第41話「流転」Part3   Part2へ戻る

 屋上。一年一組と二組の女子はほとんどがその場にいて、真理の声を聞いていた。だが
「……信じられる?」
「うーん。ちょっと」
 真理の文字通り命がけのメッセージだが、信じているものがいない。
 しかし彼女たちを責めることは出来まい。
 毎日顔をあわせていた教師が、かつてのクラスメイトを手にかけたといわれても信じられないのも無理はない。
 第一後ろめたくてみんなの顔など見られるはずがないと言うのが彼女たちの見かただ。
「村上さんにも困ったものです。後で正義のお説教をしないと」
 憤慨している麻神久子。それを微笑ましく思いニコニコしている谷和原友恵だったが、もうひとりの正義クラブメンバー。佐倉みなみが憂い顔だったので声をかけた。
「どうしました?」
「友恵ちゃん…うん。今朝の占い。よくないことが起きるってあったから」
「当たってますわね」
 金網越しに校門のほうを見下ろす友恵。悪漢高校の面々が壁になっていて抜け出せない。

「どうしたの?」
 七瀬と姫子が遅れてきた。戻ってみれば女子たちがざわついている。
 間の悪いことに二人はトイレにいたため真理の放送を聴いていなかったのだ。
「なんでもないよ」
 わざわざ言うほどのものでもないと判断した女子は、それだけ言うと話を打ち切った。
「そう? それならいいけど」
「それにしてもみずきさんと真理さんは遅いですね。わたくしより着替えの遅い方がいらっしゃるとは」

 一方、一年二組の教室。みずきと綾那はさすがにこんな反応はしない。
 なにしろみずきは男の姿でだが「斑信二郎」と戦っているくらいだ。
「カオスが…斑?」
「ゆかりちゃんの仇?」
 それでもさすがに半信半疑。だが考えるより行動の早いみずきは「そのまま」飛び出そうとした。
 それを慌てて止める綾那。
「待って。待ってみーちゃん!」
「離せ。村上を助けに行かないと」
「ダメ! 女の子が裸でなんて」
 そう。トップレスのままだった。
「オレは男だ! 胸なんていくらでも晒してやる」
「ダメだって」
 もみ合う二人。時間ばかりが過ぎていく。

 上条に迷いはなかった。一目散に放送室を目指す。

 この放送は校庭にも流れていた。
 だから外壁を取り囲む悪漢高校の面々にもかすかに聞こえていた。
 そう。上条繁にも聞こえていた。
「ゆかり? 行方不明の少女だが…中尾教師が殺害?」
 何度か事情聴取はしている。しかしそんな素振りは見せなかった。
「聞き違いか? 確かにあの浮浪者(前の斑)の肉親からしたら仇になるだろうがこの場合は…」

 放送室。今までクールだった斑が怒りをこらえている。しかし血管がぴくぴく震えている。
「してやられたと言うわけか? たかだか小娘にこの私が?」
「へん。もっと悔しがってもらうよ。娘の帰りを待ち続けるゆかりの親たちを思えば軽すぎ。この程度でお返しが済むと思うなよ。
どうせアタイたちを消すつもりだったんだろ。だがそうは行かない。ゆかりの仇をここで取る。はなからそのつもりだった」
 挑発のつもりのその台詞。だが不発だったか斑は不敵に笑う。
「なにがおかしい」
「いやなに。自分の間抜けさ加減に呆れてね」
 本当におかしそうに笑う。
「この辺りが潮時か。元の肉体より馴染んでいたので手放すのは惜しいが、ここまでのようだ」
 まるで古くなった洋服を処分するかのように言う。
「最後だ。捕まるまでに何人殺せるかトライアルといこう。手始めは君たちだ」

 榊原和彦は動かない。風間十郎太も動かない。
「榊原」
 珍しく十郎太から声をかけた。
「なんだ?」
 クールに返答する榊原。
「お主、真理殿の身は案じてないのか?」
 余計なお世話とは思う。だが自分が主君である姫を思うように、彼もまた思いがあるのではなかろうかと。
「真理なら無事なのはわかっている。たとえ重傷でも及川が治してくれるしな。死にさえしなきゃ大丈夫」
「信用している…むしろ何か根拠があるように見えるでござるな。『夢』で『見た』でござるか?」
「ああ。最低でもアイツがウェディングドレスを着るまでは死なないはずだ」
「ほう。それでその夢では誰が伴侶に?」
 さすがのクールガイもこの質問には照れた。だから押し黙ってしまった。
 聞きたいことは聞いたので十郎太も深く追求しなかった。
 今はただ、ある一瞬のためにこの場で待つ。そういう二人だった。

 じりじりと二人に迫る殺人鬼。トライアルと言う割にはやはり「愉しみ」は捨てないようだ。
「放送室を選んだのはな。あんたの正体を全校に知らせる目的と同時にここがアタイにとって有利。いや…それを言うならあんたにとって不利と言うところか。そういう場所だからだ」
「なぜそれを言い切れる?」
 この「掛け合い」も彼の楽しみの一つ。
「ここには盾になるものが多い。その衝撃波はガードしやすい。そしてこの天井の低さでは立体的な三角蹴りや、跳ね上がるキックも使いにくいだろ。逆にアタイはアンタをつかまえやすいしね」
「中々に研究しているな。それだけの情報をどこから得た?」
 見せた覚えがないものを知っていた。それに対しての純粋な好奇心だ。
「企業秘密さ」
 実際に戦った瑞樹からの情報が流れている。もちろん瑞樹の名前は出せない。
「ふん。実戦でどれほど役に立つかな。それが机上の空論だと思い知れ
 斑は衝撃波を飛ばす。ただし恵を目掛けてだ。
「えっ?」
 向けられた殺気で攻撃されたと理解したが、なにを投げたか見えない。
「野郎」
 これは失念していた。真理は慌ててガンズンローゼスで恵をガードした。
「きたねえぞ。それに一緒に暮らし仲だろうが」
「生きるか死ぬかで汚いも綺麗もないだろう。それにね…実は楽しみにしてたんだよ。一年も一緒に暮らした『娘』を手にかけるその時はどんな感じなのか? 罪悪感に見舞われるのか? 涙を流しながら首を絞めることにでもなるのか? 想像するとぞくぞくするよ」
「……変態野郎……」
 真理としてはこれでもまだ生ぬるい罵り言葉だった。

 みずきがいうことを聞きそうにないと判断した綾那は荒っぽい手に出た。そのまま後ろからみずきの胸を鷲づかみにしたのだ。
「ふにゃあああっ!?」
 男では感じたことのない未知の感触。思わず胸を押さえて蹲ってしまう。女の急所だ。
「女の子のおっぱいはデリケートなんだよ! 殴られたらこんなもんじゃないんだから」
 戦闘に不利といわれれば納得もせざるを得ない。ましてやノーブラでは揺れてしまい、闘いどころか動くのもひと苦労だろう。
「ボクが行く」
 ここ数日の落ち込みがウソのようにきりりと綾那は言い放つ。
 上条との仲に希望が持てるとわかったらこれと言うのも現金なものである。もっとも真理が危ないとなるとそれどころでもない。
 みずきが返事をする前にセーラー服のスカートを翻して彼女は教室を出て行った。
「仕方ねえ。オレもとにかくブラだけでもつけないと」
 恥ずかしさではなく、揺れる胸を押さえないとどうしようもない。
 みずきはロッカーのナンバーキーを「0526」と自分の誕生日にあわせる、が
「あれっ? 開かない? まさか…違うナンバーでロックしちゃった?」
 この期に及んで大きなドジが出た。ノーブラで戦うのは無理があるので、何とかあけようとみずきは近いナンバーから試していく。
 そのため大きく足止めを余儀なくされた。

 放送室。完全に遊んでいる斑。
 彼としてはこの中尾の肉体は相性が良いため捨てたくはなかった。
 だから可能ならそのままでいようという思いもある。
 反面、指紋をとられ素性もばれた今では、捨ててもいいかなと言う思いもあった。
 だから彼は待っていた。無限塾男子ないし教員。あるいは悪漢高校の生徒が攻めてくるのを。
 その人間と入れ替わるつもりでいた。それでわざと(ばれたついでもあり)ここで「もたついていた」。
 このまま単純に脱出を試みて抜け出せりゃよし。
 悪漢高校の面々が通そうとしなかったら、混乱に乗じて誰かの肉体を奪う算段だった。
 慌てて逃げる必要はない。だから悪ふざけにも走る。
「うーむ。悩むね。『実の父親が友人の女を殺す現場をみてショックを受ける娘』と『仇を討つどころか目の前で殺人を許した絶望を受ける女』のどちらがいいか。君たちならどちらを選ぶね? 村上。恵」
 「趣味」の殺人である。だからこんな台詞もでる。
「い…いや。パパ。そんな…」
 実の父親から出る恐ろしい言葉。それに絶望と恐怖を感じ無意識に窓のほうに寄っていく恵。
 放送室といってもプロの録音スタジオとは違う。窓もあれば、扉を叩けば中に響くようなつくりである。
 恵はここが三階であるのも忘れて、恐怖から脱出すべく窓を開ける。
「ふむ。面白い。ここで迫られたらどう行動するかな? 自動車の前に飛び出した猫のように硬直するか? それとも三階と言うことを忘れて飛び出すか? 興味深い」
 斑は自分のマリオネットを出す。それがほんの数センチ彼自身を浮かび上がらせる。そしてその「数センチ上」をすべる。
 アイススケートのように滑らかにすべって恵に迫る。
 だがそれを真理が自分を盾にして防ぐ。足でブロックするが代償として激しくいためた。
「痛!」
 顔をしかめるが彼女はそれを無視して恵を持ち上げて窓から投げ捨てた。
「きゃああああああっ」
 身を投げる形で悲鳴を上げる恵。しかし地面寸前でブレーキが掛かり、およそ五十センチくらいで停止した。
 彼女には見えない茨が解かれる。
「え? え?」
 なにがなんだかわからない状態の恵。だが気を取り直すと体操服の集団に駆け寄った。
「助けてください。放送室で女の人が殺人鬼と戦ってるんです。助けてください」
「はぁ?」
 彼らにも放送は聞こえていた。しかしいくら中尾でも「殺人鬼」となると飛躍しすぎであった。
「どうする?」
「なんか…上条もスーパーダッシュして行ったけど」
「うーん」
 どうしても眉唾物だった。それよりも目の前にいる悪漢高校の面々が差し迫った脅威であったのも事実。
 だから放送室へ走る人間は彼らの中では上条だけだった。

 これで胸をなでおろしていたのが藤宮博。
 「殺人鬼」がでまかせならそれでよい。しかし本当だったら?
 いかに腕に憶えの無限塾の生徒といえど何人も殺めた相手にゃ分が悪い。
 彼らを危険に晒すわけには行かない。
 だからむしろ悪漢高校相手に闘志が向いていたのはありがたかったくらいである。
(そうはいえど無視は出来ない。すまん…手を借りるぞ)
 彼は携帯電話を取り出して…

 喫茶レッズ。電話が鳴り響く。
「はい。喫茶レッズでございます」
 のんびりとした柔らかい口調の瑞枝だったが、ほんの少し緊張が走った表情に。そして
「あなた。藤宮さんから電話よ」
「む」
 緊急事態と言うのは長年の勘で理解していた。一応電話を受け取るが通話を短く済ませる。
 受話器を置くと彼は妻に「出かけてくる」と告げた。
 瑞枝にはそれがどういうことかわかっていた。

「逃がしたか。まぁいい。これで何人かここに来るだろう。『私の新しい肉体』の候補が」
「……その前にテメーをぶちのめしてやる」
 口だけは威勢がよいが脂汗をたらしている。
(痛い。物凄く痛くなってきた。さっきのブロックでいためた。捻挫? ヘタしたら皹くらいは入ったかも。くそっ。七瀬がいれば即座に治してもらえるが今は無理)
 痛みに耐えているのが精一杯。それで脱出も出来ない。
「苦しそうだな。私の攻撃でどこかいためたか?」
 わかっているのにサディスティックに尋ねる斑。ニヤニヤと笑っている。
「かわいそうだから楽にしてあげよう」
 彼はあっという間に真理の眼前に迫ると、彼女を壁に押し付けた。
 そしてその白くて、意外に細い首に両手をかけてじわじわと締め始めた。
 真理は抵抗しようにも足の痛みが集中力と体力を削ぎ、ガンズンローゼスを上手く出せない。
 斑が真理をわざわざ立たせているのは足を楽にさせないためだ。
 そして息も詰まり始めてきた。

 放送室。上条が駆けつけた。何も考えずにドアを開けようと試みる。
 さらには激しく扉を叩く。

 当然、その音も中に聞こえている。斑は手を緩める。激しく咳き込み呼吸を確保しようとする真理。
 そして足の痛みから立っていられなくなり崩れ落ちる。それをクールに見ている斑。
「ふむ。待ち人来るか。だがいいことを思いついた。村上真理。君がいかにバカなことをしたか教えてあげよう」
 ゆっくりと扉の前に歩み寄りながらゴーストフェイスキラーを出現させる。その右手をかざして
「これからこの『来訪者』を串刺しにする。君があんな放送をしなければ来ることもなかったであろう哀れな来訪者をね」
「な? や…止めろ」
「君のせいだ。君があんなことをしたから一人の人間が君の目の前で死ぬ」
「止めろといってるだろう」
 止めようとするが足が痛くて歩けない。
(くそおっ。せめてテーピングでも…そうか)
 彼女は必死に意識を奮い立たせて痛めた足からガンズンローゼスを出現させた。
 そして足首にぐるぐると巻きつけた。
 だがそのときには斑は扉の前だった。

 上条は思案した。
 もう誰もいないのか?
 否。あんな放送の後である。出て行くならわざわざ鍵などかけていられない。
 むしろ中に立てこもっていると考えた方が、放送があってからの時間を考えると納得が行く。
「こうなったら…非常事態だ。扉を壊すか」
 彼は『爆熱龍気炎』の構えになる。意識を集中させる。

「ふむ。一撃でしとめないと逃げられてしまうな。位置くらい確認するか」
 殺人をするとは思えない口調で、斑はひとり言を言うとゴーストフェイスキラーの頭部を分離させて、扉の向こうへと出す。斥候だ。
 破壊目的ではない単なる「千里眼」としての使用なので、物理的な障壁など無視して扉をすり抜ける。
 残された首から下だが、右腕を折りたたんだ状態で待ち構えている。
 後は本体の指示でその右腕をばね仕掛けのように突き出すだけ。

 みずきともみ合った為に距離的には一番近いのに遅れてきた綾那。こちらも放送室が見える位置に来た。
「上条君!!」
 まだ顔を見ると意識してしまう少年が放送室の前に。
 だが彼の頭上にリトルデビルを見つけたらそれどころではなくなった。
(あれって…試験休みの時にみーちゃんをひどい目に合わせたマリオネット。それが明君を狙っている?)
 明は『気』を練るのに集中して頭上の脅威に気がつかない。
 叫ぶより先に彼女は走り出していた。

(こいつはいい。上条か。なら奴にも致命傷にするのは避けておこう。そしてその目前で村上を殺してやろう。泣き喚くかな)
「やれ。ゴーストフェイスキラー」
 主の命令を受けたマリオネットは、無造作に腕を繰り出した。 

「危ない! 明君」
 とっさに綾那はマドンナを飛ばして上条を突き飛ばした。
 そのため上条は凶刃から守られた。だが代償としてマドンナの腹部がえぐられた。
 そしてそのダメージは本体である綾那にかえってきた。
「あつつ。なんだよ…」
 突き飛ばされたダメージだけで無傷の上条が、ぼやきながら身を起こす。そしてセーラー服の少女が立っているのを見た。
「若葉?」
 気まずくて避けられていたのにどうして?
 そんな思いは彼女の白い足を赤い液体が伝った時点で吹っ飛んだ。
「あ…綾那ッ!?」
 頭の中が真っ白になった彼は、思わず名前のほうで呼んでいた。そして崩れ落ちる綾那を支えに走る。
「綾那! 綾那ッ! しっかりしろ」
 激しくうろたえている。涙すら滲んでいる。
「…よかった…無事だったんだね…明君」
 まるで母親のような微笑を浮かべる綾那。顔色が青くなっていく。
 貫手であったために扉をすり抜けることは出来ず。扉を貫通してからの一撃ゆえに肉体を貫通するには至らない。
 けれど五センチの深さでえぐられた傷から、いくら抑えても血が流れていく。
綾那。綾那。死んじゃいやだ。お願いだから死なないでくれよ」
 子供のように泣き喚く。ここまで感情をむき出しの上条は誰も見た事がない。
 いつの間にか憎からず思っていた少女。それがいなくなるかもしれないとなった瞬間に自分の本心に気がついた。だから思わず名前で呼んでいた。それは二人の距離が縮まっていた証。
「……やっと名前で呼んでくれた…嬉しい。ボク、もう死んでもいいけど…明君がそういうなら…」
 なんとか傷ついたマドンナ自身が綾那の傷を閉じているので、出血は抑えられている。

その刹那に気がついた自分でもわかってなかった思い……

このイラストは参太郎さんによって作成されました。
感謝の意を捧げます。

 バタン。派手な音がしたと思うと放送室の扉が乱暴に開かれる。
 そして斑が現れた。
 心底楽しそうに哂っている。ゆっくりと上条と綾那に接近する。
「くくく。その泣き顔。それが見たかったぞっ。上条明」
 足を痛めて逃げられない真理を後回しにして、上条の泣きべそを楽しみにきたのだ。
「貴様か…貴様がやったのか?」
 綾那をそっと寝かせると、次の瞬間には上条の放つ「気」が斑を吹っ飛ばしていた。その表情は憎悪で歪んでいた。
「明君…だめ…憎しみにとらわれちゃ…」
 それだけ言うのが精一杯の綾那だった。

 足を固定して何とか歩けるようになった真理が放送室から出てきたら、目の前を斑が吹っ飛ばされていた。
「な…なんだ?」
 思わず「加害者」の側をみたら上条が憤怒の表情で立っていた。
 そしてその後ろには青い顔で横たわる綾那。しかも出血している。
「綾那!?」
 足を引きずりながらなんとか二人に近寄る真理。
 上条は綾那を両手で抱きかかえると、真理にそれを託した。
「頼む。及川のところに連れて行ってやってくれ」
「あ…ああ。もちろんだがアンタは?」
「僕はここで奴を足止めをする」
 だから真理の怪我を承知で託したのだ。
 まだマリオネットを上手く操れないので、超加速状態になれない。
 よしんばなれても重傷の綾那が耐えられそうにない。そこを後ろから狙われたら…
「無茶だ。アイツはもう手当たり次第に…」
「早くしろッ!!」
「は、はいっ」
 思わず敬語で返答するほど上条に圧倒される真理。
 まずは綾那の傷を左手から出現させたガンズンローゼスで「縫合」する。
 そして自分も足がダメになったので歩くのは無理だから、窓を開けて右腕のガンズンローゼスで屋上へとロッククライミングのように上っていく。
 足を使わなくてもガンズンローゼスを縮めていけばいいのでその点では問題がない。
 真理は綾那を連れて屋上へと避難した。

「ナイト気取りか。反吐が出る」
 不意打ちを食らって吹っ飛ばされた斑がやっと戻ってきた。その表情はやはり怒りに満ち溢れていた。
 だが上条はまったく臆することはなく向かい合う。そして不適に言い放つ。
「どうした? そんな渋い表情じゃなくてもっと嬉しそうな表情をしろよ。あんたの下衆な趣味に付き合ってやるんだぜ」
 いつもの飄々とした上条ではない。
 綾那を傷つけられて怒り狂っている。そう。彼が撒き散らしていたのは神気ではなく破気だ。
 だからとても上条の言葉とは思えなかったこんな台詞も口をつく。

「さぁ。はじめようぜ。殺し合いをな」 

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