第24話『熱血!! 体育祭』Part3   Part2へ戻る

 そのころ。こんな絶好の襲撃チャンスを悪漢高校が見送ったのは…実はこちらも体育祭だったのだ(ちゅど〜ん)
 「たまにはこんな遊びもいいものだ」という方針での開催であった。不良の巣窟といえど学校には違いない。ちゃんと学校行事もある。
 現在は重さ60キロの俵を持ち上げて、何分持つかという競技をしていた。
 もちろん四季隊も総番命令で全員参加していた。
 俵を担ぎつつ心の中で毒づく。
 (なんで俺たちが…)
 (俺は不良だぞ。こんな『健全』なことできるか)
 そうかと思えば総番に心酔する二人は
 (ぐふふふっ。総番の期待に応えねば)
 (ぐおおおっ。俺は体格のハンディがぁぁぁぁ。だが総番が持ち上げろと仰るなら俵の一つや二つぅぅぅぅ)
健気にがんばっていた。夏木は二つでも平気かもだが、春日は今にもつぶされそうであった。
 実はこの四人以外は全員リタイアしていた。こうなると大幹部のメンツがあり間違っても最初に脱落は出来ない。
 互いにけん制しながら耐えていた。そこへ持ってきて
 「こらぁ。春日。貴様1組の意地を見せろ」
と「教師」が怒鳴る。
 悪漢高校は実は学生が占拠した学校というわけではない。ただ全国のドロップアウトを受け入れていた。
 「社会の枠に収まらないスケールの大きな人物を育てる」それが教育方針であった。だから不良生徒が集まっていた。そして不良教師も。
 毒をもって毒を制するわけではないが、互いにいやな部分を見て治っていくから面白いものである。
 この1組担任も生徒を叩きのめしすぎて追われた男。しかしここには叩きがいのある相手が目白押し。全力でぶつかっていた。
 誰もが手を焼く悪童にぶつかる教師。ある意味では真の教育をしていたかもしれない。
 だから公式行事にも出る気になる。そして本気で戦っていた。
 今回ばかしは戦う相手は中にいた。

 無限塾。
 昼食が終わり応援合戦。まずは1組。生徒達が一箇所に集まる。そして反対側から砲台が用意される。
 注目される中で何かが飛び出した。空へ。
 「正義の名のもとに1組優勝ぅぅぅぅぅぅぅぅ」
 「Victory」と描かれた赤い幕をなびかせながら、絶叫する麻神久子が「人間砲弾」と化していたのだ。
 それをみんなで受け止め…るはずなのに、し損ねた。
 「あぎゃぎゃぎゃぎゃあ〜〜〜〜〜っ」
 顔面で校庭に溝を作る久子。失敗もいいところだがパフォーマンスと解釈された。結構高い点数に。

 そして二組。女子全員が男子の学生服に身を包んでいた。胸にさらしを巻いて勇ましい格好の応援団長。真理が旗を振る。
それにあわせて「フレー。フレー。2組」と可愛い声の応援団。
 (見てくれみんな。これが俺の本当の姿だ)
 中学卒業以来、久しぶりに着た男子学生服を纏ったみずきが喜んでいた。傍目には男装の美少女にしか見えなかったが。

 (うわぁ…窮屈…男の子って窮屈な服で過ごしているのねぇ)
 普段パンツルックすらない七瀬らしい感想だ。

 (いいなぁ…七瀬ちゃん)
 実は七瀬は上条から学生服を借りていたのだ。それを羨ましがっている綾那である。
 別な点ではサイズの問題。並外れて小柄な綾那である。男子の制服では一番小さいものでも、手の甲が隠れる長さである。
 ところがそれが可愛いと評判だから、何が好転するかわからない。ただ微妙に男達の呼吸が「はぁはぁ」と荒い気が…

 ミスマッチにもならないのが姫子である。この華奢な体躯に男物は無理があった。ましてや借りているのが背の高い十郎太のもの。
 姫子自身は分け隔てをする性格ではないが、やはりどうせ借りるならよく知る十郎太のものの方がいい。
 十郎太も刺客の細工を考慮して自分のを差し出した。

 勇ましい応援団長が真理である。背の高さとパワーが決めてであった。頼まれて悪い気はせずに引き受け右に左に旗を振る。
その旗を受け取りに無限塾女子制服のジャンバースカート姿の人物が。金髪のロングヘア。異様に白いメーク。白いハイソックス。
 「プッくく…」
 真理が噴き出してしまう。思わず旗を落としかけ
 「おっとと」
 慌てて支えなおすが、顔を見ると笑ってしまう。彼女がここまで笑顔を見せるのは珍しい。
 「笑うな。村上」
 「は…早く受け取れよ。お…おかしい…力が入らない…くくくくく」
 笑われたそのジャンスカの人物は不機嫌に言うと、旗を受け取りトラックを走りだす。旗を渡した途端に真理は腹を抱えて、けたたましく笑い出す。
 ジャンスカの人物は赤くなりつつ一周する。最後に審査員席の前で一例…したらカツラが取れた。
 「わ…わわッ」
 なんと! 上条が女装させられていたのだ。唖然とする一同。だが間をおいて大歓声。はやし立てられる。
 (赤星が女姿を嫌がる気持ちがわかる気がする…)
 さすがの彼も羞恥に耐えていた。
 きっかけは女子のガクラン応援団があるなら、男子の女子制服もというジョークじみた話である。言い出した関係で上条がやる羽目になってしまった。
 制服は七瀬のもの。袖のないジャンバースカート。股下はスカートなら関係ない。ウエストさえどうにかなればだがなってしまった…
 (男の子がはけるスカートの制服をきている私って…)
 いくら調節可能でもちょっと落ち込む七瀬。彼女は太めと気にしていたからだが。悩み多き十代である。
 上条に話を戻すと、演劇部からカツラを借り、そして御丁寧に女子に遊ばれ…じゃなくメイクされた。
 ちなみに一番のって化粧を施していたのはみずきである。
 (ちったぁオレの気持ちがわかったか)と。上条に恨みはないが溜飲を下げていた。
 カツラが取れたのはアクシデントだが、女装とばれたら逆に受けて満点だった。貢献しただけに救われた上条である。そして
 (上条くん…可愛いかも…ボクいけない娘になっちゃいそう)
 (くぅ…なってないわ。あたしだったらもっとおにいちゃんを可愛く飾るのに…)
 電波な考えが浮かんでいる約二名。
 女子が男子応援団になって見せるのはさほどでもないが、女装での一周が受けてしまいあとの3組。4組がかすんでしまったと付け加えておこう。

 競技再開。借り物競争。選抜チームに姫子もいた。
 全校見渡しても、彼女ほど人当たりのいい女子はいない。だから足の遅さを差し引いても、多少無理な借り物も何とかなるだろうという理由だった。
 だが彼女を嫌うものもいる。そう。橘千鶴。
 現在のところは『恋敵』のみずきに当たっているが、もともと彼女の家は北条家とライバル関係にあった。だからか姫子を敵視していた。
 また行き過ぎたほどほんわかした性格の姫子と、きつい千鶴は合わないというのもあった。
 そんな彼女が何もしないはずもない。実行委員を買収して、姫子のレースだけ細工をさせた。
 同じ二組だから自軍の選手の妨害だが、姫子憎しの思いがそれを上回った。
 ぱぁん。スターターが鳴り響く。
 「いっきまぁす」
 1組代表の久子だったが闘志が空回り。足も空回りで見事に転倒。いきなりビハインドをつけられた。
 トップでカードを取ったのは4組代表だった。四枚の札のうち一枚を無作為に引く。開いた中に書かれた文字は
 『レオタード』だった。
 「うそぉ? どこにレオタードなんて持ち歩いている人がいるのよぉ?」
 当たり前だが姫子に用意した「変な課題」を先に引かれては困る。まして姫子はそんなに快足ではない。
 ならば四枚すべて妨害札にしてしまえ。そういうことであった。姫子に対する嫌がらせの巻き添えを食らっている形だ。
 「さっちゃん。あたし部室においてあるよ」
 「お願い。かして」
 部室長屋に走っていく4組代表を尻目に、3組代表が到達。札をあけて一瞥するなり校舎内へと走り出した。
 札には『フライパン』とあったから家庭科室に駆け込んだようだ。
 そして姫子。彼女は札を開けるなり観客席にやってきた。
 (メガネか?)
 彼女の愛らしさに心惹かれたメガネの男が一斉に自分のめがねを取る。
 (ネクタイか?)
 首元を緩める男達。協力する気マンマンだったが
 「どなたか『石多美久写真集』というものを、お持ちではありませんか?」
 ……固まる一同。どこの世界に美少女の写真集を持参して、体育祭の見物に来る人物がいるというのだ? 学校の図書室にはさすがに無いだろう。
 (くっくく。いい物を用意していたようね。困ってる困ってる。いい気味だわ)
 ほくそえむ千鶴だったが姫子に救世主が現れてしまった。
 「少女ウォッチングに来てこのような場面に出くわすとは…お嬢さん。大事にしていただけるならお貸ししましょう」
 一人の青年が差し出した。めがねでスーツ姿。直毛が印象的だ。
 「ありがとうございます。先を急ぎますので後ほどお礼に」
 姫子は駆け出していく。入れ替わるように千鶴が捻挫の痛みを忘れて走ってくる。青年に猛抗議をする。
 「ちょっと。どうしてそのようなものを持ち歩いているんですの? おかげで…」
 「ふっ。愚問。愛するものの姿をいつも見ていたいのは当然ではないか。あるものはロケットに。あるものはラミネート加工。
我輩の場合は写真集そのものを持ち歩いているに過ぎん。ファンたるもの。こうでなくてはいけない」
 (そうなのか…?)
 周辺一同が心中で突っ込む。
 「そういえば我輩の友人に、前世はまんぼうだったという声優のファンサイトに入っておきながら
『黒い超ロングヘアの声優』だの『ロリータ服が普段着の声優』にうつつを抜かしている『裏切り者』というか半端でナンパな奴がいるが…」
 千鶴は茫然自失して聞いていなかった。最後のランナー。久子が借り物を見て叫ぶ。
 「変身ベルトぉ〜〜〜?」
 もちろん妨害の一環だったが
 「麻神。これをもって行け」
 正義クラブ顧問である藤宮博が中央に風車のあるベルトを差し出していた。
 「…先生…」
 「俺の正義の印だ。大事に扱え」
 「はい。先生」
 これが効いて逆転一位。最後は姫子の足の無さが祟ったというより、藤宮の所有物に久子が助けられていた。
 さすがは師弟というところか。
 (よかった・・・姫子があれを引いていたら一位になるところだったわ)
 とりあえずトップだけは阻止してほっとした千鶴である。

 続いては男子騎馬戦。ところが上条達の馬に乗るメンバーが当日、発熱で休んでいた。そこで白羽の矢が立ったのがみずきだった。
 本人のかなり強い希望が通ったわけだが、相手陣営は血走っていた。
 (女を乗せるなんて)と。
 (なんて羨ましい)(密着じゃないか)(太ももの感触が・・・)(狙いが狂った振りして胸を・・・)という理由だが。
 馬の先頭は十郎太。後方右は榊原。左は上条だった。
 開始するなり敵の騎馬が大挙してやってきた。帽子を取るドサクサで胸元狙いだ。
 ところがこのみずきの騎馬は速い。先頭の十郎太に二人が必死についていっていたので速い。
 ターゲットを失った騎馬軍勢は互いを新たに目標とした。大乱戦。
 「キバだけに疾走体」
 得意のボケが出る上条だが新たな軍勢にはさまれた。逃げ道なし
 「赤星!!」
 「何?」
 「飛べ!!」
 「わ…わわッ?」
 三人がかりで宙に舞わされた。
 「オープンゲット」
 上条の掛け声で騎馬の三人がばらばらに。再び「合体」したときは榊原を先頭にしていた。
 「おおおおおおっっっっ」
 三人の中で馬力は一番の榊原である。力ずくで敵を蹴散らしていく。何も帽子を取らなくても騎馬が崩れれば失格だし。
 再び囲まれまたみずきが飛ばされ合体した。
 「チェェェェェェェンジ ゲッタァァァァァァ ワァァァァァン」
 今度は上条が先頭だ。そして
 「ゲッタァァァァァァア ビィィィィィムゥゥゥゥ」
 龍気炎を放った時点でレッドカードを出された。さすがにこれは反則を取られた。失格。
 「このバカ」
 榊原とみずきの両方から殴られる上条であった。
 全体でも3組が巧みに攻めて五分終了して一番残っていた。

 障害物競走。女子代表に名を連ねる綾那。これはもう独壇場だった。
 最初はハードル。陸上部だった彼女は何の苦も無く飛び越える。次のはしごくぐりも、並外れて小柄な体躯がものをいいすんなりと。
 平均台などはぴょんぴょんと飛んでいく。さらには網をくぐるのも他の女子と違い、胸元が薄いため楽たった。
 これで止められないのだから、障害が無くなったら話にならない。独走で一位だった。
 だが他が上手く行かず得点は伸びず。

 大車輪の活躍の八人だがもちろん綾那が一番の貢献者だ。
 本人がその運動神経のよさで、ポイントゲッターだったのは言うまでも無いが、特殊能力マリオネット「マドンナ」によっての体力回復で仲間を助けていた。
 その能力を知らないクラスメートには、競技前なら「がんばってね」。
 後なら「お疲れ様」と手を取りさりげなく接触して、マドンナで体力の補給をしていた。
 もっとも男子生徒の場合は、美少女に手を触れられて精神面でも元気になったのもあるようだが。
 逆に言えば、そういうフォローもなしに戦うほかのクラスは凄まじいともいえる。
 またいくら身体能力が高くとも、振り分けの都合もありそんなに多くに出れるはずもない。
 事実これでも無理に出番を増やしているところもある。

 続く競技はパン食い競争。これは真理が背の高さで選ばれていた。
 一斉にスタート。脚の長さが脚力をカバー。そして吊るされているパンのところに。ここで動きが止まる。
 トラックごとにパンが用意されていたが、これはアンパンで統一されていた。
 みずきにおける辛いもの同様に、彼女は甘いものが大の苦手。しかし食べないと話にならない。
 背の高さゆえ簡単に口に出来たが、一口食べてしかめっ面になる。ちなみにそんなに甘いものではないが、それすらだめらしい。
 (なんでみんなアンパンなんだよ…カレーパンなら平気なのに…)
 苦虫を噛み潰した表情で食べているが、姫子の食事より遅いかもしれない。そうこうしているうちに後続ランナーが追いつく。
 すこしパンを食べるのに届かず苦労したが、パンそのものを食べるのには苦は無くあっさりとゴールへ。
 あんこに手間取ったのがたたり、ここで最下位にされて得点なしの憂き目に。

 ちなみに七瀬も走ったが、彼女も背があるほうなので楽にパンを銜える。
 そして甘いものはむしろ好きなので簡単に食べてしまい、これが脚力をカバーすることになり一位。
 「初めて走りで一番にゴールできた」と泣き出す始末。
 走れば必ず最下位という彼女の今までを考えれば無理は無いかもしれないが。

 体育祭も後半戦へと差し掛かる。まだどのクラスにも優勝の目があった。

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