第26話「花嫁は姫子!?」Part4   Part3へ戻る。

 遡ること出発前。別のところでの男たちのやり取り。
「…連れてこい。およそ俺の理想とはかけ離れた行為だ」
「はっ」
 跪く三人の男たち。
「よし。すぐに」
 行けと言いかけた時に一人が待ったをかける。
「あー。ちょっと待って下さい。上条の奴もいるんですよね。準備をさせちゃくれませんか?」
 モヒカン刈りの男の陳情に大男は渋い顔だが「急げ」とだけ言い許可した。

 そして現在。キングの山荘。
 東の防衛ラインを抜けた風間兄弟だが、目の前に大砲バッファローが待ち構えていた。
 敵は当然ながら遠距離でこそ真価を発揮するタイプ。それだけに近寄せまいとめちゃくちゃに撃ってくる。
 兄弟はあえてまっすぐに走る。わざと狙わせ砲台の向きから大体の狙いを悟り回避行動を取る。
「おのれ! ちょこまかと」
 同時に同じ方向によけるときもあれば、フェイントでばらばらになるときもある。
 そうして無駄弾を撃っているうちに『弾切れ』を起こした。気を練る力を使い果たしたのだ。そのチャンスを逃さず
「「えいやぁっ」」
 兄弟揃って胸板目掛けてジャンプしてのキックを見舞う。
 皮肉にも武器であるその大砲の重みでロクに動けず、大砲バッファロー自身が絶好の的になる。
「ぐぎゃあっ」
 頭を打って気絶する。バッファローを模したヘルメットをしていたので脳震盪程度であろう。
「こやつに指図していたものはとっとと離れたようだな」
「ならば長居は無用。一刻も早く姫の下へ」
 風となる九郎と十郎太。

 プリンスは腹を立てていた。敵を食い止められないのもさることながら、勝手放題ほざく客員の言うとおりになるからである。
 ここで腹いせと言うか嫌がらせに出た。
「東を進むニンジャを潰せ。サムライまでたどり着かせるな」
 「楽しみ」を奪おうと考えた。風間兄弟に集中した。それゆえ他のブロックが僅かずつだが兵が減った。

 南。互いにカバーしながら突き進む瑞樹と七瀬。さすがに幼なじみだし、半分は同性と言うこともあって、互いの考えが良くわかり呼吸があっていた。
 ところがこれが裏目に出た。七瀬目掛けて投げられた投げ縄。
「七瀬!!」
 それを庇った瑞樹の胴に巻きつく。そのままバイクがそれを引っ張って行く。
 マシンのパワーには抗えず引きずられる瑞樹。
「瑞樹ぃぃぃぃぃっ」「七瀬ぇぇぇぇぇっ」
 互いの手が届く寸前で引き離された。
 追いかけようとした七瀬だが、戦闘員に囲まれてもみくちゃにされる。
 同行していた風魔も大勢を相手に健闘したが、助けにまわる余力はない。

 北側。林ではなく開けた場所を、馬力に物を言わせて突き進む榊原と真理のコンビ。とりあえず戦闘員は退散したので一息つける。
「絶好調だな。カズ」
「ああ。このまま北条のところまで…」
 最後までいえなかった。巨大な岩が飛んできたのだ。たまらず別方向に飛ぶ二人。今度は小さいものの二人を同時に狙って岩が。
 あっという間に引き離された。真理は林に。榊原は野に。

 西側。黒い戦闘員たちが縦に並んで上条に襲い掛かる。
 最前の男を踏んで二番目が。そうかと思えばその後ろから本命が。
 そのシチュエーションは上条のやる気に火をつけただけである。
 彼は最前の男を踏んで飛び上がる。
「お…俺を踏み台にしたァ!?」
 そのまま飛龍撃を繰り出し、三番目の男を吹っ飛ばす。二番目の男は綾那のフラッシュショットで狙い打たれていた。
 その下敷きになり無様に伸びる最前の男。当面の敵を片付けた。
「よし。このまま突っ込もう」
「うん。姫ちゃんを助けに…うわっ」
 こちらは爆撃だった。かすかに聞こえたジェットの音に注意したのでまともには食らわなかったが、林に逃げ込んだ際に二人は引き離された。

 激化する戦場。プリンスの腹いせで戦力が集中する風間兄弟。
「十郎太。ここは俺がひきつける。お前はさっさと姫を助け出してこい」
「兄者!?」
 さすがの十郎太も兄を見捨てる形になるこの指示は聞けたものではなかった。
 しかし忍にとって命令が絶対。ましてや主君を奪還する作戦なのだ。
「兄者。御無事で」
「行け!」
 風となった十郎太を誰にも止められなかった。

 司令室。監視カメラが七つの映像を映し出す。
「ああ…十郎太様。皆さん…」
 祈るような姫子の呻き。
「ふふ。ヒメコ。やつらは分断したぞ。これからは余興だ。ラッキーセブンが一人ずつでも強いところを楽しむといい」

 バイクで引きずられていた瑞樹だが、持ち前の健脚で体勢の立て直しに成功した。そして林の中を突っ切るのを利用した作戦を取った。
「たあっ」
 飛び上がって木の枝に自分がくくりつけられたロープを巻きつけた。ぴんと張られてくくりつけられたバイクが倒れる。
「うわっ!?」
 これではたまらない。戦闘員はバイクから投げ出された。受身をとっていたので頭へのダメージは避けたが腕と足を折ったようだ。
 そしてロープが枝にまきついて瑞樹本人には衝撃は届かなかった。
「ふう」
 巻きついていたロープを放す。したたかに締め付けられたがダメージはそれだけ。林の中ゆえ草の上を滑って行った為に引きずられたほうの損傷はなかった。
 ぱちぱちと拍手が送られる。
「?」
 怪訝に思い地面に降りて見渡すと、樹に隠れていた口ひげの人物が現れた。小柄で色白であるが堂々とした態度だ。オールバックの髪の上にベレー帽。
「お見事。一介の学生と侮っていた無礼をわびよう」
 高い声を押し殺したように喋る。
「気にすんなよ。侘びと言うならこの先にいる、友達の女の子を返してくれればよいからさ」
「それはできない。私の任務は君たちの排除。だが戦う前に言いたいことがある。急ぐだろうが聞いていただこう」
 妙に紳士的な言い草に興味を抱いた瑞樹は聞くことにした。
「まずは名乗らせていただこう。私のコードネームはG。ジェントルマンなどといわれもするが、個人的にはグラップラー(格闘家)のGと思っている。
 本名はグレッグ・ゴードン。身長5フィート4インチ。体重110ポンド。右利き。それから私は非力ゆえに武器を使わせていただく。種類は見ての通りだ。どれか使うかね?」
 棒。ヌンチャク。トンファー。木刀。サイ。サーベル。チェーンなどが2組ずつ几帳面に置かれている。
 どうやらここで『公平な勝負』を挑んでいるらしい。
 瑞樹は首を横に振る。
「いいや。使い慣れてないものを手にしても、もてあますだけだから」
「そうか…使いたくなったら使ってもよいぞ。私はトンファーから使わせていただく。
 さて。良ければ君のことを知りたい。理由はそれにより君を分析して、私の勝利を確実とするためだ。もちろん黙秘も認めよう。
 おっと。走りづめでのどが渇いたかね? 私が信用できるならこれを飲むといい。未開封のミネラルウォーターだ」
 さすがにそれは断った。しかし訊ねることにはした。
「一つ聞いていいか? どうして手の内を明かす? 目を見ているとなんとなくウソとは思えないしな」
「理由か? もちろん作戦だ。正々堂々と戦うことにより『怒り』のパワーを封じる。怒りは力以上のものを与える。私はよく知っている。それさえなければ、過酷な訓練に耐えた私が負ける道理はない」
「…なるほど。じゃこちらも。名前は赤星瑞樹。身長・164センチ…今はな。体重48キロ。右利き。得意な攻撃は蹴り技だ」
 「今は」と表現したのはもちろん変身後は縮むため。それは説明する気にならなかったが。
「結構。自己紹介畏れ入る。さて。私は君を排除せねばならないが、君も痛い目には遭いたくあるまい。このまま帰ってくれないか? 断っておくが私以外はこんなに甘くはない。別のルートを探そうなんて思わないことだ」
「御忠告どうも。だがオレも友達がつかまっているんた。それを助け出して帰りたい。ここを通して欲しい」
「残念だがそれは出来ない。あくまでも突破する気なら、私を倒せ」
 妙に高い声でGはトンファーを構える。瑞樹は舌打ちする。
 確かにやりにくい相手だった。まだ邪道を突き進む相手の方が躊躇わない。

 一方の七瀬の前に日本の巫女装束の少女が現れた。黒髪だが青い瞳と白い肌が日本人とは思えない。
「お帰りください。あなたのような素人が来ていい場所ではありません」
 甘い声は戦士とは思えない。小柄な少女。
「そうは行かないわ。姫ちゃんを連れ戻すために来たんだから」
 じっと見ていたSだが
「なるほど。発汗状態や肌の状態から察するに、多少のおびえはあるものの、救出にかける意気込みは本当のようですね」
 図星だった。嘘発見器の効力を見せられて動揺する容疑者のような真理になる七瀬。
「……どうしてそんなことまで……」
「不思議に思いませんでしたか? あなた方の行動が筒抜けなのが」
「まさか…あなたが」
 驚愕の七瀬に対して顔色一つ変えないS。左手に刀を携えて戦闘態勢を作りつつ名乗る。
「私の名はサラ・シルバーマン。コードネームはS。サーチ。シャーマン。スラッシュの頭文字。
 そう。スラッシュ。通り抜けようとするなら斬り捨てるまで。
 そしてサーチ。集中すれば私にはあなたの筋肉の動きも見えるし、心臓の鼓動も聞こえる。それから行動を予測できる」
 青い瞳の巫女は居合い切りの体制を作る。まずは七瀬は話し合いからアプローチする。
「私の名前は及川七瀬。姫ちゃんを助けに来たの。お願い。彼女を帰して」
「助けたくば私を倒しなさい」
 戦うしかないことを悟る七瀬は、暗澹たる気分になる。

 林の中。真理は一人彷徨う。
「どこに行ったかな? カズの奴。くそっ。今にして思えば下っ端が逃げたのは岩を投げるからか。見事に引き離された」
 辺りを見回すが誰もいない。とりあえず呼びかけてみる。
「カズ。どこだ?」
「ま゛」
 返答したのは不自然な声。激しい衝突音がしたかと思えば、一本の樹が倒れてくる。
「なんだぁ?」
 とっさに後方に飛びつつガンズン・ローゼスで高く跳ぶ。
 樹が完全に倒れると見えたのは甲冑の「R」の姿。
「テメーが姫を拉致ったやつらの仲間か。締め上げて姫の居場所をはかせてやる」
 ロープ状のガンズン・ローゼスでブランコのように振られ、その反動で勢いをつけたキックを見舞う。

 そして榊原は「D」と対峙していた。開けた場所だった。
「俺の名は榊原和彦。あんたは?」
 どこか東洋系の男は問われて表情一つ変えずに「D」とだけ答える。
「さしあたって…ドラゴンの『D』かな?」
 風貌から連想したものをそのまま言う。Dは軽く頷く。
「それもある。だが…論より証拠。まずは挨拶代わりだ」
 言うなり『D』は凄まじいスピードで榊原の横を潜り抜ける。すれ違う刹那に手刀でしたたかにダメージを。
(こ…この技は若葉の『ランスラッシュ』…なんで?)
 完全に予想外の技をまともに食らう。
「驚くにはまだ早い」
 きりかえして反対側から攻め込んでくる。
「ほあちゃ。あたぁ。おあちゃあっ」
 奇声とともに疾風怒濤の腹部への三連弾。
(こ…これも風間の『疾風拳』…何故だ)
 動きの止まった榊原に無数の蹴りが。瑞樹のスタークラッシュだ。吹っ飛ぶ榊原。
「驚いたか? おれは一度でも見ればその技を形だけでもマスターできる。『データ』『ドクター』の『D』だ。本名はドモン・ダルトンだがな。
 貴様たちの技は、雑兵相手の戦いで全て見た。一度でも見れば真似るのも容易い。そしてそれは」
「な…なるほど。弱点も知れると言うわけか」
 よろよろと榊原は立ち上がる。
(参ったな…ウソと思えない再現度。だとしたらオレの「ブツダンガエシ」も見せちまったぞ…)
 厄介な相手に舌を巻く榊原であった。

 西。林の中を行く綾那。心細げな表情だ。
「上条くーん。もう。どこぉ? あーん。神様。あわせてよう」
「神様はともかく、天使ならここよ」
 声のほうを見ると白尽くめの金髪の少女が。小柄で華奢。美人だが肉付きが悪い。
「あなた…だぁれ?」
 素直に尋ねる綾那。尋ねられた『A』は得意げに胸をそらして
「だから天使よ。アリス・エンジェル。それがあたしの名前。まぁ『エアー』とか『アロー』の頭文字からも『A』とか呼ばれちゃってるけどぉ」
 きょとんとする綾那。物憂げな態度や、天使の衣装に引いた…と言うより別のポイントのようだ。
「ねえねえアリス君。どうしてスカートなの?」
 ワンピースだったのでスカートといえばスカートだ。
「どうしてって…それよりどうしてアリス『君』なのよ?」
「えっ!? 男の子じゃないの?」
 挑発ではなく本心からそう思って口に出す綾那。
「なんであたしが男なのよっ」
 挑発の効果は充分だったが。
「だって…胸ぺったんこだよ
 ブチッ。ラッキーセブンでも禁句だったのに、根が素直な綾那は何も考えずに言ってしまった。
「よ…よくも…アンタみたいのには言われたくないわよっ」
 涙まで浮かべている。いや。浮いたのは涙だけではない。本人が浮き上がった。翼までついた背中のジェットが彼女を押し上げた。
「ほえー…お空飛んでる」
「アンタのこと。天国じゃなくて地獄に連れてってあげるわ」
 よりによって綾那につるぺた呼ばわりされれば、女のプライドはずたずただろう。

 林の中を進む上条の前には、軍人らしき男が立ちはだかった。
 猫背で痩せている。四十がらみの男。オールバックにベレー帽。手にはロッドを持っている。
「ようこそ。我輩がここの防衛担当の『C』だ。本名はチャールズ・キャメロンだがな。
 さて。侵入者よ。よければ名乗っていただきたい。墓標に名前を刻むときに困るのでね」
 劇のようなシチュエーションに乗せられた上条は名乗りをあげる。
「僕の名は上条明…」
 名乗っている最中に襲われた。あたかも一対一かと思わせておいて伏兵がいたのだ。
 間一髪、ブロッキングして伏兵に強烈な一撃を与えて気絶させた。
「名乗り中に襲わせるとは…卑怯な奴め…」
 罵られたのだがCは満足げに笑う。
「『卑怯』…ン〜〜〜」
「お前の次のセリフは。『卑怯。ありがとう。最高の褒め言葉だよ』だっ!」
 びしっと指差す。そのままつい語ってしまうC。
「ありがとう。最高の褒め言葉だよ…はっ!?」
 まさに注文どおりだった。仕組んだ上条が驚いていた。
「なんてお約束な奴だ。この分じゃ、左胸に硬いものを入れていたおかげで、心臓直撃弾から助かったこともあるんじゃないか?」
「ぎくっ」
 顔色を変えるC。さすがに呆れる上条。
「……あるんかい…ブラフ(はったり)だったのに」
 若干顔を赤らめるC。ごまかすように大声で続ける。
「ふん。卑怯大いに結構。戦場では生き残ったものこそ勝利者だ。
 我輩のコードネーム「C」は『コマンドー』や『チーフ』の意味もあるが『カワード(卑怯者)』の意味もある」
「自分で言うかな…」
「格闘とはなんだ? 如何に効率よく敵を倒すかの手段だ。だから勝てれば何でもよいのだっ。例えばこのようになっ」
 Cがコントローラーのスイッチを入れると、上条の右手の地面が爆発した。

 そして…十郎太。
「おぬしは?!」
 あまりに予想外の人物が敵として現れて、さすがに鉄仮面に動揺が走る。
「待ちくたびれたぜ。ニンジャ野郎」
 秋本が木刀を担いで待ち構えていた。
「秋本。何ゆえおぬしがここにいる?」
「決まってんじゃねぇか」
 けだるい口調で言いながら、鞘から抜くように木刀の切っ先を向ける。
「てめーと真剣勝負をしたいからさ」
「今はおぬしの酔狂に付き合っては…」
 「おれん」と続けようとしてさえぎられた。
「この先にお前のお姫さんがいる。だが、通るにゃ俺を倒すしかねぇ。どうする? 尻尾巻いて帰るか」
「なんと!?」
 小刻みに震える十郎太の肩。怒りか、それとも…やがてそれが治まる。だが憤怒の表情が。
「…秋本…よもや…おぬしがこれほどの痴れ者とはおもわなんだ…よかろう。望みどおり相手をしてくれよう!!
 冷静な十郎太が、姫子奪還を妨害されてついに切れた。ますます持って望みの展開に秋本は口が緩むのを隠せなかった。
「ああ。殺す気で来な」

 七つのバトルの幕が開く。




次回予告




 瑞樹対Gの信念をかけた戦い。真理vsRのパワーファイト。上条対Cの意外な展開。七瀬とSの女の戦い。
榊原vsDの頭脳戦。綾那対Aの高速戦闘。そして十郎太と秋本の真剣勝負。この戦いに勝ち姫子を連れて行くのはどちらの陣営か?
 次回PanicPanic第27話「姫子救出作戦」
 クールでないとやっていけない。ホットでないとやってられない。

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