第24話「熱血!! 体育祭」Part4   Part3へ戻る

 ここでクラス対抗はちょっとお休みしてクラブ対抗に。
 四百メートルクラブ対抗リレーであった。それぞれのクラブの格好で走るのだ。
 さらにはリレーするのはバトンでなくて、クラブの特性にあったものだった。
 第一陣は球技系クラブだった。野球部。サッカー部。バスケ部。ラグビー部。
 しかもサッカー部とバスケ部はドリブルでの走りを要求されていた。
 もとより余興のような競技である。だからルールも平等ではない。
 当然のように一番身軽な野球部が飛び出す。だがバランスは取られていた。
 「三浦」
 バトンタッチのエリアに入ると、サッカー部の第一走者は前へとボールを蹴りだす。
 バスケ部もボールを保持して前方へとパス。ここはそれが認められていた。
 そして通常のリレーなら次のランナーも走りながらのバトンタッチだが、野球部は止まった状態でのリレーというルールだった。
 これはタッチアップにちなんだものだ。しかも先行ランナーは必ずスライディングをすることになっている。いくら身軽でもこれでは抜かれる。
 ラグビー部も試合と同じで、リレーの際には地面にボールを置くことになっていた。
 一進一退だったがアンカーが、試合でも『一番センター』の快足ランナーだった野球部が逃げ切った。

 続いてが男子文化部系。白衣を着た科学部。バトンは液体の入った試験管だが、着色してあるだけで危険の無い液体だ。ただしこぼしたら失格。
 ここは榊原がアンカーだった。彼もどちらかというと鈍足だが、他が輪をかけてひどかった。まだ不良生徒と戦って見せた彼の方が期待を持てた。
 詰襟姿の図書部。バトンは百科事典に見立てた電話帳だった。
 囲碁・将棋連合チーム。バトンこそ普通だが和服を着用していた。
 一番奇異なのが漫画研究会。映画研究会連合チーム。四人のランナーすべてがコスプレ。
 それも第一走者は私服なものの、第二走者が怪獣から防衛するチームの隊員服。
 第三走者が戦隊のスーツ姿。アンカー。上条にいたってはライダーの姿だ。バトンは無いが特別ルール。
 ぱぁん。火薬の匂いを撒き散らしスターターが鳴り響く。
 コスプレチームはまず第一走者が「そぉぉぉぉちゃく」と叫んでポーズをとる。左の拳を右手の手のひらにぶつけていた。
 そう。コスプレチームは全員が変身ヒーローということもあり、バトンの代わりに変身ポーズないし決めポーズを取るルールだった。
 第二走者はスティックを高々と掲げ上げ「コスモ―ス」と叫び走り出す。
 第三走者は『大気爆裂』と名乗りを上げて走り出す。
 ラストの上条はすでに『変身後』だったため左腕のアイテムから、メモリーカードを抜き取りベルトに挿入してから走り出す。
 ゴール前でジャンプ。
 「いやああああああああっ」
 ジャンピングキックでゴールイン。リレー自体は最下位だったが客受けは最高だった。特に小学生男児に受けていた。
 ある意味では、完全勝利だった。

 観客席。下を向いている輝。それをおちょくってやろうとてぐすね引いている朝弥。まっすぐ前を見て動じていないあかり。
 「綾那の王子様って…ユニークな子なのね〜〜〜」
 のほほんとした口調で感想を述べる沙羅。
 「まったく。お恥ずかしい限りで。アレはやろうと思ったことは、人迷惑でなければすぐ実行に移しますから」
 母親はクールな性格のようだ。
 「いえいえ、いいんですのよ〜〜〜周りに合わせて自分の意見をなくしてしまう子だと不安ですけど〜〜〜〜自分と言うものをしっかり持ってますから。
安心して綾那をお任せできますわ〜〜〜〜」
 「げっ」となる朝弥。輝。
 「過大評価ですよ」
といいつつも満更でもないあかり。やはり母親と言うことか。

 「まったく。お前って奴は良くやるよ」
 先に三位でゴールインしていた榊原が、呆れたように感心したように言って来る。
 「はは。今日はこれで走り収めだしね。やりたいことはやっときたかったんだ」
 「ラスト…ランか…」
 二人が参加するのはこれで最後だ。プログラムの都合上、クラブ対抗に参加した面々は次の組み体操から外されていた。
 「ま…疲れ果てるまで体を動かすのも、気分はいい」
 二人は着替えのために校舎へと移動する。

 男子組体操。女子のダンスを経て三年生の百メートル走。
 ここで一組の大逆襲。男女四十人のうち17人が一位。10人が二位だった。
 反対に二組は最下位続出。
 「まずい。ひっくり返されたんじゃ…」
 心配そうにみずきが言う。
 「ううん。まだ大丈夫。でもあんなに得点差があったのに…」
 一年生たちの活躍で大独走だったが、後半の追い上げで一組が急接近。その差、僅か20点。
 事実上、1組VS2組の対決となってきた。

 そしていよいよ最終競技。四百メートルリレーだった。
 一年男子。女子。二年男子。女子。三年男子。女子と走っていく。
 百メートルずつ四人のランナーがつないで行く。
 一着5点。二着3点。三着2点。最下位零点は変わらない。

 ここまでの得点経過では全二組が20点差でリードしていた。3組。4組は全部で一位をとっても優勝はない得点。
 綾那の大車輪の活躍はあれど、前年まで2年連続最下位の上級生たちである。いかに一年が戦力になっていたかを物語っていた。
 追撃の全一組も一年が戦力になっていた。だがこちらは2年連続優勝の上級生たち。
 それでも二つのレースで二組が一位を取れば、そのレースで一組が二位で計六点。残りをすべて一位でも20点獲得。合わせて26点。
 しかし二組は10点取れば残りが零点でも4点差で逃げ切りが決まる。
 それだけに最初の一年男子。女子のリレーの比重は重かった。

 最初の一年男子は新庄。野村。立浪。アンカーが十郎太だった。
 上条もこのメンツだとさすがに入る余地がない。また彼も出番が多くてさすがに疲労していた。
 「大丈夫か。風間。君も相当に疲れているはずだが?」
 心配する上条。条件は十郎太も同様と思えるがそこは戦闘集団の一員。おくびにも出さない。
 「ふっ。この程度でくたばるようではいくさ場では真っ先に果てるでござるよ」
 「十郎太様」
 祈るように手を組んで姫子が歩み寄る。
 「姫」
 臣下の礼をとる。
 「御武運を。わたくしには祈るしか出来ませんが」
 「そんなことはござらん。その一言が百万の援軍より力を与えてくれるでござる」
 背を向けスタートラインに歩こうとする。だが
 「十郎太様」
 再び呼び止められて立ち止まり振りかえる。
 「どうかわたくしとともに走ってください」
 「えっ?」
 姫子は長い髪を留めていた白いリボンを十郎太に手渡した。
 「…わかり申した。ともにまいりましょう」
 十郎太は白い布を鉢巻として額に巻いた。

 スターティングラインに立つ。いよいよこれがラストの勝負。
 火薬がはじけ全員一斉にスタートする。
 新庄も決して遅くないのだが、どうも十郎太参加を予測したほかのクラスが、アンカーの前に速いランナーをこぞって投入したのか、劣勢を強いられていた。
 結果的に5メートル遅れで最下位。バトンタッチ。
 野村も懸命に走るが間を詰めただけ。しかしほぼ三位と同じ。

 「立浪。死ぬ気で走りやがれぇぇぇぇぇ」
 二年の応援席では入来が声をからして叫んでいた。千鶴ももう姫子が関係しないこともあり、純粋に2組の応援をしていた。
 坂本は2年のリレー出走に備えて控えていたがレースを見ていた。
 立浪は何とか一人抜いて十郎太にバトンタッチ。
 「いざ、参る」
 疾風が吹く。

 (十郎太様!!)
 文字通り天にも祈る気持ちの姫子だった。
 普段のいざこざのときは信用して動じないが、この雰囲気がそうさせたのかもしれない。
 「おおっ。さすが風間。もう二位に出たぞ」
 上条の言葉にグラウンドに向けるとすでにトップを奪える位置に来ていた。
 これは風よりも炎に例えるべきかもしれない。
 「やった!! 抜いたぞ」
 クールな榊原が興奮気味に叫ぶのもこの雰囲気に巻き込まれたか?
 興奮状態の一年男子の声援を受け十郎太は真っ先にゴールに飛び込んだ。
 「やったーーーーーーーっっっっっ」
 飛び出す一年男子たち。
 「やった。やったな。風間」
 「たいした奴だよ。お前は」
 もみくちゃにされていた。だがいつの間にか抜け出していた。そして姫子の前に。
 「ありがとうございます。この鉢巻はまさに神風を吹かせてくれ申した」
 「はい…」
 姫子は涙を流しながら微笑んでいた。言葉にならない。

 そして間髪いれずに一年女子。メンバーは豊嶋満智子。みずき。長野藍。そして綾那だった。
 スタート同時にスレンダーな体形の満智子が飛び出した。陸上部ともなれば面子もあり懸命にもなる。
 トップで走りバトンタッチ。ところがみずきがそれを落とした。
 「わっ」
 慌てたのが悪かった。落とした挙句に足で蹴飛ばしてしまった。
 「わわわっ」
 それを拾っているうちに、あっという間に最下位転落。

 「……」
 父兄の観戦席。
 「お姉ちゃんてば…」
 ドジだドジだと思っていたがここでやるとは…うつむく薫。忍もだ。
 「馬鹿が」
 辛らつな秀樹は迷惑をかけたことをなじる。
 「みずきちゃーん、諦めちゃだめよ」
 高い声で思わず叫ぶ瑞枝である。

 「あ゛……」
 あまりのことに声を失う二組応援団席。反対に湧き上がる1組。
 「あのバカ。この期に及んでやりやがった」
 応援席の榊原も思わず辛らつな声を出す。
 「正直、先輩たちは期待できないらしいからこれを取らないと」
 古田も続く。
 「それは失礼としてもここで決めちゃえば楽だがな」
 「いや。綾那殿が最後なら、手はないこともござらん」
 「えっ? 何か出来ることがあるのか?」
 十郎太に詰め寄る上条。その顔を指差して言う。
 「人の心と言うものは案外、力を発揮するものでござる。先ほどの走りで良くわかった」と。

 最下位にされたものの、なんとか一人は抜き返してバトンタッチしたみずき。その場でへたり込む。
 (ちっきしょー…ほんとに胸って邪魔だな…冗談抜きに若葉が早いのはそのせいか?)
 そして最終ランナーを見る。
 (オレはここまでしか出来なかった。頼む。長野。若葉。挽回してくれ)

 長野藍もがんばったが同着三位と言う形でしかバトンを渡せなかった。

 「あーあ。こりゃだめだな。坂本。お前らで決めてやれ」
 二年の応援席で入来ががなる。坂本はさわやかに返答する。
 「大丈夫さ。彼女たちなら。もっとも、例え彼女たちで優勝を決めても、僕らは僕らで全力を尽くすけどね」

 一年男子から十郎太と榊原に引っ張られて上条が。どこへ?

 (うわぁ。さすがにきついかなぁ。でもボクは諦めないもん)
 肉体の力では二位に躍り出るのが精一杯だった。
 それだけでも驚異的な追い上げだったが、トップのランナーが残り十メートルの時点で、綾那が二十メートルと十メートルのビハインドがあった。
 (だめだぁ…みんな。ゴメンね・・・え?)
 ゴールを見るとそこには上条が両腕を広げて待っていた。そのポーズは
 「さあ。若葉。僕の胸に飛び込んでおいで」と綾那の脳内で変換された。
 「はうっ。上条くぅ〜〜〜ん」
 心の力が加わって脅威。いや、奇跡の加速を見せて最後2メートルで抜いた。さらに加速した。そのまま上条の胸に飛び込んだ。
 ロケットが飛び込んできたようなものだ。支えきれず押し倒される格好になる。
 待っていたのは上条の意思ではない。
 姫子の思いが実力以上の力を出せた十郎太が、その体験から綾那の心の力を引き出すために、一番いい手段を取ったのだ。
 「優勝だーっっっっ」
 大騒ぎだったのは前年最下位を味あわされた2年。3年の方だった。

 うつむく朝弥。揶揄しようかと思ったがむしろ嫉妬してむくれている輝。
 「いいお嬢さんですね。とてもまっすぐで」
 微笑を見せるあかり。
 「それだけが取り柄ですから〜〜〜でも親の私が言うのもなんですけど〜〜〜〜人を思う気持ちはたくさんある娘ですから〜〜〜〜」
 「幸せですよ。ウチの息子は。あんなに愛されて。しかし女心に鈍感だから気がつくのに相当時間がかかる。綾那さんを傷つけないといいのですが」
 「大丈夫ですよ〜〜〜その程度でへこたれる娘じゃないですから〜〜〜〜」
 なんだか結納での両家の顔合わせと言うイメージである。

 すべてのプログラムが終了して、整列をしていた。
 「それでは、結果を発表します」
 一応アナウンスされる。
 「優勝は……二組です」
 「やったぁぁぁぁぁっっっ」
 狂喜乱舞する一同。経過でわかっていたものの、こうして宣言されると改めて実感が涌く。
 「よーし。みんな。MVPの胴上げだ」
 「え? え? え?」
 真理の号令で一同が輪になり綾那を囲む。
 そして夕日に染まるグラウンドに、その小柄な体躯が二回。三回と宙を舞った。

次回予告

 みずき。薫。忍の母にしてビッグワン。赤星秀樹の妻。赤星瑞枝。その聖母のような微笑は逢う人の心を癒す。そんな彼女のとある一日。
 次回PanicPanic第25話「のんきにのんびりのほほん」(前編)
 クールでないとやっていけない。ホットでないとやってられない。

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