「優介ぇーっ。待ちなさいよぉーっ」
 私立蒼空学園。この普通の進学校に今日も黄色い声がこだまする。
 廊下を逃げる少年と追う少女。スポーツの秋とはいえど廊下での徒競走は推奨されていない。
 共に乳白色のブレザー。男子用は左前。女子用は右前。
 ボトムも赤系統のチェックで同じ柄である。この学校では女子はスカートのみである。
 そのスカートから見える二本の足をピンクのニーソックスで包んだ美少女。
 「追う少女」は学園のアイドルとまで言われる高嶺まりあである。
 言われるだけあって可愛い顔立ち。超ロングのツインテールが愛らしさに拍車をかけている。
 成績優秀。スポーツ万能。しかも実家は金持ちでいわゆる「お嬢様」。
 それでいて人当たりも悪くない。誰からも愛されている少女だが、彼女の愛はこの追いかける少年にのみ注がれていた。
 他の男には一切媚びない辺り一本の芯が通っていた。

 その「逃げる少年」である水木優介。
 小柄で華奢な体躯。なんといっても男とは思えないその顔。
 恋愛観まで女の子じみていた。男が好き。つまり同性愛者だった。
 だがむしろ極端な女嫌いという方が近い。
 女系家族で優介には姉が三人。妹もいる。父は北海道に単身赴任中。
 この姉たちが美少年の弟にやたらべたべたする。
 そして同様にまりあも。
 それを鬱陶しく思った彼は女嫌いに。そして男に受けた親切に感動したのを恋心と勘違い。
 あげく自分がホモだと思いこんだのである。
 そうでなくてもまりあとはかみ合わない。逃げてしまう。逃げれば追う。それでこうして追いかけっこである。


城弾シアター十周年企画 第2弾

PLS

〜Chase in Labyrinth〜

 追いかけっこは校庭にまで展開する。今は昼休み。
 そもそもこの追いかけっこも「二人でお昼を」と迫るまりあから優介が逃げていたことが発端。
「どうしてわたしのお弁当食べてくれないのよ」
 走りながら叫ぶ。
「ぼくを殺す気か!?」
 どうやらその意味でも逃げていたらしい。

 二人の前に金髪の美青年が待ち構える。
 まりあが学園のアイドルならこちらは学園の貴公子。
 校則無視して金髪。そしてピアスや指輪までしていたが恐ろしくさまになる。
「まりあ。それなら僕と一緒に食べよう」
 両手を広げて迎え入れる体制だ。
「げっ。火野君?」
 ブレーキをかけるまりあ。正直この「イケメン」は好きではない。
 一年のときも同じクラスだったがそのとき散々付きまとわれたからだ。
 自分の美貌を鼻にかけているようにも見えてそれもマイナス要素。
「ずるーい。それならぼくとだよね。恭兵君」
 まりあに向けていたのとは一転してにこやかな笑みで胸に飛び込もうとする優介。
「あっ。まちなさい」
 優介を追いかけるまりあに彼方からポニーテールの少女が駆けつけた。
「まりあ。まさかあんたキョウ君にアプローチかける気?」
 スカート姿。しかもパンスト着用にもかかわらず凄まじい速さで駆けつけた。
 それもそのはず。綾瀬なぎさと言えば学校どころかその地区の陸上記録を総なめの選手である。
 どちらかというと瞬発力を重視する競技が得意だが、マラソンなども上位に入る。
 そしてなぎさという名のせいでもあるまいが泳ぎも得意だった。
 反面勉強はからっきしであったが。

 ポニーテールと並ぶもう一つのトレードマークがパンスト。
 地肌が一切見えない。完全に足を隠している。
 小学校時代のある一件がトラウマで足を見せなくなった。私服のときはパンツルックのみ。
 ただし例外は泳ぐ時。そのときだけはさすがに足を見せる。
 むしろ普段の反動で布地が少ない水着を選ぶ意向がある。

「裏切り者。約束が違うじゃないか」
「落ち着いて。なぎささん。火野君には関係ないから」
「だってそんなお弁当箱まで……まりあのお弁当? まさか…一思いにキョウ君を殺すつもり!?」
「なんなのよ。みんなして」
 まりあになぎさが詰め寄る間に優介が逃げたかと思えば、こちらはこちらで恭兵にまとわりついていた。
「恭兵君。たすけて」
「離れろ。僕は女の子が好きなんだ」
 見た目どおりチャラチャラした性格であった。
「きょ……キョウくん」
 だからなぎさの思いも届かない。
 今度は落ち込むアスリート娘。そこに

「綾瀬っ。戻ってこい。バレーの最中だろう」
 遠くから声が響く。
 そちらを見ると逆立った赤毛の少年がメガホンで呼びかけていた。

「あ、あの……ヒロくん。なんですか。そのメガホン?」
 黒髪ロング。黒ぶちメガネの少女が恐る恐る尋ねる。
 優等生の印象と裏腹に胸は大迫力。肉体派だった。
「おう。シホ。よく聞いてくれたぜ。レスキューメガホ○ン。昨日買ったんだ。試すチャンスを待ってたんだぜ」
 得意げな少年。傍らでは三人の少女が様々な反応をしていた。
「すごいです。ヒロオ先輩。それならどんな遠くにも声をかけられますね」
 金髪のツインテール。しかも巻き毛。
 碧眼。つり目。八重歯と典型的な「ツンデレキャラ」の容姿だったが、実は人一倍の寂しがり屋の甘えん坊。
 しかし異国の地では無理もない。留学生。アンナ・ホワイトが本気で感心していた。
「風見先輩。行動力あるなぁ」
 セミロングの髪のおとなしそうな娘。大地双葉が感心したように言う。
「バカ兄貴……恥ずかしいったらありゃしない」
 そばかすの少女。風見千尋が頭を抱える。ヒロ君こと風見裕生の実の妹である。

 裕生は重度の特撮マニア。しかも将来はスーツアクター志望。
 その為に幼い頃から体を鍛え続け運動はこの学校では上位に入る。
 だがただの特撮オタクというには酷な事情がその家庭環境。
 父親がかつてはスーツアクターだったのだ。
 大好きなヒーローの正体が父親と知った時の興奮は、彼の将来を決めさせるには十分な理由であった。

 そしてなぎさの運動神経とスタイルに目をつけ同じ道へと誘っている。
 それがどうにもメガネの少女。裕生の幼馴染みのシホこと槙原詩穂理に寂しい思いを抱かせる。
 彼女は学園位一の秀才であった。ヘタしたら教師の代役くらいは務まりそうな学力。
 しかし反対に運動はからきしダメ。
 まちがってもアクションなんて出来そうにない。

 彼女にはもう一つコンプレックスがある。
 その整った顔と大きな胸元である。
 胸はともかく顔の方は普通なら誇りこそすれコンプレックスにはしない。
 実はそっくりなAV女優がいるのだ。
 その存在を知った彼女は少しでもイメージを遠ざけるべく、女優の茶髪のショートと被らないように黒髪のロングヘアに。
 そして顔を隠すべく大きなな黒ぶちメガネをしていた。
 トップバスト92センチ。Gカップの胸も男にじろじろ見られたり、ブラのストラップが肩に食い込んだりと本人的にはいいことがない。
 そしてこの「重石」がなおさら運動を苦手にさせる。
「はぁ」
 ため息をつき利き腕の左手で髪をかきあげる。
 生来は右利きだったのだが、左利きの裕生とあわせているうちに本人も左利きになってしまったのである。
 それほど好きなのに裕生の目は自分を向いていない。落ち込むには充分だった。
 ちなみに裕生本人は左利きにもかかわらず普段どころかスポーツですら右投げだ。
 唯一野球やソフトボールの打席だけは一塁に近いゆえ左で打つ程度。
 これはスーツアクター志望ならではの心構え。
『変身前』の役者が右利きの場合を想定して右腕を使うようにしていた。
 詩穂理は左利きになったというのに追いかけている裕生は逆に右を使う。
 これもまた距離感を醸し出していた。

「気にするな。槙原」
 2メーター近い巨漢が慰める。
 厳つい顔とリーゼント。そして極端な無口から誤解を招くが、不良どころか料理を愛する心優しき男。
 それが大地大樹であった。
 だが誤解せずに笑顔まで向けたくれた詩穂理に対して少なからず関心を持っている。
「そうだよ。大ちゃんのいう通りだよ。シホちゃん」
 もう一人。ショートカットの小柄な少女が言葉を添える。
 身長は150もない。胸もない。童顔。服装によっては高2にもかかわらず小学生と間違われるのもザラである。これには甲高い声も無関係ではない。
「南野さん……ありがとうございます」
 堅い性格の詩穂理はクラスメイトの女子も苗字にさん付け。敬語で会話する。
 逆に言えば「ヒロ君」と呼ぶ裕生が特別であると周辺にバレまくり。
 それでも察することの出来ない裕生の鈍感ぶりであった。

「美鈴。助けて。まりあにいじめられているんだ」
 いつの間にか優介が詩穂理たちのほうにまで来ていた。
 どうやらまた追いかけっこで美鈴に助けを求めたらしい。
「ちょっと優介。抱きつくならわたしにしなさい」
 まりあが怒鳴る通り優介は南野美鈴に抱きついていた。
 彼自身は女嫌いであるが、美鈴ともう一人の少女には嫌悪感がなくそれでたまにこうしてふざける。
「あ、あの。まりあちゃん。みんなで仲良くしよう。ほら。お弁当食べるんでしょ?」
「美鈴のお弁当なら食べるよ。けどまりあのじゃ死んじゃうよ」
「う……」
 これは誰もフォローできない。
「美鈴ちゃん。高嶺先輩って」
「ち、違うよ。双葉ちゃん。まりあちゃんはお料理が下手なわけじゃないよ。ただあんまりやってないだけで」
「そうよ。わたしだって女の子よ。それなのに雪乃さんたらいつまでたっても台所に立たせてくれないで」
(それは無理もないんじゃないかなぁ)
 その場の全員が思った。
 まりあはいわゆるお嬢様で家事はほとんどメイドがこなす。それゆえまるで出来ない。
 一方の美鈴は体力はない。故に体育の成績は詩穂理ほどではないが芳しくない。
 勉強も得意なほうではない。
 しかし「女らしいこと」は何でもござれ。
 特に料理は絶品である。
 美鈴とまりあでは料理の腕前で天地の開きがあった。
「今日だって優介にお弁当作るつもりで早起きしたら既に雪乃さんが作っていたし」
 完全に見透かされていた。
「なんだ。それを早く言え。お前が作ったんじゃないなら食べる」
 女のプライドずたずたの優介の発言である。
「うー」
 屈辱ではあったが残り時間も大してない。まだ食べてない二人は校庭の片隅で昼食をとることにした。

 ここで一つ整理してみよう。
 誰が誰に対して積極的なのか。矢印が現在判明している好意のベクトルだ。

優介←まりあ←恭兵←なぎさ←裕生←詩穂理←大樹←美鈴←優介
 脅威の八角関係ということになる。
 互いに自分が好きな相手への同性の接近を牽制し、反面協力して恋が実るように動いていた。
 しかし前途多難であった。

「しかし水木。君もわからないな。どうしてそんなに女の子を嫌いなんだい?」
 金髪の色男。恭兵が言う。
 彼は女癖が悪かった。そんな彼からすると優介は真逆の人物である。
「そうよ。あなたは男なんだから女の子を相手にしなさいよ」
 珍しくまりあが恭兵の言葉に乗る。「利用した」という方が適切か。
「恭兵君は女の子の方が好きなの?」
 上目遣いで見上げる美少年。まりあの方は完全無視。
「う……」
 「その気」のない恭兵も思わずくらくらする「色気」だった。
(コイツほんとに間違えて男に生まれてきたんじゃないか?)
 それくらい女っぽかった。
 女嫌いはその反動かと思うと不思議と納得できる。

 危ない思想に振り回されそうになったのでことさら強く言う恭兵。
「ああ。好きだね。男に生まれた以上、相手はやはり女の子だよ」
 きわめて正論なのだが恭兵が言うと女好きそのものでがくんと落ち込むなぎさ。
「ふぅん。だったらぼくが女の子だったら愛してくれた?」
 女顔の美少年の問いかけに声を詰まらす金髪の美男子。
「ま、まぁな。水木が女だったら考えていたよ」
 不覚にも女バージョンを考えてしまった。
(そんなことがあるわけないだろうが。魔法とか実在はしないんだし)
 自分で自分をしかりつけていた。
「ああ。良いんじゃない。水木君が女の子だったらまりあも毎日走らなくてすむし」
 なぎさが意中の相手である恭兵に追随する形で発言する。
「そうですね。水木君ならかなり綺麗だと思います」
「美鈴もそう思うーっ」
「ちょっと!? 詩穂理さんに美鈴さん」
 友人たちの思わぬ「裏切り」に思わず声を荒げるまりあ。
「確かにそっちなら随分問題はなくなるよな」
 いつもは鈍感な割りにこういうときだけ鋭い裕生。
「別にぼくは女になんてなりたくないけど、裕生君や恭兵君が望むなら…いいよ。それでも」
「だからいちいち女っぽいポーズしないで。優介」
 まりあとしては面白くない。
「そうだね。確かに女だったらお前に付きまとわれなくていいかも」
 この言葉は言外に鬱陶しいと言われていると読めた。
 カチンときたまりあは売り言葉に買い言葉で叫ぶ。
「優介なんか女の子になって誰かのお嫁さんになればいいのよっ!」
「そうするよ」
 本気に聞こえるから恐い。
「無理な相談だがな」
 無口な大樹が重い一言で締めくくる。

 真昼に浮かぶ月。それが怪しい輝きを放つ。

 秋の夜。水木家。
「優介。見てみなよ。ほら。綺麗なお月様」
 同じ顔の少女。双子の姉。水木亜優が声をかける。
「えー」
 面倒に思うものの中秋の名月は惹かれるものがある。
 彼は読んでいた雑誌を放り出してベランダに出て夜空を見上げた。
 そこには怖くなるような輝きを放つ月があった。
 まるで魂を抜かれたようになる優介。

「ふーん。ぼくは女になんてなりたくないけど、裕生君や恭兵君が望むなら…いいよ。それでも」

 不意に昼間の言葉が蘇える。
 彼は双子の姉を見る。
「な、なによ」
 実の弟とはいえど女とみまどう美少年。接近されてドキッとなる。
「ううん。ぼくが女になったら亜優みたいな顔かなって」
「何よそれ?」
 昼間のやり取りを知らない亜優は戸惑う。

 隣家のまりあも同じころ空を見上げていた。
 なぜだか「見ないといけない気分」だった。
 そして不意に昼間の言葉が蘇える。

「優介なんか女の子になって誰かのお嫁さんになればいいのよっ!」

(そうよ。優介が女ならわたしもこんな思いしなくていいもの。優介なんか女になっちゃえーっ)
 まるで答えを確認されて同じことを言うように彼女は心の中でつぶやいた。

 どういうわけかあの場にいた面々は全て月を見上げ、そして「優介が女になればいい」と念を押された。

 翌日。講堂での全校集会。
 その終盤で様々な連絡がある。
 運動部の練習試合。生徒会からの注意事項。文科系クラブも告知がある。
 今は優介が所属する軽音学部代表としてライブの告知を行うべく壇上にいた。
 文化祭が近いのである。

 だが彼はふらふらとした足取りだった。
(風邪を引いちゃった? 何かだるい。まずいなぁ。声出るかな? でもぼくはボーカルじゃないからいいかな? そうじゃなくて告知…)
 取り留めない思考。潤んだ目つき。赤い顔。
 美少女のようなその美貌が怪しく光る。
 実を言うとその美貌で女性ファンを呼び込むべく部長の代打を命ぜられたが、むしろ男の方がひきつけられそうな色っぽさだった。それほどまでに女性的な色気だった。
 彼は演台の前に立つ。一礼してマイクに向けて声を発する。
「軽音楽……!?」
 その甲高い声に思わず口を押さえる優介。
(やっぱ喉が? でもカスレ声じゃなくて女みたいな)
 一方聞いている側もざわめく。まるっきり女の声。
 最初は「声が裏返った」くらいに思い失笑すらあったが、それが異変であると思い知らされる。
 胸が傍目にわかるほど膨らんできたのだ。
 最前列では恐慌が起きる。
 他の部分も変化している。それがわかるのはそばに控えていた生徒会の面々だけ。
「み、水木君。その胸?」
 生徒会長。オデコがトレードマークの海老沢瑠美奈が慌てる。
 はっきりわかるほどに胸が膨らんでいた。
 ズボンがずり下がる。胴回りが細くなったからだ。
 ズボンだから腰で穿いていたがそれでもずり落ちるほど細く。
 ウエストも上着越しでわかるほどスペースが。くびれている。
 もっとわかりやすいのがヒップライン。
 体育会系の発達した腰ではない。「安産体形」だ。

「優介っ。どうしたのっ?」
 彼を愛しているまりあが壇上に駆け上がる。
「まりあっ。関係者以外が壇上に上がらないでっ」
 非常事態なのだが規則を前面に押し出す瑠美奈。
「そんなこと言ってる場合? そのオデコにもこの異常な様子が映っているくらいよ」
「私のオデコは鏡か」
 この二人は犬猿の仲。
 さらにまりあに対する嫌がらせで優介に接近した瑠美奈が、逆に一目ぼれしてしまったということもあり顔をあわせればケンカである。
 その際まりあは瑠美奈のコンプレックスである広いオデコを扱うのがパターンで。
 対抗する瑠美奈はDカップの胸でBカップのまりあに張り合う。

 騒ぐ瑠美奈を無視してまりあは優介に駆け寄る。
「しっかりして。優介」
「ま、まりあ」
 もはや間違いようのない。完全に女の声で優介は声を紡ぐ。
「その声……髪の毛……やだ? 匂いまで。まさか?」
 学園のアイドルにあるまじき行動に。優介の胸にタッチ。
「!?」
 触ったほう。触られたほう。同時に驚いた表情。
「ゆ、優介。その胸?」
 まりあの手には柔らかい感触。自分の胸元にもあるのと同じ感触。
 優介には未知の感触。電流が走るような、快感にも不快感にも取れる不思議な感触。
「ま、まさか」
 優介は股間をまさぐる。生まれてからずっと一緒だった部分。それが見つからない。
「ない」
 この場では青くなる優介。
 本人よりもまりあが先にパニックに陥った。半泣きで叫ぶ声をまだ活きていたマイクが拾う。

「優介が女の子になっちゃったぁぁぁぁぁっ」

「ええーっっっっっ???」
 誰も笑わない。そうとしか思えない変化が眼前で繰り広げられていた。

「そんなバカな? 男が女にだなんて」
 否定して見せるなぎさだが半信半疑。つまり少し信じている。
 というより優介は女の方がしっくり来ると感じたら笑うに笑えなくなった。
「あはは。本当になる奴があるかよ」
 恭兵はまるで信じていないが一応はまりあの発言ゆえに本人ではなく優介を揶揄する形だ。
「こ、これは『男が女になるクライシス』? まだネ○テーラが活動していたのか?」
「ひ、ヒロ君。状況を考慮して……でも高嶺さんの冗談としたらこれでいいのかしら?」
 ボケているのか。それとも半分パニックに陥っているのか特撮ネタを暴発させる裕生。
 理論派の詩穂理も混乱している。

「どうです。ご希望通りでしょう」
 突然空から少女が出現した。
 虚空から文字通り「出現」した。
 少女と思ったのはその長い髪と綺麗な声。
 惜しげもなく晒された腕と足の美しさもそれに拍車をかけていた。
 不思議なことに顔も遠くの人間に認識出来た。
 もっとも空中にいきなり現れる存在が普通のはずはない。

「な、何なの? 何が起きているの?」
 三年生のエリア。恭兵の実姉。火野由美香も混乱している。
 普段はやたらに女の子に手を出す弟相手に気丈に振舞うが、さすがに常識の範囲を超えると混乱に陥る。
「あらあら。不思議なこともあるものねぇ」
 大物ぶりを発揮しているのは親友である栗原美百合。やはり三年生。
 比較的高い背。それに似合う豊かな胸。亜麻色の長い髪。優しげな顔立ち。
 どこから見ても「お姉さん」なキャラクターであったし、実際に慈愛にみちた少女である。
「美百合っ。あれ見てそんなのん気なこと言えるのっ?」
「大丈夫よ」
 美百合は優しく由美香を抱き締めた。
 いつもは性別問わずハグする癖は相手に戸惑いを与える。
 だが今回はギュッと抱き締められて落ち着きを取り戻した。
「あ、ありがと。美百合。でも」
「ええ。不思議よねぇ。マジシャンかしら」
 だとしても何もない空からというのは考えられなかった。

 2−Aのエリア。
 ネコミミをつけた少女が興奮している。もう一つのトレードマークである丸いメガネは実は伊達。
 愛らしい顔立ちと裏腹に胸元は立派。
「すごいよ。すごいよ。本当の魔法少女。妖精さん?」
 彼女の名は里見恵子。通称ミケ。
 名前は平凡だが趣味はコスプレ。それも学校で常時。
 ネコミミだけではない。制服のスカートにはしっぽがくくりつけられている。
 普段はキャラ付けで語尾に「にゃん」などとつけるが、このときばかしは平静でいられなかった。

「うろたえるな! 貴様らそれでも男か!」
 こんな発言をしたのは少女。しかし女子高生と思えない凄みのある声でクラスメートを黙らせる。
 2−B所属。そして女子空手部主将。芦谷あすか。
 整ってはいるが地味な顔立ち。長い髪をセットせず無造作に束ねている。
 武道家らしい印象で武道家らしい発言をしている。
 だがその表情は不機嫌そうだ。自身の言葉に苛立ちを感じている。

 まりあはその愛らしい顔立ちに怒りの仮面をつける。
「何よあんた?」
 普段の愛想のよさはどこにもない。かなりいらついている。可愛らしい声もトゲがある。
「申し遅れました。わたくし、月からの使者です。名前は…ぐえっ」
 宙に浮かぶ少女の首にまりあが投げつけたマイクが巻きつく。
「まずは降りてきなさいっ」
 普段はこんな暴挙は働かない。優介の女性化で不機嫌マックス状態だ。
 力任せに少女は壇上に叩きつけられる。反動でマイクのコードが緩むほどだ。それでやっと喋れるようになる。
「ちょ、ちょっと。名乗らせてくださいよっ」
「月からの使者とか言ってたわよね。だったらルナでいいわ。こんな狂気の展開」
 正確にはLunatick。狂気という意味もある。
 少女は不機嫌そうにしていたが気持ちを切り替えて話しを切り出した。
「まぁいいです。名前なんて単なる符丁ですから。その名で呼びたいならどうぞ。それよりもその人の説明です」
 ルナは優介だった少女を指差す。
「そうよ。どうして優介を女にしたりしたの?」
 まりあはルナが現れた時の台詞。「ご希望通りでしょう」からルナがやったと決め付けていた。
「あらやだ。だって皆さんで願ったじゃありませんか。その人が女になればと」
「え?」
 まりあだけでない。なぎさ。詩穂理。美鈴。大樹。裕生。恭兵。そして優介本人も思い出した。
「あ、あれが願い事になったって言うの?」
「そうですよ。なにしろ本人も望んでいましたし」
 まりあの矛先が優介に向く。
「確かに考えたね。というか『念を押されて』『ハイ』と答えたみたいな感じかな」
 再び身に覚えの面々。
「それじゃ……みんな揃って」
「ほらご覧なさい。その願いが月を鏡としてその人に跳ね返ったんですよ。満月のパワーを甘く見ないで欲しいですね」
 何処か自慢げなルナである。
「だったらキャンセルよ。本当になるだなんて思わないもの」
「まぁ偶然でしょうね。受理したいとこですが今すぐは無理ですよ」
「なんですって!?」
 いまだ首に巻きつけたままのコードを引っ張るまりあ。優介が絡むと冷静さを失う。
「ちょ、ちょっと首が絞まる。死んじゃいます」
 ファンタジー世界の住人が絞殺されるかどうかはさておいて、苦痛に顔をゆがめているのは確か。
「戻しなさい。今すぐ優介を男に戻しなさい」
「死ぬ。死んじゃいます」
 じたばたもがく月からの使者。
「方法は!?」
 聞くために少し力を緩めるまりあ。またしゃべれるようになる。
「いったでしょ。満月のパワーをなめるなと。今はもう満月じゃないから次の満月でないとひっくり返せませんよ。でもそこで元に戻せないと今度は安定してしまって、まず元には戻りませんね」
 おしゃべりな月の使者は聞かれていないことまで喋りだす。
「つまり、一ヶ月のうちに……ううん。あと29日のうちに今の八人が水木君が元に戻るように考えを改めないとダメなんですね」
 いきなり割って入ったのは詩穂理。
 理論派な彼女だが読書家だけにファンタジーも苦手ではない。その冴えた頭脳で状況を理解していた。
「じゃ、逆に言えばぼくさえ望まなきゃこのまま女なんだね」
 妖艶という感じの表情で優介だった少女が言う。
 状況を理解したのでパニックから脱出できた。
「優介っ!」
 ヒステリックにまりあが叫ぶ。
「考えてもみなよ。男のぼくが彼らを追い回すと問題でも、ぼくが女ならいいんだよね。なぁ。まりあ」
「う」
 毎日のように優介と追いかけっこをしている身としては否定できない。
「それにぼくが女ならさすがにお前も追いかけないだろ。それともお前ってレズ?」
「そんなわけないでしょ」
 叫ぶが勢いはない。
 今までは優介の恋愛対象に自分がなかった。
 ところが優介が女になってしまえば、自分の恋愛対象からも外れる。
 この恋は絶対に成就しないことを意味している。
「むしろこの方がメリットは大きいな。一ヶ月もあれば女の暮らしも慣れると思うし」
 優介の言葉はまりあに絶望を突きつけた。

 水木家。家族は大騒ぎであった。
「あんた、優介なの?」
 長女の優香(20)次女の優奈(19)共に女子大生が優介だった少女を指差して言葉が出てこない。
 大学にはちゃんと行っていたが連絡を受けて帰宅した。
「やぁ。姉貴たち」
 当の本人が平然としている。周りがパニックに陥るから本人は醒めてしまったようだ。
「優ちゃん。可愛い」
 本来ならこちらが四女の優紀(5)が無邪気にはしゃぐ。
「ありがと」
 優しくにっこりと微笑む「優介」
 優介の女嫌いはあくまでも「女のエゴ」を嫌ってのもので、それがない存在には普通に接する。
 この妹然り。美鈴や恵子もそれに入る。
「な、なに可愛くなってんのよ?」
「お姉ちゃん。論点ずれてる」
 長女を諌める次女。
「優介。ちゃんとブラしないとたれるわよ」
 こちらも混乱して妙なことを口走る次女。長男が四女になって帰ってくればパニックに陥るのももっともだ。
 しかしそのパニックも好奇心が押さえ込む。
「ね。その胸本物?」
 三女。優介にとって双子の姉である亜優が講堂での一件を説明して冷静になったらこれである。
「ぼくもまだ脱いでないから」
 未だに男子学生服のままである。
「それじゃすぐ脱いで。サイズ測るわよ」
「これだったらDカップくらいかな?(アンダーサイズ)65ならあたしのまだおろしてないのあるからとりあえず」
 優介が女嫌いになったのはこの姉たちのべたべたした付きまといが発端だ。
 ある意味では優介を男に走らせた張本人達である。
 この二人は美人でプロポーションが抜群。
 それが裸で家の中をうろつくどころか、優介の入浴中に平気で乱入してくるのである。
 男扱いされていない。そして二人とも美少年が大好きだった。
 優介にしてみれば鬱陶しい女は美女ばかり。おかげで美女や美少女にはすっかり興味を失った。

 実はたびたび着せ替え人形よろしく女装させられていた優介だった。
 その延長線上か女の下着を着せられていた。
「へぇー。こうして見ると本当に自分が女だって思うよ」
 本人もトイレなどは個室でしていたが裸体は初めて見た。
「本当ねぇ」
 亜優も頷きつつ
(まりあ。落ち込んでないかな?)
 友人でもあるまりあを心配していた。
 親友が自分の弟を好きなのは承知していた。
「あったよ。優介」
 蒼空学園OGである優奈が保管していた高校時代の制服を引っ張り出してきた。
「リボンはなくしたからそれくらいは買ってよね」
「サンキュ」
 まったく性転換の葛藤がない。
「優介。亜優。あんたたちが女の双子だった場合の名前の候補があるのよ」
 ここでやっと母が口を挟む。

 翌日。
 優介はいきなり女子制服姿で登校してきた。
 きっちりと化粧までしている。もっともちゃんと男だったときからたまに「軽音学部」のステージではしていた。
 校則無視は化粧だけでなくアクセサリー。イヤリングである。
 意外にもあけていなかったが、いずれはピアス穴をあけるであろう。
「……」
 バスの車中から不機嫌なまりあ。女の子そのものになってしまった愛する相手の姿を見ればもっともである。
「まりあ。物は考えようよ。これなら他の女の子に手を出されないわ」
「そりゃそうだけど亜優。逆に男の子に手を出しやすくもなっているわよ」
 そっちの理由で不機嫌だった。
「あっ。恭兵くーん」
 こちらは突然女にされたと言うのに上機嫌そのものの「優介」。
「愛しの彼」の姿を見つけて駆け寄る。
「やぁ。おはよう。えーと……」
 両手を広げてハグに備える学園の貴公子。恭兵。
 しかし彼の無駄にハイスペックな脳内PCに「彼女」のデータがない。名前がわからない。
 戸惑ううちに少女は恭兵の腕を取る。
「おはよっ。恭兵君」
 至近距離で見て理解した。化粧しているし性別も変わっているが面影はある。
「もしかして水木か?」
「あったりー。性別が変わってもわかるなんて愛の力ね」
「そんなわけあるか」
 否定するもののクラクラ来ている恭兵。
(まずい。こいつかなり可愛い。今まで付き合ったどの女の子よりも。いや。ひとりだけコイツよりいいのが……まりあ? 栗原先輩?)
 思考はそのまりあによって遮られた。
「優介っ。離れなさい。そいつは女の子を何人も泣かせてきた男よっ」
(そういうのはせめて君が僕に振られてから言って欲しい。自分が拒絶しといてそれはないぜ。まりあ)
 落ち込む恭兵と裏腹に「優介」はこれ見よがしに恭兵の腕に自分の腕を絡める。
優介っ。あなたは男なのよっ。そんなまねはしないのっ」
 かなり頭にきている様子のまりあ。
「今はもう女の子だもん。恋愛対象はちゃんと『異性』である男の子。何か問題ある?」
 不敵に笑う。まさに『ぐうの音も出ない』まりあ。
(コイツ……この顔。そして腕に伝わる胸の感触からして間違いなく女。けど…正体はあのホモなんだよな)
 視覚触覚で女と認識するものの、過去のイメージが阻害する。
 男には愛想のよかった優介だけに笑顔のイメージだ。

今は女の子だもーん!

このイラストはOMCによって作成されました。
クリエイターの藤本渚さんに感謝!

 教室は騒然となった。
 昨日まで男子生徒だった存在が美少女となって現れりゃもっともだ。
 しかもやたら男子に対して愛想がいい。
 元は男と知っていてもつい夢を見てしまう悲しき少年たち。

 一時間目。ホームルームが始る。
 スーツ姿。担任の女教師が教壇に立つ。よくとおる綺麗な声で一同に言う。

「みなさんこんにちわぁ。木上以久子17さいでーす」
「おいおい」
「あれあれぇ? 声が小さいぞ、もう一度。木上以久子。17歳でーす」
「おい! おい!」
 いつもの「挨拶」は終わった。
「えーと、皆さんご承知の通り、昨日の全校集会で水木君は女の子になっちゃいました」
 突拍子もないが当の本人が黒板の前にいる。ご丁寧に女子制服姿。
 豊かな胸元と白い太ももが女子であることを主張していた。
 本人は男子の視線が集まるのでニコニコしていた。
「それで元に戻るまで女子生徒として扱います。いいですね。女子?」
 当然のようにブーイングが起きる。
 いくら見た目美少女でも元は男子である。
 それにトイレや更衣室に入られたらたまらない。
 だがこの姿を見ていたら抵抗が薄れてきた。
 どう見ても女子である。だから更衣室やトイレの使用を認めた。

「それじゃ当面の間は女子扱いで。水木く…さん。何か挨拶あるかしら?」
「はい。今日からあたしのことは『まゆ』と呼んでください」
 そういうと『彼女』は黒板に『水木真優』と新しい名を書き記した。
「まゆ?」
 まりあが怪訝な表情をする。
「そ。真優。亜優の双子の妹だから韻を踏んだんだってさ。もし女の双子だったらそう名づけるつもりだったんだって」
 自分が女になったことでもう付きまとわれないと思ってか、今まで程まりあを邪険に扱わない優介改め真優。
 それにもかかわらずまりあの表情は重い。
 元々女性的な上に『恋愛対象が男』。
 今までは性別が男だったのでタブー視され『優介』の『思い』は届かない。
 しかしこうして肉体が女となった今は男が恋愛対象で正常。程度というものはあれど「ホモ」ほど禁断の扱いは受けない。
 堂々とアプローチをかけられる。もっとも男のときから男子相手に積極的だったが。
 そしてこの名前である。女としての存在が確固たるものになっていく。
 そう感じるまりあは気が重くなる。

 不安的中。一日置いて頭が冷えた面々。
 そして自分の気持ちを理解した者たちがいた。
 ホームルームで女としての自己紹介干した直後。「真優」は男子に囲まれた。
「水木。女になっちまって大変だな。俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ」
「ありがとう。須藤君。バスケがんばってね」
 にっこり微笑むと真優はその白い華奢な手で須藤健太(バスケット部)の手を握る。
 まだ女になって一日というのに女の武器を使いこなしていた。
「う……」
 若干下心がないわけではなかったが、直撃されて言葉を失う。
「水木。本当に女になったのか? まだよくわからないんだが」
「それじゃ確かめて見る? 本村君」
 真優は本村(野球部)の手を自分の胸に当てさせる。赤くなる純情少年。
「どう? まだ信じられないなら下でもいいけど?」
 座ったままスカートを捲し上げる。ちらりと女物の下着が見える。
 そのはしたない行為。そして女をやたら強調した行為にまりあが切れて叫ぶ。
「ゆ、ゆ、ゆ、優介っ」
「ファイ○ルフォ○ムライドか? ユウスケだけにゴウ○ムだな」
 場にそぐわぬ裕生のボケを無視して彼女は叫ぶ。
「あんた何してんのよっ。そんな破廉恥な」
「あらやだ。まりあったらあたしほど胸ないからって焼きもち?」
 確かに男に胸で負けていた形。既に女としての「上から目線」を持っていた真優。
「そんなわけないでしょーっ」
 ちなみにまりあはBカップ。決して貧乳ではないのだが真優がCカップだった。
 二人の姉も巨乳を誇り、双子の姉である亜優もCなので血筋らしい。
「そうだよ。まりあちゃんは普通だよ……でも男の子に負けた美鈴は……」
 こちらは正真正銘の貧乳(Aカップ)の美鈴が暗いトーンで喋っていた。
「だ、大体その言葉遣いは何よ? 気持ち悪い」
 いきなり女言葉を使いこなしていた真優に対してクレームをつける。
 暗い美鈴から目をそむけるのもあったが。
「女なのに男みたいな言葉遣いしてたら怒られちゃうわよ。女になったんだから女らしくしてるだけよ。ま・り・あ・ちゃん」
 前述の通り女系家族。唯一の男である優介を意識してか飛び交う言葉は女言葉ばかり。
 つまり見本はいくらでも転がっていた。
 もっともこれだと過剰に女性的な印象があるが。

「随分とご機嫌ね」
 クールな声がする。それまで騒いでいた男子が黙り込み、さーっと引いていく。
 声の主は美少女だった。
 短めの黒髪を切り揃えている。
 目元は切れ長というより鋭い。顔立ち自体もややきつめ。
 スレンダーだが胸だけやたらに大きかった。
 それをガードするかのように腕組みをしている。
「心の壁」の象徴の腕組みだった。
「ひどいわ。理子。『お仲間』になったというのに」
「水木君。それは」
 クールな仮面がはがれた一瞬。だがすぐに被りなおした。
「女同士ってことよ」
 ウインクしてみせる真優。
「なかよくしましょうよ。理子。あなたも転校続きだったけど、蒼空にはいられるんでしょ?」
 理子と呼ばれた少女。澤矢理子は実はこの蒼空学園で五校目。
 学期ごとに高校を転々としていた。
 せっかく出来た友達とも別れが立て続き。
 クールというより何処か世を儚む態度はそのせいかと思われている。

「いいの? 本当にそれでいいの?」
「何が」
 真摯な表情の理子に対して軽い乗りの真優。
「あなたはまだ後戻りできるわ」
「別にいいわよ。強いてあげれば自分も女になっちゃったのはちょっとなんだけど、この方がいろいろ都合がいいしね」
 本当に軽く言う。
「あなたこそどうなのよ?」
「私は……覚悟は出来ているつもりよ」
 第三者には意味不明な会話であるが本人たちにははっきりとわかっている。
「あたしも同じよ。別に誰も困らないし」
「そうかしら」
 理子は視線で一人の少女を指し示す。暗い表情のまりあだ。
「あなたのために高嶺さんが泣いてもいいの?」
 瞬間、言葉に詰まる真優。だが「関係ないわよ」突き放すように言う。
 気丈なまりあはそれでも泣かないようにしていたが、今の一言がとどめを刺したか脱兎のごとく教室から飛び出す。
「高嶺さん……」
 理子が心配そうな表情を浮かべる。

「高嶺さん」
 慰めるべく出て行こうとする詩穂理を静止したのはなぎさ。
「綾瀬さん。どうして」
「泣きたい時は一人の方がよくない?」
 傍らでは無言で頷く美鈴。
 この三人とまりあはそれぞれの思う相手と結ばれるべく「共闘」している間柄。
 互いに『やっかいな恋』をしているため、いつしか奇妙な友情が芽生えていた。

 まりあはエスケープまではせず二時間目からの授業にも出ていた。
 そして昼休み。
「さぁて。学食であたしの姿をみんなに見せびらかしてこようっと」
 真優は鼻にかけるほどの美人というわけではない。
 しかしなるべく多くの人間に…厳密には男の子に対して「女としての自分」をアピールしたくてこの行動であった。
「まりあ」
 机に突っ伏しているまりあを気遣うなぎさ。だが
「わたしも行くわ」
 唐突に顔を上げたかと思うと同行を宣言した。
「どーぞ」
 同性になってまりあが手を出してこないという余裕からか。あっさりとそれを承知する真優。
 二人だけだと不安なのでなぎさ。詩穂理。美鈴も着いて行く。

 真優は学生食堂でも注目の的であった。
 もともと優介の時から目立つ存在だった。
 その女のような容姿と噂に聞く二年の新クラス初日のカミングアウト。
「かっこいい彼氏募集中です」という台詞もインパクトがあった。
 それがなんと衆目の集まる中で性転換してのけたのだ。
 まさに時の人であった。

 そしてその注目は真優の思惑通りであった。
 自分が女になったと知れ渡れば今までのように男子に逃げられない。
 まりあの同行を認めたのはむしろ引導を渡す目的であった。

「あらあら。本当に女の子になっちゃったの?」
 栗色の長い髪。おっとりとした声が響く。
「あっ。部長」
 同じ部活の美鈴が呼びかける。
 彼女こそ家庭科部部長。栗原美百合であった。傍らには恭兵の姉。由美香もいる。
「はーい。水木真優でーす。よろしくおねがいしまーす」
 既に男の目を気にして柔らかな態度でいる真優。
「栗原美百合です。よろしくね」
 挨拶を返しながら彼女の視線は胸元にロックオンされていた。
「はい。ばんざーい」
 いきなり真優の両手をとる。
「ちょっと美百合」
 由美香が制止するがお構いなし。
「???」
 そして真優も何がなんだかわからないまま両手を上げていた。
 がら空きの胸元両腕を瞬時に回す美百合。ギュッと抱き締める。
 ふくよかな胸と胸が重なり合う。
「うーん。84くらいかしら。C……Dくらいね。すごいわ。元は男の子なのに立派な胸ねぇ」
 暴走する母性とでも言うか美百合は男女問わずハグする癖があった。
 そして胸囲を的確に当てるというとんでもない特技があった。
 ちなみに女子相手だとカップサイズも言い当てられる。
 名前のせいか「そっちの人」と思われることもしばしば。
「もう。いきなりなんですか」
 さすがに自分の胸をガードするように腕組みする真優。
「優介。あんた今ので何も感じなかったの?」
 なにしろ優しげな美少女に抱き締められたのだ。
 男だったら何かしら反応がある。
「別に。女・同・士・だもん」
 ことさら女であることを強調する真優。絶望感の増すまりあ。
「そうね。とっても柔らかかったわ。抱いていて気持ちよかった」
 誤解してくださいといわんばかりの美百合の台詞である。
「あんたねぇ。そんなだから変な噂が立つのよ」
 親友が見かねて割って入る。
「怒らないで。由美香。あなたが一番好きよ」
「……それって親友って意味よね?」
 自分にまであらぬ疑いをかけられてたまるか。そういわんばかしのきつい目つきである。
 それから逃れるように真優に向き直る美百合。
「えーと。真優ちゃん。今度、家庭科部にも遊びにきてね。いつでもお嫁にいけるようにお料理を教えてあげるわ」
「本当ですかぁ。嬉しいですぅ」
 語尾がやたら跳ね上がる言葉遣い。
 既に二人の間柄は女の先輩後輩であった。

 打ちひしがれるまりあの肩が力強く叩かれる。
「痛ぁい」
 さすがに落ち込んでられないほどに強烈だ。
「なんなのよ。まったく」
 怒りで落ち込みから脱出。叩いた相手を特定しようと振り返ると2メーター近い大男がいた。
「大地君?」
「すまん」
 この極端に無口な男は一言だけ侘びの言葉を告げる。
 手加減したつもりがまだ抜けてなかったらしい。
「それで。何の用かしら? 大地君」
「俺もいる」
「は?」
 あまりに短くて何が言いたいのかわからない。
「あのね、まりあちゃん。大ちゃんは自分も男だけど家庭科部にいるといいたかったみたい」
 美鈴が「通訳」する。
 こんな雲突く大男がいるくらいだ。元々女性的な容姿の優介ならなおさら違和感はない。そういいたいと判断した。
 まりあはその不器用な優しさに心が暖かくなり、自然と笑みがこぼれた。
「ありがとう。とても優しいのね」
 ただでさえ愛らしい顔立ち。それが素直に可愛らしく微笑む。普通の男なら一発で陥落するが。
「ダメですっ。お兄ちゃんは渡しませんっ」
 大樹の妹。双葉が猛然と駆け寄りまりあと大樹の間に立ちはだかる。
 おとなしい娘だが極度のブラコンで兄に関してだけは別人のようにアクティブになる。
「俺はいつでもおまえのそばにいる」
 この無口な男がこんなに長く喋った。そして妹相手とは思えない抱き締め方をする。
「お兄ちゃん……」
 とろけそうな表情の双葉。これで収まった。

 翌日である。
 授業は順調に進み四時間目。体育である。
 この学校は授業内容は男女で分けない。
 水泳も例外ではないがさすがに着替えは別。

 女子更衣室に緊張が走る。
 既にホームルームで通達があり、真優のトイレや更衣室は女子用を使うとあった。
 職員用というのも案にあったが、それが逆に疎外感を生むと判断した。
 本人も女の子ライフを楽しんでいる節もあるのでこの処置になった。

 理屈はわかる。
 そして服の上からのプロポーションは大きな胸元。くびれたウエスト。張り出したヒップ。
 白い肌。高い女声と女の記号でみちていた。
 しかしそれでも「実は男」の真優が着替えに加わるのは緊張が走る。
 特にまりあとの関係で比較的かかわりある詩穂理。なぎさ。美鈴は意識してたまらない。
「どうしたの? 着替えないの?」
 ブレザーを脱ぎ、スカートのホックに手をかけて真優が尋ねる。
「あ、あの、周りがみんな女の子の中で裸になるのは恥ずかしくないですか。水木君?」
「どうして? 女同士でしょ」
 実は真優……いや優介は男の時分から家族と一緒に入浴が珍しくない。
 家族と一口に言うが父親は北海道に単身赴任中。
 残っているのは母と姉三人。妹一人。つまり女しかいない。
 それもあって優介は女の裸に興奮しない。
 むしろ客観的に自分じゃない男の裸体を見ることの方が興奮する。
 家族の方も優介を男扱いしてない節がある。
 それですっかり女に対して夢を持たなくなったのである。

「そうは言っても……」
 軽いつり目。大人びた顔。そしてGカップで忘れがちだが17歳の乙女である。
 ましてや硬い性格の詩穂理はいくら現時点で女といえど男の前で脱衣は無理である。
「しかたないなぁ」
 軽い調子で真優はスカートのホックを外して床に落とす。
 首のリボンを外すとブラウスを脱いでいく。
 実は男のときからブラウスを着る事があったせいか右前に手こずらない。
 ブラウスを脱ぐと下着姿。
 華奢な胸の二つの山をくるみこむブラジャー。
 大きなお尻を包むショーツの前方には盛り上がりがまったくない。
 紛れもなく少女がいた。
「ほら。女の子でしょ」
「……」
 無言になる詩穂理たち。得にまりあは優介が女になった現実をいやというほど突きつけられる。

 魔力によって作り変えられたゆえかそのボディは完璧であった。
 少女たちには逆に妬みようがなかった。なにしろ相手は神様だ。かなうはずがない。
 そして裸を見せたことで優介は一人の少女。真優として受け入れられた。
 真優としても女になった今ではやたらに迫られる心配もないためか、女子相手につっけんどんな態度もしなくなってきた。

「本当に女の子なんですね」
 理論派の詩穂理としても「現実」を見せられると納得せざるを得ない。
「ビックリだね」
 美鈴が同意する。やはり半信半疑だったらしい。
「まりあ……」
 自分も思う相手である恭兵につれない態度をとられることが多く、まりあにある程度の共感を抱くなぎさは同情の声を発する。
 当のまりあは着替え中の半裸のまま目がうつろ。
 無理もない。恋した男が完全に女になったのを見せ付けられたのだ。
 この恋は完全に終わった。それを思うとかける言葉のない一同だった。
 それを知ってか知らずかテンションの高い状態で着替えている真優。
 少女たちはまりあに同情はしても、優介…真優も女の今では「まりあの思いをわかって欲しい」とはいえない。
 自分たちとて女相手は真っ平だ。

 元々「優介」に女性化願望があったわけではない。
 しかしなってしまったら「優介」にはやたらと都合がいいと知った。
 特に男子相手のときである。
 今まではいくら女のような姿といえど男。「生理的に受け付けない」ワケである。
 ところが今は反対。プラスに対するマイナス。磁石のS極に対するN極。そして男に対する女。
 理性では拒んでも「生理的に抗えない」のである。
 見た目は元から女性的であったものの声がこんな綺麗なソプラノになるのは元からはイメージしにくい。
 柔らかな弾力を持つ肌。甘い香り。それら全てが誘惑をかけてくる。
 女になって僅かな日数というのに「女の武器」を有効活用してくる。
 性別が変わってしまったことに対しての葛藤など微塵もない。ポジティブともいえる姿勢だった。

 クラスの男子全てにアプローチをかけていた真優。
 アプローチをかけられた男子の「彼女」は憤慨するが、他の女子にしてみたらかなり面白い見世物である。
 彼氏なし。最低でもクラスにはいない女子は完全に傍観者。
 だからこの節操ない態度も純正女子に対するような排除姿勢はとられなかった。

 アプローチは例外なくかけられている。しかし動じないものもいる。
「…………」
「もーっ。大地君たら。無口なんだから」
 2メーター近い巨漢は本当に口数が少ない。表情もないほうだ。
 厳つい顔とリーゼントのせいでやたらに他校生につっかってこられるがそれも軽くかわしている。
 同様に真優のアプローチも無効だった。
「ほっ」
 露骨に安堵する美鈴。ちなみに大樹がクラス最大のサイズなら美鈴は最小であった。
「うー。渋いと言えば渋いけど張り合いないよぉ」
 「色仕掛け」が通じなくて築きつつあった「女のプライド」が早くも崩壊。憤慨していた。

「あ。風見くん。どこに行くの」
 アプローチをかけようとしたら赤毛の少年が忙しそうにしていた。
「よっ。水木。今から特訓なんだよ」
「なになに。トレーニング。あたしも付き合う」
 パートナーを努めることで親密になろうとしていた。
「いいぜ。じゃこいよ」
 軽く言う裕生。小躍りして喜ぶ真優。

「あー。水木先輩。アニキの『特訓』知らないでついてきたんだね」
 短めの二つのお下げをした少女。風見千尋が隣にいる詩穂理に語りかける。
「私じゃ絶対無理だけど、水木君でも多分無理でしょうね。ましてや女の子になって日が浅いから」
 クールというわけではないが冷静に分析できていた詩穂理である。
 そう。裕生の特訓のウォーミングアップが10キロマラソンである。
 学校から離れた土手を走っていた。(詩穂理たちは帰りつつそこで眺めていた)
 その後で殺陣を練習する。
 裕生の理屈では疲れきった状態で練習すると無駄な力が抜けて理想的な動きができるというのだ。
 それを聞かされていない真優は既にグロッキー状態。
 さらに言うなら女の肉体になってまだ僅か。バランス感覚がまだつかめていない。
 どちらかというと大きめの胸である。それが揺れるだけでもきつい。
「ま、待ってぇ。風見く…ん」
 息も絶え絶え。演技抜きで「あえぎ声」を発していた。
「しょうがないな」
 休ませていたら特訓ができなくなる。置いていくのは論外。ましてや着替えも学校にある。戻らないといけない。
「そらよっと」
 真優をいきなり背負ってしまう。
「きゃあっ。なにするの」
「残りはオレがおぶっていく」
 その言葉どおりに五キロを人一人背負ったまま走りぬいた。
 裕生と付き合うには体力がいると痛感した真優である。

 優介を女にしてしまったメンツが次の満月に逆を考えれば解除される。
 だが一人でも維持を望めば優介は真優として残りの人生を生きていく。
 積極的に優介を女にしたかったわけではない面々は元に戻すのを快諾したのだが
「お願い。キョウ君。水木君が元に戻れるように祈って」
 なぎさが勇気を振り絞って好きな相手にアプローチをかけた。
「祈れったってなぁ。僕が祈ってもあいつ自身が望まなきゃ無意味だろう」
 そうなのだ。男に戻すには後は恭兵。そして真優自身が望まないとダメだ。
(それにあいつがこのまま女でいればまりあはフリーになる。そうなれば僕のものに)
 それを考えているのは明白だったのでまりあは自分から来なかった。
 なぎさは頼まれたわけではなく自主的に来たのである。
 この状況でまりあが恭兵に頼みごとに行けば取引として付き合いを要求される可能性もある。
 その阻止もありなぎさが出向いた。
 放っておかなかったのはさすがに痛々しくて見捨てられなかったのである。
 それほどまでにまりあの落ち込みはひどかった。
 女の武器で男に迫る。今までは拒否されていたがいつどの男が理性をぶっちぎるかわかったもんじゃない。
 持ち前のパワフルさも影をひそめていた。

 「真優」が生まれて二週間が経った。
 既に女子の間で混乱はない。トイレも着替えも平然と一緒にこなす。
 なにしろ好きな男子アイドルの会話についてこれる。寧ろ引っ張れるのが距離を縮めるのに大いに役立った。
 言うまでもなく「優介」だった頃からの趣味だ。
 男だと特異でも女となった今では何の変哲もない。

 女子学生はどういうわけか連れ立ってトイレに行く傾向がある。
 放課後のこの場面も真優と何人かの少女で用を足して出たところだった。
「水木優介だね」
 いかにも体育会系の二人の少女が待ち構えていた。空手着。そして黒帯だ。
 問われた少女は「ちっちっち」とばかしに指を振る。
「ま・ゆ。水木真優よ。それが今の名前」
「どうでもいい」「こい」
 左右から挟みこまれて拉致される。
 トイレに同行した少女たちは抗議しようとしたが空手少女に睨まれて黙り込む。

 数分後、彼女たちは自分の教室にけたたましく駆け込み優介が拉致されたのを伝える。
「なんですって」
 死んだように机に突っ伏していたまりあが復活して飛び出していった。

 女子空手部。
 真優は道場の中央につれてこられる。
「なんなのよ。こんなところにつれてきて」
「黙れ」
 叩きつけられるように座らされる。
 そして扉が閉じられ施錠される。密室となった。

「主将。つれてきました」
「ご苦労」
 目をつむり精神を統一していた少女が短く答える。
 整ってはいるが地味な印象の顔立ち。化粧栄えしそうである。
 切れ長の目は鋭く尖り、視線が突き刺さりそうだ。薄い唇も甘いささやきは期待できない。
 長い髪を襟足で無造作にまとめてある。いかにも「武人」だった。
「水木優介。君に聞きたいことがある」
 彼女、芦谷あすかは開口一番そう切り出した。
「もー。だからあたしは水木真優だって」
「優介なんだろう。本来の名は」
 静かだが威圧的な声。そして視線。さすがの真優も黙る。

 互いに正座した状態で向き合う。そして「尋問」が始る。
「水木。君はその肉体になってから男に迫っているそうだな」
「それが何? 恋愛は個人の自由でしょう」
「相手に迷惑をかけているとは思わんのか?」
「……」
 こうなると言い返せない。実は未だに「落ちた」男はいない。
 辛うじて理性がブレーキをかけて真優に手を出したものはいない。
 手の出せない女にアプローチを受け続ける。これは一種の拷問ではなかろうか。
 その点では迷惑をかけている自覚はあった。
「ふ、ふん。いつか誰かが振り向いてくれるもん。なにしろあたしは女になったんだし」
「それがそもそもの間違いだとは思わないのか?」
 すっと目を細める女子空手部部長。猛獣の唸りにも聞こえたその声。

 女子空手部を目指して突っ走るまりあ。だが普段は縁のない道場だけに位置が把握できてない。
「高嶺さん! こっちよ」
「理子さん!? どうして」
 いつの間にか澤矢理子がついてきていた。
 転校の多かった彼女は暇があると学校を見て周り把握するのが常である。
 だから元からの生徒でも知らないような場所を知っていたりもする。
「手を貸すわ。彼も一緒よ」
 大地大樹がその巨体で走っていた。
 若干引くが助っ人はありがたい。
 彼女たちは女子空手部を目指していた。

 道場。身の危険を察した真優は立ち上がる。
 他の部員たちは動かない。真優の逃走防止で制止もしないし、部長の「暴行」を止めもしない。
 しかし味方がいないことには変わりない真優。
「何が間違ってるって言うのよ?」
「その言葉遣い。虫唾が走る。お前も男に生まれたのならそれらしく振舞ったらどうだ」
「だったらあんたはどうなのよ。女だてらに空手の有段者。とっても勇ましいわ」
 無論褒めてない。
「うるさい。好きで女に生まれたわけじゃない」
 ついに正拳を繰り出した。
 だが「女相手」だから何処かでセーブしているのか寸止め。
「貴様はなんだ? 男に生まれておきながらその宿命から逃げる軟弱者め」
「それなら今は女になったんだからいいでしょ」
「やかましい。貴様も男なら私を打ち倒してみろ。どうした? 女相手に逃げるのか」
 何か思うところがあるのかますます攻撃が激しくなる。
 どうやら普段の部活動自体が女子相手のため直撃をさせないのが癖になっているらしい。
 だから逃げていられる。
「私だって、この忌まわしい体からのがれ……」
 その先は破壊音でさえぎられた。
「何ごとだ!?」
 扉が破壊された。外部に面しているなら車でも突っ込んできたかとも思うが、廊下に面している入り口なのでそれはない。
 なんと破壊の道具は「拳」だった。強引に抜き取られる。派手な音を立てて扉が崩れ去る。
「すまん」
 相変わらずの無表情で大樹が言う。
「し、信じられん。拳だけでこの扉を。いくら木製といえ」
 青ざめる女子空手部員たち。ことても素手で壊せるはずのないそれを破壊したパワーに驚愕する。
「優介!」
 その間隙を縫ってまりあが飛び出した。
 彼女は真優に抱きついた。
「大丈夫? 怪我はない?」
 猫なで声とも取れる優しい声で無事を確認する。
「くっつくな。鬱陶しい」
 つれない返事だが痛いのをガマンしている様子もない。まりあは安堵した。
「高嶺。お前もこの軟弱者を庇うのか?」
「当たり前よ。なんてひどいことをするの? みんなでよってたかって優介一人をいじめるなんて」
 それまでの優しい表情と口調から一転して厳しいものになるまりあ。例えるなら子供を庇う母の表情。
「そこをどけ。女に向ける拳はない」
「散々人を殴りかけたくせに」
 よせばいいのに火に油を注ぐ真優。
「キサマは修正ではなく粛清が必要なようだな」
 二人まとめて始末することにした。そんな決意を感じる瞳。
 その前に立ちはだかる巨漢。
「相手になる」
 身代わりをしたのが大樹だ。あすかに正対すると両手をだらりと下げた。
「むかつくなら俺を殴れ」
 自己犠牲の精神。まりあたちはそうとった。
 だがあすかは余裕と受け止めた。
「いい気になるなよ」
 もはや武道かとしての精神もない。拳を凶器にして襲い掛かる。
 鳩尾を狙った渾身の一撃だが大樹が動いて腹の中央に命中。
「!?」
 その刹那顔をしかめるあすか。そして攻撃をやめた。
「気が済んだか」
 大樹は背中を向けた。入れ替わるように理子があすかの前に立つ。
「……なんだ、お前」
 脂汗を垂らしているあすか。
「部長さん。本当に真優は軟弱かしら?」
「何?」
 思わぬ言葉にも顔をしかめる。
「それまで生きてきた性別と反対のほうで生きる。望んでなったならまだしも、そういうわけでもないとしたら相当の覚悟が必要よ。その覚悟は軟弱とはいえないと思うけど」
「……キサマに何がわかる……」
「わかるわ。私もそういう覚悟をするまで随分かかったから。でも、真優はまだ後戻りは出来るのよね」
 半分は自分に言い聞かせている理子の言葉。
「お前……まさか!?」
 あすかは一つの考えにたどり着き驚愕する。
「あなたももう少し肩の力を抜いた方がいいんじゃない?」
 優しい笑みで理子ははぐらかした。
「それからその手。お医者さんに診て貰った方がいいわよ」
「くっ」
 短くうめくとあすかは崩れ落ちた。
「部長!」
「どうしたんですか?」
「な、なんだこの右手?」
 赤くなっていた。内出血。ヘタしたら骨折していた。
 プロボクサーの一部には自分のパンチで骨折するものもいると言う。
 しかしこの場合、明らかに殴ったものが悪かった。
 部員たちにはそれどころではなかったが。慌てて医者へと連れて行かれる。
 放置された形のまりあと真優だがまりあが真優を支える。立たせようとしている。
「さぁ。帰りましょう。優介」
「とりあえずお礼は言うわ。でもね、あたしはもう優介じゃないの。真優なの」
「優介……」
「あたしはもう女で生きて行くつもりよ。だからあなたもあたしのことは忘れて新しい恋を探しなさいよ」
「そんな……」
 まりあはまた泣きそうな表情になる。

 優介が元に戻れるチャンスまであと5日。
 だが当人はあくまで女としての生き方をやめるつもりはなかった。
 まりあは月に一度の女の子の日。これに一縷の望みを託した。
 希望が見えたので落ち込みから回復した。
「もしそれが重かったら女の肉体が嫌になるはずよ。そうすれば」
「ああ。そうね。そうだといいんだけど」
 何か言い出せないでいる亜優。ちょうどそこに真優が来た。
「亜優。ナプキンの予備ない?」
 あっけらかんと言い放つ。
「ちょっと真優。恥ずかしいから人のいないところで言いなさいよね」
 赤くなる亜優。それでもこっそりと自分のを分け与える。
「それに購買でも売っているわよ」
「サンキュー」
 軽い調子で受け取る真優。
「ちょっと待って。優介。あなたもしかして?」
 この女の子同士にしかありえない話は?
「うん。女の子の日」
 実態のわからない男にはきつくて大変なものという印象があるが、実は人それぞれ。
 本来は大して痛みなどはないものらしい。むしろ痛みを伴う方が「月経障害」といわれている。
「優介。あなた平気なの?」
「そうだね。想像していたより痛くなくて。身構えていたら肩透かしだわ」
 まりあは呆然となる。「初潮」なのに平然としている真優に。
 つまり期待したような「きつさ」がないらしいと。
「ごめん。まりあ。やっぱりそうだと思ったんだ」
 つまり亜優も「軽い」方なのだ。双子の「妹」が同様の可能性は強い。それで予測していた。
「そんな」
 望みを絶たれたまりあは愕然とする。
「これがくるんだからあたし本当に女の子なんだね。いつか誰かの子供をお腹に」
 夢見るような真優。
 とりあえず処置をしに女子トイレへと向かった。
「存在が変わることにまったく物怖じしてませんね」
 いなくなった途端に唐突に「ルナ」が現れた。驚いている一同の中でまりあだけが呆然としている。
「皆さん。よいですか。次の満月までに全員であの人が元に戻るように祈らないと死ぬまであのままですよ」
 念を押しにきたのだ。
「死ぬまで女のまま」
 当人はあっけらかんとしているのにこの四週間まりあの方が打ちひしがれていた。
「もう一思いに女に固定しない?」
 身内ならではの言い草の亜優。
「亜優。なんてことを言うのよ。今ので優介が完全に女に固定されでもしたら」
 発言に対する怒りで一気にどん底から這い上がる。
「ああ。大丈夫ですよ。今は満月じゃないし一人の発言では影響しませんから」
 ルナが気休めで言う。だが亜優はまりあを思うあまりあえてきつく言う。
「ねえ。まりあ。もう諦めようよ。女同士じゃ結ばれないし。諦めて次の恋を見つけようよ」
「いや!」
 一言でばっさりであった。
「優介がいいの。優介以外の男なんて要らない」
「そんなこといってもアイツもう女なんだし」
「まだ確定じゃないわ」
 そう。次の満月まで日がある。何とかしてそれまでに恭兵と真優を翻意させれば。

 運命の皮肉というべきか。
 まりあの泣き顔が恭兵の心を動かした。
 いつものように放課後の部活。サッカー部に出向こうとする恭兵に付きまとい始めて真優に恭兵が一言。
「今、なんて言ったの? 日野君」
「だからな、お前はもう男に戻れ。そういったんだ」
 あくまで真顔。本気の発言である。
「なんで? 日野君だって女の方が好きなんでしょ?」
「そりゃそうだがお前はダメだ。男に戻れ」
 それからは押し問答。頑として恭兵は真優を拒絶していた。
「日野君のばかーっっっ」
 とうとう真優が泣いて逃げた。こっぴどく振られたことになる。
 いくらニセ女相手でも泣かせるのは罪悪感のある恭兵は胸が痛んでいた。
 しかしあえて悪役になる。
(なんとでもいえ。癪に障るがまりあを笑顔に出来るのはお前しかいないらしい。これ以上まりあの涙は見たくないんでな)
 だから真優が男に戻るようにしようと思った。
(少しくらいお前も泣け。そうすればまりあの痛みもわかるだろ)

 そして運命の日を迎える。時間は本来なら四時間目の授業だが特例として緊急全校集会となった。

 二度目の満月。ここで真優を男に戻さないとずっと女のまま。
 まりあは残った日々で説得を続けていた。耳を貸そうとしなかった真優だが、面白いもので恭兵に「振られて」恋に敗れた女の心を知ったのが気まぐれを起こさせた。
「そんなにあたしを好きなの? 女なのに?」
「優介が優介だから好きなの。けど女同士じゃ結ばれないから元に戻って欲しいの」
 ここに来ていつもの気丈なまりあが戻ってきた。最後のチャンスに落ち込んでいられない。そういう理由。
 このバイタリティがただのお嬢様でない所以だ。
「なんてわがままなヤツだ。自分の希望だけ押し付けて」
 本人が女でいいといっているのに。そういうことだ。
「ええそうよ。わがままよ。恋する女はみんなわがままなのよ」
 居直りだった。
「ホントだわ。こんなに人を集めて。どんだけわがまま通す気よ」
 場所は校庭。真優とまりあを中心にして全校生徒が埋め尽くしていた。
 協力したのは意外にも瑠美奈。まりあとは犬猿の仲だか、瑠美奈もまた優介が好きなために女で固定は望まない。
 だから一時休戦で全校生徒に呼びかけた。
 真優の強引なアプローチがその呼びかけに応じさせた。
 男に戻してしまえば少なくとも突っぱねられる。
 いくら可愛くとも元・男とは…そういう思いの男子が協力。
 女子もやはりこの強引なアプローチに辟易としているものがこの一ヶ月の間に増えた。
 結果としてこの大勢が参加した。
 真優自身が拒んでも、数で無理にでも元に戻してやるつもりであった。

「わかったわ」
 髪をかきあげて真優が言う。
「あたしの言うことが出来たら男に戻ってあげるわ」
 ついに真優が翻意に向けて動いた。
「どうしたらいいの?」
 希望に満ちた瞳を向けるまりあ。
「御伽噺じゃお姫様を目覚めさせるのはキスと相場が決まっているじゃない」
「え?」
 こともあろうにこのニセ女はキスしろといっている。
「だ、だって優介。今は女の子で」
 しどろもどろになるまりあ。
 これが男の優介相手なら躊躇しない。例え人前であろうと自分から唇を差し出すだろう。
 しかし相手が女の状態ではさすがにきつい。
「どうしたの? あたしのことが好きならできるでしょ。あたしが女だろうと、人が見ていようが」
 最後に無理難題を吹っかけた。
 むしろ自分の揺らぎをまりあに託したと言うべきか。
 まりあがキスしてのけたら男に戻る。
 できなかったら女で一生を終える。その二択だ。

「了承です。まりあさんがキスできたら真優さんは男に戻る。条件設定されました」
 いきなり現れたルナが審判のように言う。
「あっ。コラ。何勝手に仕切っているのよっ」
 しかしもう遅い。
 「真優」を「優介」に戻すにはまりあが真優にキスをするのが最後の条件になった。
 なった時の状況から行けば時間もお昼ごろのはず。それほど迷っている時間はない。

(まりあ)
(高嶺さん)
(まりあちゃん)
 同盟たるなぎさ。詩穂理。美鈴が見守る。
 自分たちが同様の状況に置かれたらとても出来ない。
 それだけにまりあの動向がとても気になる。

(まりあ)
(高嶺)
(……)
 まりあに思いを寄せる恭兵だがこの場はあえて見逃した。
 裕生と大機も固唾を呑んで見守っている。

(高嶺さん。水木君)
 クールな佇まいは変わらないが理子も緊張している。
 まるでわが身のことのように。

 その他の全校生徒の注目が集まる。
 日本人ほどキスには重きを置かないアメリカ人のアンナだがさすがに少女。
 ドキドキしながら見守っている。
 親友の二人も同様だ。

 これだけの視線が集まると本当に痛い。しかしまりあはこれに背中を後押しされた。
「わかったわ」
 覚悟を決めた瞳。
「キスしたら男に戻ってくれるのね」
 本当に優介のためなら何でもするつもりであった。
「ま、まりあ。わかっている? 女同士だよ」
 心なし口調が男のものに戻りつつある真優。女の仮面を被り続けていられなくなった。
「そうね。あなたが男の子を追いかける気持ちを知ることが出来るかもね」
 まりあは笑っていた。そして涙を流していた。
 「優介」とのファーストキスによる歓喜。
 全校生徒の前で『女』相手にキスする恥辱。
 こんな形でのファーストキス。
 それらが複雑な思いとなって笑顔の涙となった。

(ああ。やっぱずるいな。女は。泣かれたらかなわないじゃないか)
 自分も恭兵に振られて女の子の痛みを知った。
 より女の心に近くなった真優がまりあの心情を理解してしまった。
 だから元に戻るような条件を出してしまった。

 まりあは吹っ切るように勢いよく唇を接近させた。
 重なる寸前さすがに躊躇したが、その一センチは真優のほうから寄ってきた。
 二人の少女は瞼を閉じて彼女たちの世界へとトリップしていた。
 ギャラリーもその有様に声が出ない状態。

 真優の身長がのびる。幸か不幸かスカートなので脚が窮屈にはならない。
 肩幅が広がる。こちらは制服がややきつくなる。
 胸板が広くなり、引っ張られて豊かな胸がなくなる。
 ウエストのくびれもなくなる。反対にヒップは小さくなる。
 その股間には男のシンボルが復活した。

「あ。あ。あ。あー。声が戻ったね」
 真優。否。優介が一ヶ月ぶりに男の姿に戻った。
 歓声が上がる。
 みているうちにまりあに感情移入した面々が同様に喜んだのだ。
(これでもうアイツの誘惑に悩まされないですむ)
 男子の大半はこういう思いもあったのだが。

「よかったですね。それじゃ私はこれで」
 責任は取ったといわんばかりの態度でルナは空に消えた。
 気のせいかまりあから逃げた印象が。

 真昼に月が光ったようにも見えた。

「元に戻すためとはいえどこんな人前で」
「それも肉体的には同性相手に」
「キスなんて美鈴には恥ずかしくて出来なーいっ」
 まりあと近い関係のためかより気持ちが入り我が事のように赤くなる美鈴。なぎさ。詩穂理。
「でも、よかったね。まりあちゃん」
「ええ。これが本来の姿ですし」
「ついでにそのままくっついちゃえ」
 これだけの人の前でキスまでしたのだ。交際宣言してしまえと言うなぎさの発言はさほど乱暴とまではいえないだろう。
 そしてそのムードが出ている。
 涙を流しながらまりあが歩み寄っていたのだ。

「ゆ、優介。元に戻れたんだね」
 一度は無くしかけた恋がまだあった。その歓喜の涙。
 一ヶ月とはいえど女だった優介にはそれがわかる。
 しかしそのまま思い通りというのも癪であった。
「か、勘違いするなよ。何でも泣けばいいと思っている女なんて生き物でいたくなくなっただけだからな」
 魔力が女言葉を使わせていたのか、解除されたとたんに元の口調に戻る。
 そしてこの台詞。女のままだったら「ツンデレ」といわれるところである。
 男でも言うのかもしれないが。しかも今はまだ女子制服姿のまま。元の容姿が女性的なためまるで違和感がなく誰も笑わないのがすごい。
 そのせいか「ツンデレ」も似合っていると言うか。
 まりあにはその辛らつさすら嬉しかった。
 完全に元に戻った。その証だ。
「優介ーっっっ」
 気持ちのままに抱きつこうと駆け寄る。そこにもっときつい一言。

「やーい。レズ娘」

 ぴきっ。まりあの動きがフリーズした。
「な、なんでよ」
「とぼけるなよ。これだけの人が見ている前で女同士でキスなんて。好きでなくちゃ出来ないよなぁ」
 あまりにもまりあの思い通りになったのでイジワルしている。
「あ、あれは優介が相手だから。あなたが好きだから例え女の肉体でも出来ただけで」
「うん。ぼくも同じ。相手が好きだから男でもいいんだ」
 言うと優介は見守っていた全校生徒たち。主に男子に目を向ける。
 ギクッとなる男子たち。男に戻っても優介の妖しさは変わらないことを認識。ましてや今は女装状態。
 より倒錯感がある。
「やっぱりぼくも男同士の方がいいや。誰かー。ぼくの彼氏になってーっ
 とても飲める話ではない。あとずさる男子たち。
「ま、待ちなさい。優介」
 慌てて優介を追いかけるまりあ。
「あははは。追いついて見せろ。レズ女のまりあ」
 からかうつもりで立ち止まって振り返る。そこに勢い余ったまりあが追突する。
 今度は「事故」で二人の唇が重なった。

「ぺっぺっ。もう。男なのに女とキスしちゃったよ」
 それが優介にとっては異常になるらしい。
「誰かーっ。口直しにキスしてよー」
「じょ、冗談じゃないっ」
 さらに阿鼻叫喚となる男子たち。それを追いかけるスカート姿の優介。
 その騒動の中でまりあは
「優介がキスしてくれた……優介がキスしてくれた……えへへへ。もう死んでもいいー」
 百年の恋も冷めるようなだらしなく緩みきった顔でダウンしていた。
「あれは……ただの事故だよなぁ」
 なぎさの冷静な突っ込み。
「そうですね。でも幸せそう」
 微笑む詩穂理。
「ずっとつらかったからこのくらいいいよね」
 美鈴の優しさ。

(よかったわね。高嶺さん。そして水木君。私も…女として生きて行くのにはもうちょっと覚悟がいるかな)
 クールな少女。澤矢理子にも祝福の笑みが。

 一ヶ月ぶりに「元に戻った」ワケである。

 後日談として。
 一時的とはいえど女として暮らしていた優介は少しは女を理解してか、以前よりは態度が柔らかくなった。
 ただしまりあに対してだけは相変わらず。
 これは照れじゃないかというのが全員の見方だった。


Fin


製作秘話

 第2弾は「PLS」。
 城弾シアター長編唯一の非TS作品なのを逆手にとってTS作品にして見ました。
 ターゲットはもちろん優介。
 もともと男に対してアプローチをかける少年が女の子になったら?

 やはりというか表面上は葛藤がなくて。
 けど主役のまりあは逆により深い葛藤で。
 好きな男が女性化してしまった。
 さらに言うなら散々同性愛を否定していたのもあり女の優介「真優」にアプローチはかけられないし。

 もしこの立場が詩穂理やなぎさ。美鈴だと泣いて終わりでしょうね。
 まりあのパワーがあってこそ出来た話で。
 わがままに磨きがかかってますがこれがまりあなんで。

 当初はまりあも男になる予定でしたがそれだととあるマンガでやっていた展開なので見送り。
 それにまりあも男になると「これでも結ばれるには違いない」とあっさり受け入れそうで(笑)
 恋の障害としては同性になった方が面白かったので。

 こちらは本編とは切り離して考えてください。
 ただ時系列としては秋ごろの話し。
 この時点では本編序盤で存在は出てきた澤矢理子が既に転校して来てます。
 既に大分態度が柔らかくなっている設定で。
 理子はいろいろ思わせぶりですが明言は避けます。
(もっとも「城弾シアターウィキ」で構想は書いてあるのですが)

 本編製作前。構想の段階でイラストを発注してました。
 このイラストがかなりイマジネーションを刺激してくれました。
 ビジュアル面だけでなく、そちらにおいても絵師の藤本渚さんに感謝です。

 サブタイトルは恒例のTM NETWORKのナンバーから。
 アルバム「CAROL」の一曲。
 今回の面々はまさに迷走状態でしたから。
 最初は「月はピアノに誘われて」を使うつもりだったのです。
 その名残で願いが月にかかって。

 お読みいただいたことに感謝です。
 もし興味が出ましたら、ぜひ本編もよろしくお願いします。

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