東京。秋葉原。
 何度かきた事のあるこのメイド喫茶「Twinkle☆Star」。
 そこに俺は呼び出されていた。
 既に営業時間が過ぎている。だから客が俺一人の貸しきり状態だった。
 人に聞かれたくない話?
 客こそいないが、メイドさんたちはまだいるが、あの人たちはいいのかな?

「ごめんなさいね。ハル…六木君。こんな時間に呼びだしたりして」
 俺の目の前には、かつてここで働いていた女性が座っていた。
 当時から優しい印象だったが、今はさらに拍車が掛かっている。
 六木(むつき)というのは俺の名前。フルネームは六木初春(はつはる)
 22歳の誕生日を迎えたばかり。
 一月生まれだから初春。かはは。安直。ご丁寧に苗字も一月の別名・睦月と同じ音だし。

「いえ。いつも通りハルでいいっす。それと呼び出しはいいんですけど…火浦さんこそ大丈夫ですか?」
 今は一月。当たり前だが寒い。かなり冷え込んでいる。
 もし降ってきたらまず雪だが、快晴なので冬の安定した気候でその急変はまずない。
 心配はそちらじゃない。
「大丈夫よ。お医者様もウチの人も外出を許してくれたわ」
 その女性は優しい声で返答した。だが
「それから六木君。今は火浦じゃなくて千葉よ。千葉沙羅」
 そういうと目の前の女性は左手をかざした。そこには結婚指輪が。

 変われば変わるもんだなぁ。あれだけ厳しかった演出家兼男性俳優。火浦一星が今では子持ちの主婦とは。
 「実家の事情で田舎に帰った」
 そう聞かされていた火浦さんが、女性になっていた。
 しかも妊娠した状態で目の前に現れたときはそりゃ驚いた。
 もちろん最初は信じられなかったが、本人と俺たちしか知らないことをしゃべったのと、研究員らしき人の説明で劇団員みんなが理解した。
 これは火浦さん本人の希望だったらしい。
 男の火浦一星はもういなくて、ここにいるのは千葉沙羅という名の女性であると。
 身近なところから説明していたらしい。
 もっとも火浦さんを慕っていた女性にはかなり泣かれたらしいが、それすら「女として」気持ちがわかってしまったとか。

 けたたましい泣き声が響く。俺は我に帰る。
「沙羅さぁん。どうしよ。赤ちゃんが泣き始めて」
 セミロングの中学生女子…そういう触れ込みのラビちゃんが、それこそ泣きそうな表情で赤ん坊を抱いて出てきた。
「貸して下さい。ラビちゃんさん。自分、これでもあやすのは得意スから」
 金髪のツインテール。名物のツンデレメイド。愛美子さんが優しく抱きかかえると百面相を披露する。
「待ってて。今ミルク作ってあげるから」
 やはり穏やかな雰囲気の厨房担当。ナツメさんがそういうのだから、おしめじゃなくてそっちということか。
 この人も随分イメージが変わったよな。最初はつっけんどんだったのに、今じゃすっかり柔らかい雰囲気で。

「それで、話というのは?」
 このままいたら埒があかないのでこちらから切り出した。
 それに対して火浦さん…千葉さん…沙羅さんでいいか?
 彼女は視線を外した。うわ。しぐさがめちゃくちゃ女っぽい。
 こんなにまで女性化するシステムだったのか。

 言いにくそうにしていた沙羅さんが、やっと正面を向いて切り出した。
「あのね…ハルくん。ちょっとの間、女の子になってみない?」
 沙羅さんの言葉は、俺のアタマを止めるのに充分な力があった。



Angel Voice
作:城弾

「は?」
 これが他の奴に言われた台詞なら笑い飛ばす。
 しかし目の前には男から女に変わった生きた見本がいる。笑えない。
「あの…どういうことです?」
「実はね…」
 沙羅さんは一から事情を説明してくれた。
 秘密実験で女になったのは自分だけでなく、ここのメイドが全員「元・男」ということ。
 そして「研究」が次の段階に入ったということ。
「まさか俺にメイドになれと?」
「残念だけどこのお店の営業期間延長も三月までね。でもあなたはメイドもやるかも」
 なんじゃそりゃ?

「次の段階では私たちみたいにまとめないで、モニターを個別にするらしいの。」
 店長のかなめさんが言う。この人も男だったのか?
 言われて見ればそんな雰囲気はあるかもだが。
「なんでそんな面倒なことを? 事情を知るものがそばなら楽でしょう」
 浮かんだ疑問そのままぶつける。
「自立できるかどうかなの。私たちは同じ立場だから支えあってきたけど、その支援が期待できない状況での心理の変化などを見たいのよ」
「確かにみんなと一緒じゃなかったら、不安でしょうがなかったわね」
「そうでなくても情緒不安定になったし」
 先のセリフは麻耶さん。後のセリフはラビちゃん。
 精神的に不安定になって、一気に精神が女性よりになったということか?
 だから残りの人生すべて女として生きる選択をしたと?

 今度は意図的にそういう状況にするのか。
 つまり元・男がどれだけ純正女子に溶け込めるかということらしい。

「できるだけ職業もバラバラにということにしたいという話なのよ。それであなたを思い出したの」
「ばらばらに?」
「どのみち顔を合わせることもないので特別に教えるけど、ほかの被験者には警察官とかロック歌手もいるのよ」
「警官が何でそんな実験に? メリットはないでしょう?」
「痴漢のおとり捜査専門になるとか…」
 かなめさんが教えてくれた。ということは
「えーと。つまり俺に女の声優になれと?」

 一応は劇団にいるが俺は声優だった。
 子役時代からやっていたので芝居にはそこそこ自信はあるがどうにも凡庸らしい。
 だからか主役に縁がない。
 逆にそれを買われてかアニメでは端役が多い。いわゆる番組レギュラー。
 アクション系の作品でチンピラと被害者を同じ回でやったこともある。
 学園もので生徒Aと不良Bという具合に。
 それもこの改変期で全部なくなった。懐具合もさびしくなってきた。

「女の子としての経験をしたら、すこし変われるかもと思って」
 確かにそんな経験は普通出来ない。何か劇的に変わるのは期待できる。
 なにしろ沙羅さんはおなかを痛めて子供を産むほどだ。

 後を追ったりしないだろうな…俺。

 それはさておき女の声優となると俄然有利になる。
 声が高いのがその理由。
 女の役はもちろん、子供の役もできる。その中には男の子もある。
 つまり男の声優に比べて遥かに役の選択肢が増える。
 ちょっと揺らめいた。
 能沢眞沙子さんという「男の子役の神様」とまでいわれる人がいる。
 とはいえど元々女性。本物の男が経験して来たことを経験していない。
(だからこそ純粋に「理想」だけを追い求めて演技できるともいえるけど)
 とにかく俺が女性声優になったら、元々男であるアドバンテージが活かせるはず。
 悪くない気がしてきた。しかし、やはり不安。

「ちょっと…考えさせてくれますか?」
 さすがに即決は出来ずに保留させてもらった。
 沙羅さんもどうもかつては悩んだらしく(そりゃそーだが)俺の要望を受け入れてくれた。

「はぁ……」
 翌日。とあるスタジオで俺は盛大にため息をついていた。
「どうしたんだよ。ハル」
 尋ねて来たのは同じ声優の神楽坂大哉(かぐらざか だいや)。
 凄い名前だが芸名じゃなく本名。
「ダイヤのように輝け」という願いを込めて命名されたらしい。
 顔は並だが声はめちゃくちゃ良い。
 声優としてはかなりの武器だ。どうやら親の願いは声と演技力に反映されたらしい。
「なんでもないよ」
 俺はつっけんどんにいった。
 「女になれと誘われた」なんて話せるワケがない。
 するとコイツは大仰なポーズをつけて「がっかりだ。水臭い親友にがっかりした!」とのたまった。
「だあああっ。いくらアニメでの当り役だからってこんなところでやるなっ」
「はははっ。悪い悪い。ほんのジョーク。悩みを話しやすくしてやろうと思ってさ」
 まったく、妙に細かいところに気が回るやつだ。
 仕方ないから俺はコイツに適当な説明をすることにした。
 まさか「実験で女になる」とはいえるはずがない。

「武者修行の話があってさ」
「武者修行?」
「ああ。実はニューヨークの劇団に、とりあえず雑用係だがと招かれててな」
 これは実験に参加した場合の男である俺がいなくなった場合の口実。
「わざわざ雑用係に?」
「それでも間近で本場の芝居を見るのはプラスになるはずだと」
「なるほど。雑用係は生活費の工面のためで、間近で吸収しに行けとそういうことか?」
 俺は相槌を打つ。設定が国内じゃないのは、万が一来られたらまずいから。
 これが外国ならさすがにそれもない。

「それでちょっと迷っててな」
「いいんじゃないか?」
 大哉は不意に俺の肩を叩いた。
「経験すればするほど芝居は深くなるしな。いいと思うぞ」
 実際には女になる経験なんだが…それはさておきコイツの真っ直ぐな目にちょっと感動。
 俺はコイツの声優としての立場を脅かすほどの存在じゃない。
 だから排除の理由もない。
 本当に俺のことを思って背中を押してくれてるんだ。
 なんだかそう思うとこの友情に応えないといけない気がしてきた。

 翌日。俺は実験を受けることを了承したと沙羅さんに連絡した。
 正直、金銭的にも魅力的だったし。元に戻れた実例がいると聞いて安心したのもある。
 そして確かに女として男を見つめなおせば演技の幅は広がると思う。
 こんな経験は中々できるはずがない。
 そういう理由だった。


 そして三月。何処かの研究施設の一室。俺はカプセルの中に裸で横たわる。
 いろいろ準備は済んで、後は実際に性転換するのみ。
 事前にどんな女になりたいかと聞かれたが、そんなイメージなんてわいてこない。
 自分の理想の女性像を、男である自分に回してもしょうがないしね。
 強いてあげればハスキーボイスだと男の子役もやりやすくなる。
 別に男そのものの声でも構わないし。
 だから特にないと言っておいた。

「うーん。だったら…やはり可愛い方がいいかしらねぇ」
 責任者たる国近さんが言う。
 この人も綺麗な女の人だけど、正体は五十過ぎの爺さんとか。
 最初自分の身で被験者になって、一度は戻ったもののいろんな理由から二度目の女性化らしい。
「お任せしますよ」
 軽い気持ちで俺は言う。まさかあんなことになるとは露知らず。

 カプセルの中が液体で満ちる。
 息苦しかったのは最初だけ。すぐに安らかな眠りについた。





 一週間で目覚めたらしい。
 最初は指一本動かすのがやっとだった。
 リハビリをして何とか動けるようになる。
 やっとしゃべれるようになり、そして知った驚愕の事実。

「なんでこんなソプラノなんだよ……」

 よりによってやたら綺麗な高い声になっちまっていた。とんでもなく甘ったるい。
「あー。やっぱり体のせいかしら?」
 見舞いに来ていた沙羅さんが言う。
 俺の体格は身長142センチ。体重38キロ。上から75(A) 55 80というそれになっていた。
 肌はそれほど白くない。印象としては子供の肌色。
 髪は襟足程度の長さ。整えるといわゆるボブカットという感じになった。

 確かに女性声優には小柄な人が多い。
 可愛い声を集めたら、たまたま小柄だったのかもしれない。
 そして俺も元々大柄ではなかったので、女に「変換」したらこんなになったらしい。
 体格はいい。問題この声だ。
「こんな声じゃどうがんばっても男役なんて……」
「あら。綺麗な声でも少年役をこなす清家雅子さんという偉大な先輩がいるわよ」
「そりゃあそうかもしれませんが…」
 ああ。ダメだ。自分で脱力する超音波声。
 アニメ声にも限度がある。

 いつまでも落ち込んでられない。リハビリは予定通り進める。
 同時に退院するまでにいくつかの「設定」を決めた。
 まず名前。本名は当然だが女としては通じない名前。それ以前にまずいし。

 通称である「ハル」だけ残し、下の名前は「はるか」に。
 万が一「ハル」と呼ばれて反応してしまった場合の対処とか。

 ちなみに沙羅さんたちは逆手にとって「実は男で今は女」という設定の店だった。
 だからうっかり男の名前で呼んでも「設定だから」で済む。
 そう言えば愛美子さんが「金太郎」と呼ばれて我に帰っていたことがあったけど、今にして思えばこういうことか。

 本名の「六木」は「睦月」と同じ発音。一月の意味だが。
 そこからひねって、同じ月の名前から比較的オーソドックスな「弥生」を苗字に。
 合わせると「弥生はるか」…ちょっと突飛な印象だけど「芸名」ならありだな。

 年齢設定は16歳。誕生日は本来のものをそのまま。
 実験が一年間だから、そこで17歳ということになるのか。二度目だな。
 この年齢設定ならある程度は「女として無知」でも通る。
 例えば化粧の仕方とか、やたら色っぽい下着の着方とか。
 高校生の設定なら素顔でも不思議はないからな。
 舞台に上がる時に男でも顔にいろいろ塗るが正直馴染めないし、出来れば化粧はしたくなかった。
 それにあれってなんだか男でも女性的な仕草になるんだよな。
 そんな辺りから沙羅さんみたいに完全な女になってもまずいし。

 それから高校生ということで平日はスタジオには制服で出向く。
 それで済むのは助かる。
 色気づいたころからファッション誌を眺め回している生粋の女と違って、元々男の俺に女性服のコーディネートなんて無理だ。
 ただ休日の収録ではさすがにそうも行かない。そこで
「その辺は任せておいて。マネジメントもね」
 沙羅さんが申し出てくれた。
 もともとの「火浦一星」も劇団の運営に関わっていたし。
 それだからこそ火の車の劇団を支えるべく女性化実験に参加したわけで…そのときはまさか死ぬまで女性という選択をするとは、本人も思わなかったろうなぁ…

 でも沙羅さんならマネージャーとして心強いけど……声優としての活動はなかったはず。
「それは私も一緒に勉強することになるわね。でも悪いようにはしないわ」
 そう聞いて気楽になった。やはり秘密を共有する相手がいると違う。
 女性服のコーディネートも手伝ってくれるという。それも助かる。
 生まれついての女性の感性より、途中から女性になったと言う点で共通の相手ならわかってもらえそうだし。

 それから期限が来たら「学業を優先すべく休業」ということになっている。
 もちろんそれで元に戻るのだ。
 ただ望めばそのまま女として「弥生はるか」として活動を続けられるらしいが。
 火浦さんは尊敬しているけど、この生き方は真似なんて出来ない。
 男として生まれたのに、女として男に身を預け相手の子を宿すなんて。
 そう考えると女って凄いな。







 やがて退院となる。新居へと引越し。
 今度は被験者がバラバラなので好き勝手に決めていたらしい。
 俺の部屋は沙羅さんの住むマンションの一室。
「身近にいてもらえると俺としても助かりますよ」
 口を開くたびに絶望感をもたらすこのソプラノには未だなれないが、感謝の気持ちは伝えないといけない。
 だが沙羅さんが苦い表情なのはそれとは違うようだ。
「ハル君…じゃなくてはるかちゃん。女の子なんだから『俺』はまずいわね」
「え?」
「今は女の子なんだから出来るだけ女らしい言葉遣いしましょう。まずは自己代名詞ね」
「俺に『あたし』とか言えってことですか?」
「もう。言ってるそばから」
 いけね。けどそれは女になって日の浅い俺にはハードルが高い。
「『あたし』が無理なら『私』でもいいわね。さすがにアニメの登場人物じゃないし『ボク』はダメだけど」
 いや…渡部朱野という人はリアルで「ボク娘」なんですけど。
 しかし確かにこんな見た目の女が『俺』はなんだな。となると…
「わかりました。これからは自分の事を『私』ということにします」
「いい子ね」
 優しく微笑むと沙羅さんはふわっと優しく俺…じゃなくて私を抱き締めた。
 うわぁ。柔らかい。そしていい匂い。
 でもこんなに綺麗な女の人と密着しているのに安らぎはあっても興奮はない。
 それは沙羅さんも元男だから?
 それとも私が今は女だから?

 いろいろばたばたしたものも終わり、落ち着いたところでいよいよオーディションに挑むことになった。
 私の身分は事務所に所属してないフリーの声優。
 ただし事務所自体の母体は、私と沙羅さんがいた劇団ということになっている。

 「オーディション」というものはあくまでイメージの確認。
 演技力のテストの場ではない。まぁあまりに大根だと確かに落ちると思うけど。
 ベテランでも声に合わなきゃ落ちる。
 逆にドラマで……確か特撮ものでオーディションの役には落ちたけど、役者のキャラを気に入り新たな役を用意されたケースもある。
 アニメは長期の作品ならそれもありえるが、最近はの深夜枠では長くて半年。考えにくい。

 俺…私がこれから受ける作品「PanicPanic」も七月から2クールの放映予定だった。
 1クールというのは三ヶ月のこと。およそ12〜13話。今回は2クール。半年で26回。
 当たり前だが初回のアフレコはもっと早い。五月半ばにやるらしい。

 この作品を受けたのはその設定のせい。
 主人公・赤星瑞樹がまさにお……私と同じ。
 こちらは男として生活しているが、学校では女の子として通しているという設定。
 女装じゃなく女性化。
 「水を被ると女になる」という何処かで聞いたような設定のため、水泳の授業や突然の雨を考えた結果、女の子として在学ということに。

 沙羅さんから渡された資料を見て私は「勝てる」と確信した。
 まさに私のためにあるような役。
 できることなら男の方もやりたいところだが、それは原作者がダブルキャストを希望しているらしいから、そっちは男がやるんだろう。
 それでも男の心を持つ女の子。こんな私に有利なキャラはいない。

 声のオーディションにはいろいろある。録音した物を提出する方法もあるが今回は対面して行われた。
 実際に人前で芝居して見るのだ。これは心配ない。経験済み。
 そしてこの瑞樹というキャラ。基本的に男言葉。これはずっと使い続けてきて慣れているこちらが有利。
 私はノリノリで芝居をした。短い台詞を言うだけだが、久しぶりに男で通せて楽しかった。

 一通り終わってぺこりと頭を下げる。後は結果を待つだけ…と思っていたら呼び止められた。
「えーと……弥生はるかさん? 年はいくつ」
「16です」
 書類に書いてあるんだが…
「上手だね。児童劇団にいたの?」
 どうやら芝居以外の声を聞きたいらしい。脈ありかな?
「はい。10歳からです」
 これは本当。
 当時の俺は人見知りが激しくて、それをなおすために親が入れたらしい。
「なるほど。なるほど」
 頷いているプロデューサー。
 十代というのは別に声優では珍しくない。
 現在飛ぶ鳥を落とす勢いの平能 彩さんも児童劇団出身。
 また所属経験なくても14でデビューした澤代美由紀さんの例もある。
 二人とも今はまだ二十台だがが芸暦はベテランに近い。
 だから16歳で芝居できていても珍しくないのである。

 ついでに言うと芸暦の長さや年齢でギャラは変わる。長いほど高額。
 つまり16の新人声優で芝居が出来りゃ、安くして安定を得られる。
 さらに今の私は女の子。イベントとかでも女が多い方がオタク…お客を集められるという計算も。
 自分でいうのもなんだけど、私はけっこう可愛い顔立ちに作り変えられていたからな。

 好感触でオーディションは終了した。
 後は結果を待つばかり

 しばらくして吉報が届いた…いや。これは吉報なのか?
「沙羅さん…もう一回言っていただけます?」
「だから役が取れたのよ。北条姫子役
「な……なんでよりによってこの役なんですか?」
 狙っていた瑞樹役は別人に取られた。
 原作者が拘っていたダブルキャストが予算の関係で難しいと。
 代りに原作者が指名したのが猪上万里奈さんという声優。これはわかる。
 女で少年役と少女役をやる人は珍しくないが、この人はそのときの声が同一人物と思えないほど極端な差がある。
 確かにそれなら役を取られるのも仕方ない。

 問題は代りに振られた役。
 この北条姫子というキャラはレギュラーキャラではある。
 女性キャラの中で一番おしとやかで、常に敬語で喋るようなキャラ。
 しかも和服が普段着というキャラ。
 実は最初に設定を見て真っ先にオーディションから外したのがこの役。
 あんな丁寧な、しかも女言葉で通せるか。
 ところが物の見事にこの役が決まってしまった。
 いや。「新人」なんだからレギュラー獲れるだけでも幸運なんだけど。
「どうする? 辞退する?」
 沙羅さんが私の心情を慮って尋ねる。
 そうしたいところだけど、そんな真似したらたぶん今後は役が取れない。
 諦めて受けることにした。

 後から詳しい配役を聞いて、本気で辞退したくなってきた。

 アニメの打ち入り。これからスタートする顔合わせ。
 監督以下スタッフ。レギュラーキャスト。さらには原作者まで居合わせていた。
 なんでもこのメタボ親父が、私の声を録音した物を聴いて『姫子はこの声』と指定したのがとどめだったらしい。
 原作者のイメージが最優先されるから「鶴の一声」だった。
 自分で言うのもなんだけど、しっかりした芝居とこの可愛い「天使の声」が完全に私の首を絞めていた。

 今はキャストの自己紹介。一人の男がマイクを手に立つ。コイツこそが本気で辞退を考えた原因。

「神楽坂大哉です。現代の忍者である風間十郎太と言う役をやります」

 何でこいつまでいるんだよぉぉぉぉぉ。ばれたらどうすんだよ。
 ダメだ。緊張して食べるどころじゃない。そんなうちにマイクが回ってきた。
 私はなんとか立ち上がり震える声で自己紹介。

「し、新人の弥生はるかです。ほ、北条姫子役をやらせていただきます。至らぬところもありますが、皆さんよろしくご指導ください」

 喋り終わって沈黙。うわ。なんかやらかした?
 ところが今度は大喝采。主に「可愛い」という声。
「うっわぁーっ。こんな可愛い子も最近珍しいわね」
 実質的にヒロインの及川七瀬役。佐東莉菜さんが言う。
「ほんとう。ねぇ。年はいくつ? 高校生みたいだけど」
 こちらも子役上がり。結城葵が聞いてきた。
 呼び捨てにしたことからわかる通り、向こうの方が年下。まだ二十歳。
 でも今の「設定」は16で思い切りこっちが年下。だから相手を立てる。
「はい。二年生で16歳です」
「うわぁ。可愛い」
 うう。本当なら俺の方が見下しているのに。
 ちなみにこの娘。身長148センチ。本来の俺は168なので二十センチ上から見下ろしていたんだが今は六センチも低い。

 レギュラーキャストの紹介が進み今度は妙齢の女性が立つ。
 長い黒髪。高目の身長。大迫力の胸元。そしてゆったりとした空気。
 にこやかにほほ笑むと、彼女は慣れた調子で言い放つ。

「皆さんこんにちは。久万 望。17歳でーす」
「おい♪ おい♪」

「お約束」でいっせいに突っ込む。本来はイベントなどでファンがつっこんていたものが、いつの間にか同業者にまでやられるように。
 久万望(くま のぞみ)。
 そのまま「くま」とか呼ばれるのを嫌った彼女は「お姉ちゃん」の通称を使わせている。
 実際は二人姉妹の妹。
 ちなみに「万」と「望」がつながることから「まんぼう」がシンボルだった。
 人柄は文句なし。究極の癒し系。普通のファンも多いし、業界にもファンがいるほどの人だった。
 既に中学生の娘さんがいるにもかかわらず、とてもそうは見えないプロポーションの持ち主。

「はじめましてぇ。はるかちゃん?」
 その「お姉ちゃん」が私に語りかけてきた。今は飲み会みたいな感じ。
「あ。ハイ。弥生はるかです」
 私はジュースのストローから口を離して返事をした。
「キャーッ。可愛いーっ」
 いうなり私をそのふくよかな胸で抱きしめた。
「ちょ、ちょっと…」
 男のままなら嬉しい状況なんだけど、女になったせいかそれほどでもない。ただ
(おっきぃなぁ。これだけあったら私だって…はっ)
 ちょっと? いま女の子として羨ましがらなかった?
 うう。もうだいぶ頭の中が女になってきているのかしら?

「いいなぁ。女同士だとああいうことが出来て」
 こら。大哉。そんな助平なこといってないで助けろ。
 しかしその前に「お姉ちゃん」が離してくれた。
「本当に可愛い。お人形さんみたい」
「ああ。ゴスロリ着せてみたくなりますね」
 相槌打ったのは結城さん。あなたの方が絶対にあうと思う。
 それにしても平気で抱きしめられたり。ゴスロリ着せられようとしていたり。
 挙句に親友の大哉にまで女の子としてみなされているなんて。
 ばれそうにはないがなんか複雑。 

 24時間休みなく、365日を女としてすごしていたと言う「Twinkle☆Star」の面々。
 六人のうち沙羅さんとラビちゃん(実は26歳だったとか…)は、そのまま女としての人生を歩みなおしている。
 ラビちゃんは元々そういうところがあったらしくまだわかるが、完全に男だったはずの火浦さんがおっとりした女性を演じているうちに、男相手に恋に落ちてとうとう身ごもって。
 愛美子さんも一度は男に戻ったにもかかわらず、わざわざまた女性化したと聞く。
 それだけ影響は強いということか。

 そして私は声優なのだ。画面の向こうで男相手に恋にも落ちる。
 芝居といえばそれまでだけど、火浦さんは芝居のはずが本物に。
 声だけとはいえど本気になり過ぎないか不安だ。
 けど経験上「本気」にならないでいい芝居は出来ない。
 たとえアフレコの間だけでも、その時の私は「弥生はるか」ではなく「北条姫子」なのだ。

 そんな不安を抱きつつも一回目のアフレコが始まった。
 まずはテスト。一通り録ってみる。

「まぁ。お二人とも仲がよろしいんですのね」

 世間知らずのお嬢様。それを意識してなるべく綺麗に演技した。しかし

「はるかちゃん。リラックスリラックス」
 ブースの向こうから音響監督の声が飛ぶ。
 あう。硬かったか? 当たり前だが女の子の役は初めて。緊張していたか。
 しかし意識すればするほど、噛むはタイミング外すわNG連発。
 最初は女子高生だからと甘かったブースの向こう側も、だんだん空気が悪くなっていくのがブース内でも感じ取れる。
 そしてさらに意識するという負のスパイラル。
「大丈夫よ。はるかちゃん」
 そんな私を助けてくれた天使。いや。女神さまっ。お姉ちゃんだ。
 私を背中から優しく抱きしめてくれた。
 子供のころお母さんに抱っこされたそのイメージがダブる。
 そのおかげで安心感が出て私は落ち着くことが出来た。
 幸いこの「姫子」は落ち着いた印象のキャラ。だからこれで丁度いい。
 今度はOKが出た。テストでNGが出るのも異例だが、これは先に直しておけと言うことだろう。

「やあ。ずいぶんやられたね」
 大哉が笑顔で寄ってくる。
「神楽坂さん…」
 私は女の子の振りを続ける。
「緊張した?」
 う…コイツ「オレ」には見せないいい笑顔を…「女の子」相手だからか?
「は…ハイ」
 落ち着け。落ち着け。自分の本当の性別を忘れるな。
 ちきしょう。なんかいい表情してやがる。生まれついての女ならときめくところだったぞ。
「硬いなぁ。だがそれがいい」
「硬いのがですか?」
「ああ」
 また彼はにっこりと微笑んだ。
 そりゃ自分だって高校生の女の子相手なら、優しく笑ったりもするだろうけど…なんで? 何でこんなにときめくの?
 それを知ってか知らずか、大哉が説明を続ける。
「新人女性の『硬さ』は割りと上品な印象が出るんだ。このキャラは特にそんな感じでしょ? だから君が選ばれたんだと思うよ」
「はぁ。そんなものですか?」
「そうだよ。だからそのままの君がいいんだ」
 言うだけ言うと去っていく。う…本来同性である身からしてもかっこよく見える。やばい?

 とりあえずテストは終了してチェックを。
 そして本番。
『硬いほうがいい』と言われて『それでいいなら』とリラックスした私は、のびのびと芝居ができた。
 それがよかったしくスムーズに進んだ。

 約八分の収録。1ロールと言うけどそれが順調に過ぎる。
 自分含め誰もNGを出さない。そして
「OKでーす」
 音響監督の声で1ロール終了。休憩して次の分に入る。
「すごいわ。はるかちゃん。可愛かった」
「ほんと。なんか男心をそそると言うか…君、可愛い顔してずいぶん男を泣かせて来たね」
「い、いえ。そんなことないです」
 何しろ自分が男。男の好む女はよくわかる。むしろ女の心の方が難しい。

 悪戦苦闘しながらも、初めての女の子としてのアフレコは何とか無事に済んだ。
「お疲れ様。はるかちゃん」
「沙羅さぁん。つかれたぁ」
 肉体的ではなく精神的にだ。
「ゆっくり休みましょうね」
 沙羅さんはやさしく、元から女性だったかのように受け止めてくれる。
 私も生まれた時から女の子だったかのように甘えて抱き着いた。

 しばらくして第三話の収録が始まる。
 この回は「お当番」
 つまり私がメイン。
 正確には私のキャラ・姫子とその相手役。十郎太がメインのエピソード。
 幸いまだ序盤ということもあり、そんなに愛を語る場面がないのは助かる。
 こんな姿と声だし、身体的には女性ではあるけど、本当は男なんだから。
「そっちの趣味」もないのに、男相手に愛を語るのはきつい。
 本来の姿の時も「ボーイズラブ」のドラマはやってなかった。
 それに…この女の子の姿で「男の人」相手に愛を語っていたら、本気になりそうで怖い。

 初のメインは想像以上にプレッシャーだった。
 いい芝居をしなくてはと思うと、とにかく硬くなる。
 ダメ…これじゃ最初の時と一緒…
 意識すれば意識するほどNGが出る。
「ちょっと休憩しましょう」
 ついに収録を止めてしまった。
 みんなアフレコブースから出ていく。
 私はその場に残っていた。
 誰も私を責めないけど、逆にそれがつらい。
 今も気を遣って一人にしてくれたらしい。
 その優しさがかえって苦しい。
 いっそ罵倒された方がましだった。

 私はあまりの申し訳なさに泣きたくなってきた。
 その時だ。
 背中から抱きしめられた。
 この感触は…男!?
 私はびっくりした。振り返ると…大哉?
「なななななな…何を!?」
「ごめんごめん。驚いた?」
「お、驚きますよぉ」
 私は本来は男だ。だから男に抱きしめられても「セクハラ」とは思わない。
 けど16歳の女の子だったらそうもいかないはず。ひとしきり怒って見せる。
 それに不意を突かれておどろいのも本当。

 改めて真正面から向き合う私たち。
 笑顔だが真面目に語りだす大哉。
「俺たち、役の上じゃ恋人同士だよね」
 う…確かにそうだ。
 微妙な関係の組みが多い中で、私の演じる姫子と、大哉の演じる十郎太は割と素直な関係。
「だからさ、全部一人で抱え込まないで、俺にも少し分けてよ」
「分けるって…苦労をですか?」
「そ。二人で片付けよう」

 なんだろう。この一言で楽になった。
 私は一人じゃない。そう思うととても心強い。

 会話の多い二人なので、私がマイクの前にいるときは大哉…さんも隣にいる。
 つらくなると彼の顔を見てしまう。
 そこでにっこり笑ってもらえると、不思議と乗り切れた。

「はい。それでいただきます」
 音響監督の声が響く。
 やっと今日のアフレコが終わった。
 私も自然と笑顔になる。
「お疲れ様ー」
 お姉ちゃんが優しい笑顔でねぎらってくれた。
 「同性」相手で緊張感がなく、自然と柔らかい笑顔になってたらしい。
「お。いい表情じゃない」
 大哉さん!?
「神楽坂さんのおかげです。ありがとうございました」
 まったくの本心だった。彼が支えてくれるから心強かった。
「それだけじゃないさ。きみ自身の頑張りも立派なもんさ。それに何より、そのきれいな天使の声が魅力的だよ」
「わ、私の声、そんなにいいですか?」
 コンプレックスになっていたこの「作られた声」をほめてもらえるなんて。
「ああ。はるかちゃん。マジで天使」
「あ、ありがとうございますっ」
 私は勢いよく頭を下げた。
「これからも二人で頑張っていこうね」
 これからも? 二人で?
「は、はいっ」
 なんだろう。これからも一緒だと思うと、なぜだかとてもうれしい。元気が出る。

 その後は順調にアフレコが進むようになった。
 やはり大哉さんが支えてくれるのが大きい。
 いつしか私は彼の存在を大きく感じ、そして恋人を演じていたせいか、彼を特別な存在として意識するようになっていた。

 それに対する明確な答えはある回のアフレコで出た。
「お疲れ様でしたー」
 一気に緊張感が解け、私も深く息を吐く。
 七月になっていた。女子高生という「設定」もあり、私は半袖のスクールブラウス姿。
 ブラジャーが透けるのが気になってきた。
 そんなところまで私は「女の子」になっていた。
 だからなのか。あんな思いを抱いたのは。

「お疲れ様。神楽坂君」
 お姉ちゃんこと久万さんがにこやかに話しかける。
「あっ。久万さん。どうも」
 それは単なる「職場の会話」のはずだった。
 尊敬できる先輩が労をねぎらってくれたから笑顔を返した。
 それだけでしかない。けれど
「どうしたの? はるかちゃん。難しい表情して?」
 主演の猪上さんが私に言う。
「え? そんなことは」
「してたよ。オデコにしわ出来てる。まるでやきもちでも焼いてるみたいだった」
 !?
「そ…そんな…そんなことないですっ」
「あっ。はるかちゃんっ」
 スタジオを飛び出した私の背中から声がかけられるが、それにも構わず私は逃げ出した。

 スタジオそばのちょっとした路地裏。
 私は頬を押さえてうずくまっていた。
(そんなことはないはず。私は本当は男で、大哉さんも男で、男同士でなんて…)
 その気持ちだけは認めたくない。私は私に嘘をついていた。
「はるかちゃん。どうしたの?」
 やさしいおっとりとした沙羅さんの声がする。
 心配して追いかけてきてくれたんだ。
「……沙羅さぁん……どうしよう」
 私はその胸の中に飛び込んだ。
 まるで赤ちゃんを抱くようにやさしく受け止めてくれた。
 そのまま私は気持ちをぶちまけた。
「お芝居だったのに…演技だったはずなのに…いつの間にか…大哉さんのことを」
 言葉が続かない。その思いは認めたくない。
 「先輩」の沙羅さんはあわてず、今は肩口を超えた長さの私の髪を優しく撫でてくれている。

「……好きになっちゃったみたい……」

 このとんでもないもない告白も沙羅さんは黙って聞いてくれていた。
「どうして? なんで異性として意識しちゃうの? 男同士のはずなのに」
「でも、今は女の子よね」
 決して揚げ足取りではない。静かな指摘。
 私は頭が混乱し、涙を流しはじめた。
 どれだけその胸を濡らしても、沙羅さんは優しく私を抱きしめてくれていた。

 やっと落ち着いてきて、ちゃんと話せるようになる。
 さすがに離れて、
「わかっちゃったんです。さっき。お姉ちゃんと大哉さんが仲良くしているのを見て、気が付いちゃったんです」
 お姉ちゃんは単に挨拶をしただけ。
 ただそれだけなのに、とにかくそれが気に入らなかった。
「ヤキモチ焼いちゃったの?」
 沙羅さんの問いを私はうなずいて肯定した
「…おかしいですよね。男同士なのに。どうしてこんな気持ちになるの?」
 また涙が出てきた。
「私にも覚えがあるわ。主人と初めて出会った時のこと」
 沙羅さんが生涯を女性として生きる決意をしたのは、その人のせいじゃなかったか。
「私もお芝居のつもりだったの。でもいつの間にか本気で恋していた。この人のためなら、残りを女として生きたいと思った」
「……男としてのそれまでを捨ててでもですか?」
 涙声で私は尋ねる。
「全てをなげうってでも、この人と一緒になりたいと思った。捨てたものは多いけど、代わりに得たものもたくさんあるわ」
 そういって沙羅さんはお腹をさすった。
 すでに一人を世に送り出している。
 お母さんなのだ。
「すごい……」
 私は素直に驚いた。
「きっとそれが恋なのよね。そしてねはるかちゃん。恋に落ちると、どうしようもなくなっちゃうの」
 実際に男を捨てた沙羅さんの言葉は、とても重みがあった。

「私も…いつか大哉さんの赤ちゃんがほしいと思うんでしょうか?」
 我ながら飛躍しすぎていると思う。でも沙羅さんは笑わない。にっこりとほほ笑んでいるけれど、バカにした笑いではない。
「恋する気持ちが大きくなれば、いつかはそう思うかもしれないわね」



 次のアフレコ。
 どうやらこの前のことは「役に入り込みすぎた」とみなされていた。
 もちろん建前だと思う。
 たぶん何人かは「弥生はるかが神楽坂大哉を、役の上だけでなく本当に好きになった」ととっているだろう。
 事実その通りなのだけど。

 私はまず大哉さんに謝罪した。
「あの…この前はすみませんでした」
「ああ。いいよ」
 彼は蒸し返そうとはしない。本当にいい人。心が安らぐ。
「ところではるかちゃん。まだ学校なの?」
 話題を変えにかかっている。「もうこの話はいいよ」ということらしい。
「あ。はい。ちょっと補習も」
 だいぶ八月も近くなっていた。だからそういう「設定」。でもそろそろ制服姿はきついか。
「ふぅん。まだあるのかい?」
「いえ。八月にはもう」
 もちろん嘘だ。学校になんて行ってない。
 あらかじめ想定していた答えをする。
「そうか。それじゃ来週さ、デートしない?」
 私はフリーズしていた。
「え、え、えーっっっっ!?」

 三日後。私は沙羅さんにつれられてデパートにいた。
「沙羅さぁん。いいですよぉ」
「ダメよ。はるかちゃん。初デートでしょ。きちんとした格好しないと男の人に失礼よ」
「でも私、まだ高校生ですよ。そんなに背伸びしたって」
 いつの間にかすっかり「16歳の女子高校生」が板についていた。
 何の抵抗もなく口から出てくる。
 もはや「設定」というより「事実」のようにすら思えてきた。
 下手したらそのうち、元から女の子だったと錯覚しそう…

「夏休みでしょ。ちょっとくらいおしゃれしても、学校から何にも言われないわよ」
 沙羅さんまで私を本物の女子高生としてみている。

 そして次から次へと服を試着している。
 夏場ということで肩の大きく出たものだ。
 男の人だった時はタンクトップで町にも出たのに、いまはなんだが「これで歩くの?」という驚きが出る。

 ようやっと決めて帰れると思ったら今度は下着売り場。
 理由を聞いたら「勝負下着は持ってないでしょ」といわれた。
 そんな展開には…ならないと思う。
 でもなったら…キャッ。

 そしてデートの日。
 私は肩の大きくあいた白いワンピースで身を包み、待ち合わせ場所に急いだ。
 場所は渋谷。
 大丈夫かな。お化粧、おかしくないかな?
 大哉さん。私のこと可愛って言ってくれるかな?
…………って、何を考えているのかしら? 恋人は役の上だけでしょ。
 それに私は「本当は男」なんだから。

 でも、本当に「実は男」なのかしら。
 今の肉体は完全に女。
 先日も何度目かの『女の子の日』も終えたし。

 それに心も。
 この思い。本当に「役の上」だけなの?
 私は演じているの?
 それとも本気なの?
 こんがらがってきたわ…私は男? それとも女?

「ごめん。はるかちゃん」
 考え事に没頭していたら、いきなり肩をたたかれ声をかけられた。
「きゃああああああっ」
 私は驚いて声を張り上げてしまった。
「は、はるかちゃん。俺。俺だよ」
「だ…大哉さぁん。もう。脅かさないで下さいよぉ」
 私は涙目で文句を言う。

「おい。今の声」
「ああ。『はるきゃ』じゃ」
 いけない。秋葉原じゃなくて渋谷でもアニメファンはいるのね。ばれちゃった?
 彼らの間では私は「はるきゃ」と呼ばれているらしい。
 声の感じがフワフワして「はるか」なんてしっかりと止まらないで、どこか不安定な響きを持たせた『はるきゃ』とか。
「はるかちゃん。走るよ」
 大哉さんが力強く私の手を握り、そして走り出しました。
 その間、胸がドキドキしていた。
 きっとそれは走っただけのせいじゃない。

 目的地は映画館だった。
「これを見るんですか?」
「映画はデートの定番だろ。それに恋愛映画なら役作りにもね」
 そうかもしれないけど、二人で恋愛映画なんて…本当に恋人同士みたい。

 暗い中で隣同士。夏なのでむき出しの腕が触れ合う。
 それだけでなんか意識をしてしまう。

 映画は外国のもの。
 将来を誓った恋人同士。テリーとステファニー
 しかしそのテリーのほうが事故で女性になってしまう。
 女同士でも愛は維持できるのか?
 そこにテリーの親友だったフランクが接近してくる。
 このフランク。ゲイということで何かとテリーにアプローチをかけていた。
 ゲイということではあったものの、たとえ女性になってもそのテリー…女の人になってからの名前はティナだけど、男とか女とかじゃなくて人間として好きだと。
 いったんはその考えに打たれるティナだけど、それなら自分も女の肉体とはいえどスティファニーのことを愛していると。
 同性になったことで逆に愛情の深さに気がついて、ヒロインのもとに帰っていくという内容だった。

 よりによってこんな話…私はテリー/ティナに気持ちが入りすぎて、途中からずっと泣いていた。
 今の私ととても似ている。

 映画館を出て喫茶店に入る。
 平日だけど夏休みということもあり、学生らしい人たちもいっぱいいた。
 彼らは興味津々という感じでこちらを見ている。
 私たちが声優ということには気が付いてないと思う。
 その前に私がずっと泣いていて、大哉さんがそれをなだめていたから。
 はたから見たら「痴話げんか」にしか見えないと思う。
 なだめるのに疲れたのか、大哉さんもやや呆れたように言う。
「君はすごく感受性が強いんだね。役者としてはとてもいいね」
「……ごめんなさい。あの映画の主人公の気持ちが、痛いほど伝わってきて」
「あの主人公の? うーん。俺らアニメのアフレコもやっててあの手の話はよく見るけど、ティナが本当は男なのにフランクによろめいたのはちょっと理解しにくいな」
 そう思うのも無理はない。大哉さんはずっと男のまま。
 でも立場の同じ私にはティナの気持ちがよくわかった。
 女として男の人の愛を受け入れるのか?
 女同志だけどあくまで以前からの愛を貫くのか。

 私も同じ。
 男に戻って、大哉さんとの友情を戻すのか。
 それとも、このまま女として愛してもらうのか。

 沙羅さん。それからラビちゃんも残りの人生を女性として生きる決意をした。
 私も…もう少ししたらそんな決意を固めてしまいそう。
 それはとても大変なこと。
 本当は弥生はるかはこの世にいない女の子。幻の女の子。
 それが「現実」として生きるには、色々と乗り越えないといけない。
 何よりそれまで男として生きてきたすべてを捨てる覚悟はまだない。

 でも、女の子としてのこの思い。どうしたらいいの?

 それからまた毎週のアフレコ。
 すでに放映も始まっている。
 ありがたいことに好評らしい。
 作品もだけど、私の声も。
「エンジェルボイス」とまで言われると照れる。

 おかしなものね。
 嫌で嫌でたまらなかった声なのに、それで沢山の人に愛されて。
 何より大哉さんに褒められてとても嬉しい。

 そしてこの声のせいか、ゲストではあるがほかのアニメの仕事も入るようになった。
 さらには来年1月スタートの、1クールの深夜アニメのヒロインも決まっていた。
 なので以前ほどのんびりと出来なくなっていた。

 この「天使の声」のせいと思うけど、ゲスト含めてほとんどは穏やかな「お姫様」とか「お嬢様」で。

 互いに忙しくなってきたせいもあり、大哉さんと逢うのは「PanicPanic」の収録の時だけになってきた。
 だからこの収録の時間が別の意味でも大切に。

 11月。「PanicPanic」の25話の収録だ。
 早いものね。次がもう最終回。
 しかし別のことで頭がいっぱいだった。

「こ…これも申し訳ござらん。拙者、先ほどの接吻が生まれて初めてで、多分へたくそだったのではないかと」
「初めてだったんですか? それならよかった。わたくしもずっと十郎太様のためにこの唇はとっておきましたもの」

 アフレコが進む。
 現在はかなり終盤。そこに来て…私の演じる姫子と、大哉さんの演じる十郎太がキスしちゃった…
 予備知識で原作は読んでいた。
 そしてアフレコ台本も当然読む。
 だからこのシーンは分かっている。わかっていても…恥ずかしい。
 なんだか私が本当に十郎太様…大哉さんとキスするみたいで。
 そしてそれを夢見る自分…
 役に入り込みすぎね。

「はい。オッケーです。いただきます」
 アフレコが終わった。今日はこれでおしまい。
 ブースの向こうから監督の声が飛ぶ。音響監督じゃなくて、アニメ制作そのもののね。
「はるか。恋でもしたか?」
「は、はい!? 何言ってるんですかぁ!? 監督」
 セクハラにでもなりそうな発言だ。
「悪い悪い。でも芝居が変わったよ。高校生なのにすごい色気だ」
「あー。ほんと。はるかちゃん可愛くなったわね。もちろん今までもかわいかったんだけど、よりかわいくなったというか」
 お姉ちゃんが同意する。
「確かにね。クラスの男の子でも好きになった?」
「それともほかの現場?」
「ひょっとして…この中にいる?」
 勝手に盛り上がる女性陣。人をおもちゃにしているわね。
「違いますよぉ。そんなんじゃないですよぉ」

 言い訳はするけどたぶん無駄。
 隠しきれない思いが声に乗っている。

 あー。あたし完全に大哉さんのことが好きなんだ。
 「十郎太を愛する姫子」の役に引っ張られたのかしら?

 私は沙羅さんとスタジオを後にする。
 午後の収録の場合、沙羅さんと一緒に食べるのがいつものパターンだった。
「お疲れ様。今日はどこで食べましょうか?」
「あの…沙羅さん。二人だけでお話しできます?」
「いいけど…相談?」
 私は首を縦に振った。

 連れて行ってもらったのは沙羅さんのお家。
「あれ? 今日は二人で食べてくるはずじゃ」
「ええ。ちょっとお話があるから来てもらったの」
 当然だけど旦那様もいる。
(この人のために、沙羅さんは男としての人生を捨てて)
 彼が大哉さんにダブって見えた。

「さ、沙羅さん。ここでですか?」
「ええ。女同士で裸の付き合いよ」
 なんとお風呂での相談だ。
 確かにここじゃ旦那さんが入るわけにもいかない。
 もちろん沙羅さんだけなら夫婦なんだし問題ないが、私がいるのにそれは無理。
 そして立ち聞きしていればすぐにわかる。

 それにしても…沙羅さん。本当にきれい。
 元は男の人だなんて思えない。
 でもお腹のあたりだけはちょっと。
 私のその視線に気が付いたのか、沙羅さんは笑顔になる。
「これ? お母さんの勲章よ」
 妊娠したことで崩れてしまったラインだ。
 だけどそれで一つの命を世に送り出した。
「沙羅さん…お腹に赤ちゃんがいるとわかったとき、どんな気持ちでした?」
 沙羅さんは考えていた。
 たぶんこれが相談の一部と察したのだろう。
「嬉しかったわ。そして…そう思う自分にびっくりだった」
 女にしか味わえない幸せという意味だろうか。
「だからあの時、私は本当に女になったんだと思う。彼を愛していたとはっきり分かったのだから」
「……」
「赤ちゃんができるってことはね、覚悟をしなくてはならないということなのよ」
 確かに一人の人間を世に送り出すのだ。
 並大抵の気持ちでは務まらない。
「はるかちゃん。まだ16歳のあなたに、それだけの覚悟があるかしら? すべてを捨てて、それでも彼とともに生きていきたいという強い気持ちがあるのなら」
 元の姿に戻さないように掛け合ってくれると約束してくれた。
 それで私も覚悟を決めた。

「私、決めました。最終回のアフレコ終了後に、大哉さんに告白します」

 その日が来た。
 私はこの日を最後に「男だった自分」に別れを告げる。
 そして女として生きていく。そう決めた日が来た。

 アフレコは順調に進み予定時間過ぎたものの、比較的早く終わった。
「神楽坂君。ちょっといいかしら?」
「あ。はい。千葉さん」
 誘い出すのは沙羅さんがしてくれた。
 後は私次第。

「なんだ。はるかちゃんだったのか」
 人気のない公園に二人。うう。意識しちゃう。
 だめ。この程度でひるんでどうするのよ。
 これから愛の告白をするんでしょ。しっかりしなさい。はるか。
「あ、あの、お疲れ様です」
「ああ。お疲れ。終わったね」
 沈黙が支配する。
 緊張する。もういい。言っちゃおう。
「あの、神楽坂さんには、彼女はいるんですか?」
 いきなりのこの質問に彼は目を丸くした。
 本当は「目の前にいるよ」といってほしいけど、それはアニメの話。
 今は他に親しい女性がいないのを確かめたい。

「突然だなぁ。いないよ。残念ながら」
 私は自分でもわかるほど明るい表情になっていたかと思う。
「それなら!」
「彼女はいないけど、かけがえのない親友ならいるよ」
「え?」
 それって…まさか…

「聞いたことないかな。六月初春って」
 それって…私。本来の私。男としての私。
「同業者だけど、そんなに大きな役はやってないから知らないかも」
 なんでここで「ハル」の話が出てくるの?
「あいつはすげぇよ。今は武者修行でアメリカにいる。連絡も取れないけど、きっと頑張っている」
 「彼」のことを話す大哉さんは、本当に生き生きとしていた。
 どれだけ「彼」がかけがえのない存在か、よくわかった。

 私がこのまま女として大哉さんの恋人になったとする。
 けどそれは、同時に彼の大事な親友を奪うことになる。

「俺も負けないようにしないとなぁ。きっと大きくなって帰ってくるあいつを『なんだ。お前はこの程度か』とか、がっかりさせたくないぜ」
 だめだ。大哉さんから「親友」を奪うことは出きない。

 なんて皮肉なの。私の恋を妨げるのが、本来の自分だなんて。

「……その人のこと、とても大事なんですね」
「ああ。一番の親友さ」
 全く言いよどむことなく言い切った。
 それで私も気持ちが決まった。
「ところで、君の話は?」
「いいんです。もうわかりましたから」
「え? 何が」
「さよなら」
「お、おい。はるかちゃん」
 大哉さんの声を背中に、私は泣きながら走った。
 そして待ち合わせていた沙羅さんの胸に飛び込んだ。
「沙羅さぁん。私、私」
 後は声にならなかった。
 沙羅さんは無言で私をやさしく抱きしめてくれた。
 また泣いてしまった。

 逆の覚悟が決まった。
 全てが終わったら男に戻る。
 そして大哉さんに親友を返してあげよう。

 そして「PanicPanic」の終了の「打ち上げ」になる。
 同時にこれは私のお別れパーティー。
 三月には「学業に専念する」という建前で元の姿に戻る。
「弥生はるか」は引退…そして消滅する。
 でも、最後に一つだけでも「はるか」として…

 終わってからみんなとは別れて、再びあの公園に二人で。
 前のことがあるからちょっと気まずい。
 けど、今度は逃げない。
「はるかちゃん。何かな? こんなところで」
「…これでお別れですね」
「ん? そうだね。ちょっとスケジュールが合わないね」
 この先、大哉さんと私のスケジュールはまるであってない。
 同じ現場がないのだ。

「でもまぁ。はるかちゃんは引退するといっても、生きてさえいればいつかまた」
 大哉さんは先を言えなかった。
 私の唇が彼の唇をふさいだからだ。
 触れていたのはほんの数秒。でも、永遠の一瞬。
「な、何を?」
 さすがに驚いている。ごめんさない。はるかとしての思い出がほしかったんです。
 そして「私という女の子がいたこと、忘れないでくださいね」という。
 彼の胸に弥生はるかを刻みたかった。

 自分でも意外なほど、にこやかに言えた。

 その後は本当に二人はかみ合わず。
 そして空き時間に合うこともなく、やがて約束の時期が来る。
 私は全裸でカプセルに横たわる。
 「はるか」でなくなる前に、一度だけ指で唇に触れた。
 女の子として交わした最初で最後のキスの思い出。
 そのままカプセルは溶液で満たされ、私は眠りについた。










 一週間がたって私は男に「なっていた」
 まだ心は女のまま。
 リハビリ期間で戻せるかしら?

 さらに一週間。だいぶ体が動くようになる。もちろん声も出る。
「俺の声…こんなだったっけ?」
 一年にわたり「エンジェルポイス」だったのだ。忘れもするか。

「OVA好評発売中!」

 不意に流れたテレビCMに俺は驚いた。
「はるか」だ。
 そうだ。確かに「弥生はるか」という女性声優はいたのだ。
 その証が今。
 だから…

 ようやく問題なく体が動くようになった。
 やっと元のところへと帰れる。

 稽古場につくまでにいろんな人に「久しぶり」といわれた。
 そして、一番逢いたかった男がいた。
「おー。ハル。帰ってたのか」
 大哉はそういって握手を求める。だが俺はそれには応じない。
 「大哉さん」と硬い抱擁をした。
「ハ、ハル?」
「ただいま。親友」
 そうだ。親友なのだ。俺のこの肌は優しいにおいも柔らかさもない。
 同じ体だ。男同士。
 ただ、確かに存在した「はるかという女の子」の最後に残した思い。それもこうして解き放った。
「お帰り。親友」
 大哉は優しく迎えてくれた。

 それからの俺は確かに一皮むけた。
 何しろ女の子として一年を生きてきたのだ。
 その目で男というものを見つめなおしたのだ。その経験が俺を成長させた。

「Angel Voice」とまで言われるほどに、きれいな声をした弥生はるかはもういない。
 けれど確かに彼女の思いは届いた。
 俺と大哉は、ずっと親友だった。
 それこそが「彼女」の望んだ「恋の行方」。

 弥生はるかは、わずか一年で泣いて、笑って、恋して、そして生きたのだ。


The End


あとがき

 この作品は紺野あずれ先生の「こえでおしごと!」に触発されて作られました。
 地方のエロゲメーカーの社長である姉に「エロゲの声優」を頼まれた妹が主人公で。
 性的なことに疎いのに、毎回きわどいセリフを口にする羽目になるという内容です。

 それをTSでやってみたのが本作です。

 当初は原典通りに「エッチなセリフ」と思ったんですが、猿まねでも芸はないから「エッチじゃないけど、女性でもいうのが恥ずかしいセリフ」を言う羽目になると。
 それがやっているうちに「演技と本気の区別が付かなくなった」という方向にシフトして。
 いつになく『切ない』物語になりました。

 本当はラストは「はるか」の思いを残したまま男に戻ったため、好きという思いが出てしまい、BLものの名コンビになる初春と大哉というつもりでしたが、蛇足に思えてやめました。
 BLはちょっと意識してみましたが

 声優なのは第一に原点に合わせた。第二が実写の女優だと知れ渡りすぎるということ。最後に「僕が好きだから」と(笑)

 はるかのセリフが色違いなのは「エンジェルボイス」を表現したくて。
 本当は書体を変える方向…例えば丸ゴシックとかにしたかったけど、PC環境に左右されにくいほうで色で。

 アニメ化している設定の「PanicPanic」は実は僕の作品で(笑)
 ここぞとばかしに「アニメ化」の夢を。
 まぁ新たに劇中劇を作るのも面倒でしたし(笑)

 ほかの声優ですが、当初は全員モデルはいるものの名前はまるでがうと。
 それが久万望さん。永遠の17歳(笑)(ちなみにモデルとなった方の本名の苗字は「熊谷」だったりします)
 後は面倒になって(笑)いつものように字面を変えただけ。

 大きくかかわる沙羅は「アンテナショップ」からの出張で。
 というか「アンテナショップ」の面々の次の被験者が初春であり「おとり捜査」の遠山舞(遠山勘四郎)だったりと。

 ネーミング。
 六木初春ないし弥生はるか。
 原点の「こえでおしごと」は月(暦のほう)の別名からとっているのでそれにならって。
 一月の別名・睦月の字面を変えて「六木」。そして芸名のほうの「弥生」。
 睦月は一月のことなんで「初春」と。そこから「はるか」になって。
 神楽坂大哉は実在する男性声優二人を混ぜてアレンジ。
 苗字の「神」と名前の「大」で想像していただけると(笑)

 お読みいただきまして、ありがとうございました。

城弾

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