第28話「Final Fight」

 奇襲により散り散りになっていた面々だが、目的地間際で再会を果たす。
 南から攻めていたみずきと七瀬。
 「みずき。無事たったのね」
 心配していたみずきが無事でほっとする七瀬。それはみずきも同じだった。
 「七瀬…よかった」
 「…でも、どうして女の子になっているの?」
 みずきの怪我を治しながら、怪訝な表情の七瀬。
 それももっとも。出発したときは確かに男だったのに、散り散りになって再会したら女になっていた。
 「まぁ…それはいいとして…!? お前その右腕…血まみれじゃないか!?」
 「うん…ちょっと無茶しちゃった」
 「信号が変わりそうだから走った」くらいの軽さで言う七瀬。
 しかしそのピンクのブラウスの右腕は鮮血の赤で染められていた。
 当然である。刀を止めるために腕を盾とした挙句、真っ二つに斬られたのだ。
 本体。七瀬は無論のこと、マリオネット。ダンシングクイーンにも居合いの刀を取ってしまうようなスピードもテクニックもなかった。
 それゆえに方法はこれのみだったのだ。
 その修復能力ゆえの戦法だったが、さすがに血を流しすぎた。頬が白い。
 「大丈夫か?」
 こんな局面だからか。さすがに優しい言葉の出るみずき。
 「うん。ありがと」
 素直に礼を言う七瀬。いつになくいい雰囲気ではあるがここは戦場。浸らしてなどもらえない。
 「いたぞー」
 「気をつけろ。ラッキーセブンに勝った奴らだ」
 「一斉にかかれ」
 雑兵が大挙してやってくる。
 「くそ。若葉がいれば…」
 顔色の悪い七瀬を気遣うみずき。
 「みずき!! 戦いましょう」
 「七瀬…」
 気を遣わせまいと気丈に振舞う。本当は倒れそうなのだが…
 「もたもたしていたら姫ちゃんが連れて行かれてしまうわ。それに綾那ちゃんも目的地はいっしょ。合流できるはずよ」
 逡巡の暇はない。切り込み隊長を蹴り倒したみずきはそのまま七瀬の手を取る。
 「ようし七瀬。一気に突っ切るぞ」
 「ウン!!」
 二人の蹴りが雑兵どもを蹴散らして行く。

 西側では綾那が上条を揺り動かしていた。
 「上条くん。上条くん。大丈夫?」
 聞きなれた少女の声。上条は目を覚ました。
 怒りで暴走モードになったものの一時的な回復。Cを倒した後で再び昏倒していた。
 それを綾那が探し出した。
 もちろん姫子救出が最優先だが、上条も捨てて置けないし、単身よりはるかに突破しやすい。
 そして何より上条が心配だった。
 「…若葉・・・僕は一体?」
 半身を起こす。
 「気絶してたんだよ。よかった。気がついて」
 その小柄な体躯でぎゅっとしがみつく。
 「そうか…若葉が僕の体力を戻してくれたか。ありがとう。それにしても何があったんだろう?
 気絶していて、助けられたのは憶えているんだけど…なんだか物凄くゆっくり時間が流れていたから勝てたような気が…夢?」」
 上条は横たわる兵たちを見る。うめき声がするので生きてはいるが、戦える状態ではない。
 「わかんない。なんだかマリオネットの気配がしたからきたの。でも知らないような知ってるような気配だった」
 「…まさか…僕にもスタンドが? 時間を止める? いや。超加速とか」」
 突飛なようだが正鵠を射ている。敵にマリオネットマスターがいたなら、無事ではすむまい。
 「そうなのかな?」
 それにそうでもないと七人もの敵。しかも一人は幹部。それを撃破するのは難しいだろう。
 「その話は後だな。あるかないかの能力より…それにしてもまさか冬野さんに助けられるとはな」
 「ええっ? あの人に」
 綾那が驚くのは当然の関係だった。
 「何か別の目的でここに来ていたらしい。あれ…でもよく憶えていないな…」
 怒りに我を忘れたついでに、何があったかも忘れていた。
 「ところで上条くん? 元気になった」
 体力そのものは綾那が補充した。だが怪我は治せない。
 「うん。痛いところはあるが体力は戻ったな。ありがとう。若葉」
 「えへへ〜」
 「さぁ。榊原達も苦戦しているかもしれない。行こう」
 「うん。七瀬ちゃんにあったら怪我治して貰おう」
 二人は走り出した。

 「するとアンタは秋本を連れ戻す目的でここへ?」
 既に真理と合流を果たした榊原は、意外な助っ人と情報交換をしていた。
 「ありそうな話だよな。確かにこれなら十の奴も本気で戦うしかないしな」
 軽く走りながら会話していた。
 激闘の後で体力も失い負傷もあるゆえであるが、夏木の鈍足もある。
 「アイツのことじゃ。きっと戦いの激しいほうへと行くはず。つき合わせてもらうぞ」
 「ああ。四季体の一人が味方なら心強い」
 既に真理が夏木の心を読んでウソがないのはわかっていた。裏切られる心配がないなら強力な助っ人だ。
 もともと憎悪で戦う間柄ではない。いわば敵チーム同士の関係だ。
 今は共通の障害をクリアすべく手を組んでいた。
 そしてその『障害』が現れた。有象無象がわらわらと出てきた。
 「来たぞ」
 「し…しかしあのRとDを倒した奴らに…」 
 「俺たち雑兵が勝てるものかぁぁぁ」
 「しかもなにやら得体の知れない助っ人までいるし」
 敵勢は既に士気は下がっていた。そんな相手はもはや相手にもならない。
 「なんだありゃ? やる気あるのか?」
 「俺や村上が出会った相手は幹部のようだったしな。いわば残りか」
 「情けない。ワシが悪漢じこみの喧嘩の仕方を見せてくれるわ。まずは相手の気勢をそぐ」
 言うと夏木は愛用のチェーンを外すと大声で叫ぶ。
 「どけどけどけぇーい。悪漢高校四季隊。夏木様に潰されたくなければ道をあけろ」
 「うわぁぁぁぁっっ。危ない」
 チェーンを振り回す相手に逃げ出す始末。
 勝負にすらならない。

 十郎太は敵勢に囲まれていた。
 「むぅ。こやつら。どこから沸いてくるのだ? 姫はすぐそこと言うのに…」
 十郎太の実力なら問題のない相手ではあるが、何しろ数が半端じゃない。時間ばかりが過ぎて行く。だが
 「大牙」
 秋本がまとめて2〜3人を斬った。とは言えど木刀。気絶させたに過ぎないが戦闘不能には追い込んだ。
 「秋本。お主まだ…」
 「おっと。勘違いすんなよ。負けはしたが納得した。とりあえずすぐにお前とやりあうつもりはないぜ。
だが、俺にも遊ばせろよ。その間にテメーはさっさとお姫さん連れ戻してこい」
 「秋本…」
 「へっ。よせよ。代わりにいつかまた戦ってもらうぞ」
 「道場での手合わせならばいつでも応じよう」
 「そう言うと思ったぜ」
 苦笑する秋本。
 なんども命のやり取りをしたからか。いつの間にか互いを理解していた。
 「恩にきる」
 秋本の開いた血路を突破する十郎太。乱戦の中。入れ替わるように春日が。
 「お前も…随分とお人よしになったな」
 「サルか。違いない。アイツに感化されたかな? ところで何しにきやがった? 連れて帰るんなら腕ずくだぜ」
 「するさ。だが・・・多少は『寄り道』してもかまうまい」
 春日も参戦した。
 敵軍を秋本が引っ掻き回し、抜け出た一人二人は春日が叩くという戦法で、十郎太の追撃は出来なかった。

 司令室。プリンスは呆然としていた。ぐらりとよろめき、壁に手をつく。
 「馬鹿な・・・いかにチームでなく一人一人といえど素手の学生に遅れを取るはずが…」

 「プリンス。お気を確かに」
 傍らのMが体を支える。
 「私が命に代えてもプリンスをお守りいたします」
 隻眼の壮年は日本人ではないが、その忠臣ぶりは「侍」のようだった。
 姫子はこの男に危険性を感じていた。
 (この人は…相手を侮りませんわ。油断のない相手。そして実力も…ああ。十郎太様。そして皆さん。どうか御無事で)

 「十」
 「榊原」
 「上条くん」
 「赤星」
 「七瀬ちゃん」
 「若葉」
 「村上」
 分散していた七人が合流した。
 「無事か?」
 「あんまり無事ともいえないが…何とか」
 「七瀬ちゃん。顔色悪いよ…腕どうしたのぉ? 血まみれじゃない?!」
 「…綾那ちゃん。とりあえず体力を戻してもらえる?」
 要求に従い七瀬の体力を戻す綾那。
 その後で今度は一同の怪我を治す七瀬。
 「ふう。何とかここまで来たか」
 「いよいよ城攻めでござるな」
 「ここに姫ちゃんが」
 一同が顔を見合わせる。そのときだ。
 「なんだ? まだこんなところにいたのか」
 「秋本!?」
 「とろい奴らだな」
 「春日さんまで」
 身構える上条と綾那。
 「あー心配ない心配ない。大方 夏木のだんなといっしょだろ?」
 「あったのか?」
 春日が尋ねる。
 「そろそろ来るんじゃない」
 言ってるそばから…
 「おおーい。先に行くとはひどいぞ」
巨体をゆすりながら夏木が現れた。さらに
 「おおっ。ここにいたか。秋本。さて。お前を連れ帰れば任務完了だ。行くぜ」
 どうやら様子を見ていたからか。先に行ったはずの冬野が後から来た。
 「なんだ。テメーも来てたのか。四季隊が勢ぞろいじゃねーか」
 まるで帰る気のない調子の秋本。
 「ちょうどいい。お前らも付き合え。雑魚は任せるからよ」
 「確かに雑魚ぞろい。遊べたのはあの軍人ヤロウくらいのもんか」
 まるでファーストフードショップでの会話のように軽く話す四季隊。
 (ねぇ? 信用していいのかな?)
 七瀬がダンシングクィーンを通じて真理に語りかける。
 (この場合はな。どうも姫を捕らえている奴ら相手に喧嘩したいみたいだし。味方してもらおう)
 さらに…
 「十郎太!」
 「兄者。御無事で」
 風魔忍軍も追いついた。
 「ああ。さすがにあの数は手こずったが、どうにかしてきた」
 人海戦術の前に少数精鋭の忍者たちもさすがに時間がかかった。
 なにしろ隙を突いて突破しようにも、どこにでも人がいるのだ。
 ちなみに十郎太をはじめとした面々が抜けられたのは『無視された』のである。
 たかが素人学生。ましてやラッキーセブンが守っている…と。
 結果的にその驕りがこうして攻め込まれることになったのだが。

 秋本から得た情報を元に作戦を立てた。
 九郎たち忍者は外から姫子のいる部屋を目指す。
 むろん外敵に備えているのは間違いない。
 だからもうひとチーム。十郎太達が屋敷の内部に突入する。
 ともに陽動であり、本体である。
 四季隊にしてみればプリンスの隊にけんかを売りたい秋本を追いながら戦う形になる。
 だから自動的に内部に。
 そして外をすばやく登るのはさすがに忍者の方が一枚上手。
 それゆえにこの構成となった。

 「行くぜ」
 すっかり乗り気の秋本が号令をかけて切り込む。
 改めて真理が心を読み、目的がプリンスたちにけんかを売ること以外にないと知ったので、彼らの体力を戻し、負傷も癒した。
 だから万全の状態だ。
 「裏切り者め」
 「ここは通さん」
 「邪魔だよ」
 無造作に秋本は木刀を中断に構えて
 「虎乱爪」
 無数の突きが門番たちを蹴散らす。
 「裏切っただと? お望みどおり風間の足止めは果たしたぜ。俺としても奴と戦えて満足した。だからもう終わったんだ。ここからは別の話だ」
 「いや…それが裏切りと…」
 「やかましい。寝ていろ」
 突っ込む門番を踏みつけて気絶させる。

 外壁。僅かな道具でてきぱきと登って行く風魔たち。
 いくら屋敷といえどトラップを考慮しているので、さすがにハイペースでは行くことが出来ない。
 そして敵が窓から飛び出してきた。
 銃器類は持ち込めなかったので持ってないが、槍やさすまた。棒などで迎え撃つ。
 むしろこの状況。風魔の得意な戦闘になる。
 充分に敵を消耗させていた。

 外の風魔がひきつけていたために内部は多少手薄であった。
 ここに来てまだ「素人学生」と侮っていたのもあるが、プロである忍者の方が無視できなかったのも事実。
 こちらもまた飛び道具は使わずに襲い掛かってくるが四季隊の敵ではない。

 ここにおいては四季隊は頼りになる味方であった。
 それと言うのも戦いの性質である。
 十郎太達は基本的に守りの戦い。しかし四季隊は他校との抗争でほとんどが攻めの戦い。
 この場合、向いていたのだ。
 あるいはその性質が今回の戦いに駆り立てたのかもしれない。

 切込みが十郎太と秋本。
 時たま春日がけん制を。
 綾那。みずき。上条。真理。冬野。榊原。七瀬。しんがりが夏木だった。

 いよいよ近くなってきた。それと言うのも、襲ってくる相手も服装から判断するに、格が上と思われる戦闘員だ。
 「首領の近くまで来たな」
 上条のこの言葉がいつもだとなんなのだが、この場合はまさに「いつもの乗り」で平常心を呼び起こした。
 そしてついに扉にたどり着く。だがナンバー式の扉だ。開けるには暗証番号がいるが
 「やってみる」
 真理がガンズンローゼスをコネクトする。
 姫子が人間のテレポーテーションを可能にしたように。
 上条がマリオネット「アクセル」を覚醒させたように、真理のガンズンローゼスも電気の流れに関われるように進化した。
 そして見事にナンバーを解読して扉を開いた。

 扉を開けるなり冬野が毒霧を吹き込む。虚をつこうとしていた兵たちは目を押さえて悶絶する。
 「かーっかっかっか。卑怯でオレ様の上を行くなんざ不可能なんだよ」
 (自慢にゃならんと思うが)
 それでも御満悦なのを止める理由もないので、真理は放っておいた。
 追撃がないのを確かめてから一同は飛び込む。
 「十郎太様」
 「姫!」
 やっと再会できた。ガラス窓の向こうに囚われの姫はウェディングドレスを着せられ、化粧を涙で濡らしていた。
 「ようこそ。諸君」
 金髪。碧眼の好男子。それが芝居がかって言う。
 「秋本。あやつが」
 「ああ。プリンスだ」
 敵のボスとあいまみえる。
 「姫は返してもらうでござる」
 「いやだね。プリンセスは僕と結婚するのさ。だから本国に連れて帰る」
 まるで駄々っ子である。精神年齢の低さを思わせる。その反面、愚直なほどに好意を寄せているのもわからなくはない。
だからといって嫌がる姫子を連れて行かせるわけには行かない。
 「話し合いが通用せぬなら、腕ずくとなるが?」
 本気の瞳の十郎太。その前に隻眼の大男が立ちはだかる。
 スーツ姿。オールバックで髪を後ろで束ねた壮年。
 目を潰した大きな傷以外にも小さな傷が無数についていた。
 「おぬしは…あの時の?」
 パーティーの時のやり取りを思い出す。
 「そうだ。君がプリンセスを命がけで奪い返したいのと同様に、私も命がけでプリンスを守りたい」
 「天晴れな忠臣ぶり。だがお主一人で守りきれるか? あの狼男も現れぬようだが」
 「ふふふふっ。狼男は君たちの目の前にいる」
 「なにっ?」
 お約束で驚く上条。
 「やはり…」
 十郎太はわかっていた。声が一致したのだ。
 「ラッキーセブン。その長。M。「マイスター」「マリオネット」「ムーン」そして「モンスター」のMをコードネームとする私。
マイケル・ミドラー将軍が最後の砦だ」
 顔に異形の影が浮かぶ。そしてそれがあっという間に体を包み、狼男へと彼を変身させた。
 「みんな。こやつは拙者がひきつけるゆえ、姫を頼むでござる」

 十郎太vs狼男の戦いが始まった。

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