七月。夏真っ只中。
 朝から気温がうなぎのぼり。
 クーラーを使用していたために部屋の窓を閉め切ったのはいいが、そのために朝は蒸し風呂状態になっているというのもよくある話。
 この部屋でも一人の少年がうなっていた。
 背は低い。164センチだからヘタすると女子にも負ける。
 顔も女の子のような可愛らしい童顔。男の子としては全体的に華奢。
 襟足まで伸びた髪のせいかなおさら女の子に見えるが、タンクトップから覘く引き締まった胸は、どんな貧乳の女の子でもありえない薄さで、男の証明をしている。
「………うぅぅ」
 発する声も男の子にしては高め。うなり方が激しくなる。
「だぁぁぁぁーっっっ。暑いーっっっっ」
 とうとう暑さに負けて跳ね起きた。
「ちっきしょう。暑くって寝てらんねぇぜ。何時だよ…」
 彼は時計を見ようとした。その瞬間に目覚ましのベルがなる。ちょうど起きる時間だったのだ。
「……ならいいか。あー。暑いなぁ……さて……シャワー浴びるか……」
 凄まじい寝汗だからもっともな言葉である。
 だが彼がタンスから取り出したのは女物の下着である。
 そして男の子の部屋にあるのは異質な衣類。
 半そでの白いセーラー服と紺色のプリーツスカートを手にした。
 彼、赤星瑞樹は自室から風呂場へと、けだるそうな足取りで向かった。

 ピンクのネグリジェの少女。
 誰が見ても美少女と言い切る愛らしい顔立ち。
 プロポーションはまだ子供だが、それでも充分に可愛らしかった。
「ううーん。優介ぇ。大好きぃ」
 「子供」にしては大胆な寝言を言う。
 その様子と可愛らしい寝顔を三人の「メイド」が見ていた。
「どうしよう。何かいい夢を見ているみたい」
 メガネのメイドが困り果てたように言う。
「もっといい気分なら起きるんじゃない?」
 ロングヘアのメイドが答える。
 言うなり彼女・中川雪乃はタオルケットをそっとはがして、少女の胸元に手を当て、ゆっくりともんだ。
「ひゃあああっ」
 いきなり跳ね起きる少女。
「あら。敏感」
「うん。感度良好」
 感心しているメイドたち。
「あ…あんたたちねぇっ、まともに起こしたらどうなのよっ」
「お嬢は寝起き悪いしねぇ」
 金髪のメイド。高山陽香が言う。
「まりあお嬢様。おはようございます」
 何事もなかったのようににっこり微笑むメガネのメイド。杉本八重香。
「……ハイ。おはよう」
 女三人相手では口げんかに勝ち目はないと、自分も女の身ゆえに理解できている高嶺まりあであった。
 だからあっさりと流した。
「着替えるから出て行ってくれる?」
「朝食が冷めないうちにどうぞ」
「わかっているわよ」
 三人のメイドはそれで引き下がる。
「ふぅ。まったくあの人達は。さぁて」
 朝食のさめないうちにとはシャワーもこみである。
 彼女は着替えと、吊るしてある半そでの白いセーラー服を手にすると浴室に向かった。

 朝。暑くてたまらずのそのそと起きる。
 僕、二村司の寝起きは爽快とはいえなかった。
「うわぁ……汗ぐしょぐしょ。姉ちゃんや洸ちゃんが入り終わったら僕もシャワー浴びよう」
 なんといっても女は色々時間が掛かる。我が身を持って思い知らされている。
 二人とも髪が長いからそれを乾かしたりセットするだけでも大変だろう。
「男」の僕は体だけなら簡単にすむから後でもいい。もっとも髪は二人に負けず劣らず長いから、そのセットには時間かかりそう。
 気のせいか最近、髪質がさらさらになった気がする…

 僕は胸元に汗で張り付いたパジャマを引っぺがす。とんでもなく不快感。
「女の子は大変だよなぁ…どんな暑くて胸に張り付いてもノーブラじゃ揺れるし痛いし、結局は強制されているようなものだな」
 いや…僕もそうか。ただ男の姿でいれば必要ないけど。
 女として生まれて育っている人たちは、ある程度の成長したら絶対にいるしね。

 ああ。こんなに暑いとプールの授業が楽しみなくらいだ。念のため前夜に用意した物を確認する。
 男物の水着。そして…いわゆるスクール水着。
 流されると、これもありえる。
「シャワーの前にご飯にしちゃおうかな」
 僕はパジャマ姿のまま一階へと降りていく。

 学生服姿の大男。高岩清良は奇妙なバイクで疾走していた。
「キャロル。敵の位置がわかるか?」
「はい。間もなく遭遇します。しかし…このパワー」
 清良が会話しているのは「バイク」である。
 別にハイテクによるカーナビと言うわけではない。
 それ自体が「生きたバイク」なのだ。

 程なくして清良はバイクを止めた。場所は河川敷。
 清良の視線の先には一体の異形が存在していた。
 それは恐竜。いや、むしろドラゴンと言いたい姿をしていた。
 顔と胸元は人間の女のそれだ。
 そのドラゴンの周辺には空手着やスポーツウエアの男たちが倒れ伏していた。
 それがやがて女へと変化する。
 ヘルメットを外してしかめっ面を見せる清良。
「くそったれ。さしづめドラゴンアマッドネスと言うところか」
「ふふふ。お前も我が奴隷となれ」
 ドラゴンアマッドネスは強固なシッポを振り回してくる。
「おっと」
 鈍重な動きだったので瞬間的に難なく飛びのくと清良は足を七三に開く。
 そして右手を天に。左腕を地に向ける。
 右手に紅の。左手に蒼のガントレットが出現する。それを水平に運ぶ。
 両腕を腋にひきつけると、思い切り突き出してクロスさせた。

「変身!」

 瞬間的にその姿がセーラー服の少女戦士へと変貌する。

「戦乙女ぇ! セーラぁっ」

「ほう。高岩。お前がセーラだったのか」
「……オレの名前を知っているということは…正体はウチの生徒か」
「これから死ぬ奴に関係ない」
「だったらぶちのめして正体を暴いていやる」
 セーラー服の美少女戦士・セーラは果敢にドラゴンに飛び掛って行った。

城弾シアター50万ヒット記念

「オールスタークロスオーバー」

 赤星瑞樹は一糸まとわぬ姿でシャワーをあびていた。
 ぬるま湯で汗を落とす。
 それからもう一つの目的を果たすべくシャワーの水温を下げた。
 水温が心地よい冷たさになったころ、浴びていた少年の姿も変化する。
 筋張った肉体はなだらかな肌に。
 もともと細身だったが華奢といっていい体に。
 平たい胸が豊かに女性のシンボルへと。
 男のシンボルは既に消失して、男を受け入れる形になっている。
 もっともどちらでもみずきは「まだ」だったが。
 男としては白いほうにはいる肌は、女としては白くない肌へと。
「んっ」
 漏らす声も可愛らしい少女のそれに。

 みずきは少女へと変身した。

 中学三年の時、事故で30度以下の水を被ると女になり、40℃以上のお湯を被ると男に戻る体になった。
 それゆえ突然の雨。夏季の水泳の授業を考えて学校では女子として通している。
 だから登校の際には女子の肉体にならないといけない。

 一年を無事に乗りきり、今は2年の夏を迎えていた。
 この体質を知るものは一部の人間だけ。
「はぁ。夏は胸に張り付いて嫌なんだよなぁ」
 ブラジャーのホックを背中で留めながら文句を言う。
 一年のときはしばらくだめだったが、既に一年半も着用している。
 すっかり扱いにも慣れてしまった。

 スカートをはいて、セーラー服のトップスを被る。タイを調整する。
「こんなもんかな」
 朝食を採るべく「彼女」は浴室を出た。

「髪を切ろうかしら?」
 朝食を採り終えて、雪乃が髪を整えている最中に唐突に言い出すまりあ。
「どうしたんだい? いきなり」
 大学生の兄。修一が優しく問いかける。
 この家には修一とまりあの兄妹。そして世話係の三人のメイドが住んでいる。
 一応は世帯主の修一だが、ここに住みたいと言い出したのはまりあである。
 修一は「保護者」として付き合っている。
「別に深い意味はありませんわ。毎日暑いんですもの」
「それならポニーテールはいかがです?」
 猛暑の中、ロングヘアを維持している雪乃の提案。
「左右に分けるのはだめですか?」
 いかにも可愛い物好きな印象のあるメガネの八重香。
「切るくらいなら編んだ方がいいんじゃ? せっかく可愛いのにもったいない」
 自身は無頓着に見える金髪のメイド。陽香まで切るのはもったいないという。
「そんなんじゃだめよ。髪を切って、ダイエットすれば胸をもっと薄くして…男の子のようになれば優介も…」
 冗談めかしているがまりあの本気を感じ取るメイドたち。黙ってしまう。
「お兄様。髪を短くしたら私も男の子のように見えるかしら?」
「無理だよ。まりあは可愛い顔しているからね」
 ぬけぬけと…そうはいえない。まりあの美貌。
 プロポーションこそ年相応のそれだが、顔の完成度はかなりのものである。
 なまじのアイドルや女優では勝てない。
 それほどだった。
「お嬢様。もったいないですよ。この綺麗な髪を切ったりしたら」
「だって…関係ない男の子は言い寄ってくるけど、肝心の優介には通用しないし。綺麗といっても姫子にはかなわないし」
 なに不自由ない「お嬢様」にも手に出来ないものがいくらでもある。
 それも「命」や「愛」というほどまで行かないレベル。
 もう少しで届くのに、指先が掛からないもどかしい思い。
「お嬢様は誰より可愛い女の子ですよ。例え髪を切って男の子の格好をしても、逆に女の子の可愛らしさが浮き出てきますよ」
 女としての先輩である雪乃が優しく諭す。
「そんなものかしら」
 まだ納得できない様子のまりあ。そのときインターホンの呼び出し音が。
『まりあ。おはよう』
 少女の声がする。
「優介? 今いくわ」
 家の中だというのに走っていく。
「優介さんじゃなくて双子のお姉さんの声だったけど」
「亜優さんがいれば優介さんがいると直結したみたい」
「恋する乙女だもんねぇ。やっぱ男にゃなれないよ」
 メイドたちは冷やかしつつも、愛すべきお嬢様の前途多難な恋路を優しく見守っていた。

「おはよう。お姉ちゃん」
 朝食を採るためダイニングキッチンに行くと小柄なツインテールの女の子。従姉妹の洸ちゃんがセーラー服姿で挨拶してくる。
「洸ちゃん。今はちゃんと男なんだから、お姉ちゃんはやめてよ」
「ごめんなさい。でも男の子のかっこうしても女の子に見える気が…」
「全部この髪が悪いんだ」
 僕は憤慨する。
 「体質」が発覚してというもの髪を切らせてもらえなくなって。
 今では背中に達する長さ。たぶん洸ちゃんみたいなツインも可能だと思う。
 長さだけじゃなくて質的にも。
「暑いし、切りたいよ」
「もったいないじゃない。せっかくここまで伸びたのに」
 ブラウスにロングスカートの女性…僕の姉ちゃんがやはりダイニングに来た。
「それに司。ロン毛はよほどいい男でないと似合わないわよ」
 どうもそっちの理由で切らせてもらえないらしい。
 友達から指摘されるけど、どう見ても姉ちゃんはブラコンだと。そうなの?
 何かというと人にスカート履かせたがるような人が?
「みんな。早くしないと遅れるわよ」
 母さんの声でみんな椅子に座る。いただきまーす。

 恐竜を思わせる巨大な怪物。その巨大なシッポがうなりをあげてセーラー服の少女戦士を襲う。
 巨大さから想像できないスピードのそれは、ガードした腕ごとセーラの腹部にしたたかにダメージを与えた。
(なんてスピードとパワーだ。さっきとは桁違いだ。近寄ることも出来ない)
 ただのセーラー服ではなく、魔力によって守られているため薄くて軽くても「ヨロイ」として機能している。
 それでも腹部にダメージを与えた。表層だけでなく子宮にまで達しそうなパワーだ。
「とりあえず攻撃は最大の防御ということで……キャストオフ!
 その命綱ともいえる「ヨロイ」を脱ぎ捨てた。
 女子体操服とブルマという身軽な格好になる。
 攻撃力。運動能力も向上したが、反面露出している部分の守りは薄くなる。
 しかし身軽さを生かして懐に飛び込もうとする。
 それならドラゴンアマッドネスとしたらシッポが体に巻きつく形で、なおかつ自分へのダメージになりかねない。
 その目論見だった。だが腕で簡単に弾き飛ばされる。
 パワーこそシッポに及ばないが、スピードは段違いに速い。
「だったら!」
 セーラは瞬時にレオタード姿の高速戦士。セーラ・フェアリーフォームへと姿を変える。
 唯一飛べるフェアリーは高度を高く取り、まっ逆さまに降下。脳天にキックを見舞おうとする。
「ライトニングハンマー」
「無駄だ」
 ドラゴンの頭上はシッポの守備範囲だった。
 攻撃が届く前に叩き落された。
「ぐぁっ」
 軽量さを確保するため極端に装備が少ないのが祟った。ダメージがほとんど軽減出来ない。
 地面に叩きつけられてうめく。辛うじて意識はつなぎとめている。気絶すると変身が解ける。それを避けるためだ。
「とどめだ」
 動けぬセーラに対して大きく尻尾を振り最大級の一撃を見舞おうとする。
「くっ」
 セーラの選択は攻撃。
 瞬時に肉体を再構成するのである。一度別の姿に変身すればある程度の傷やダメージはリセットされる。
 逆に言えばその姿を維持している限りダメージはそのままだ。
 フェアリーでは動けないため逆にパワーファイターのマーメイドフォームへとスイッチした。
 これで傷は消えた。ただ疲労。あるいは体力の消耗は回復できない。
 とにかく転じた姿のその怪力で尻尾を捕らえて攻撃に転じるつもりだった。
 ところがスピードが乗っていてとてもではないがとらえられない。
 陸上では鈍重なマーメイドではだめだ。
 結果として無様に弾き飛ばされる。そして川の中に叩き落される。
「セーラ様!」
 従者が慌てて天馬の姿に戻り主を救うべく飛んでいく。
「しとめそこねたか…まぁいい。あれだけやられてはむかう気にもなるまい。その間に儀式を…くくく」
 ドラゴンアマッドネスは目立つ巨体を人間の姿に戻した。
 ジャージ姿の男子高校生に。

 高校の最寄り駅。セーラー服姿の赤星みずき。そして傍らには栗色のセミロングの少女がいた。
 身長は164だからやや大柄。胸元も立派だが、少々ばかしふくよかかもしれない。
 優しげな顔立ちと、その母性的な体形で異性・同性を問わず慕われていた。
 彼女の名は及川七瀬。瑞樹の幼なじみで、その秘密を知るものである。
「薫ちゃんは今日はどうしたの?」
「日直とか言ってたぜ」
 傍目には美少女二人だが、会話は幼なじみである昔からの男の子と女の子として。
 だから「そういう関係」とあらぬ誤解を受ける。
 今もみずきがじっと見ている。
「ど…どうしたのよ。恥ずかしいじゃない」
 照れて俯く七瀬。
「いや。中学時代からずっとセーラー服だけど、やっぱお前にゃセーラーが似合うなと思ってさ」
「そう? ありがとう。でもジャンパースカートの制服もけっこう憧れなのよね」
「オレはどうせならブレザーがよかったよ」
「でもたぶんスカートよ」
「わかってるけどさ」
 学校では正体を隠すために女言葉を使うみずきも、七瀬が相手だとリラックスして男言葉になる。

 気がつきにくいが幸せな時間が過ぎている。

 そのころ、日直のため先に登校していた赤星薫。
 身長はみずきよりかなり高い。モデルのようにすらりとしている。
 胸はペッタンコ。絶望的に薄いのだが理由は後述する。
 よほど気を使っているのか肌が綺麗である。ちゃっかり化粧もしているが。
 おろせば背中に届く髪を後頭部にリボンでまとめて、いわゆるポニーテールにしている。
「この時間じゃさすがにまだ生徒が少ないわね」
 中性的なハスキーボイスでつぶやく。それに答えるように男たちの声が。
 男子生徒ではない。明らかに成人男性。それも複数。
「「「「おはようございます! 薫さん」」」」
「あっ。ガードの皆さん。おはようございまーす」
 他のものなら避けて通りそうなコワモテの集団。
 それに対して臆することはなく薫はにっこりと微笑を返した。
「ささ。お嬢」
 コワモテの集団の中に隠れるようにしていた少女が、頬を赤らめて前に出た。
「久美! ツインにしたんだ。可愛い」
「に…似合うかしら?」
 小柄で童顔。それに相応しく長い髪を左右に分け、根本を赤いリボンで彩った少女がぎこちない女言葉で尋ねる。
「似合う似合う。すっごい可愛いよ」
 薫の方はナチュラルに女言葉を使いこなしている。
(薫…お前こそ可愛いぜ。とても俺と同じで実は男とは思えないぜ…)
 そう。この両者。実は男なのである。
 いや。厳密には久美の方は肉体は女。
 におい立つ柔肌。年相応の胸元の膨らみ。そして月に一度のもの。
 この久美。かつては関東を取り仕切るヤクザ。帝江州組の組長。銀次郎だった。
 抗争の際に妻を身代わりで亡くし、その弔い合戦に出ようとしたら、その妻の幽霊の手により少女の姿に変えられた。
 理由は修羅の道から抜けて欲しいということ。
 これではとてもではないが弔い合戦どころではない。ヤクザを続けるのも難しい。

 そして亡妻の幽霊の提案で高校一年生の女子として通学している。
 ヤクザを止めさせたい一心である。普通の学園生活をしていれば足を洗う気になるのではないかと。
 だから卒業が元に戻す条件というわけである。

 一方の薫。瑞樹の「弟」で学校でも知られているが女子扱いが認められている。
 それというのも肉体以外は完璧に「女の子」だからだ。
 これは赤星兄弟の母。瑞枝が薫を身篭っていたときの胎教が遠因とも言われている。
 女の子のほしかった瑞枝は、二番目を身篭ったときに「今度こそ」と強く願い、そして女と決め付けて色々していた。
 結果は男児であったが諦めきれず、幼少のころは女児用の衣類を着せていたりした。
 ところが幼稚園に行くようなころに男児服を与えたらひどく嫌がる。
 瑞枝が嬉々としてスカートを履かせたら、薫も嬉々として幼稚園に。
 それからはほとんどにおいて女の子としての生活。

 カウンセリングこそしてないものの「性同一性障害」ではないかと学園は判断。
 これに男子生徒としての通学を強要するのは苦痛を与えると結論。
 また、一般教師は知らないが学園のトップが許可を出した。その結果である。
 最初は難を示した女子生徒は、この夏の時点では完全に薫を女とみなしている。
 一緒に過ごして実は一番女らしいのが薫とみなされていた。そのためだ。

 既に完全に女同士の付き合い。なにしろ着替えすら一緒にする始末。
 女子同士でも多少は隠しながら着替えるものだが、薫の場合は男の肉体を露出させたくない思いもありかなり隠している。
 それが恥じらいに見え、逆に女性的に感じ取れ、いい意味で真似をする女子まで出てくる。

 肉体は男なので気を抜くとあっと言う間に「女でなくなる」。
 だから薫はケアは本物の女子以上に入念にしていた。
 つまり女子の中でも手を抜き気味の者になら勝てるほどである。

 久美は思う。
(俺は男の中の男を目指していたのに、こうして女にされちまった。だが薫は男の身でありながらこうして誰よりも女らしい。反対の性別だから見えるものもある。俺も女として男を磨くぜ)

「あら? おそろいね」
 もう一人。ロングヘアの少女。山村ありすが現れた。
 房の部分を編んで、後ろに回している。
「ありす。おはよう」
「よう」
 女(?)三人寄れば…である。
「ありす様。それじゃわたしはこれで」
「ご苦労様。真彩香」
「はい」
 付き添っていたメイドが会釈して車に戻る。高級外車だ。
「すっごいね。さすが社長令嬢」
「ちょっと悪趣味だけどな」
「何か言った? 久美」
「べっつにー」
 はたから見ているとどこにでもいる女子高生三人のじゃれあいである。

 こうしてまるっきり「女の子」しているありすだが…これまた正体は男である。
 社長令嬢でなく社長そのものである。本名は伊達乙郎。
 ある日、人体実験の被験者に選ばれて少女の姿に。
 24時間経てば元に戻れるはずだったが、ふとした事故でこの姿のままである。
 元に戻るにはしばらく時間が掛かる。
 それならばと高校生活を楽しむことにしたのである。

 ちなみに山村ありすという偽名は、その実験中に正体を知らない相手に対してとっさに出た名前である。

 ジャージ姿の男子は学校の裏山にいた。
 奇妙な陣を描いていた。

 時間が経ち、特に早く出るわけでない生徒もそろそろ登校してくる。
 みずきと七瀬も校門に着いた。ちょうどまた別の高級車が停まっていた。
「あ。姫ちゃん」
 高級車から降りてきたのは名前の通り姫のような少女。
 同じセーラー服を着ている。
 長い髪を綺麗に切り揃え、まさに戦国の姫君。
「みずきさん。七瀬さん。おはようございます」
 鈴を転がすような声で彼女。北条姫子は挨拶をした。
「おはよう。姫ちゃん。あれ? 風間君は?」
「拙者ならここに」
 いつの間にか長身の男子が校門の支柱の上に立っていた。ありふれた学生服姿が、どこと無く戦闘服にすら見える。
「うわ。さすが忍者」
 みずきが驚いて口走ったのは何も比喩ではない。
 風間十郎太は実際に現代の忍者なのである。
 北条家に仕えた風魔。それが今も生き延びており、その一員である。
 年齢が同じ。そして姫子の希望で護衛として共に通学している。
 引き締まった肉体の長身。何よりその切れ長の目が東洋的である。

 姫子とは相思相愛なのだが、十郎太の方は身分違いと「家来」としての立場を保っている。
 姫子のほうも日本的な慎ましやかさがこの場合は災いして、一歩を踏み込めないでいる。

 バスが停車した。降りてくるショートカットの美少女。つづいてまりあが降りてきた。
「あ。姫子」
「おはようございます。まりあさん」
 ともにお嬢様でさらには中学時代からの親友。
 クラスこそ違うが高校でも交友は続いていた。
「おはよう。高嶺」「おはよう。高嶺さん」
「おはようございます。赤星さん。及川さん」
 姫子を通じて知り合いではあるが、クラスが違うこともあり若干他人行儀。

別世界では同じ学校

このイラストはOMCによって作成されました。
クリエイターのういさんに感謝!

「おはよう。風間君」
「ぬっ?」
 十郎太は不意に背後から声をかけられて動揺する。ここは「校門の支柱」の上である。
「拙者の後ろを取るとは…只者ではないな。水木優介」
 背中を取ったのは女とみまどう美少年。男子制服がまったく似合ってないほどだ。
 それは醸し出す雰囲気が男子のそれではないこともあるだろう。
「うん…いい男に対するぼくの愛は並みじゃないよ」
 そのまま背後から抱き締めるように腕を絡める。視線もねっとりと絡みつくようだ。
「め…面妖な? 仮にも忍びの鍛錬をした拙者に身動き一つさせぬとは?」
 まさにくもの糸に絡められたような十郎太。
「優介! 朝っぱらから変態行為は止めなさい」
 ヒステリックに叫ぶまりあ。
 なにしろ彼女の思い人がこの優介である。
 それが男相手にこれでは冷静でいられるはずもない。
「やーだね。ぼくが誰を好きになっても自由だろ」
 反論というよりまりあに対する嫌がらせのように言う。
「だからといって相手のことを無視していいわけはないだろう」
 さすがに十郎太を助けるべく一言いうみずき。それを一瞥する優介。
「ふん。心配しなくてもぼくはお前みたいに背が低くて、肌も白く、目がパッチリしていて、胸が大きく、ウエストがくびれて、お尻も大きく、甲高い女声で、全体で『オンナ』を売り物にしているお前なんか興味ないよ。なにしろぼくはホモだしから男にしか興味ないし
「な?」
 がっくりと膝をつくみずき。
「お…オレって…人から見てもそんなに女っぽかったのか? あんな女みたいに奴に言われるほど…」
「今更何を落ち込んでんのよ」
 少々荒めの七瀬の慰め。
 みずきが落ち込んでいる間にも優介の変態行為は続くが
「まりあちゃん。何してんの?」
 ショートカットの少女が声をかける。
 背は女子の中でも低く顔も幼い。
 顔立ちも子供じみているし、胸も薄い。カチューシャがむしろ子供っぽく見せている。
「美鈴さん」
 少女の名は南野美鈴。まりあのクラスメートである。そして
「美鈴? ということは」
 いきなり十郎太を解放する優介。きょろきょろと辺りを見回す。巨漢がいた。
 2メーター近い巨漢である。
 厳つい顔をしているが心は優しい。無口な巨漢。
「やっぱり〜〜〜大樹くーん」
 ターゲットをその大地大樹に変更した。
「?」
 突然抱きつかれて困惑する大樹。
「だめーッッッッッ。お兄ちゃんはわたしのものなの」
 危ない発言をしているセミロングの少女は大樹の妹。大地双葉。
 ブラコンというレベルを超越している。
「暑いぞ」
 大樹はぼそりと優介に言うが、彼は構わず腕にしがみついている。
 離れてくれそうも無いと思った彼は、そのままほうっておくことにしたのか、ズシンズシンと地響きをさせて下駄箱へと歩みを進める。
 その後をついていくブラコンの双葉。そして美鈴。さらに
「こらーっっっ。優介。抱きつくならわたしに抱きつきなさい」
 まりあがヒスを起こしながら追いかけていた。

「大丈夫ですか?」
 姫子が心配そうに尋ねる。
「ふうやれやれ。助かったでござる」
 降りるなり彼には珍しくそんな言葉を言う。
「ごめんなさい。助けることが出来なくて…」
 姫子はおろおろしていただけである。しかし責められる状況でもない。
「いや。拙者の油断の為せる話。まだまだ精進せねば」
 この話はこれで終わることになる。

「それにしても…まりあさんの恋も前途多難ですね」
 同じ女。そして親友として単純に案じていた。
「左様ですな。筋金入りの男色家の様子。あやつ、戦国時代なら間違いなく小姓であったでござろうな」
「ほんと。榊原みたいに女に見境ないならまだしも、男に見境ないしね。オレ…アイツと一緒の学校の内は絶対に正体ばらせねぇよな」
「そうねぇ…でも、大丈夫じゃない? 元の顔も女の子みたいだし」
「なーなーせー」
 禁句だったが夫婦のようなこの二人だとそうでもなかったりする。
 男と女。女の子同士。どっちで見ても仲のよいじゃれあいに。

 校内の廊下でもナンパ行為が蔓延っていた。
 さすがにこれは異性同士。いや。ある意味同性。
「どう? 優香里ちゃん。今度デートしない」
「あ…あの…その…」
 金髪の少年が小柄なファンシーなイメージの少女にアプローチをかけていた。
 少年の名は火野恭兵。端整な顔立ちをしているせいか、ひどく女癖が悪い。
 そしてナルシストでもある。
 彼にとってナンパは日課になっている。
 また取り巻きも多かった。もちろん全て女である。

 少女の名は柴田優香里。ただし、肉体の主の名前。
 今の魂は双子の弟である柴田龍太郎(りょうたろう)の物である。
 とりあえず肉体のほうの説明をすると女子でも低い部類の身長。
 長い髪はクセがあるのかソバージュのように見える。
 プロポーションは発展途上。
 見た目だけならかなりの美少女なのだが…

「こらぁ」
 日に焼けた長身の男子が割って入る。
「人の身内に手を出すんじゃない」
「ちっ。弟君のお出ましか」
 恭兵の語るとおり優香里の弟。龍太郎。
 これこそが現在少女の肉体を押し付けられている魂の本来の肉体だ。
 そして中身は美少女の肉体を持つはずの優香里の魂。

 二卵性双生児の二人は不思議な絆で結ばれていた。
 自分の性別に嫌悪する。あるいはもっと前向きに言うなら「異性になりたい」と念じると、双子の片方の意識を押しのけて肉体を乗っ取ってしまう。
 押し出されたほうは空いた肉体に。

 この場合は圧倒的に優香里が発動させることが多かった。
 なにしろ女の子である。月に一度のものとか、様々な制約などで自分の身を疎んじてもいる。
 だから発動をさせやすい。
 まして龍太郎は気が弱い。簡単に明け渡してしまう。

「このナンパ野郎。いくら優香里が可愛いからって簡単にちょっかいかけるんじゃない」
(ナルシス…)
 一瞬は自分の身を案じてくれたと感動した龍太郎だが、よく考えたら優香里は自分の肉体を守っているだけと気がついた。
 そして今の発言。
「可愛いのに声をかけなかったら失礼じゃないか」
 プレイボーイの恭兵らしい言い草である。
 彼にとって男の「恨み」を買うなど日常茶飯事なのだろう。余裕だった。
 そのスキだらけの首に常人には見えない「茨」が巻きつく。
 そしてあっと言う間に吊り上げ「絞首刑」にしてしまう。
「ぐぇっ」
 窒息死する前に解放する。だらしなくひっくり返る羽目に。
「ふん。女の敵が」
 こちらも金髪の女子。しかし黒い部分はまるでない。根本から同じ色なので地毛であるとわかる。
 セーラー服は同じだがスカートの丈はやたらに長い。
 長身。自己主張の激しい胸元。白い肌。短い金髪。
 彼女の名は村上真理。日本人の父とドイツ系アメリカ人の母の間に生まれた故に、このような容姿を持つ。
「大丈夫か」
「ありがとう。助かったよ」
「ああ。いいよ。優香里」
 真理は「龍太郎」に向かって返事した。
 実はこの「見えない茨」はある種の超能力。
 念動力と接触感応能力にビジョンが伴ったものだ。
 こういう能力を「マリオネット」…操り人形と使い手たちは呼称していた。
 そしてその「接触テレパス」ゆえ真理には二人が入れ替わっているのがわかったのだ。
 もっとも悪い意味で女性的な龍太郎と、悪い意味で男性的な優香里である。
 入れ替わると肉体を基準に見ると性格が激変して見える。
 だが入れ替わりとまで理解できるのは、魂まで見ることの出来る真理。
 そしてそういう事例に慣れているマリオネットの使い手…マリオネットマスターくらいのもので、大半の生徒は首を傾げるだけである。

「き…君か。僕にやきもち焼いたのは」
 むしろ清清しいほど恭兵は「世界は自分を中心に回っている」タイプの人間だ。
「そんなんじゃないよ。ただあんたみたいなスケベは無性に締めてやりたくなるのさ」
「いいがかりじゃないか!」
「うるさい。スケベは一人で充分だ!」
 妙に実感のこもった真理の台詞である。それにタイミングを合わせたかのように小気味よく頬を打つ音が。
「なにするんだよ。スケベ」
 長身でスレンダー。卵形の顔をした美人だが、気の強さがそれを忘れさせる。
 リボンでくくったポニーテールが可愛らしい。
 トレードマークになりそうなのがもう一つ。二本の足を包み込む黒いストッキングである。
 春とは言えどまだまだ暑くはない。だがこれは少々大げさな印象もある。
 隠そうとしているが逆に注目させる形になっている。
 彼女の名は綾瀬なぎさ。2年女子だ。
「誤解だよ。君は陸上部だろう。その足の具合を見ればわかる。そして練習をし過ぎてちょっと疲労がたまっている。だからそれをなくすマッサージを…」
 見た目はインテリ。そんなめがねとオールバック。
 ただ柔道着を着せたら物凄く似合いそうなほどがっしりしている。
 彼の名は榊原和彦。老けた顔ではあるがやはり2年男子である。
「何でそんなこと知ってんの?」
 一年のときも今も同じクラスになっていないし、陸上部で一緒というわけでもない。
 それなのにそんなことを知っているとなると…
「ストーカー?」
「そんなんじゃないって。足の筋肉を見ればわかるんだよ」
「そんなこと出来るはずないでしょ。ましてやストッキング穿いているし」
「できるんだな。例えばそのブラとセーラーに隠された胸だけど、80…83はあるな。アンダーとの差でいけばCというところか。もうちょっとパッド使えばDでもいけるんじゃ」
 なぎさは思わずセーラー服の上から両手で胸を隠す。
 最新の値をぴたり的中されたためである。

 榊原和彦もマリオネットマスターである。
 そのマリオネット。ビッグ・ショットは人の形をしている。
 腕を使うというイメージで念動力としても使えるが、最大の特徴は予知能力。
 そう。つまりこの女子の胸のサイズや、体調を見抜くのは超能力ではなく、本人のスキルである。
「カズゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
 甲高いハスキーの叫び。瞬間的に身を振るわせる榊原。
 恐る恐る振り返ると真理が鬼の形相で迫ってきていた。
 そのまま首を刈ってしまう。プロレスで言うラリアート。彼女はこの技にスレッジハンマーと名づけていた。
「ほげろっ」
 為す術もなくKOされる。もちろんその間になぎさは逃げた。ついでに恭兵も真理から逃げた。
 それを見届けてから、倒れる榊原に向かって真理が言う。
「変態。とまれ!」

 まだホームルームは始まっていない2年4組。
 2組から一組のカップルがやってきた。まるで自分のクラスのように溶け込んでいる。
「風見」
 呼びかけた彼は上条明。
 背は高め。肉付きは普通。顔も普通だがどちらかというなら端整な部類。
 スポーツマンの印象だが、実は彼は重度のオタク。
 そして居直りではない意味でそれを隠そうとしなかった。
「なにも悪いことはしていない。こそこそするなんてナンセンス」というのが言い分だ。
「来たな。上条」
 呼びかけられたのは風見裕生。短髪を逆立てている。
 こちらもオタクとみなされるがやや事情が違う。
 父親がスーツアクターを勤めていたのだ。
 自分の憧れるヒーローの正体が自分の父だった。幼い少年に道を決めさせるには充分な事実であった。
 だからスーツアクターになるべく幼い頃から体を鍛えていた。
 そのおかげでスポーツ万能。ただし何かと見得を切ったりするクセがあるが。
「見たか。ハイパーフェクター」
「もちろん」
 二人の話しているのは特撮ヒーロー番組である。
 小学生ならもっとも。逆に大人になると趣味の一つして堂々と語ったりもある。
 だが高校生男子となると体裁もあり、あまりここまで堂道とはしないがこの二人には関係なかった。
「ハイパーフェクター対BX。ついに実現したな」
「ああ。とくにあの動き」
 裕生は昆虫型の改造人間である「BX」の動きを真似してみせる。
 それに呼応して上条も強化服戦士のハイパーフェクターの動きを再現。
 寸劇が始まった。
 それをニコニコと見ているのは上条と共にやってきた小柄な少女。若葉綾那。
 夏用の白い半そでセーラーは女子に共通。
 小柄で華奢な体躯だが、全身バネで運動性能は高い。
 赤みがかった髪を三つ編みお下げにしている。
 幼い顔の特徴は仔猫を思わせる吊り目。
「ヒロ君も上条君もよくやれますよね。すごいですね。宙返りまで」
 近寄るのはメガネの少女。槙原詩穂理。
 綺麗なロングヘアが特徴だが、前髪が長くて目元がわからない。
 身長は標準よりやや小さめだが、明らかに一部が大きい。
 そして綾那はその「一部」が極端に小さい。「無い」といっても言い。
「そうだね。でもボクにはシホちゃんのおっばいの方がすごいと思う」
 綾那はAAカップだった。17才でこれはさすがに焦る。
 対する詩穂理は真逆の悩み。92Gだったのだ。
 綾那とは運動神経でも立場が逆で、とにかく鈍い。
 本人も運動に対する情熱は乏しく、向上させる意欲が無い。
 そして胸のこの「重石」である。余計にバランスが悪かった。
「こ…これはこれで色々大変なのよ」
 慌ててあとずさる。
「いいなぁ…ちょっと触らせて」
「ダメ…あっ」
 拒否する前に綾那の手が詩穂理の胸元に。
「大きいなぁ。柔らかいなぁ」
「だ…だめ…若葉さん…やめて…」
 敏感な部分をいじられて声の荒くなる詩穂理。綾那はじゃれあいのつもりだが詩穂理としてはたまらない。
 たまらないのは4組男子もだ。正視できない。
 純情というより高校生男子のサガである。
 実は詩穂理はあるAV女優とそっくりだった。
 つまり彼女の顔は男をそそる顔だと言うことになる。
 中学から高校にかけての休み中にその事実を突きつけられた詩穂理はショックを受けた。
 それまでコンタクトだったのをメガネに。
 黒渕にしたのはその女優が「女教師もの」で赤を使用していたから。
 さらに当時は短かった詩穂理の髪型まで同じ。詩穂理は黒で女優は茶色という違いはあったが、詩穂理はこれも嫌い髪を伸ばし始めた。
 もし女優が髪を伸ばしたら自分が切るつもりだったが、ショートカットが受けているのか定期的に短くしているようだ。
 そして前髪もわざと顔を隠すようにしている。

 とにかくそんなAVで通用する顔の女があえいでいるのである。
 おかしな気分になるなというのは酷であろう。

 予鈴が鳴った。
「おっと。まずい。風見。また後で」
「じゃあね。シホちゃん」
 二人が帰って行き、詩穂理。そして男子たちは解放された。

 裏山。
「くくく。これでよし。後は太陽が充分に昇ったら」
 男のような女のような声をしたジャージ姿の男子は不気味に笑うと、学校へと歩き始めた。

 間もなく授業が始まる。

Part2へ続く

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