第9話『激突』Part2   Part1に戻る

「お…親子? 塾長と…」
「総番が…」
 この発言は無限塾。悪漢高校両陣営に衝撃を与えた。
「なるほど…親子だってんなら同じオーラ。そして萎縮するはずだ…」
 一人納得そして安堵する春日。
「しかし…俺たち四季隊すら知らない事実とは…」
「ああ…総番は今までは必ず一人で出向いて戦っていたからな。必ずずたずたになって帰ってきたのは学校ぐるみで袋叩きにされたかと思っていたが…」
「まさか…あのジジイが総番とタメ張るのか?」

 体育館。バスケットのコートが2面取れるだけのスペースがあった。ここには更衣室がありシャワールームもあった。
 みずきと上条は共にそこに連れて来られていた。乱暴に投げ出される。
「いてて…何すんだよっ。上条…上条? え?…え?…え?」
 怒りもどこへ。みずきは狼狽する。倒れ伏す上条を見下ろすもう一人の上条がいたからだ。
「上条!!」「みずき!!」
 榊原たちが追ってきて体育館に入ってきたがやはり驚く。
「え………上条くん。双子だったの?」
 綾那がとんちんかんなようでもっともな反応を示す。それだけ似ていた。当の上条が半身を起こして見下ろす『上条』に驚く。
「え……な…何ぃ…お前は…カノン!!」
「……今のが本物だな…」
 独特のボケが判断材料になっていた。
「うふふ。驚いたかしら」
 妖艶な声。だがその主は…さらにみんな驚く。もう一人のみずきが現れた。

 校庭では緊張感が漂っていた。嵐の前の静けさ…と言うところか。あざ笑うように総番。大河原慎が口を開く。
「貴様の『教育の成果』とこんなものか…全てのものを平等にだと。甘い。甘いわ。
この世の中は率いるものと従うもの。この二つしかない。そして率いるものの資格は『強さ』」
「お前の言う『強さ』とは腕っ節のことか? 下らんことを言う。わしはお前をそんな風に育てた覚えはないがな」
 こちらは人生を積み重ねてきた貫禄。まるで動じずに言い放つ。
「黙れ。見ろ。この日本の腐りぶりを。戦いを放棄した民族に待つのは死だけだ。
だから俺は全員が戦士と言う理想を追って悪漢を制覇した。貴様のやり方を認めるつもりはない」
 すれ違う理想。互いに自分が正しいと信じるために平行線をたどらずにはいられない。

 体育館。動揺は大きかった。
「どう言う…ことだよ…これは…」
 みんなわけがわからなかった。意外にも看破したのはマリオネットマスターではない十郎太だった。
「むぅ。これは傀儡使いの妖術ではござらんか?」
「くぐつ…マリオネットか。しかしこんな実体化するマリオネットなんて…」
 マリオネットはマリオネットマスターにしか見えない。だがそうではないみずきや上条にも見えるのだ。
「それだけあなたへの思いが強いと言うことね。妬けるほどに」
『みずき』の声はまるでみずきのそれだが、しゃべり方が大人の女のようであった。
「何をしようというのだ?」
 単刀直入に上条が聞いた。
「何をだと? 知れたこと」
 答えたのは『みずき』ではなく『上条』。『上条』は腰溜めに構える。破気が高まる。それを突き出して気を放つ。
「まさか…龍気炎? くっ」
 反射的にガードをしてしまう。そこに地面を滑るように、しかも同じポーズで音もなく近寄る『上条』。上条を捉えた。
「死ね」
「な!?」
 その刹那『黒い閃光』が眩く光りみんなは目をそむけた。視線を戻した一同が見たのは『上条』の足元に倒れ付す上条だった。
「なんと!? とぼけてはおるがてだれの上条を一瞬で…」
「あれは…『逆鱗』!?」
 それは暴走した上条の最大最悪最凶の技。相手を捕らえるや否や、ありったけの破気を四方八方から浴びせ掛ける大技。
「これは…上条。単純なコピーじゃない!? お前が暴走したときのそれだ」
「何だって!? と、言われても…」
 ようやく体を起こす上条が減らず口をたたく。言うのももっともだ。
 せめてノーマルのコピーなら自分自身を参考にして攻め方を読むが、暴走状態のときは覚えていない。つまりまったく未知の戦いだ。
「おれはあのお方のお前に対する怒りが実体化させた。だからお前の暴走状態で具現化したのだ」
 裏上条が本物の上条に襲い掛かる。もつれ合いながらあっという間に遠くまで戦いが移る。

「くっ。本体はどこだ? そして誰だ?」
「うふふっ。答えると思う?」
 真理が尋ねるが無視する。冷静さを装う『みずき』だがみずきに対しては嫉妬。憎悪などが入り混じった瞳を向ける。搾り出すように言う。
「代わりに教えてあげるわ。『上条』が怒りで具現化したなら私はあのお方のおまえに対する思いが姿になったもの。どうしてそれを裏切った?
 せめてばれないようにしなかった? どうして夢を見せてくれなかった。憎い。お前が憎い」
「なんのことだよ?」
「待てよ…『赤星に対する恋心』にお前の態度。本体はとりあえず男だな」
 榊原が冷静に分析する。『みずき』はくくくと含み笑いをする。
「大した物ね。さすがは秀才だわ。そうよ。私はあの方なしではいられない。私は女よ。
 そしてあの方が望むのは裏切ったお前の死。私はあの方にそれを任された。だからあなたを殺すために絶対の方法を取るわ」
 『みずき』はいきなり駆け出して後方の一室へと入る。追ってみたらシャワーを出していた。湯気が上がっている。
「私はお前のコピー。だからある程度はお前の記憶や能力も引き継いでいる。
 あの方に嫌われまいとひたすら隠していたけど、お前を確実に殺すために敢えて忌み嫌うこの姿になるわ」
 『みずき』は温水シャワーを浴びる。その姿が男のそれになる。同時に服も学生服へと変わる。
「バカな…変身能力まで…」
「今までいろいろと戦ってきたようだけど自分とは戦えないでしょう。ましてや女の筋力で男になった私に勝てるかしら」
「頼むから男の姿と声で女言葉を使うのはやめてくれ…」
 オリジナルは本気で鳥肌を立てていた。
「あの方の愛を一心に受けるお前が憎かった。だから宣戦布告だけは女としてしたかったの。ここからは…殺してあげるわ」
 上条対暴走上条。みずき対瑞樹と言う対決が幕を開けた。

 校庭。二人の対決に割ってはいる男がいた。
「塾長。あなたはここで倒れてはいけない。私が捨石となる」
「藤宮」
 熱血生活指導。藤宮博が部室練の屋根の上から名乗りをあげる。そして跳ぶ。総番の前に着地する。
「悪漢高校総番。お前は私が倒そう」
「引っ込んでいろ」
「そうは行かん。とう。とう」
 連続してのパンチ。わずかだが総番がよろめく。
「今だ。藤宮反転キック」
 まずはキック。そしてその胸板を踏み台にして反転してもう一度見舞う。
「グ…」
 総番が膝をついた。好機とばかしに藤宮は大技を見舞う。
『電光藤宮キィィィィィィィィッッッッックゥゥゥゥゥ』
 確かにそれが炸裂した。だが慎は無事だ。
「なるほど…骨がある奴もいるか…気に入ったぞ」
「な…何ぃ? あれだけの攻撃が無意味だと?」
 実のところこれは破気を使った大技で蹴り技に対する耐性をつけていた。拳には無効だが蹴りは絶対に効かない。反対にもできたし投げ技を対象とすることもできた。
「先生」「先生」「先生…」
 愛弟子である正義クラブの三人娘が駆けつけようとする。
「麻神。谷和原。佐倉。来るな。お前たちのかなう相手ではない」
 それを制止する藤宮。これで引き下がる性格はしていない久子だ。
「先生。私たちも戦います。このための正義クラブです」
「…私も…私も…戦います(怖いけど)」
「私たちの学校は私たちで守ります」
「お前たち…私は良い生徒を持った。お前たちになら任せられる」
 話ながら藤宮は総番の背後に回った。それまでは力の差で問題にしていなかったが背中越しの神気の高まりにさすがに動揺する。
「貴様…何をする?」
「捨石は私だけでいい。後は任せたぞ。藤宮タイフーン
「せ…先生ぃぃぃぃぃ」
 藤宮の神気が一気に高まりそして爆発した。

 倒れた上条に追い討ちをかけるべく接近する裏上条。だがいきなり上条は立ちあがり飛龍激を連発する。
「飛龍乱舞」
 まともに食らった裏上条は崩れる。だが再生されているだけにあっさりと立ち直る。
「何だって?」
 上条はげっそりと疲れた表情になる。

 みずきと瑞樹の戦いも同様だ。戦闘の経験の差が物を言いオリジナルが有利だったものの、常に構築を繰り返すコピーたちはダメージを受けても瞬時に立ち直る。
 そして瑞樹は男の筋力ゆえに女のみずきと違い技を繰り出すのに『溜め』を必要としない。それだけ続けざまの攻撃が可能だった。
「ほほほほほ。どうかしら。自分で自分の技を食らった感想は」
 防御に手一杯で反論すらできない。

「これじゃ切りがない。いや…むしろジリ貧でやられる」
「カズ。手はあるぜ。いくらマリオネットが無敵でも」
「そうだわ。操る本体を倒せば」
「姫ちゃん。お願い。探して」
「承知しましたわ」
 姫子は『姫神』を出現させる。そしてこのマリオネットのパワーと同質の持ち主を探す。しかしいきなり
「きゃっ」
両手で顔を覆いしゃがみこんでしまった。耳まで真っ赤になっている。
「姫。どうしたでござる?」
「本体はどこにいやがった?」
「あの…お手洗いに…それもお一人用の…」
 消え入るような声でそれだけ言うのがやっとだった。
「トイレの個室か!」
「及川。若葉。怪我と体力のサポートを頼む。風間。俺たちは本体を探し出すぞ」
「アタイも行くぜ。とっ捕まえたらガンズン・ローゼスで解除法を聞き出してやる。姫はここにいな」
「わかりましたわ…」
「早くしてねェ」
 二手に分かれた。

 新宿署。捜査1係。大久刑事が操作するパソコンを上条繁刑事部長が覗きこんでいる。
「中尾勝。どこにでもいる平凡な教師ですね。ただ去年の三月にはちょっとトラブルを起こしてます」
「どんな揉め事だ?」
「トラブルといってもむしろ彼は警察に協力してくれたんですけどね。ほら。例の『斑』と言う殺人者の名前を名乗っていた浮浪者ともみ合っているんですよ」
「ああ。それなら知っている。それにしても何かそういう犯罪史でもあったのか?
 俺が前に追っかけた奴も死んじまったが、後で調べたら『斑』と名乗っていたそうだし。偶然か」
「マーダー。あるいはマーダラーで『殺人者』と言う意味になりますから被害者たちの聞き違いかも」
「ふぅん」
 一応は相槌を打つ刑事部長。だがまだ釈然としていない。

 爆発といっても一気に放出したと言う意味である。かなりのダメージを総番には与えたが、藤宮本人も戦うエネルギーをほとんど使い果たし倒れ伏していた。
「大した物だ。それだけに惜しい。捨石になろうと言う発想がな。どうしてこの俺を力ずくで屈服させようとしない」
「…ふ…力で築く平和など所詮は偽者。それに気がつかないとは、お前こそそれだけの力を持ちつつも惜しい男だ…」
「減らず口はあの世で言え」
 まだ立てない藤宮に容赦なく蹴りを見舞いかける。そこに
「正義の怒り」
 久子が突っ込んできた。さすがに体勢を崩す総番。その隙に友恵とみなみが藤宮を救出した。
「おのれ…」
 怒りに顔をゆがめる慎。しかしそれに塾長が待ったをかける。
「愚か者が。まだわからぬか。力ずくで屈服しているなら危地に飛びこんでなど来ぬ。まずは認めること。互いに敬意を払うこと。それこそが教育だ」
「それでは救えぬ。誰かが引っ張らねばならぬ」
 平行線だった。塾長はふと寂しそうに笑う。反面嬉しそうでもあった。
「よかろう。ならば貴様の流儀で引き下がらせてくれよう。だがその前にだ。麻神久子よ」
「は…はいっ」
 思いきり緊張した返答が帰ってくる。
「お前の一番の技をわしにかけい」
 珍妙な要求であった。どうしてわざわざ不利になるようなことを?
「え゛…でも」
「早くせい」
「はいっ…それでは…」
 久子は塾長の肩に手をかけた。そして続けざまに説教しながら15連発の攻撃。
 みんなには『誠意ある話し合い』と呼ばれていた技である。塾長も倒れ伏すがたちあがる。
「なんの…真似だ?」
「ふっ…ぐだぐだ文句をぬかせぬように同じだけ食らってやったわ。これで平等」
「あくまで青臭い『理想』を掲げるか…後悔するなよ」
 総番の破気が高まる。周囲の小石や野球部が放ったボールなどが舞いあがる。
「能書きはよい。掛かって来い」
 塾長の神気も高まる。やはり舞いあがるオーラが小さな物を空へと運ぶ。
「下がれ。破気にやられるぞ」
「みなさん。避難してください。オーラのぶつかり合いで危険です」
 春日が悪漢を。久子が無限塾の生徒を引き下がらせる。そして対峙する二人が
「ぬおおお」
「ぬわりゃ」
 互いに拳を繰り出しそれがお互いの拳にあたり、激突した神気と破気が爆発し瞬時に二人の立つグラウンドにクレーターを作る。

 危険な位置にいたくはなかったが怪しまれるので生徒の避難にあたっていた中尾。しかし冷ややかに見つめていた。
(くたびれるだけの戦いか。下らんな。さて、こちらは上手くやっているかな。どうやらこの混乱に乗じて行動を起こしたようだが。
息子が大変な目にあっての上条刑事の嘆き顔を想像するだけで愉快だ。くくく)
「中尾先生。ボーっとしてないでください」
「ああ。失礼。氷室先生」
 すぐに作業に戻る。だが氷室響子はなにか引っかかっていた。
(この男…今わずかに破気を出していたけど…とは言えど完全な善も完全な悪もないから、この戦いが血を騒がせてと言うこともあるわね)
 とりあえず怪我人の治療にあたっていた。

 その中尾の謀略で起きた戦い。男の心を持つ少女と女の心を持つ少年の戦いは熾烈を極めた。
「スタークラッシュ」
 瑞樹の縦横無尽の蹴りの連打が炸裂する。一撃目を受け流して後は堪えるみずき。堪えながら溜める。蹴りが止まった。みずきは高めた神気を掌から押し出す。
「シューティングスター」
「ぐあっ」
 これは技を出し終えた硬直に見事にきまった。だが今度はその硬直を狙われた。のけぞった体勢のまま回転しながらのドロップキック。
「メテオストライク」
 ガードもブロッキングも間に合わない。キックがヒットする。みずきが吹き飛ぶより早く天へ向けての蹴りが見まわれる。
「コロナフレア」
 「ああっ」
 甲高いまさに少女の声でうめき声と言うより悲鳴を上げてみずきが吹っ飛ぶ。
(ちきしょー。あっちは男だから女のおれみたいに溜めは要らない。だからこうして技から技へすばやくつなげられる。このままじゃ…)
 みずきは地面すれすれでたたきつけられるのを回避して、回転レシーブのように転がり間合いを取る。
「殺す。そして私がお前にとって代わり学校でもあの方と」
 剥き出しの殺意で突っ込んでくる瑞樹だがすでに、溜めに入っていたみずきはそのままガードに移行する。
「へっ。溜めのいるおれだが即座にガードに入れる利点もあるぜ」
「くっ。味な真似を。だがお前は必ず殺す」
 みずきにとって一番ガードもブロッキングも厄介なのはこの瑞樹の嫉妬から来る憎悪。殺意であった。

 そして光と闇の戦いがもう一つ。上条と裏上条の戦いだった。
「龍気炎」
 互いに同じ技を放つ。気の弾丸が出たのは裏上条が早かったが後からでた上条の気弾が相殺する。そして上条のほうが先に動けた。
「龍尾脚」
 浴びせげりで一気に間合いを詰める。だがそれを裏上条が飛龍撃で打ち落とす。攻撃の最中でブロッキングできず落とされる。
「はぁぁぁぁぁぁ」
 裏上条が破気を高める。上条の背後に破気の塊が出現する。
「これが話に聞いた伏龍か。と来れば次は突進技」
 そして今度は裏上条が龍尾脚で攻撃する。しかし後ろは破気の塊。起きあがった上条はそのままガードする。龍尾脚はガードされると大きな隙ができる。
「今だ。必殺龍尾脚」
 まず着地した裏上条の足元を払うようにローキック。続いて胴を狙ってのミドルキック。そして続けて独楽のように高速回転をする。
「ぐおおおおおおおっ」
 起死回生の技。裏上条はぼろぼろと崩れるが再生にかかる。追撃を考えたが間合いが離れすぎた。再生の速度を考えると返り討ちがありえる。ならむしろ。
「若葉。頼む」
「うん。いくよっ。上条くん」
 綾那が上条の体力を回復させていた。しきりなおしだ。
 七瀬も綾那も味方したかったもののなにしろ同じ顔。間違えて攻撃しかねない(七瀬にしてみれば男の瑞樹の方がむしろ馴染みなので)
 だからサポート専門であった。
(早く…早く本体を見つけて止めて…)
 そう祈るしかなかった。

 そして榊原と十郎太。真理はトイレと言うトイレを探していた。
 手分けすれば早そうだが、逆にコピーを作られて迎撃されることを嫌いまとまって行動していた。
「ここもいないでござる」
「くそっ。二階か三階かっ」
 3人は体育館から始めて、近い順にしらみつぶしにあたっていた。
 マリオネットのパワーは距離と反比例する実体化するマリオネットだけに近いと考えたが未だに見つけられなかった。

「馬鹿野郎」
 怒声と共に息子が実の父親を殴り高々と飛ばす。着地地点を目掛けて突進する。しかし
「愚か者」
 今度は逆に拳を受けて壁に向けて飛ばされる。部室練に飛ばされる。ブロックの壁を壊して中に落下。
「ぬおおおおお」
 だが瓦礫を全てふっ飛ばしてすぐさまたちあがると塾長に向けて今度は体当たりを成功させる。吹っ飛ばされた塾長はグラウンドをならすローラーを砕いて着地する。
「か…怪獣映画…」
 生徒の一人がつぶやいた一言が端的にこの戦いを表していた。

第9話『激突』part3へ

「PanicPanic専用掲示板」へ

「Press Start Button」へ

トップページへ