そして……時は流れた。

この日から幾年月……

このイラストは参太郎さんによって作成されました。
感謝の意を捧げます。

 赤星瑞樹・七瀬夫妻に続くように上条明。若葉綾那が結婚。
 その頃、事実上夫婦ではあるが未婚のまま真理は長女を出産。
 「約束どおり」ゆかりと命名した。

 五月には風間十郎太。北条姫子が結婚。
 ちなみに婿入りなので戸籍上の名前は北条十郎太となるが、畏れ多いと風間姓を名乗っていた。
 姫子も嫁入りした気持ちになりたくて風間姫子と名乗っている。

 これにより北条家と風魔の関係は主従から縁戚に。

 真理の体形が戻って体調も安定するのを見計らって榊原和彦。村上真理の挙式も行われた。
 届けも出して晴れて正式に夫婦に。

 七瀬が27歳の年そろって出産をする七瀬。姫子。綾那。真理。
 七瀬と真理には男の子が。綾那と姫子には女の子が生まれた。

 夫たちは仕事があり中々逢えないが、赤星七瀬。風間姫子。上条綾那。榊原真理は子供を連れて互いの家を遊びに訪れていた。
 特に喫茶レッズはそこに行けばみずきや七瀬がいるため、平日でも立ち寄りに来ることが多い。
 次第に子供たちも仲良くなっていく。

 赤星夫婦の長男は三歳の時に瑞樹の不安が的中していたことが判明する。

 家族の愛に餓えていた真理は次々と出産を。

 七瀬も長男から五年経って女児を出産。

 32歳ごろ。上条明はいわゆる刑事に。親子二代の刑事だ。
 またその頃には榊原和彦も医院の主力になっていた。

 そして27歳の時の子供たちが揃って同じ高校に通うことになった入学式の朝。
 そう。親たちが熱い日々を過ごしたあの無限塾への入学の日…




PanicPanic 完結編



 練馬。喫茶レッズ。
 その住居部分の一室でこの日から女子高生となる子が鏡に向かっていた。
「うーん。こんな感じかな?」
 念入りにメイクをしていた。
 赤星みずきの16歳当時を思わせる姿だが、栗色の髪と優しげな目つきは母である七瀬譲り。
 身長も160と当時のみずきより高い。胸は両親揃って大きかったのでこの娘も立派な胸元になっていた。
 あの頃のみずきのように襟足を束ねていたが、みずきと違い可愛らしくリボンである。
 その身を包む無限塾女子制服。みずきたちが着用していたころと大きな違いはないが、ジャンパースカートのウエストの部分にベルトを使うようになったのと、背中に大きなリボン状の飾りがついたのが変化。それ以外は変わっていない。
「みなせー。朝ごはんできたわよ」
 エプロン姿の赤星七瀬。43歳。
 少女時代のコンプレックスから体形には気を使っていたため、年齢を感じさせない姿だ。
 さすがに多少は老けたが逆に優しい印象がますます強くなっていた。
 髪型は少女時代のセミロングそのまま。色々試したがこれが一番しっくり来た。髪の色も天然の栗色。
「あ。お母さん。どうかな。このメイクで」
「もう。学校行くのにお化粧はいらないでしょう。だいたいみなせ。あなたは男の子でしょ

 赤星みなせ。正式な表記は赤星水瀬。
 瑞樹に倣い両親の名前を取ろうと決めていた。
 女の子なら問題ないが男の子だと…しかしその当時は女性的な名前をつけた男児や、男性的な名前をつけた女児が結構いたので通してしまった。
 それほど決めていた名前だった。

 だがまさかその名前が誘発したわけでもあるまいが、三歳の時にみずき譲りの変身体質と判明する。
 文字通り物心つくときには男でも女である存在になっていた。
 だから瑞樹がかつてしたような葛藤も拘りもない。
 気が向いたときにスカート履いたり、平たい胸をはだけたり。

 だがやはり基本は男の子。そうとれる様子があちこちに、

 小学生時代は声変わり前だし体格も差異がない。
 その日の気分でズボン姿のまま女の子で登校したりもしていた。
 事情を説明して水泳は回避していたが、それが疎外感を産んだのかもしれない。

 中学は一応戸籍の通り男子として。ここでも水泳の授業は回避。
 みずきと違っておっちょこちょいでないため、ドジをして水をかぶるような事態は心配なかった。

 進学の時。両親は衝撃を受ける。
「中学で学生服は飽きたから、今度は女子として通学するね」と。
 もちろん揃って反対した瑞樹と七瀬。それがいかに大変だったかと。
 しかし「彼女」は頑なに女子としての進学を貫いた。
 どうやら制服に飽きたなんてのはただのごまかし。何かもっと強い理由があるらしいと両親は感じた。
「わかった。そこまでの覚悟があるならやってみろ」
 かつての自分を重ね合わせてしまい瑞樹が折れた。

 そして入学式の日である。

「いいのよ。あたしは今日から女の子になるんだから。もう男になんか戻れなくてもいいんだから」
 真顔で言うみなせ。
「そんな…」
 みずきも昔、男を捨てようとした。しかしその時のネガティブなものとは違うようだ。
 雰囲気が重くなったが
「ちょっとみなせ。あなたいつまでお化粧してるの? ママやお母さんも使うんだから早くしなさい」
一人の「女性」が入ってきて空気が変わった。
 その「女性」こそあのみずきである。

 赤星みずき43歳。しかし三十代前半にしか見えない。特に肌の張りは20代にしか。
 恐らくは変身体質のため肌が毎回リセットされているためだろう。
 胸も垂れ下がることはなく、男女問わず注目を集めていた。

 結婚退職して喫茶店のママになっていた七瀬。
 優しい笑顔は瑞枝とも違うタイプの癒しをくれると男性客に人気だった。
 七瀬が出産のため瑞樹がマスターとして喫茶店を切り盛りしていたときはそんな客がいなくなった。

 ある日たまたま女姿で店に出ていたら、元に戻る暇がないほどの大繁盛。
 それからは店では女性として振舞っている。七瀬が戻ってきてからもである。
 ちなみに名前を聞かれて本名を避けようと思った際に、とっさに出たのが妻の旧姓とおばの名前。
 だから店では「及川瑞穂」で通っている。
 面白いもので七瀬が赤星姓で、みずきが及川姓を名乗っていることになる。
 「及川さん」と呼ばれるたびに本当に嫁入りした気分になる。

 年齢もこの若い姿で43では不自然なため27歳の設定。また男性客にも夢を見させておこうと言うつもりでもある。
 もっとも鯖を読んでいると見られるから、本当は三十台くらいだろうとみられていた。
 それでいいつもりだった。さすがに実際は40代とまでは思われず。
 年も性別も違う。故に顔が「赤星瑞樹」と似ていても関連はないと。

 店での立場は雇われウエイトレスである。
 この頃にはすっかりなれた化粧をしている。
 耳たぶに穴こそあけていないがイヤリングで飾っている。
 あまり好まない七瀬より『瑞穂』の方が多いくらいだ。
 みなせが使っている鏡台は七瀬のためのもののはずが夫婦。そして家族共有の物になってしまっていた。
 それぞれの化粧品がおいてあったりする。

「なにしてんの? ママ」
 みなせにとっては二人の女親。人前で呼ぶことも多いため七瀬は「お母さん」でみずきは「ママ」だった。
 そのみずきはアイボリーの女性用のスーツで「おめかし」していた。
「なにって…入学式に出席するんだからちゃんとした格好を。あたしあの学校じゃOGなんかだから」
 客商売のせいか女言葉がすらすらと出てくる。どうやら変身するとほとんど女になってしまうようだ。
 違うのは恋愛対象が男性ではないと言うくらい。もっともその体質ゆえ瑞樹は七瀬以外の女性に性的興奮が出来ない。
(言い換えれば浮気も出来ない。その気もなかった)
 七瀬とは心で繋がっていた。

「お父さん。(当時のクラスメイトは)みんな知っているんだから男でいいわよ。それに女二人で出席じゃ不自然でしょ」
 七瀬がやんわりとたしなめる。
「そ…それもそうか。(お湯の)シャワー浴びてくるよ。母さん。着替えだしといて」
 子供が出来てから互いを「お父さん」「お母さん」と呼ぶようになり、かつてのように名前では呼ばなくなっていった。
 子供に自分たちを名前で呼んだりしないようにするためと、照れくささがそうさせていた。
(お父さん、お母さんか…私も年取ったわね)
 ふと遠い目になる七瀬である。
「母ちゃん。アニキ。いい加減ご飯を食べよう」
 一人の少年が飛び込んできた。長い髪を後ろで束ねている。
 こちらは黒い髪であるがクセッ毛だった。
 七瀬がセミロングのままで黒くなった感じだ。
「菜珠樹(なずき)。あんたはまたそんな言葉遣いして」
「いいじゃん。俺こっちの方がいいもん」
やめなさい。女の子なのよ。あなたは
「今は男だもーん」

 赤星菜珠樹。11歳。性別。女。しかし変身体質。こちらも男と女を行ったり来たり。
 制約の多い女の子でいるのを嫌い男になろうとしている。
 こちらは顔立ち。髪質が七瀬譲り。
 小柄な体格と黒髪は瑞樹譲り。
 まだ胸は膨らんでいないが、おそらく家系からして大きくなるのは想像に難くない。
 さらに言うならこちらも両親の名前から取られていた。
 その彼女…現在は彼が言う。
「アニキも変わってるよなー。女なんていいことないのに。せっかく男に生まれたのになんで女になりたがるの?」
「菜珠樹も大きくなったらわかるよ」
 このときは「お兄ちゃん」らしい優しい表情に。
(そう。誰かを好きになったらね)

 文京区。とあるマンション。
 ベッドで眠りこけている中年の男。
 上条明。43歳。職業・警察官。刑事である。
 徹夜の張り込みを終えて仮眠を取っていた。
 そこに忍び込む一人の少女。
 若葉綾那の16歳当時にそっくりだが、違いとしては父譲りか背が高め。158センチ。母より7センチも高い。
 どうやら胸も父譲り…誤解を招くので隔世遺伝と訂正する。
 明の母。あかりも豊かな胸をしていた。
 髪は当時の綾那と違い編んではおらず、ソバージュを広げたままに。
 父に付き合ってアニメやマンガに夢中になっていたら視力を悪化させて、めがねが必要になってしまった。
 だがそのメガネが愛らしい印象を与えていた。

 無限塾の女子制服の彼女はそろりと近づくと、明の頬に唇を寄せる。
 その途端に目を開く明。
「やーん。パパ。何で起きちゃうの。おはようのキスがしたかったのにぃ〜〜っっ」
 身悶えしながら言う。声の高さは母と同じだ。
「う…」
 若干寝ぼけている。頭を振る。はっきりしてきたらしい。娘のことを認識した。
「……明那。おはよう」
「うんっ。おはよう。パパ」

 上条明那(あきな)。明と綾那の間に生まれた一人娘。
 みなせ同様に両親の名前をもらっている。
 重度のファザコンで、同時に極度の男性恐怖症である。
 例外は父親と幼なじみの男子二名だけ。
 それ以外の男子。特に同世代は恐くてたまらないらしい。
 二次元の世界にどっぷり浸かりすぎて、現実の男がどうしても嫌だった。

「ちょっと明那。パパまだ寝てるんだから…あら。起きちゃった」
 エプロン姿の上条綾那がやってきた。ちなみに出産を経験したからか胸はBにまではなっていた。
「もう大丈夫だよ。でもコーヒーくれないか。ママ」
「はい。もう沸かしてありますよ」
 結婚して18年。明の仕事が刑事で不在がちなのが逆に「恋心」を長持ちさせていた。
 逢えない分だけ一緒のときは尽くしてあげようと。

 明はベッドから降りる。そしてダイニングキッチンへと。それについていくファザコン娘。
「明那も今日から高校生か。僕がママに出会ったみたいに素敵な出会いもあるといいね」
「イヤッ。男の子なんて恐いから」
 筋金入りである。
「でもマサちゃんは平気なんでしょ」
「マサちゃんは優しいからいいの。みなちゃんも女の子みたいに可愛いし」

 新宿区。榊原医院の住居部分。
 もともとビルになっていて上の階は空き部屋もあった。
 そこに榊原和彦。真理夫妻が入居した。

 その一室。鏡に向かって念入りにチェックしている金髪の少年。
 かつての「村上真理」がそのまま男になったかのような容姿だ。
「よし。完璧だ。今日もオレは美の女神に愛されている」
 黙っていれば確かにいい男なのだが…
「あ・ほ・かぁーっ」
 高々と上げた足が金髪の少年の脳天に落とされる。
「ぎゃんっ」
 まともに食らって悶絶する少年。
「マサ。朝っぱらから気色悪いこと言ってんじゃないよ」
 スカート姿と言うのに「踵落とし」を見舞う村上…榊原真理。
「いってえな。何すんだよ。母ちゃん」
 金髪の少年…真彦は脳天を押さえて抗議する。
「まったくあんたはチャラチャラと。見た目はアタシそっくりなのに中身は父親生き写しだね」
 性別以外は見事に真理の容姿を引き継いだが、すけべな性格は父である和彦からそのまま受け継いだ。
 彼の名前は榊原真彦。やはり両親の名前をもらっている。
「あんたがそんなだから明那は男嫌いなんじゃないの」
 人の子でも我が子同様に扱っていた。
「アイツは特別なんだよ。そういや赤星の奴。高校からは女で通すとか言ってたけど、そのせいか?」
「どうでもいいけど男のクセにいつまで鏡見てんのよ?」
 いつの間にか一人の少女が入ってきていた。
「ね…姉ちゃん」
 真彦の姉。榊原ゆかり。17歳。無限塾の三年生となる。
 本当に小山ゆかりの生まれ変わりと思うほどだった。メガネまで同じである。
「どいて。使うんだから」
 性格はずいぶんと違うようだ。強引に鏡の前から引き剥がしてしまう。
「あつつ。まったく」
 ぼやく真彦に追い討ちをかける真理。
「ほら。さっさと朝飯にしな。片付きやしない」
 彼女のこういう言い回しは元々の性格もあるが…
「兄ちゃん。遅刻するよ」
「お兄ちゃん。ご飯食べよ」
 中学生の次男。和也と小学生の侍女。真子が呼びにきた。
 真理はこの時点で四人の子持ちだった。
「はいはい。あんたたちも食べな」
 少女時代の孤独はどこへやら。自分を含めて一家六人。その世話で毎日がてんてこ舞い。
 もうケンカはしていないが言葉遣いも相変わらずの荒っぽさだ。

「おい。真理。お前さっき何してた?」
 榊原和彦。43歳だが…三十台に見える。
 老けた顔をしていたが顔が変わらず、とうとう実年齢が顔の印象の年齢を追い越してしまった。
「なにって…マサが寝ぼけてたから一発…」
「バカか。もう高齢出産になるんだから気をつけろ」
 烈火のごとく怒る榊原。
「えっ? 確かに最近きてないけど…」
 実は自分でも「もしかしたら」と思っていた。
「……わかるよ…もう四人もいるんだ。お前の様子もな」
「そ…そうなの…また新しい家族が」
 このときの真理の表情。それは見ている方が優しい気持ちになる幸せそうな表情だった。
「やったね。母ちゃん」
 手を取って祝福する真彦。彼が女性の手を取るのはもはや条件反射ではなく「脊髄反射」である。
「あ…ああ…うん。アリガト。マサ。あんたは弟と妹どっちがいい?」
 既に妊娠しているのだから変えられるはずもないが聞いて見た。
「俺は妹がいいな。『お兄ちゃん』に絶対服従の可愛い妹か」
「なに言ってんのよ。かわいい男の子がいいに決まってるでしょ」
 良く似た性格の姉と弟であった。
「僕は弟が欲しい」「あたしは妹がいい」
 兄弟たちが大騒ぎする中で夫は妻を気遣う。
「高齢出産で危険だぞ…といっても聞かないんだろうな。お前は」
「当たり前でしょ。子供は授かり物なんだから。だいたいカズががんばりすぎるから」
「あははは。俺は生涯現役だぞ」
「父ちゃん。俺も父ちゃんみたいになりたいぜ」
 父の変なところを心から尊敬している真彦だった。その彼を後ろからスリーパーホールドを仕掛けるゆかり。
「あんたはまた変なことを」
「苦しい。苦しいよ。姉ちゃん」
(ああ。俺も若いころは姉ちゃんにあれやられたっけなぁ…)
 小学校の教師をつとめている姉に思いをはせる和彦。その間もゆかりは容赦なく締め付ける。
「風姫ちゃんにお仕置きされてきなさい」

 北条屋敷。
 十条ほどの部屋に母と娘はいた。
 北条姫子。43歳。しかし上品な歳の取り方をしていたため、大人ならではの美しさがあった。
 学生時代のトレードマークの長い黒髪は健在だが、纏め上げてある。
 既婚者と言うこともあり着ているものも落ち着いた留袖になっている。
「風姫(ふうき)さん。今日から高校生ですね」
「はっ。母上の母校で修行してまいります」
 北条風姫。姫子譲りの美しさ。特に髪の毛の美しさは若さもあり輝いていた。
 それ以外は父である十郎太に良く似ていた。
 高い身長。細身の体。なんといってもその射抜くような鋭い目つき。
 そして名前。その年の春に生まれたみなせが両親の名前を受け継いだことから夏に生まれた真彦。秋生まれの明那と同様に名づけられていた。
 しかし「十郎太」と「姫子」ではやりようがない。
 そこで嫁にいき苗字が変っても風魔の一人であることを示すため「風」。
 そして姫子の「姫」を取り名づけた。
 「かぜひめ」と読ませる案もあったが音から「ふうき」と名づけられた。
 だが彼女はもう一人から受け継いだものがあるがそれは後述する。
「もちろん勉強も大事ですわ。けれど、友達はもっと大事ですよ」
 相変わらずの鈴を転がすような声音。母親となったせいか優しげな口調に拍車が掛かっていた。
「わたくしはあそこでお友達を得ました。そして世間知らずから脱却できました」
 後半は少々眉唾物。本人はでたらめを言っているつもりは無いが、やはり世間の人か見たらかなり危なっかしい。
「風姫さん。学生生活。楽しんでらっしゃいね」
 にっこりと柔らかい笑み。風姫は何度も見ているが何度も見惚れる。
(これだ…この微笑み…母上こそ理想の女性。私も母のようになりたい…)
「はっ。高校生活。楽しんでまいります」
 深々と礼をする。この辺りの「硬さ」は父譲り。
「そうそう。忘れるところでした。倫敦の愛子さんからお祝いが届いてますよ」
「えっ? 伯母上がおられるのは確か北京では」
「あら。そうでしたっけ」
 贈り物の贈り主の住所を見る。
「紐育ですわね…これを送ったときは」
 姫子の妹。愛子は姫子が正式に北条家の跡取りとなったと決まった途端に家を出た。
 どうやらガマンしていたらしい。彼女にとっては北条家どころか日本すら狭かった。
 世界中を飛び回りビジネスに勤しんでいる。その結果未だに独身だが、彼女の目にかなう男もいなかった。
 ロンドン。北京。そしてニューヨークと渡っていた。
 贈り物は可愛らしいブラウスだった。手紙が一通。
「これでステキな彼氏のハートを射止めなさい」と。

「ところで母上」
 風姫は顔を上げて尋ねる。
「なんでしょう?」
「父上はいずこに?」
「十郎太様ならいつものように道場におりますわ」

 北条屋敷内の道場。そこで対峙する風間十郎太ともう一人の男。
 十郎太が徒手空拳なのに対して、その男は木刀を持っていた。
 オールバックの木刀の男は静かに神気を高める。
「行くぞ」
「参れ」

 声をかけると同時に飛び出す。心臓目掛けて切っ先を。だがそれを左手で捌く十郎太。いや。直前で変化したのだ。胴を薙ぎに掛かる。しかしそれも読んでいた。小さな動きで交わす。
 互いに通り過ぎてしまった。向きなおり対峙する。だがふと笑みが漏れる木刀の男。
「よそう。このくらいでいいだろう。風間」
「うむ。そうでござるな。秋本」
 風間十郎太43歳。そして秋本虎次郎45歳だった。
 両者共に日本刀のような凄みは健在。二人とも鞘に収めた日本刀だ、秋本は以前のような抜き身の刀のような危なさはなくなっていた。
「やはり守るべき存在と言うものは力を与えるものでござるな。紙一重でござったよ」
「いやいや。俺もぬるくなったよ。真弓と知り合ってからな」
 結局、押しかけられた真弓とそのまま結婚してしまった。
 そして見事に「更生」した。改めて剣道をやり直しあっという間に有段者に。
 現在は剣道を教えて生計を立てている。北条家にも出張できている。
「父上。こちらですか」
 風姫の声。そして姿が。
「父上。それに師範。おはようございます」
 正座して頭を下げる。
「うむ。おはよう」
「おはよう。風姫。今日から高校生だったね」
 秋本は彼女の剣の師匠である。忍びの体術。姫子譲りの薙刀や弓の技術も武器だったが、彼女の最大の力は剣術だ。
 そこに忍びの対術をミックスして独自の剣技を編み出していた。
「父上。師範。あの…」
 探しにきたらただならぬ気配に驚いてしまったのである。
「ああ。すまない。驚かせたか」
 秋本が苦笑する。
「うむ。お主が無限塾へ入学する日でな。懐かしくなってしまったのだ。それであの時のように秋本に相手をしてもらったのだ」
「あの頃は俺もとんがっていたが…お互い歳を取ったな。何しろおしめをしていた風姫がもう高校生だ」
「師範!!」
 おしめをしていた時代を言われて赤くなる風姫。つい声を荒げてしまう。笑いが起きる。
「し…失礼しましたっ」
 慌てて謝る風姫。
「いやいい。そのくらいでいい。風姫、お主の名の『風』には風魔の願いが。そして『姫』にはお主の母の祈りがこもっている。だが何もかもをその小さな肩に背負わずとも良い。楽しめ。そして人を学んでこい」
「はっ。父上。仰せのままに」
 やはり血筋と言うか、過剰に礼儀正しい。
「風間。いいお嬢さんになったなぁ。ウチのバカ娘に爪の垢でも飲ませてやりたいよ」
「愛妃緒ですか…」
 表情を曇らせる風姫。
 秋本愛妃緒(めひお)。虎次郎の一人娘。そして風姫の幼馴染にして「修行仲間」
 だが父親の学生時代を知ると愛妃緒は反発を覚えだした。
 「不良」だったことに対してではない。
 「不良」だったのにすっかり丸くなってしまったことに失望したのだ。
 以来家を飛び出していた。
「居場所はわかっている。昔のよしみで面倒見てくれているから心配はしてない」
 ふと寂しそうに笑う秋本。彼も父親になったと言うことか。
「だが風姫。今日辺りは無限塾に現れるかもしれないぞ。そのときは」
「……そのときは……」
「遠慮は要らん。全力で叩きのめしてくれ」
「そんな…師範の娘を…」
「いいんだよ。俺もお前の親父に何度も叩きのめされてこうして真人間になったんだ。あいつもきっと…それに言葉ではウソは言えても拳ではいえない。本当の気持ちはきっとアイツの心を動かす」
「さて。風姫。朝餉はまだでござろう。共にいただくとしよう。秋本。お主もどうだ?」
「それではお言葉に甘えるとしよう」

 悪漢高校と言う呼び名は未だ健在だった。校風も変わっていない。
 しかし大きく変わったのが現在の四天王。全てが少女なのだ。
 そしてその中に秋本愛妃緒もいた。
 彼女たちは今「校長」の意向で、出撃準備中だった。

 練馬区。喫茶レッズ。カウベルが開き人が。準備中の札は立ててある。それでも入ってくる人物と言えば関係者となる。
 今はもうそれぞれの生活があるが、かつてはここで暮らしていた一家が久しぶりに勢ぞろいした。
「みなせ。進学おめでとう」
「薫おばさま」
 渡辺薫。旧姓・赤星。彼は…いや。生物学的にではなく社会的な立場で「彼女」と呼ぼう。
 彼女は『女』を貫き通し、似たような境遇の渡辺千明の元に「嫁入り」していた。
 現在はブティック経営。性別を超えた感性がいいのか、経営は順調のようだ。
 身体的負担が大きいのでホルモンなどはしていない。だが服を着ている限り女にしか見えない。
 声すらハスキーな女声に聞こえる。喋り方が完全に女のそれなのだ。
 社会的には完全に女性として扱われていた。

「みなせ。これは僕から」
 赤星忍。38歳。職業・美容師。
 やはり血と言うべきか女性的なセンスがあったようで、カリスマとまではいかないが従業員を何人か抱えられるほどには繁盛していた。
「みなせちゃん。これはあたしから」
 傍らの派手な女性は忍の妻。あゆみ。
「ありがとう」
「んっんー。制服姿も可愛いわね。しのぶぅ。何で貴方は男子で通学してたのよ?」
「無茶言わないで」
 二人の出会いは大学時代だった。
 可愛い顔立ちと小柄な体格を買われて学祭の「女装コンテスト」に出場させられたのが縁だった。
 押しの弱い…根っからの被害者体質の忍に断れるはずもなく、渋々出場。
 そこで観客だった彼女に一目ぼれされてしまった。

 ちなみにコンテストは一旦は「本物の女の子疑惑」をかけられて失格寸前だったが、裏で確認して一応男と認められてぶっちぎりで優勝だった。
 ただし翌年から「レベルが違いすぎるから」とエントリーを認められなくなった。

 だがあゆみは忍に猛アプローチをかけて陥落。
 以来、何かと言うと自分のマンションに連れ込んでは女装させて楽しむように。
 初めは嫌だったが、心のどこかで二人の兄に対する憧れがあったのか室内限定でと言う条件で積極的になってきた忍。
 面白いことにそれが美的感覚を磨いて、美容師になる手助けになった。
 そしてそのまま結婚まで。

「オヤジ。オフクロ。悪いけど午前中だけでも頼むわ」
「ははははは。この赤星秀樹。まだ楽隠居するには早いぞ」
「特別な日ですもの。一日くらいなら大丈夫よ」
 赤星秀樹。瑞枝夫妻。既に七十を超えた秀樹は本業の警視庁特別捜査官はとうに辞め、喫茶店マスターの座も瑞樹に譲っていた。愛する妻の瑞枝と悠々自適の毎日だ。
 しかしこの日は孫のみなせが入学式で両親揃って店を空けざるを得ない。
 そこで助っ人を買って出た。

「みなせ。はい。進学祝よ」
 綺麗にラッピングされたプレゼントを手渡す。
「わぁー。ありがとう。おばさま。開けていい?」
 瑞樹のように途中から女になったわけではなく生まれ付きの変身体質。
 基本は男といえど、女としての言葉遣いはなれていた。
「もちろんよ」
 こちらも年季の入っている女っぷりの薫。チャーミングにウィンクする。
 みなせは丁寧に包みをはがす。そしてふたを開けると愛らしいデザインのワンピースが。
「きゃーっ。ステキーっ」
「うふふふっ。あなたももう高校生だものね。ステキに着飾って男の子のハートを射止めないと」
 誰も気がつかなかったがみなせの表情に影が。
「……おばさま。ありがとうございますっ」
 前半は暗め。後半は明るく礼をする。
(やっぱり…好きな娘がいるのか。それでいて女の子の姿で高校生を過ごすと言うなら…やはり…)
 自身も同じような青春を過ごしてきた瑞樹はさすがに感づいていた。

 文京区のマンション。上条明の携帯電話が鳴り響く。
「はい。もしもし。ああ。ガンちゃんか」
 どうやら同僚からの電話のようだ。
「ああ。その件なら木下さんに頼んであるよ。他には? ない。それじゃ」
 電話を切ると不安そうな表情の愛娘。
「パパ…お仕事?」
「ああ。裁判所に提出する書類のことを聞かれてね」
「じゃ入学式は?」
 不安そうな…泣きそうな表情になる明那。その頭を優しくなでる明。
「大丈夫。裁判は明日。今日は一日休みをもらってるから。よほどの大事件でもない限り呼ばれないよ」
「よかったぁ」
 母譲りなのか全身で抱きついてくる明那。
 ファザコン故に他の男が恐いのか。他の男が恐い分、父にだけなつくのか?
「明那。パパ。そろそろでかけないと」
 既に出かける準備の済んでいる綾那が呼びにきた。
「まだ大丈夫だろう。ウチは近いぞ」
「もう。パパッたら。待ち合わせがあるのよ」

 新宿区。火事場の忙しさだった。
「ほらもう。マサ。いい加減に鏡から離れな。ゆかり。髪の毛はねてるよ。真子も和也も食べ終わったの?」
 既に四人の子持ち。悠長に「優しいママ」でなどいられない。
 学生時代からの貫禄が増していた。
「真彦」
 和彦が耳打ちするように長男に。
「夜になったら進学祝でソープ連れて行ってやるぞ。これでお前も一人前だな」
「うわぁ。ありがとう。とうちゃん」
 しかしそんな会話を聞き逃す真理ではない。
「あんたたちはーっっっっ」
 瞬時に「ガンズン・ローゼス」を両手から繰り出して夫と長男の首に巻きつけ吊り上げる。
「ぐえっ」
 絞首刑の完成だ。
「わーい。父ちゃんとにいちゃん。怒られてる」
「おこられてるー」
 意味がわかっているのか無邪気にはしゃぐ子供たち。呆れ顔の長女・ゆかり。
「あんたらは…ほら。バカいってないでちゃっちゃとしたくしな」
 少女時代の孤独がウソのような騒々しさだった。

 朝食と言うのはどこでも質素なものだ。北条家も例外ではない。
 ご飯と焼き魚。味噌汁である。
 だがこの日はめでたい日と言うことで赤飯が。魚も鯛である。
「過分なご祝儀。ありがとうございます」
 風姫は感涙していた。この辺りは父譲りか。
「堅苦しいところはお前さんそっくりだな」
 こういう冗談を言える間柄になった秋本。
「これも親子の証明でござるよ」
 微笑む十郎太。余裕が出てきたと言うことだろう。
「さぁ。冷めない内にどうぞ」
 姫子のお手製だ。彼女は可能な限り料理を作る。
 家族のため…あるいはそれが北条家を背負った彼女の息抜きでもある。
「はい。いただきます」

 この日は特別な朝。だけどいつものように慌しく過ぎていく。
 やがてそれぞれ支度を済ませ、子供たちには新しい世界へ。
 親たちには懐かしい世界へ出向く時間になってきた。

 無限塾の最寄り駅。
 ここもすっかり変わってしまった。
 新しいビルも立ち並び、まるで違う場所のようだ。
 それでもがんばっている店などもある。
 なんとなくほっとした瑞樹。
 ちゃんと男に戻った彼はスーツ姿だ。40を超えているが、店では女性として通しているため襟足は長め。それを無造作にゴムで束ねていた。16歳の時のように。
 七瀬は女性用のスーツ姿。相変わらずのスカート派である。さすがに化粧はしているがピアス穴は開いていない。マニキュアもしていない。
 入学式の参列ということで過剰に飾るのを避けたのもあるが、もともとそんなに飾り立てるタイプではない。
 髪は天然の栗色。長さも高校時代のセミロング。
 やはり家事の都合であまり長い髪はよくなかったようだ。
 大学受験のころに元に戻してからは、マイナーチェンジはあるが概ねは栗色のセミロングのままだ。
 みなせは髪の色は七瀬譲りの栗色だが、髪質は瑞樹同様に直毛。
 セミロングくらいにはなっているが、父にちなんで襟足で束ねている。
 ただ女の子になりきるつもりの彼女はみずきと違い、可愛らしいリボンで束ねていた。
 そのみなせは落ち着かない。そわそわとしている。

「あっ。七瀬さん」
「綾那さん。久しぶりぃ」
 再会を喜び合う七瀬と綾那。大人同士で「さん付け」だったが、まるで少女のように飛び跳ねて喜ぶ。
 綾那はワンピースは相変わらずだか、さすがにおとなしいデザインになった。
 髪の毛はソバージュのロング。赤みがかっているのは変わらない。

 一方、男たちは
「君…赤星か?」
 グレイのスーツ姿の上条が怪訝な表情をする。
「まぁ無理ないか…オレがまともに男で通したのは3年の一学期だけだしな」
 上条の言葉に苦笑する瑞樹。納得行くので怒りはしない。
「いや。面影はあるよ。随分と渋みを増したなと思って。あのころは男バージョンでもどことなく女の子っぽかったが」
「お前もな。随分と歳を取ったよ。お互いに」
「あの子達を見ればそれをなおさら実感するよ」
 二人は互いの制服姿を評している娘たちを見ていた。

「わーっ。みなちゃん可愛い」
「ありがとう。明那もとっても可愛いよ」
 歯の浮く台詞で照れたのか? みなせの頬が赤い。白い肌とあいまって年齢にそぐわぬ色気がある。
「ほんと。こうしてみるとみなちゃん女の子の方がいいね」
 幼なじみである。変身体質は知れていた。
「うん。もうずっと女の子だから」
「そうなの?」
「そうだよ(君のために)」

 赤星水瀬は上条明那が好きだった。
 しかし明那は絶望的な男性恐怖症。
 接近可能なのは父親の明。そして幼なじみの真彦と水瀬だった。

 だが水瀬は恐れた。
 いつか自分が「逞しい男」になってしまったら、明那が離れてしまうのでないかと。
 筋肉がつき、背が伸びて、体毛が生えて「男」になってしまったら明那を失うのかもしれないと。
 明那を失いたくない臆病な一心から、水瀬は女子として通学することを決めたのだ。

 本気で女の子になってしまおうと思っているので、戸籍と違う性別での登校を認めてくれる無限塾を進学先に選んだ。
 何しろ自分の父が生き証人だ。
 そしてみなせの進学先を知った明那が両親の母校と言うことや、北条風姫が進学を決めていたこともあり進路を定めていた。

 昔話に花を咲かせながら、待ち合わせの後2家族を待つ。
 改札を見ていたら派手なスーツの男性がまるで首輪をつけられたように歩いていた。
 そのとなりには何か棒の様なもので頭を小突かれている金髪の少年が。
 榊原親子だ。
「あらあら」「あいかわらずだねぇ」「変わらないな」
 七瀬。明。綾那と言うマリオネットマスターたちには真理のガンズン・ローゼスが榊原の首に巻きついているのがわかる。
「よう。久しぶり」
 悪びれずにいう榊原。
「榊原。お前まさか電車で痴漢したんじゃないだろうな?」
「おいおい。いくらなんでもそりゃないだろ」
 「いくらなんでも」と言う言葉には「お前が警察官でも」と言う意味もある。
 ただ不特定多数の前では不要に身分を明かさないほうがよいと判断してのこの言葉だ。
「似た様なもんだ。このバカ。電車の中でナンパしようとしやがって」
 憤慨している真理。ワンピース…と言うよりドレスと言う方がしっくり来る。
(ワンピースも正確にはドレスだが)
 金髪ショートは相変わらず。両耳にはピアス穴が空いているがピアスはしてない。
「あれ? 真理ちゃんひょっとして」
 自分もピアスをして体験しているからかピンと来た綾那。怒りの表情から照れ笑いになる真理。
「えへへへ。五人目が出来たらしくて…」
 妊娠すると体質が変わり、金属アレルギーを起こすケースもある。
 そのため真理は妊娠するとピアスをつけなくなる。
 ちなみに綾那も痛い目を見たのでよくわかっていた。
「おめでとう」
 自身も二人の子持ちの七瀬の祝福。
「いやぁ。めでたいよねっ。だから恩赦ってことで…いい加減これどけない? フーキ?」
「ダメだ。貴様のような野獣を野放しには出来ん」
 小突いていたのは風姫だったのだ。
「信じられない奴だ。駅のホームでナンパなどと破廉恥なことをしおって…」
「………確かに榊原の息子だな」
 妙な納得の仕方をする瑞樹。
「風姫さん。そろそろ許して上げなさい」
 気品のある和服姿の姫子。たださすがにもう娘ではないため、地味な藍色の留袖だ。髪もアップにしている。
「うむ。もうよいのではないか?」
 助け舟を出す和服姿の十郎太。引き締まった肉体は変わらないが、多少貫禄がついた。
 いくら親友の息子でも人様の子供にあまり恥をかかせるのも考え物と十郎太は思った。
 しかしそれを振り切ったのが真理。
「いいんだよ。このバカにブレーキをかけてくれて助かるよ。フーキちゃん。高校じゃ頼むね」
「はっ。真理さん。心得ました」
 生真面目な風姫と軽い真彦。デコボココンビだった。
「それじゃみんな揃ったし。行こうか。久しぶりの学校に」
 瑞樹の言葉で移動を開始した。

 懐かしさがこみ上げてくる。
 登校の時はばらばらだが、下校の時はよくみんなで通った駅前商店街。
「考えて見たらさ、こうしてみんなでここを『学校に向かうの』って初めてじゃない?」
「私とはいつも一緒だったけどね」
 何しろ家も隣だった瑞樹と七瀬。
「言われてみたらそうかもな。あれ? あそこの本屋。なくなったのか? 漫画雑誌の早売りしてていち早く情報を仕入れられてよかったんだけどなぁ」
 どことなく高校時代に口調が近くなっている上条。
 いまでもマンガは好きな彼だが、さすがに忙しくて読めなくなってきている。
 アニメも無理だが、たまに非番だと明那がべったりとくっついて一緒に鑑賞していたりする。
「あ。あの喫茶店まだあるんだ。あそこのケーキ美味しかったんだよ」
 今でも細いが当時はもっと細かった綾那は、遠慮なしにケーキを食べていた。
「はじめは駅で切符も変えませんでしたわね」
「今にして思うとかなり世間知らずでござったな」
 夫婦になったのだが「上」に対する言葉遣いの十郎太。
 どうやら気持ちは当時に戻っているようだ。
「なんだかあの頃の事が夢みたいだ」
 荒んだ少女時代から一転して子沢山のお母さん。確かにそう思うのも無理はない真理のことば。
「夢なら俺たちゃ結婚なんてしてねーよ」
 榊原らしい言い回し。
 確かにあったからこそこうして結ばれ、そして子供たちがいる。

 親たちは過去を振り返り、子供たちは未来を見据える。
 新しく始まる高校生活に期待を膨らませていた。ハイテンションなのが明那だ。
「風ちゃん。今度は一緒だね。クラスも同じだといいね」
「そうだな。せっかくみんな同じ高校になったのだ。同じ組だとよいな」
 この四人。親同士が親友だから幼なじみではあるが、学区の関係で今まで一緒の学校になったことはない。
 これが初めてである。
 普通は進学で元のクラスメイトはばらばらになり、新しく知り合うのにこの面々は逆に高校でやっと同じ学校になる。
 明那が舞い上がるのも無理からぬ話か。
 メガネの奥の目が始終笑っている。
 それにつられてか普段は父譲りの鉄仮面の風姫も、母譲りの柔和な笑顔を見せる。

 明那から離れたのを見計らって真彦はみなせに近寄る。
「似合ってるな。制服」
「ありがと。榊原君も決まってるよ」
「『榊原君』って…調子狂うな」
 既に『女子』として振舞い始めているみなせ。笑顔も忘れてない。
「お前…まじか?」
「なにが?」
「まじで三年間、女で通すのかってこと」
「ええ」
 何を今更。そんな表情。
「信じられないな。そんな無理、俺にゃ出来ないよ」
「そう。そうでもないと思うよ。君も誰か本気で好きな相手が出来たら」
「……明那か?」
 普通なら「女で通す」などといわれたら相手が男と連想する。
 しかし事情はわかっていた。
「……なんで?」
 あっさり看破されて頬に朱が散る。
「みえみえだよ。いつ押し倒すかと期待してたのに」
「そんなことしたら一生嫌われて避けられる。そんなの嫌だ」
 口調が変わった。男の口調が出てきた。真相に迫られて「演技していられなくなった」ようだ。
「明那に嫌われるより、一生女でいた方がよほどいい。もともとどっちでもいけたんだし、戸籍は男だから『体は女同士のまま結婚』と言う手だって」
 覚悟がもたらす迫力がにじみ出る。
「一途だねぇ。お前のビジュアルなら女が放っておかないだろうに」
 中性的なみなせである。本来の男の姿もかなりの美少年だった。それを言っている。
「ま、俺としちゃライバルが減って助かるけどな」
 もちろん女の子を取られなくてすむと言う話だ。
 母譲りの美貌と父譲りのテクニック。過剰なほどの自信を持っていた。
 過剰なのは自信だけでなくてアクセサリーも。指輪やピアスなどもしていた。
 ただし金髪は地毛。クォーターなわけだが、物の見事に金色に輝いていた。
「でもあたしをナンパしちゃダメだぞ」
 ここでまた『女』に戻る。
「するわきゃねーだろ。ばーか。するのは…フーキ。お前だけだーッ
 話をしていたはずの真彦。それが突然体勢を変えて自分を抱き締めにきた。
 本人も明那との話に没入していたので完全に不意をつかれた。
「は…離せ。痴れ者。天下の往来だぞ」
「知ったことか。俺の愛はいつだって本気だ」
 じゃれあっていた。真彦が風姫に惚れているのは本当。
 だから気をひくために「つい」悪ふざけをしてしまう。
 しかし当の風姫には「たわけ」としか認識されていないのが悲しい現実だった。
「アタイもよくやられたっけ」
「そのたびに吊るされたけどな」
 息子の乱行を笑ってみている榊原夫妻。
「風姫。気を緩めるからそういうことになるのだ。真彦。構わぬからしばしそのまま頼む」
「あらあら。風姫さんと真彦君はいつも仲良しでいいですわぁ」
 大物夫婦であった。

そして……次の世代へ

このイラストは参太郎さんによって作成されました。
感謝を捧げます。

 無限塾。既に人知れず「そいつら」はいた。
 そしてターゲットの登場を息を潜めて待っていた。

 桜の舞散る懐かしい母校。かつての生徒たちはこみ上げる思いがあった。
「校舎が随分新しくなったんだな」
「本当だな。なんだか別の場所みたいだ」
 ちなみに老朽化していたところに襲撃をうけて半壊したのが原因である。
「杉の木も伐られたでござるか」
「でも、桜はそのままですわ」
 しかしあまりにも大きく変わりすぎた。
「なんかだか寂しいね…」
 泣き出しそうな綾那の表情。
「人は変わっていく。物もね…だが魂は受け継がれていく」
 刑事として人の汚い部分もたっぷり見てしまった上条のことばには重みが出ていた。
「ああ。オレたちの過ごしたここで」
「あの子達は新しい歴史を築くのね」

「何をしておる。新入生。さっさとこんかぁーっ」

 子供たちは初めての蛮声に驚く。親たちは懐かしい声に驚く。
「塾長……」
 あの無限塾塾長・大河原源太郎が校舎の前で仁王立ちしていた。
「まだ…この学校の塾長だったのか…」
「一体いくつだ…」
 しかし親たちは誰も笑みがこぼれている。歳こそ取ったものの変わらない人がいたと。
 それがなんだか嬉しかった。
「はーい。今いきまーす」
 すっかり学生時代に戻った綾那の返答。親たちの方が先に校舎内へ。しんがりだった赤星夫妻だが
「ぎゃん」
 瑞樹が何もないところで転んだ。それを見てますます顔の緩む榊原たち。
「ああ。懐かしいなぁ」
「ホントですわぁ。入学式を思い出しますわ」
「みーちゃん入学式で転んだんだ」
「それもパンツ見せてな」
「うわぁ。アタイだったらもう来ないぞ」
「三つ子の魂百までもでござるな」
 口々に懐かしがりつつきついことを。みなせの方がたまらなくなってきた。
「お父さん…恥ずかしい…」
 まだ校舎に入っていないみなせたち四人。父のドジに恥じ入る「娘」であった。
「もう。何年経っても変わらないわね」
「はは。もう慣れたろ?」
 笑ってごまかす瑞樹である。彼らだけ校門の辺り。

 その刹那である。
 物陰に潜んでいた四つの影が飛び出してみなせたち四人を取り囲んだ。
「なに? 何なの?」
 既にパニックに陥っている明那。
「何奴?」
 木刀のつかに手をかける風姫。
「こ…これは一体…」
 校風についても両親が入学初日に乱闘したのも聞いていたが、さすがにその覚悟はなかったみなせ。
「わぁーお」
 一人だけ能天気な真彦。襲撃者は女性四人だったのだ。それで歓喜の声が出た。
 ちなみにセーラー服姿の少女たち。
 彼女たちが名乗りをあげる。

「春日美優」
 小柄な少女は棒を構える。
「夏木由華」
 グラマラスな少女はチェーンを振り回す。
「秋本愛妃緒」
 鋭い目つきの痩身の少女は木刀を得物としている。
「冬野留美」
 ヘビのような目つきの少女は手ぶらだが、油断は出来ない。

「春日。夏木。秋本。冬野だって?」
「その名前って四季隊…」
 校舎内から戻ってきた上条夫婦の言葉。

「ふっ。その通りだ」

 威風堂々と校門から入ってくる中年紳士。スーツ姿が異様に決まっている。
 ダンディと言うよりは伊達男と言う表現の方がしっくり来る。
 その男は瑞樹たちより校舎に近い位置で立ち止まり、声高に宣する。

「オレは悪漢高校校長。大河原慎」

 かつての総番は教師に立場を変えて悪漢高校を支配していた。
 そして相変わらず無限塾との抗争を続けていた。
「さぁ。無限塾の新入生たちよ。オレからの入学祝だ。受け取れ。『四姫隊』(しきたい)の洗礼を」
「かーっかっか。オレ様自慢の娘だ」
「お父様。留美、がんばって期待に応えて見せます」
「美優。お前も負けるな」
「わかってるわ。パパ」
「由華。怪我だけはするんじゃないぞ」
「父さん。そんな弱気でどうするのよ」
 かつての四季隊のうち、秋本以外はなんと教師として悪漢高校にいた。
 そしてその娘たちが現在の四天王だ。

「なんと。四季隊とな」
「仕方ない」
 かつての宿敵の娘たちが自分の子供たちを。出ようとする榊原と十郎太を塾長が制止する。
「やめんか。みっともない。子供のけんかに親が出る気か?」
 それを言われると一言もない。
「十郎太様。信じましょう。わたくしたちの子供たちを」
「ああ。そんなにやわな育て方はしてないよ。カズ」
 妻たちに言われて矛先を納める二人。四人は上条夫妻を見る。
「刑事としてはあまり見逃せないけどなぁ…ま、この学校でこの程度は当たり前か。今も昔も」
「みなせちゃん。明那を守ってあげてね」
 そして視線は中庭のバトルに向けられる。

 榊原真彦はうるうるしていた。
「父ちゃん。母ちゃん。悪漢高校の人たちってすっげぇ親切じゃん。こんな気の利いた入学祝なんてさ」
 恐怖で涙ぐんでいたわけではない。むしろ喜んでいた。
 彼は拝むように手を合わせる。
「では入学祝。ありがたくいっただっきまーす」
 一番胸の大きい夏木由華を目掛けて抱きつきに。
「ひっ」
 恐怖に駆られるのは由華のほう。まさかこんな反応とは。
「よるな。変態」
 チェーンを振り回すが掻い潜り背中に回りこむ真彦。由華の背中の中央を人差し指でなぞる。
「ひぃぃぃぃっ」
 おぞましさに震える由華。助けは意外にも「敵」から来た。
「この痴れもの。恥を知れ」
 怒りでぶちきれた風姫が飛び込んできたのだ。だがそれをブロックする秋本愛妃緒。
「風姫。お前の相手はわたしだ」
「愛妃緒! 師範の元に帰れ。嘆いておられたぞ」
「嘆いているのは私だ。敵と馴れ合い家族ぐるみの付き合いだと? そんなあいつはもう親でもなんでもない」
「バカモノ。簡単に親子の縁など切れると思うか?」
「切ってやる。この剣で縁も、お前も」
 激しいつばぜり合いを演じる。

 腰が抜けた状態の明那。そこに獲物を見つけたヘビのように近寄る冬野留美。
「うふふふっ。あなた可愛いわね。可愛がってあげるわ」
 突然何か光るものが投げつけられた。だが
「シューティングスター」
 それを間一髪。父譲りの気の砲弾で防いだのはみなせ。
「くっ。よくあたしのワイヤーを見切ったねっ」
 憎悪の混じった視線をぶつけるが、みなせもただの女の子ではない。睨み返す。
「あんたが首を狙っていたのはみえみえだったからね。軌道さえわかれば見えなくたってボクじゃなくてもブロックできるよ」
 口調が男に戻ってきている。自己代名詞も「ボク」に。
「ふっ。なるほど」
 留美の口のはしが歪む。その表情の変化を見逃さなかった。
 その背後から音もなく春日美優が跳んでいた。ロッドを突きたてて明那を狙う。
 いや。それを庇うであろうみなせが狙い。体をかぶせて防ぐのを予想していた。
 しかしその予想は外れた。高々と蹴り上げる。母の技。
「アレグロ」
 落ちてきた美優の腹部を思い切り蹴り上げる。落下中だったのでいわばカウンターに。
「ば…馬鹿な…スカートであんな蹴りを…『女』なら躊躇くらいは…」
 カウンターゆえに効いていた。不意打ち失敗。
 みなせは明那を守るように立つ。そして宣する。
「大好きな明那はボクが守る。これからもずっとそばにいる」
「みなちゃん…」
 涙目で見上げる明那。そして歓声が湧き上がる。
 入学式に備えてそれぞれの教室にいた新入生たちが窓から見ていたのだ。
 そこに突然の少女同士の「大好き」と言う声。
 初日にいきなり「レズ確定」してしまった。真っ赤になる二人。

「まったく、あの子ったら」
 苦笑する七瀬。
「オレもこの噂には随分悩まされたよ」
 本当は男の子と女の子だがそれは当時はナイショだった。それを思い出した瑞樹。

「うふふふっ。元気がいいこと」
 突然聞こえた背後からの声に驚く夫婦。後ろを振り向くと若い女性が立っていた。
(い…いつのまに…)
 闘いからは離れていた。しかし接客業だけに人の気配には敏感である。それが気がつかなかった。
「ごめんなさい。驚かせてしまいました? 赤星瑞樹さん。及川七瀬さん」
「え…どうして私の旧姓を?」
 この15年以上「及川」の姓を名乗ったことはない。

 女性は中肉中背。ボリュームのある髪がカールしている。
 天然かパーマなのかは判別できないが、軽く茶色になっているところを見ると美容院でパーマと言う可能性が強い。
 大きな丸いメガネをしているが中々の美人。童顔だった。愛らしい顔をしている。
 また顔立ちによく合う優しい…まるでこの日の春の日差しのような暖かい笑みをたたえていた。
 服装はピンクのブラウスと白い上下。安産型の下半身がなおさら女性的な印象である。
 ハイヒールではないが踵の高い女性用の靴を履いている。
 恐らくは20代中盤。ごく普通の女性と見える。
「大丈夫ですよ。七瀬さん。あの子にはたくさん愛情を注いで育てたんでしょう?」
「ええ」
 即答だった。自信があった。それを聞いて満足げに若い女性は返答する。
「なら信じてあげてください。あなたの愛したお子さんを。まっすぐに育ったのなら、何があっても歪んだりしないはずですから」
 女性は遠い目をする。遥かな過去に思いを寄せるように。
「人は弱いものですね。歪んでしまうととことん低いほうへと流れていく。私は幾つもの過ちを犯しました。そのほとんどが自分勝手な思いから。そして心の弱さが導いたもの」
(過ち?)
 聞き過ごせない単語だった。
 あの宿敵は肉体から肉体に移れる。この女性がもしかしたら…
 そんな思いを知ってか知らずか独白は続く。
「せめてもの罪滅ぼしに母と同じ教師になりました。子供たちがかつての私のように歪まないように見守るために…罪人だからこそわかる正しい道へ誘うために…」

 彼女はそこでめがねを取り、二人に突き出した。よく見るとそのメガネは誰かのしていたものに似ている…
「これは私が死なせた女の子のつけていたものに良く似た伊達メガネです。ここで教師を続ける以上、二度とあんなことをしないための約束の印です」
 夫妻は驚いた。彼女が涙を流したからだ。それはまるで悔恨の涙に見えた。
 だがそれを振り切り正面を強い瞳で見据える。
「そんな歪んだ人間でも真人間にするんだから母の愛情ってきっと強いんです。だからきっとお子さんは強い子です。心配は要りません」
 確かに女子としての通学を決意したと告げるその表情には覚悟を感じた。意志の強さを感じた。
 そして今の行動から察するに、それはきっと明那が好きだからと夫妻は感覚的に理解した。

「わたし、女になれて幸せと思ってます。だって母親になれるから。ありったけの愛情で子供を愛せるから。そして何より命を作れるから」
 その表情はまったく屈託がない。本心でいっていると思える。
「あの…あなたは?」
 恐る恐る瑞樹が尋ねる。
「あら嫌だ。私ったら。おしゃべりに夢中になっちゃって」
 恥じ入る女教師。そして僅かに笑みを…柔和な笑みを残して挨拶をする。
「はじめまして…お久しぶりの方がいいでしょうか? 赤ん坊の時以来なんですけどね。私は赤星みなせさんの担任になる高橋愛と申します」
「高橋…」「愛…」
「母はここで体育教師をしてましたわ」
「ああ!」「あの高橋先生か」
 赤星夫婦はこの女性の顔に見覚えがある理由を理解した。面影か。

「息子さん…娘さんは責任持って預かりますのでどうか心配なく。さしあたって…そろそろ止めた方がいいかしら?」
 乱闘はまだ続いていた。
「こらーっ。いい加減にしなさーい」
 甲高い声で止めに掛かる高橋愛。その後姿を見ながら疑念を口にする。
「もしかして…あの人って…」
「まさか…な。性別や年齢は憑いた相手次第としても、あの性格は絶対別人だぞ」
「そうじゃなきゃ…完全にまともになったと言うことかしら」
 もしそうなら母の愛とはなんとすごいのだろう。二人はそう思った。

 勝ち負けで言うならこれは心まで更生させた瑞樹たちの完全勝利…否。やはりこれは母親の愛情の勝利だろう。

 ぼんやりと騒ぎを見ている二人。
「母の愛情か……なあ、母さん」
「なぁに。お父さん」
 すっかり中年夫婦の会話を交わす二人。
「確かにオレたちはみなせに愛情は注いだつもりだ。菜珠樹にも。けど…本当にオレが父親になってよかったのか? 変身体質をしょって生まれてきて…これでよかったのか?」
 ずっと苦悩していた。その責めもあり自分も店では同じように女として振舞うことにしていた。
「そうね…私も…たまに男に変身したいと思うことがあるわ」
「なんだってこんな体質に?」
 七瀬の意外な言葉に思わず声を大きくする瑞樹。
「それなら家族みんな一緒だもの。私も貴方や…男の人の苦労がわかると思うし」
「いや…しかし…」
 言い続けようとするが舞散る桜の花びらと七瀬の人差し指に遮られた。
「貴方は優しいもの。女の苦労がわかるから…きっと他のどの男の人よりも優しい。それでいいじゃない」
「う…」
 瑞樹の方が照れてしまって言葉が出ない。

 桜の花びらは雪のように舞い散る。幻想的な空間を作り出していた。
 思えばあの自分たちの高校生活始まりの日もこんな風に桜が舞っていた。

「なぁ。それでも…オレと一緒になって後悔してないか?」
 こんな体質の自分と言う意味だ。
 七瀬はゆっくりと屋上を指差した。
「あの時、あそこで言った言葉を覚えている? 聞こえないなら一生耳元でささやくといったあの言葉。あのころと気持ちは変わらないわ」
 上げた手を下ろして瑞樹の顔を見る。そして微笑みながらささやくように言葉を紡ぐ。

「好きよ。大好き。愛してる。瑞樹」

 忘れていたその言葉で迷いが消えた。
 変身体質がなんだ。こんなに自分を愛してくれる素晴らしい女性がいるじゃないか。
 そう思うと晴れやかな気持ちになった。そして照れも何もなく彼女への言葉を紡ぐ。

「オレもだよ。七瀬」

 この言葉で二人は改めて恋に落ちた。かつてのように名前で呼び合う。
 どちらからともなく、まるでキスをするようにそっと手をつないだ。

 瑞樹と七瀬は、桜の花びらの舞い散る無限塾を見上げて、しばしの間ここで過ごした日々に思いを馳せていた。











出演

赤星瑞樹 及川七瀬

上条明 若葉綾那

榊原和彦 村上真理

風間十郎太 北条姫子

赤星秀樹
赤星瑞枝
赤星薫
赤星忍

及川虹子

上条繁
上条あかり
上条輝

若葉朝弥

榊原涼子

村上達也
村上絵梨香

風間九郎
風間葉月
風間弥生

北条愛子

藤宮博

麻神久子
谷和原友恵
佐倉みなみ

大河原慎

春日マサル
夏木山三
秋本虎次郎
冬野五郎

竹之内真弓

橘千鶴
坂本俊彦
入来蛮

氷室響子

小山ゆかり

中尾恵

中尾勝/斑信二郎

無限塾塾長・大河原源太郎




Special Thanks

この人がネット上での展開を勧めてくれなかったらこんなに皆さんに読んで貰えなかった

超売れっ子プロデューサーさん



美麗イラストで花を添えてくださったイラストレイター様方

参太郎さん

酔生夢子さん

猫宮にゃおんさん

くろねあずささん

たっぷさん

浅峰るかさん

陽崎杜萌子さん

見田航介さん



そしてご愛読くださった皆様に愛と感謝を込めて…

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