第16話『太刀に潜む魔』Part2   Part1に戻る

 悪漢高校にも春日。夏木。冬野が返り討ちにあったという知らせが入る。
 「あいつら三人をもってしてもだめか…」
 四季隊ははっきり言ってその人間性で配下を束ねてはいない。それぞれが一騎当千のつわものだから腕ずくで不良達を従わせているのだ。故に彼らでダメとなると残りの有象無象では結果は明らかであった。総番は軽く目を閉じ思案していたが
 「考えるまでも無いな。俺が出よう」
立ちあがる。
 「総番!!」
 配下達が大声をあげる。
 「うろたえるな。配下の不始末は俺の不始末。それを始末しに行くだけだ」
 言った後で妙な違和感を感じていた。何かが『背中』に括り付けられたような。だが彼は気にもせず再び腰を下ろす。
 「さて。撒き餌に使うのはどこがいいかな」

 (やっぱりな…)
 『違和感』の正体は悪漢高校の女子制服に身を包んだ真理だった。ちなみにセーラー服である。拝借した相手も大柄だったしスカートが長かったので違和感が無かった。
 潜入した彼女は総番。大河原慎がいつ動くかを探っていた。それが今日と探り終えて続いてその場所を探っていたときだ。
 「てめえっ。そこで何してやがる」
 下っ端に見つかった。『放課後』でも総番が残っているのを見越しての潜入だったが他にも居残りがいた。
 (あっちゃー…見つかったか)
 彼女はとりあえずマリオネットを解除する。戦闘時に必要なものだからだ。
 「見ない顔だな」
 「ああん。このアタイを知らないだ?」
 真理は居直ってとぼけにかかる。いかにも『スケバン』に見えるように。そして簡単な変装の意味で濃い目の化粧をしていたがもともとの派手な顔立ちともあいまってまるで舞台化粧だ。それなりに迫力も出る。
 「う…うっ…」
 下っ端程度ではこの迫力に太刀打ちできない。あっさりと飲まれてしまう。そうでなくても普段からアウトローな真理である。見事な金髪の迫力も手伝い(これは地毛だが)凄みをかもし出す。
 「あんたら。この悪漢でアタイを知らないたぁモグリかい?」
 「い…イエ…すんません。オレらが間違えましたっす」
 「し…失礼しまーっす」
 あっさりと退散した。結果的にはいいのだが
 (このメイク…やっぱ派手というよりゃ『怖い』か…)
などと考える辺りは『女の子』だった。
 「何を騒いでいる」
 (やべえ。今度は取り巻きが出てくる)
 見つかる前にとにかく退散することにした。彼女はガンズン・ローゼスを向かいのビルの屋上。その手すりにからめて飛び移る。

 近くのホテル。真理は顔を伏せてある一室へと行く。ノックしてドア越しに「ガンズンローゼス」を見せる。
 中からドアが開く。バスローブ姿の榊原が出てきた。
 「どうだった」
 まじめにたずねる。大きなベッドでは真理と同じ位の体格の少女が恍惚とした表情で眠っていた。
 「ああ。やっぱり動くね。それも今夜」
 すばやく部屋に入ったものの真理は背中を向けて言う。顔は真っ赤だ。榊原のバスローブの前がはだけているのだ。
 喧嘩は無敵でも男と付き合ったことのない真理にとっては刺激的過ぎた。何しろ彼女は母子家庭で育っているので父親と風呂に入った記憶もない。要するに『見た事がまったくない』のだ。
 (夢に出そう…気持ち悪い…)
 などと考えていたら背中に妙な感触が。その『気持ち悪いもの』がくっついていた。
 「ひっ」
 真理の背中に悪寒が走る。
 「どうだい? どうせこの女と制服を交換するんで脱ぐんだろう。そのついでに経験してみる? この女も気持ち良かったみたいだし…」
 「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 女と思えない怒声をあげて榊原の顔面をつかむと床に思いきりたたきつけた。
 「じょ…冗談だってば…」
 とは言えど制服を剥ぎ取った相手の足止めは榊原がしていた。その際にどうしていたかは想像がつく。
 はらり。顔面で逆立ちしている形の榊原のバスローブが下へと落ちる。足と…その付け根が剥き出しになる。
 「キャーーーーーーーーーっ」
 彼女は自分の服を取り
 「やーーーーーーーん。ヘビィィィィ」
普段では考えられないようなかわいらしい悲鳴を上げ両手で顔を覆いバスルームへ逃げ込む。
 「ハハ…突っ張っているけど男に関しては小学生並だわ…」
 それだけ言うと気絶した。

 変装のために制服を剥ぎ取った女に服を返しホテル代までちゃんと榊原が払い出てくる。ちなみに本人の談話では「相手も腰を使ってたかから合意。訴えられはしないぜ」である。
 「…そういう問題か…」
 「しっかしさっきの村上は可愛かったなぁ」
 からかうように榊原が言うと真理の白い肌が朱に染まる。
 「『いやーん』に『ヘビ』だもんなぁ。うんうん。可愛い可愛い」
 「う…うるせぇ。いいだろ」
 照れているためかいつもほどの迫力がない。そっぽ向いている。表ということもあり程ほどにしていたし真理も暴れないが内心では
 (この野郎…学校に着いたら締めてやる…)
 報復の黒い炎を燃やしていた。

 宿直室。未だ回復していない四季隊が横たわっている。これは言うまでもなく元気にしておくとまた修羅場に出向く危険があるからである。だからあえて体力の補充を完全にはしていない。もっとも吸い取られた量も半端ではなかったが。
 「そう…やはり総番が動くのね。それで…あなた達はどうするの? 心身ともにこの学校の中でも強い方に入るけど今回の相手は異質よ」
 「変質者ならいるけどな」
 ジト目で真理が榊原を見る。
 「おいおい。酷いな。これは男にとっても女にとってもありがたいものなんだぞ。なんなら試すか?」
 「やかましい!! あんまり言うとそこの骨を折るぞ」
 「折るって…骨なんてないぞ」
 「ええっ!? 骨は入ってないの?」
 みずき・響子を除く女性陣がいっせいに口をあけた。
 「こらこら。箱入り娘の上に男の兄弟のいない姫ちゃんはまだしも(さらに世間知らずだが)及川と若葉は弟がいるんだろ? おしめかえたりして触ったことないのか」
 「いや…ないわけじゃないけど…」
 「あんまり考えたことなくて…」
 二人とも顔が赤い。
 「保健体育の授業は終わったかしら? それでどうするのかしら? 担任でないとは言えどウチの生徒が戦いに行くのを煽りたくはないわ。でも正直あなた達ほどの戦力。助けて欲しい気もある」
 「是非もござらん。血に飢えた虎と化した彼奴は拙者がおびき出せようというもの」
 「決まりだな。みんな今夜に備えてまずは休むか」

 都内の某所。白木の木刀を抱え血に飢えた瞳で地面をにらんでいる秋本。その口元に笑みが浮かぶ。
 「破気だ…それもやつの…」
 ゆらりと木刀を携え彼は歩く。月も心なしか血の赤に見えた。

 暴走族が壊滅していた。単車はすべて横たわり中には炎上しているものもある。
 その構成員達もほとんどが地面に寝そべっていた。武器である鉄パイプや釘バットもあるのにだ。
 「て…手前…総番。今まで俺達の挑発を無視しておいて今更なんだ…」
 モヒカン頭の大男がほえる。彼らは悪漢高校に挑んでいたが門前払いをされていた。
 「バイクの力を自分の力と勘違いしているような輩と戦う価値などないということだ。だがこの場合は別だ。貴様らにはおびき寄せる餌になってもらう。愚か者の成敗と一石二鳥というところだ」
 総番。大川原慎は素手で暴走族を壊滅させていた。バイクで跳ね飛ばそうにも彼のオーラによって体に届かない。
 「なるべく長いこと戦わなくてはおびき出しにもならぬが…これ以上続けるのは弱者を嬲るだけ。一思いに終わりにしてくれる」
 「や…やろぉぉぉぉぉぉぉ」
 ヘッドは距離をとり再びバイクで突っ込む。
 
「バカ野郎!!」
 怒声と供に繰り出す鉄拳によって暴走族のヘッドも仲間と運命を供にすることになった。
 「愚か者め。マシンの力を自分の力と間違えるとはな…貴様も木刀の力を己の力と間違えているのか? 秋本」
 ゆらり。幽鬼のように秋本がたたずんでいた。

 無限塾屋上。姫子が祈るようにして探っていた。今夜動くのは真理の調査でわかったもののおびき寄せに暴走族壊滅ではどこに現れるかわかったものではない。だから気配を探っていくことにした。
 「わかりましたわ。それ程遠くありません。あちらです」
 なぜか巫女装束の彼女は町を指差す。
 「すっごーい。姫ちゃん。総番さんの気配を覚えていたの?」
 無邪気に綾那が褒め称える。
 「いえ。覚えるほどには。ただ総番さんは塾長さんと親子。それならと似た気配を探して見ました」
 「よし。じゃみんな行こう」
 「一気に行くわよ。風獣
 虎の姿をしたものが竜巻をつくり九人を持ち上げる。竜巻といっても中の人間達には浮き上がるだけで影響はない。
 「わっ!? わわっ!!」
 そうは入ってもさすがに驚く。瑞樹が声をあげる。だがいつもどおりの男もいた。
 「凄い。その札で操っているんですか? やはり『ファイナルベント』は風で敵をふっ飛ばすんですか?」
 「おしゃべりしてると舌を噛むわよ。急ぎましょう」
 八人。そして氷室響子はは戦いの場へと出向く。

 無限塾。宿直室。やっと立ちあがれるようになった春日と夏木はよろけつつ歩く。
 「今日は確かあのバカ(暴走族)どもの集会の日…」
 「それを襲えばその破気に引かれて秋本は出てくるはず…」
 (ちっ。総番を見殺しじゃオレも立場がやばい。とりあえず見当をつけて出向くか)
 超能力こそないものの彼らには『蛇の道はヘビ』の情報網と経験から来る洞察力があった。
 戦場へと出向く。

 戦場。静かにたたずむ総番。対峙する秋本。それに語り掛ける。
 「貴様は…何者だ?」
 『秋本』は答えない。ただ薄笑いを浮かべているだけ。
 「オレの知る秋本虎次郎は強敵との戦いを望み常にぎらついた目をしているが今の貴様のように誰彼構わず血祭りに上げる男ではなかった」
 「ぐふふ…」
 「オレはオカルトの類は信じないが…どうやらおまえには『お払い』が必要なようだな」
 「ふへへ…払えるか? 貴様はむしろいい餌だ…」
 「食えるというなら…食ってみろ!!
 総番は先制攻撃を仕掛けた。秋本に拳を振り下ろす。ひょいと牛若丸よろしくよける秋本。
 「ふふふ…いい破気を持っている…今宵…復活の時…」
 「抜かせ!! 迷い出た地獄に送り返してくれるわ」
 今度は蹴りを見舞うがそれもかわされる。
 「オレを疲れさせる魂胆なら無駄だ。何万でも撃ってくれるわ」
 だが違う。『秋本』の狙いは破気の高まり。それを食らうつもりだ。

 「あそこです」
 最初に示したのはさすがに姫子。スピードを落として熱気球が降下するようにゆっくりと一同を下ろしにかかる。
 風の結界を解除した途端に駆け出したのはさすがに専門の十郎太。自分に注意を向ける目的であえて声高に叫ぶ。
 「秋本。お主の相手は拙者がいたす。いざ、尋常に勝負を…」
 「来るな!!」
 声で制したのが総番だ。
 「何をしに来た? 配下の不始末をつけようというのを横取りする気か」
 「む…むぅ」
 十郎太は忍であるが『儀』の人でもある。だからそう言う言葉にはかなり弱い。
 「風間」
 瑞樹達も追いついてきたが十郎太が手を出さないので彼らとしても参戦しにくい。よその喧嘩に割り込むのもためらいがあった。

 報告を聞いていた総番はなるべく破気を高めないように『必殺技』は封印して手数で勝負していた。
 ジャブ。ジャブ。左ミドルキック。右アッパー。左フック。
 それを秋本はすべて木刀で防いでいた。いや…むしろ木刀を攻撃に合わせていた。
 防戦一報の秋本。攻め続ける総番。だが彼がなんと膝をついた。
 「ば…バカな…オレは破気を殺して攻撃した…それなのに…」
 総番は憔悴した表情でつぶやく。
 「くくくく…どう言う風に聞いたかしらないが何もオレさまは高めた破気を吸い取るわけではない。体に触れれば十分。それにな…いかに殺気を殺そうとその拳。殺気にまみれていたぞ。美味かったよ。お礼に楽に殺してやろう」
 秋本が木刀をたかだかと掲げた。

 傍らで見ていた一同ははらはらしていた。
 「若葉。距離はあるけど彼のエネルギーの回復はできないか」
 「送ることはできるけど…この辺りにはボク達以外に生命エネルギーがないよ。空気から集めてもそんなには…」
 「ならば俺たちのを少しずつ」
 榊原の提案でみんながわずかずつ体力を送る決意をした。円陣をくみ右手を重ねる。
 「やめろ!! お前らの…あの男の弟子達のて助けは受けん」
 あの男とは忌み嫌う無限塾塾長。大河原源太郎。実の父親である。
 「意地を張っている場合かよ」
 男姿でははじめて会うというのについそれも忘れた口調の瑞樹。それに対して総番は男でも…いや。男ならしびれる笑みを返す。
 「ふっ。俺にも仲間はいる」
 「総番」
 その声に最初に振り向いたのは響子だ。
 「そんな。彼らは動ける状態じゃないわ」
 読みが当たり春日。夏木。冬野が来たのだ。
 「くくく…よく来たな。だがもう遅い。貴様らの主は虫の息だ」
 改めて高く掲げあげた木刀。まるでギロチンのようだ。
 「デブ。合体技だ」
 「おう。行くぞ。チビ」
 夏木は言うやいなや春日を右腕でむんずと捕まえた。そしてそのまま腕をぐるぐる回す。遠心力だ。そしてそのまま秋本めがけて力任せに投げつける。
 「エレファントモンキーキャノン」
 まさに砲弾と化した春日が秋本をふっ飛ばす。
 「おのれぇぇぇぇぇ」
 秋本は飛ばされるその刹那に木刀を総番に投げつける。だがその総番が姿をかき消す。
 「え!?」
 冬野が目を白黒させる。それに対して息の荒い姫子が説明をする。
 「ご…ご安心ください。あの方は…恐らく一番安全な場所へと…」
 「姫ちゃん…この前のトレスで僕を移動させたように思えたが…どうやら進化したみたいだね」
 それまでは対象はごく軽い『物』に限定されていた。だがパワーアップして『人』を任意の場所へと移動させることができるようになったらしい。
 『おのれ…もう少しであの男の強大な破気をとりこみよみがえったものを…まぁ良い。その分は貴様らに対するこの男の破気で贖ってもらうとするか』
 秋本がゆらりと木刀を携え迫る。そしてその前に立ちはだかるのは
 「お主の相手は拙者がいたそう」
十郎太が気負いのない立ち方で最前列にいた。

第16話『太刀に潜む魔』Part3へ

PRESS START BUTTON(ストーリー)
トップページへ