第29話 変人集団の文化祭 Part4   Part3へ戻る

 七瀬の協力を取り付けたので大慌てで衣装を着せる。幸いにしてたいした違いではなかった。
 「なで肩でちょっと肩が下がるかしら。でも肩パットでむしろ男っぽく出来るわね。それと胸。結構大きいのね。いいわ。さらしで潰しましょ」
 捻挫のため立てないが椅子に座って支持をする根古田。さらりと怖いことを言う。

 別室。上半身裸の七瀬の胸にさらしが巻かれている。
「痛い痛い痛い痛いーっっっっ」
 あのおとなしい七瀬がじたばたしている。
「舞台の間だけガマンしてね」
 そうは言ってもきついのである。圧迫されるから呼吸が苦しい。
 男装用のアイテムと言うものも存在するらしいが、さすがに一介の高校演劇部にそんなものがあるはずもなく、さらしでふくらみを押さえていた。
「どうかしら?」
「…苦しいです…呼吸できないです…」
 涙目で訴える。
「うーん。セリフがいえないんじゃ困るわね。もうちょっと緩めようかしら?」
「お願いします…」
 実のところカップサイズだとみずきがDで七瀬はCだが、それは七瀬の方がアンダーもあるため。
 トップバストだけだと七瀬の方が88になりみずきより4センチも大きかった。
 それだけに締め付けは胸を強烈に圧迫する。
(さり気なく部長の怪我を治しちゃおうかしら?)
 ふと七瀬はそんなことを考える。
 もちろん出来ない相談だ。激痛の走った直後だ。けろっと治ったら不審に思わないはずもない。

 モンタギュー家の跡取り息子。その設定だけに華美な衣装。七瀬はそれ自体は嫌ではなかった。
 ただどうにもパンツルックは苦手でそちらの方が手こずっていた。
 これは極端なほどの安産体形が原因だった。お尻が大きすぎてパンツルックは窮屈だった。だからほとんど持っていない。
 それに女と生まれたからにはやはり可愛いスカートが…

 着替えが終わる。髪の毛もまとめて、その上からカツラを乗せられる。
「衣装はばっちりね。問題はメイクだけど…及川さんの顔じゃ優しすぎて男に見えないわ。白人なわけだけど仕方ないわ。浅黒いファンデーションで男装メイクするわよ。それから眉も太くしてね」
「えええええっ?」
 たじろいだのは当の七瀬だ。そんなことまでするの?
「あの…私、肌があまり強くなくて…メイクは…」
 事実だった。年頃の女の子にもかかわらずメイク用具は一切持ってないくらい。
 まぁ母親も「まだ早い」とストップをかけていたが、自分で肌の弱さは判っていたのでその気もなかった。
 その代わり乳液とか肌の手入れのためのものは豊富にそろえてあった。
 面白いもので、それで手入れが行き届いているからにきびが出てくる気配がまったくなかった。閑話休題。
 とにかく問答無用で男装メイクされていた。
 これには「さっきのお返し」とばかりにみずきも参加したが、メイクのスキルがあるはずもないので見ているだけだった。

「おおーっ」
 並べられた二人を見てその場の女子から感嘆の声が。
 二人とも舞台用のメイクで派手にされているが、七瀬は「かっこよく」、みずきは「美しく」なっていた。
 互いに顔を見合わせる。互いに羨望の眼差し。
(どうせ代役ならジュリエットがよかったな…綺麗なドレスでヒロイン…)
(くっそー。七瀬がやるくらいならオレがロミオの方が…)
 互いに相手の役を羨ましがっていた。
「及川さん。足元には気をつけてね」
 もともと根古田がやるつもりだった役だけに、女性がやる前提で背を高く見せる靴を用意していた。
 そのため今の七瀬はカツラも手伝い身長170を超えて見える。
 もっともみずきもかかとの高い靴。そしてボリュームのあるカツラで160を超えていたか。

「こちらも準備はよいでござるよ」
 サポート役は十郎太。黒子と聞かされたら一発で理解できた。今の姿は文字通りの黒子。
 シェイクスピアに黒子もないが、忍者よりはまし。そういう判断だった。
「七瀬殿。拙者が影からセリフを教えるでござるよ。安心して舞台に立つがよかろう」
「照明は僕たちが引き受けよう」
 榊原以下科学部が名乗りをあげた。
「照明だけじゃないな。舞台の演出なども尽力しましょう。幸い特撮アトラクションの火薬の残りが…」
「やめて。火事になっちゃう」
「大丈夫ですよ。そんなへまはしませんから」
「それなら僕はナレーションで参加しましょうか? そうすればナレーターだったはずの部員さんも舞台に立てるし」
 原稿を読むだけといえど簡単なものではない。だが、ただでさえ女子の比率が高すぎる。男の要素もほしい。
「お願いできる?」
「だーいじょーぶ。まーかせて」
(なぜかしら…とてつもなく不安に・・・)
 中指を突き立てる上条に不安を覚えたのは、根古田だけではなくみずきと七瀬もだった。

「まさかこんな形で役に立つとはね」
 七瀬が苦笑して言う。
 負けず嫌いのみずき。女として全校生徒に認知されるのも嫌ではあったが、引き受けた以上はやれるだけのことはしたかった。
(その割には土壇場で怖気づいて逃げ出したが)
 帰宅してからは七瀬に相手役を頼みセリフ読みの稽古を続けていた。
(ちなみに女役だけに男の声でやるのは抵抗があり、女のままやっていた。練習期間中は男に戻るのは11時過ぎからだった)
 だから七瀬もある程度は舞台の様子がわかり、そして見学していたのを根古田は見ていた。
 それで代役を任せたのだ。
 もちろんその程度でつとまるはずもないが、全ての候補の中で一番希望の持てる存在でもあった。
しっかり頼むぜ。ロミオ様」
「判っているさ。こうなったらとことんやってやる。君もがんばれよ。ジュリエット」
 いきなり七瀬はみずきの腰を抱き寄せ、ぐいと自分に引き寄せる。そしてくいとみずきの顎を持ち上げる。

ロミオ七瀬×ジュリエットみずき

このイラストはOMCによって作成されました。
クリエイターの猫宮にゃおんさんに感謝!

「き…キャーッッッッ」
 ビックリするほど甲高いみずきの悲鳴。慌てたのが七瀬だ。
「あ。ごめん。ジョークのつもりだったのに」
 土壇場になると女の方が度胸が据わる。すっかり覚悟を決めた七瀬はその意思表示でふざけて男っぽくしてみた。
 ところがみずきにしてみれば不意打ちの上に、自分が女で七瀬が男と混乱してしまった。
 そして顎を持ち上げられ「キスの体勢」になると思わず悲鳴を。それも女そのものの悲鳴を上げてしまった。
(な…なんてこった…女で登校して、女として認知されているうちに内面まで女になってきたのか?
「キャーッッッ」だなんて。それにしても七瀬。メイクのせいで美少年に…だからどうして美少年にオレがときめくんだよ)
 どきどきする胸を押さえて本当に女の子らしい「ときめき」をポーズで現していた。
(びっくりしたぁ、みずきったらまんま女の子だわ。なりきっちゃったのかしら。それともあれは本能的なものかも。うーん。アイツが「キャーッ」なんて悲鳴上げたらそりゃショックよね。悪いことしちゃったわ)
 七瀬にしてみれば「女の子同士」のじゃれあい。おふざけのつもりだった。
 ただそれは相手も純然たる女の子。それを承知している相手なら成立する。
 ましてそんな経験のないみずきである。その上に女の体のメカニズムが作用して、ことさら過剰に反応してしまう。
「うん。本当に及川さんが男で、赤星さんがその彼女に見えるわ。その調子で舞台もがんばってね。出来る限りのサポートはするから」
 ぜんぜんフォローになってない。七瀬はともあれみずきは落ち込む。しかしそれにかまってもいられない。
 とにかく。後はやるだけなのだ。

 講堂。午前中は軽音楽部がライブをしたこの場所で、今度は演劇部の「ロミオとジュリエット」だった。
 触れ込みは「大胆なアレンジを施した新感覚舞台」だった。
 たしかに派手にアレンジするしか手はなかった。

 客席は結構埋まっている。そこに根古田自身の声でアナウンスが入る。
『皆様にお知らせいたします。ロミオ役を予定していた根古田千代子ですが、事情のため一年の及川七瀬さんに交代します。あらかじめ御了承ください』
 うぬぼれではなく多少は自分が人気のある存在と知っていた。
 だからその自分を見に来た人のために誠意としてアナウンスしたのだ。
 だが、予想外の反応が。
「えーっ。根古田先輩でないの?」
「でも…代役の及川って子。噂じゃジュリエット役の赤星って子と『出来てる』って」
「うそ? 禁断の愛?」
「それにこの劇…確かキスシーンが…」
 奇妙な盛り上がりをしてきた。
 実のところこの噂は四月からあったのだ。
 いつもいっしょなのは女の子同士でもあるが、戦いで互いを守って見せたあたりが決定打だった。
 つまり『VS春日』の時にはもう噂が立ってしまっていた。
 もっとも『火のないところに煙は立たない』
 実際に互いに相手を思いやっているし、仲も良い。
 そして本当は男の子と女の子。自然にそれが態度に出ていたのか、いつの間にか男役のみずき。女役の七瀬が定評になっていた。
 知らぬは当事者たちとその友人たち六人。
 本当は少年と少女と知っているから、姿こそ女同士でもレズではなくノーマルなカップルに見えていたのだ。
 だが客席は変な盛り上がりをし始めた。

 そしていよいよ舞台の幕が開く。モンタギュー家とキャピュレット家の確執を描くのだが、時間など制限がいろいろありナレーションで飛ばす。そしてそのナレーター…上条が『飛ばした』
「宇宙世紀0079…」
 ゴスッ
 物凄い音がした。硬いものがマイクに当たったような音が…そう。監視していた真理が今の一言の瞬間に、上条の頭を問答無用で殴り飛ばしたのだ。
 ざわめく客席を鎮めるが如く本来のナレーションが入る。
「あたたた…こほんっ!
 ここ、ヴェロナの広場では互いに憎しみ合うモンタギュー家とキャピュレット家の争いが繰り広げられていた」

 剣を抜いて派手にやりあう。だがどうしても迫力に欠ける。
 メンバー構成が女子だけなのだ。数少ない男子部員は音声に回ったり大道具だったり。
 役者としては両家の当主役で二人いるだけ。身長のバランスもある。
 さらにはこれは無限塾ならではの事情だが、いつも乱闘を目の当たりにしている。
 「本物」になれてりゃどうしても「芝居」は迫力に乏しい。それを冷静に分析していた榊原。
「やはり思ったとおりの反応だな。じゃ一発」
 Docaaaaaaaan
 舞台袖の榊原がスイッチを捻ると中央で爆発が。音と煙は凄まじいが、威力はまったくない。舞台演出のためだけのものだ。
「おおーっ」
 だがそれでも観客の心を掴むには充分だった。拍手すら沸き起こる。

 「ロミオとジュリエット」といわれたら、たいていの人が思い描くであろう有名な場面。
 本来なら第二幕第二場になるこの場面。
 キャピュレット家の庭園。セットのバルコニー。それを見上げる形でロミオ(七瀬)が立つ。
 七瀬を知る観客は見事な男装に驚いていた。そこにいるのは母性的な優しげな少女ではなく、立派な青年だった。
 背が高くなっているがもともと七瀬は164センチあり低いほうではない。
 それよりも浅黒い肌と、遠くからでも判る太い眉が印象を大きく変えていた。

 そしてバルコニーにジュリエットが現れるとなおざわめきが。
 普段のみずきはなにしろ「じゃじゃ馬」である。(本来は男の子なんだから割とそれ相応だが)
 それがメイクも手伝い大人びた「美女」に見える。
 もちろん舞台と言うことでカツラをつけている。
 ちなみにみずきはごまかしているが、本来の彼女の髪の毛もはさみが入らず、実は解けば襟足が背中に達するほどになっていた。
 暑い時期は切ってくれた母・瑞枝だが秋になったら切らなくなった。女の子らしく長くしたいのは間違いない。
 バルコニーからロミオを見据え、その美青年ぶりに嘆息。
(生まれ着いての女の七瀬がああまで見事に男になるなら…今は舞台に集中。オレは女…じゃなくてあたしは女。ジュリエット)
 自分が女と暗示をかけてジュリエットへと変貌する。
 普段はきゃんきゃんと響くアニメ声だが、この場はしっとりとセリフを「歌う」

「ああ。ロミオ様。ロミオ様。あなたは何故にロミオ様でいらっしゃるの」

 いつものみずきを知る観客は、しおらしさに仰天する。もちろん七瀬もだ。
(セリフあわせをしていたときも結構しっかりしていたけど本番でこれほどとは…私も…ううん。僕もきちんとしないと)
「ジュリエット姫。あなたが望むならモンタギューの名をこの場で捨ててしまいましょう」

 真摯な眼差し。芝居でだが…目の前の「女性」を本気で愛していた。
 そしてバルコニーの姫君も庭園の若者を「女として」愛していた。
 子供のころから兄妹。姉弟のように一緒だった二人。それは肉親に対する愛情に近いのか。それともやはり…
 今の時点では女の子同士。かなう話ではないが。

 芝居は進みロミオが僧ロレンスに相談を持ちかける場面。街からの追放を伝えられる。
「追放と言うのはこのヴェロナの街からだけなのだ」
「いいえ。ヴェロナの外に世界はありません。どこも全て…」
 「ありません」までは低い男の声。「どこも」から地の女の子の声が(ちなみに女の子としては低くて落ち着いている)出てしまう。
 セリフを噛んだ? それ以前だ。何しろ一時間前に決まった代役。
 セリフ合わせの相手役は勤めていたから、ジュリエットがらみの場面はいいが、それ以外はどうしても怪しくなる。だが
(七瀬殿。セリフは「全て苦界。煉獄。地獄なのです」でござる)
「(ありがとう。風間君。助かったわ)どこも全て苦界。煉獄。地獄なのです」
 暗記の及ばなかった七瀬のフォローには十郎太も関わっていた。
 文字通り黒子となり陰からセリフを教える。
 さすがに忍び。気配を消してあたかも空気のように存在感を消していたため、観客にはわからなかった。
 他にはホワイトボードに次々とセリフを書いて、舞台袖で掲げるとか。
(七瀬の視力は両方ともよいので読み取れる)
 全員でバックアップしていた。

 そしてクライマックス。
 ジュリエットは仮死状態に陥る薬を用いて駆け落ちを画策する。
 だがその事実を知らぬロミオは、ジュリエットが死んだものと絶望して後を追って毒を呑む。
 そして仮死から目覚めたジュリエットの見る「夫」の死体…
 舞台の上はロミオとジュリエット。七瀬とみずき二人だけ。そして問題の場面だった。
 ロミオの後を追おうとするジュリエット。だがロミオは毒を飲み干していた。
 結果としては探検を胸に突き刺して死に至るジュリエットだが、その前に同じ毒で死ぬことを考える。

「何かしら。これは? 杯? ああ。ロミオ様。毒でお亡くなりに。でもあんまりですわ。全てを飲み干し、私には一滴も残しておいてくださらないとは」

 そしてジュリエット…みずきは横たわる青年・ロミオ…七瀬の唇を見る。
 自分の唇には「女の記号」として赤い口紅が彩られているが、七瀬の唇には何もない。
 つやを出さないためにリップクリームすらない。色気はない。それでも…七瀬の唇なのだ。
 どきりとする。猛烈に意識してしまう。
 意を決して続くセリフを。

「あなたに口付けを。唇には毒が残っているかもしれないわ。きっと死んでお供が出来るわ。まだ暖かいこの唇」

 台本どおりに唇をなでる。ビクッと体を硬直させる七瀬。
 そう。キスシーンが盛り込まれていたのだ。
 セリフ合わせのときは軽く嫉妬を感じていたこの場面。まさか自分が舞台の上で口づけを待つ羽目になろうとは…
 ましてや衆人環視のこの状況。そうでなくても緊張するのに余計固くさせていた。

 もちろん。舞台の話である。だからキスも見せ掛け。一センチ手前で「寸止め」である。さらにはあえて後頭部で隠す。
 観客のほうも「やるはずない」とは理解している。だがぼかされることで「あえて騙されに」行くのだ。

 舞台のジュリエットみずきは目が回っていた。
(ああ。なんで七瀬なんだよ。部長だったら「芝居」と割り切れたのに…それにしても色っぽい…ロミオ様…ちょ…無意識でそこまで役にハマっている?
 でも…芝居といえど今は女の感覚で…あたし男なのに…なんで「あたし」なんだよ? なんだか恋する乙を演じたいたせいか内面まで女になってないかしら?)
 みずきはぐるぐる目が回る。

 目を閉じていただけに目が回ると言うことはないものの、余計に不安を掻き立てられているのがロミオの七瀬。
(ねぇ。何しているの? これが最後の場面よ。キスのふりだけしたら終わりでしょ)
 しっかりと女の言葉で考える。みずきは普段から男と女を往復しているので、混乱には同情できなくはないが。
 待ち構え、ややいらいらし始めたころ。背中に手が回された。
 口元は見せないものの、観客に見やすいように持ち上げる段取りになっていた。
 びくっと体を固くする七瀬。
(お芝居よ。お芝居。ふりだけ。ふり)

 やっと決意を固めた…と言うよりはむしろ「やけくそ」に近い。
 今は女のせいか、至近距離に七瀬の顔が近づいたら目を閉じてしまったみずき。
 打ち合わせどおりに観客には背中を向ける。

 そしてキス…してしまった。

「あ゛」
 舞台袖で固まる一同。事情を知らない面々には女の子同士のキス。事故と取れたが知っている面々には男と女で…

 この局面でドジが出たのだ。一センチ手前まで顔を手繰り寄せるつもりが、力加減を間違えてほんの一秒。
 だがしっかりと二人の唇は重なってしまった。

 観客は芝居と思っている。だが二人は衆人環視の中でキスしてしまったのだ。

 大きく目を見開き顔を真っ赤にする七瀬。既に泣き出しそうな表情だ。
 死んだ芝居で横たわるみずきだが、本気で青くなっていた。
 慌てて幕が下りる。
 最終場面へと変わるのだ。

 アクシデント続きだったが、大好評で舞台は終わった。
 そしてそのまま文化祭のMVPも受賞した演劇部だった。
 しかし舞台裏…楽屋では

「バカバカバカバカ。みずきのバカ。信じられない。あんな場所でなんてことするのよっ」
 目に涙を浮かべてみずきを叩きまくる七瀬。
「ご…ごめん。許して」
 防戦一方のみずき。
 突然、唇を奪われた。しかも正体が男といえど肉体も、そして姿かたちも扮装も100%女の子に。
 七瀬の怒りはもっともとだと女性陣は納得していた。
 みずき自身も自分のミスを良くわかっていた。

 文化祭が終わり演劇部の打ち上げに参加。そして帰宅。そのころには七瀬の怒りも治まっていた。
「もういいわよ。事故でしょ。カウントに入らないわよ」
「七瀬ちゃん。心が広いね」
「みずきのドジにいちいち怒ってられないわ」
 さばさばした表情の七瀬。驚きから来る動揺だったが、冷静になったら許せた。
「あれぇ。七瀬。カウントってもしかして…ファーストキスとか?」
「なっ!?」
 真理の突っ込みに言葉が詰まる七瀬。実はそうなのだが認めるのもなんだが、かといって経験ありと言ううそもつけない。結局…
「ち…違うわよ。そんなの。そんなことない」
 わけが判らなくなっていた。
「ファースト・キス…か…」
 自分の唇をなでてつぶやくみずき。
 二人とも当然ながら制服姿に戻っているし、メイクも落として素顔になっている。
 だがクレンジングで口紅を落としたので、唇の保護でリップクリームを塗られていた。
 光る唇が艶っぽく、その仕草もありいつも以上に「女の子」に見せていた。
「ねっ。七瀬。腕組んでいい?」
 後ろ手で笑顔で接近するみずき。
「え…別にいいけど」
「やったぁ」
 みずきの方から嬉々として七瀬の腕を取りに行く。唖然としている一同。
「…アイツ…女でしたキスのせいで、頭の中身まで女になってんじゃないの?」
 真理の言葉に頷くのみだった。

 確かにこのみずきは、女の子にしか見えなかった。姿だけでなく心からの。

次回予告

 坂本。ついに行動開始。七瀬への告白を決行。それを目撃して衝撃を受けたみずき。雨の中帰宅して発熱して倒れる。
うなされるみずきが混乱のあまり…目覚めた彼女に起きた異変とは?
 次回PanicPanic第30話。
 「本当の私」
 クールでなくちゃやって行けない。ホットでなくちゃやってられない。

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