第36話『やまとなでしこ大暴走』Part4   Part3へ戻る

「なんだっ? あれはっ?」
「なにをしているっ!?」
 北条邸の警護はもちろん十郎太や葉月。弥生だけではない。
 九郎をはじめ数多の風魔衆が潜んでいるのだ。
 近年は警備システムも発達してきて、少ない数でも充分だったがそれでも十名近くが人知れず警護していた。
 その彼らが見た異様な光景。
 それは彼らの末弟と姫君の戦いであった。むろん許されることではない。
「おのれ十郎太。姫に拳を向けるとは」
「天に唾する行い」
「我らが手で成敗せねば」
 何人かは忍びでありながら冷静さを失い、血気にはやるものが出掛かるが
「待て! 十郎太は手を出しておらぬ」
 冷静な人物がそれを止める。
「……確かに。姫の攻撃を捌いているのみ」
「どうも取り押さえようとしているみたいでござるな」
 そして情報がそろってきた。
「姫の異変は弥生の持ち出した薬か?」
「そして愛子様も静観していた様子…」
…………

「なぁんだ。また愛子様の悪ふざけか」

 いきなりにこやかになる忍たち。
「それならば合点が行く」
「うむ。座興のようなもの。放っておけ」
「かるたとりや正月料理にも飽きたのでござろう」
「そのようでござるな。あちこちでやっておる」
「じゃれあいと言うかお戯れ。ふふ。仲のよいことで」
 ぽんと手を打ち、納得して行く風魔忍軍。何事もなかったかのように本来の部署へと戻って行く。

 これだけの事態が「悪ふざけ」の一言で片付く愛子って…?
 とにかくそれで他の忍びたちは動かなかった。

「ボクと戦って。明くん」
「やめろ若葉。僕は君とは戦いたくない」
 幽鬼のように迫る綾那と、後ずさりながら制止する上条。
 上条にはなんとなく妙な余裕を感じなくもない。
 二人の間合いはフラッシュアッパーによって離れていた。それをじりじりと迫る綾那。
 だが彼女はその気なら高速戦闘の「スラッシュモード」に切り替えれば、一気に間合いを詰められる。
 それをしないのは上条の心を試しているのか?  しかしそれも長く続かなかった。
「えーいっ。こないんだったら」
 綾那の姿が消えた。半ば反射的に上条はブロッキングを「置いていた」ので「ランスラッシュ」を捌けた。
「こんのー。それならもっと速く」
 攻撃を捌かれてむきになってきた綾那が、振袖とは思えないスピードで駆ける。
「縮地?」
 緊迫しててもオタク系ボケは忘れない。ボケつつもよけておく。
 ここまで速いともはやブロッキングは困難。しかしガード硬直も避けたい。だから突視する綾那から闘牛士のように身をかわしていた。
「もっともっと」
 さらに加速した綾那はなんと壁を駆け上り天井すら走る。
「馬鹿な?」
 さすがの上条も呆気にとられる。だがさすがにそれは落ちるしかない。
 ジェットコースターがループを駆け上がるのとは違うのだ。
「きゃああああっ」
「おっと」
 人付き合いが苦手とか言ってられない。上条は慌てて落ちる綾那を受け止める。
 上条の腕の中に落ちた瞬間、綾那の頬に朱が散る。だが幸せそうに微笑む。
「えへへへっ。お姫様抱っこだね」
 それで満足してしまったのか、瞼を閉じて力が抜ける。
「お…おいっ? 若葉。若葉」
 気絶したかと思い狼狽する上条だったが、腕の中ですーすーとかわいらしい寝息の綾那。
「…………そりゃそうか。酒飲んで走り回りゃ酔いが回るのも早いわな」
 そう。綾那は上条に抱きかかえられた瞬間に怒りが霧散。
 そしてその途端に気が抜けて睡魔に襲われたと言うわけである。
「ふぅ」
 静かに綾那を寝かせると彼もへたり込む。
「まったく…今までで一番きつい闘いだったよ。だがこの様子じゃ他も酔いつぶれてるころかな」

 それが期待できそうにないのが真理である。
 半分は日本人じゃないせいかアルコールに強い。
 そして怒りも彼女は綾那ほど単純じゃなかった。
「さぁ立て。今日こそはアンタの浮気癖を叩きなおしてやる!」
 なんとも勇ましい真理の啖呵。こうなると和服が「極道の女」に見えてくるが。
 もっともせっかくの振袖を腕まくり。それじゃなおさら勇壮な印象にもなる。
 倒れこんだ榊原を見下ろしている。
「けほっけほっ」
 女の細腕…と言うにはあまりにパワフルな一撃に、呼吸困難に陥った榊原が咳き込む。
(うー。女の平手打ちは柔らかい体がしなるから鞭のように効くが、こいつの場合それに加えてパワーもあるからなぁ)
 思考をまとめつつ何とか立ち上がる。
「そんなに…オレが信用できないか?」
「アンタだけじゃない。男はみんな信用できない」
 やはり父親との確執が根強い。
 そんな真理の目をまっすぐに見据える榊原。
 真理もそれに対して睨み返す…いや。目が離せないと言うほうが近い。
 そしてこれまたストレートに榊原が言い放つ。
「他の男はどうでもいい。オレだけ信じろ」
 気障な台詞だった。まともに受けた真理は思わず赤面する。
「バ…バカヤロー。その手の調子いい台詞が、一番信用できないんだよ」
 カッとなって「考えなしに」ラリアート…「スレッジハンマー」を見舞う。
 しかしこの展開は予知するまでもなく読めていた。
 その豪腕を受け流すと、瞬時に真理のツボを突く。
「あっ」
 途端に真理は脱力してへたりこむ。そして眠りに落ちた。
「ふぅ。まさか北条邸で『いかせる』訳にも行かないからな。この眠らせるツボ。普通の戦闘じゃまずつくのは困難だが、今回は真理もこの状態だったから何とかなったな」
 隠した心を白日の元に。裏表がなくなる。つまり…子供の心に。
 だから考えなしにスレッジハンマーが来るのを読めていた。あとはそれを捌いて大きな隙を作り出して突くだけだ。
 榊原も眠る真理のそばに座る。
「それにしても…いつも怒っているから発散しているかと思ったが、結構たまってたんだな。ストレス」

 ストレスと言えば七瀬も相当なものだ。
 自分で蹴り上げたみずきが落下した位置に移動すると、ダウンを回避したみずきに平手を続け様に見舞う。
 右手。左手。両側。リズミカルに隙間なく。
 一撃目。次の手は何とか捌いたみずきだが、さすがについていけなくなり両側からのはもろに食らう。
「いってぇーっ」
 やや大げさに痛がる。それに対して憤慨する七瀬。
「こらぁっ。反撃しなさいよっ」
 確かにみずきは手を出してなかった。
「やーだね」
 まるでイタズラ小僧のように言うみずき。
「どうしてよ?」
 およそ喧嘩の最中の問答ではない様相を呈してきた。
「お前、女じゃん。『男』が女を殴れるか」
「アンタだって…」
「男だよ。確かに体はこんなだけどな。けど、心は間違いなく男だ。だから女は殴れねぇ。男として最低の行為だし」
「みずき…」
 七瀬の瞳から怒りの炎が消える。元々が「薬」によっての不自然な「怒り」。長続きしない。
「そうでなくても…知らなかったといえどグロリアを叩いたのは今でも後味悪い思いしているんだし」
 男装の麗人。Gことグレック・ゴードン。本名はグロリア。
 さらわれた姫子を助けるべく向かったみずき達の前に立ちはだかった一人。
 最初は男として振舞っていたため、気がつかなかった瑞樹は姫子救出のために拳を向けた。
 結果的にこの闘いは瑞樹が勝った。
 それをきっかけにグレッグはグロリアと言う女としての人生をやり直すことに。

 しかし皮肉にもこの直後、みずき自身も心まで女になった。
 それは七瀬にとっても大きな心の傷を遺した。それが今、この形で噴出した。
「聞いてくれ七瀬」
「うん」
 いつの間にかおとなしく話をするムードに。
「オレのこの体は一生このままかもしれない。完全な男には戻れないかもしれない」
「……」
「だからこそ、オレは心だけでも男でいたい。お前と戦わないのはそれが理由だ」
「……そっか」
 七瀬は微笑む。優しく、母性的な笑みが浮かぶ。
 そしてゆっくりとみずきに歩み寄る。動かないみずきを抱きしめる。
「な…七瀬!?」
 女の子に抱きつかれて真っ赤になるあたり、確かに男の子の心のようだ。
「安心した」
 異性に抱きつくと言うよりは、わが子を抱きしめるような七瀬の抱擁。この大胆さは薬の効果か?
「男らしかったよ。みずき。初夢の…結婚式のときよりずっと」
「け…けっこんしきィ!????!!!」
 初夢がそれじゃ確かに恥ずかしくていえるはずもない。
「なんか…安心したら眠く…」
 ふらーっと倒れ掛かる。
「おっと」
 慌ててみずきが支えたときはもう寝息を立てていた。
「ふぅ。これも薬の効能か? それにしても七瀬。ずっと気にしてたのか」

 残った一組。姫子と十郎太。これは対峙したまま動けなかった。
 姫子の戦法は元々が護身術。相手の攻撃を無効化して、あるいは相手の攻撃を利用して一撃を加えるものが主流。
 故に先手を積極的に取りに行くことはない。ひたすら「待ち」である。
 十郎太にしてみれば姫に手を出したくない。だからこちらも「待ち」に徹していた。
(このままくたびれ果てて眠ってもらえればよいが…さすがにそれは考えが甘すぎるか)
 自分で自分の甘さを否定せねばならないとは辛い話である。
「十郎太様…」
 普段の鈴を転がすような声ではあるが、この場では妖しい響きも含んでいた。
「わたくし、どうあっても一人前には扱ってもらえませんのですか? いつまでも守られる子供じゃないんですのよ」
 令嬢と言うこともあり守られ続けた姫子。しかしそれが子ども扱いのようで表情には出さないものの内心では面白くなかった。その思いがここで出た。
「姫を守るのは我が役目。お判りください」
 いつものように鉄仮面。だが言葉に苦味が。
「わたくしももう16歳。いつまでもお守りのいる年ではありませんわ。これからは十郎太様の影ではなく、となりにいたい」
 護衛がいらない…そう言っているのではない。守られるだけでなく、対等の立場になりたいと。
 だが十郎太達からすれば対等など畏れ多い。
 主君の盾となり果てるならこの上ない名誉。そう考えていた。
(だがそれが姫を苦しめて…)
 十郎太は苦悩した。痛むほどに考えた。そして、決意した。
「姫。拙者が盾として力不足と言うのであれば試されよ」
 あえて自分が挑発したように言う。こうすることで姫子の心の負担を軽くしたかった。
「わかりましたわ。それでは」
 まだとろんとした目。だが「神気」が凛として立ち上る。
「まいります」

 そのころ、みずきは七瀬をおぶって苦労していた。
 現時点で女の肉体。
 そして七瀬より小柄。
 慣れない振袖姿。
 それでぐったりとしている七瀬をおぶって歩くのはかなりの負担だった。
「くっそー。やっぱ少しはダイエットした方がいいぞ。七瀬。おぶう身にもなって見やがれ」
 悪態をつきながら最初の部屋へと戻ろうと庭を突っ切っていた。
「おっ。そっちも片付いたか?」
 やはり真理をおんぶした榊原が軽妙に言う。
 こちらは真理が大柄といえど榊原も体格がいい。それほど苦労してなかった。
「ふっ。赤星。お前も体は女でもやはり男だな」
「オレが男だってのはいいけど…なんで今そんなこと?」
「そりゃ及川の運び方だよ。やはり女を運ぶときはおんぶだよな。背中で胸の感触。両手のひらでお尻の感触か楽しめる」
「お前と一緒にすんな!」
 下卑た表情の榊原を一喝するみずき。そんなやり取りをしていたらもう一組。
「やぁ」
 気絶した綾那を両手で「お姫様抱っこ」の上条だ。
「確かに…若葉は軽そうだけど…」
「その運び方は大変そうだな。おんぶの方がいいんじゃ?」
 二人の言うことももっともだ。
「ふっ。ヒーローは最後に助けた少女をこうやって運ぶもの」
 彼らしいこだわりだった。
「しかし若葉。目覚めていればさぞかし大喜びだろうなぁ」
 まるでアメリカの新婚夫婦の新居に最初に入るときのシチュエーション。
 綾那が夢見ていても不思議はない。
「風間達は?」
 上条が尋ねるが誰も見ていない。
「戦法から考えるとこう着状態かもな。早く行って助けてやろう」
 三人(と言うか六人と言うか)は急ぐことにした。

 ゆっくりと立ち上る神気。それが再び姫子の中へと。
 緩やかに弓手を向け矢を番える。
「百花繚乱」
 立て続けに四本の矢を放つ。「早弓」の強化版だ。しかもタイミングは任意だからブロッキングを置いておくのも難しい。
 だが十郎太は既に先読みをしていた。跳んでいた。虚しく虚空を行く四本の矢。
「どこへ?」
 上を見ると既に十郎太が降下体制だ。
「姫。まっすぐに育たれた。しかし戦いにおいてはその素直さが裏目に出ることも憶えておいて頂きたい」
 遠い間合いでは弓。接近されたら薙刀と言うのがパターンになっていたのだ。
 だから十郎太は簡単にこの攻撃に踏み切れた。
 落下しつつ姫子の両方の肩をつかむ。そして落ちる勢いも利用してそのまま姫子を投げ飛ばす。
「天王覇」
「きゃあっ」
 地面に背中から叩きつける。帯がクッションとなって損傷はしなかったが、したたかに体を打ちつけた衝撃はもろに。
「姫!?」
「嬉しい…ですわ…やっと本気で…これで…あなたの足手まといには…」
 それだけ言うと眠るように気を失った。
「姫…」
 背中から堅く姫子を抱きしめる十郎太。
「姫…申し訳…申し訳ござらん」
 なんとその頬を涙が伝う。鉄仮面の見せた初めての涙。惜別の思いが流させた熱いもの。
 しばらくはそうして抱きしめていた。だが
「葉月。弥生」
妹たちを呼びつける。そのころにはきりりとした表情に戻っていた。
「兄上。ここに」
「姫様。やっとおとなしくなったね」
「うむ。丁重に寝所までお運びいたせ」
「それは良いのですが…兄上がなさった方が姫様もお喜びでは?」
 双子の姉のほうの問いかけに寂しそうな笑みを浮かべる。
「拙者のような咎人が姫に触れるなど言語道断」
「咎って…おにいちゃん何か悪いことでも?」
 きょとんとしている双子の妹のほう。
「主君に拳を向けるなど許されざる行為」
 彼は言うなり上半身裸になり、その場に座り込む。その手には短刀が。
「腹を掻っ捌いて侘びるのみ」

「切腹って…おやめください。兄上」
「死んじゃいや。お兄ちゃん」
「忍びたるもの。死の覚悟は常に懐において置け。これが最後の教えだ」
 まさに短刀の切っ先を腹に突きたてようとしたときだ。
「龍気炎」
「シューティングスター」

「うおっ?」
 上条の放った気が十郎太の体に当たり、みずきの放った気が手にした短刀に当たった。
「うお。体狙ったけど結果オーライ」
 さすがに狙って腕を撃てはしないか。二人が駆け寄りやめさせようとする。
「心せわしき人かな。今しばらく待たれい」
 こんなときでも上条は変わらない。
 ちなみに榊原が真理をおんぶしながら、正面から七瀬を支え。そしてビッグ・ショットで綾那を支えていた。
「赤星!? 上条!?  邪魔をするな。死なせてくれ」
 短刀を拾おうとするがそこに手裏剣が。
 思わず投げた人間を見ると兄である九郎。
 そして愛子に連れてこられたらしい北条家当主。北条青雲…姫子。愛子たちの父親がいた。
「十郎太。この痴れ者が。お屋敷を…それもめでたい正月のこの場を血で汚す気か」
 兄の一喝。
「兄者! しかし拙者は姫に狼藉を」
「それは姫子の望みであったのだろう? 十郎太」
「……お館様…」
 当主が諭すように切り出す。さすがにその前で切腹の強行は出来ない。
「あれ(姫子)とて北条の女。戦いを挑めば殺される覚悟はこの場合ないにせよ、痛い思い位は覚悟の上。気に病む事はない」
「されど…」
「考えても御覧なさい。この勝負の末にお前が腹を切れば、それは姫子の心に生涯消えない傷を残す。あれのことだ。思いつめて尼になりかねない。十郎太はそれを望むのか?」
「姫が…尼僧に…」
 ここで一度言葉を区切る。そして結論を切り出す。
「責任を取ると言うのであれば、生涯かけて姫を守ってほしい。腹を切るよりよほどよいと思うが?」
「は…ははーっ」
 ひれ伏す十郎太。命拾いでのそれではない。危うく姫子の心に深い傷を負わせるところを救われた事からだ。
「風間十郎太。生涯かけて姫を守ることを誓います」
「うん。これにて一件コンプリート。北条屋敷は日本晴れ」
 明るく上条が言うと一同が笑った。

「ん…ンン」
 真理が目覚めかけている。あとずさる榊原。
「うーん…」
 七瀬がおきかけるとみずきが上条の影に。
「ねむぅい…」
 目をこすりながら綾那が目覚めると身構える上条。
「あらやだ。いつの間にか眠ってしまいましたわ」
「姫…覚えてないでござるか?」
「何をです?」
 きょとんとしている。別に芝居をしているわけではないらしい。
「あー。よく寝た」
 首をこきこき鳴らしながら真理が起き上がる。
「ホント。なんだかやたらにすっきりしてるわ」
 晴れやかに笑う七瀬。
「気持ちいいよね」
 まさに無邪気と言う表現が似合う調子の綾那。
「どういうことだ?」
 男たちは(みずきもだが)顔をつき合わせる。
「どうやら薬のせいで忘れているらしいが」
「やたらすっきりしているのはストレスを全部吐き出したからか」
「まさかみんながこんなに溜め込んでいたとは」
「あの…」
「「「「はっ…はいっ」」」」
 気をつけの体勢になる十郎太。上条。榊原。みずき。誰にも怯えの色がある。
 男たちのあまりの反応に声をかけた姫子が驚く。
「あの…十郎太様? この寒空にどうして裸なんですの?」
「こ…これは…その…乾布摩擦。そう。乾布摩擦でござるよ」
 まさか「腹を切ろうとしていた」などとはいえないが、あまりに苦しいでまかせだった。
「まぁ。それは健康的でよいですわ」
 それを信じる辺りが姫子だが。
「やはり護衛たるもの。風邪など引けませんからな。はははは」
 乾いた笑いが響く。
「それ。おぬしらもどうだ」
「よ…よし。じゃいっちょ」
 上条もシャツを脱いで行く。榊原も上半身をはだけようとしている。そしてみずきが振袖の…
「赤星はやめろ」
 慌てて止められる。

「ふぅ。一時はどうなることかと思ったわ」
 安堵のため息をつく愛子だが
「さて。愛子。これだけの騒動を引き起こして、ただで済むとは思ってないな」
 ギクッ。恐る恐る見上げると父親が引きつった笑みを。
「お…お父様?」
「葉月。弥生。お主等もだ」
 こちらははっきりとわかる怖い表情の九郎。
「あ…兄上」「九郎お兄ちゃん」
 青ざめる双子姉妹。

 その夜…
「あーん。お兄ちゃん。お館様。もうしませーん。ここから出してくださーい」
 弥生の甲高い泣き声が響き渡る。
「騒ぐな。すきっ腹に響く。おとなしく寝ろ。お前の馬鹿につき合わされたこっちの身にもなれ」
 もろもろの理由でいらつく葉月が怒鳴りつける。
 愛子。葉月。弥生は罰として一晩を座敷牢で。そして夕食抜きであった。
「ふっふっふ。まさに命を賭した愛。見せてもらいましたわ。十郎太様。今回は失敗だったけど次こそは」
「愛子様。お願いですからどうかもうおやめください」
 アクティブな性格ゆえ、葉月に哀願されたり夕飯抜き程度ではまったく懲りてない愛子であった。

次回予告

 冬休みを利用したスキー合宿。一年生は全員参加のため渋々行くみずきだが、学年女子ばかりでの泊まりに緊張が。
 一方、上条は綾那との仲を横恋慕した少年に…
 次回PanicPanic第37話「雪山パニック」
 クールでないとやっていけない。ホットでないとやってられない。


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