏っていた。それが榊原和彦に彼のマリオネット『ビッグ・ショット』が見せた不吉な未来を予知する悪夢。
 その予知夢が現実に近づきつつある中、恐るべき狂気が鳴動する。
 次回PanicPanic第7話『狂気の正体』
 クールでないとやっていけない。ホットでないとやってられない。

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