『Maid of Fire Vol3』へ

 ある朝。狂気の科学者。松戸教授の人体実験により少女メイドにされてしまったオレ。体内の薬品に働きかけるリングのプログラムで一時は精神が完全に女になってしまったりしたがなんとか男の精神に戻ってきた。
 オレの正体を知らず1日コーチしてくれた沙紀が風呂へと誘うがなんとなく女同士での風呂は色気が…それに…


Maid of Fire F
作:城弾


 やっぱり…女としての裸を見られるのは恥ずかしい。
 「真彩香せんぱぁーい。お手伝いしますぅ」
と、そそくさと逃げ去った。後ろで沙紀が舌打ちしていたような…

 キッチンにて。並び立つ二人のメイド。真彩香が21歳。オレの今の姿は15〜17と言う所か。ちなみに沙紀は22歳。
 とにかく二人並ぶと服装が同じせいかまるで姉妹のようだった。
 「ご主人様。洗い物ならあたし一人でしますから」
 「いいよ。女でいるときくらい台所仕事しても。それに…これを言うと正反対のようだがなんか女同士で風呂も…ね」
 当然だが裸の女体は現実をつきつける。まだ服を着ていたら『女装』とでも思いこめるが豊かな胸や何もない脚の付け根を見るのはトラウマになりそうだった。まして沙紀は当たり前だがオレを女として扱うだろう。それが一番嫌だった。
 「でも沙紀さんと入らないのは正解だったかも」
 「なんで?」
 考えなしにオレは訊ねてしまった。真彩香が頬を染める。
 「…あの人。女子高育ちで…その…あの…」
 もじもじとしている。例えるなら困っているのだが絶対的にイヤでもない…と言うか。
 「言わなくていい。なんとなくわかったから…でも現実にいるとは思わなかったな…」
 そういえば真彩香に対する仲の良さはなんか変だったしオレに対する態度もまるで男女を感じさせない。
 そして『ありす』に対しての態度はお姉さんと言うよりは…風呂に入っていたら過激なスキンシップをしていたかもしれない。
そう言うのはオレが男のときにして欲しい。
 『女』で気持ち良くなったら…戻れない。イヤ。
戻りたくなくなるかもしれない。
 「さ、さあ。やっちゃおうぜ。朝からの分が溜まっているし」
 「そ、そうですね。今日はばたばたしていたし」
 真彩香はこいつなりにオレの身を案じていたのだろう。だから仕事よりオレのことを優先していた。いい娘だ。

 三度の食事が3人分ずつ。朝昼はジローちゃんがいて夜は沙紀。
 余談だがジローちゃんは基本的に外担当なので『就業時間』は夕方まで。本人は残ると主張したが帰した。
 それに加えてお茶会の分。食器が山積だった。
 「いつもこんな調子なのか…」
 「はい。あたし溜まりに溜まった食器を一気に洗うのが好きなんです。汚れが落ちるのってストレス解消になりますよ」
 こいつにストレスがあるとは思えないが…とにかくやっちまうか。
 湯沸し機のお湯でぬらして洗剤をつけたスポンジで洗う。この指輪。生活防水くらいはしているだろう。
 そうでなくては実用できない。例え台所仕事はしなくてもトイレで手も洗えないようじゃ困る(まして女は清潔にしてないと)
 もっとも『実験』だが。まぁいい。ここまで散々ぬらしている。『何を今更』である。
 「ご主人様。手袋をしてはいかがですか? 手が荒れちゃいますよ」
 「へーきへーき。男なんだし。荒れたって明日の朝には別のというか元の体だ」
 オレは豪快に洗剤をスポンジにつけて洗い始めた。とりあえず皿からはじめた。
 「おっ。落ちる落ちる。へぇー。本当だ。なんかすっきりするなァ」
 「でしょう?」
 隣の真彩香が『我が意を得たり』と微笑む。泡だらけの皿をお湯で流す。良し。つるつるのピカピカ。水切りに移す。
 調子に乗って次の皿にかかる。左手で持って右手で洗う。汚れが落ちたら流す。そのときだ。
添えていた左手でそのまま流しっぱなしのお湯に皿を運んだとき手が滑った。そして皿の底の淵が指輪を引っ掛ける。皿に流れていたお湯。そして手についていた洗剤の泡。すべてが重なり指輪が抜けた。指輪がお湯で流されて排水溝へ。
 「わっ。わわっ」
 オレは青くなった。そのまま無くした日には一生女…
 「大丈夫です。ご主人様。ちゃんとネットを張ってあります」
 さすが家事のプロ。お湯を止めると排水溝の蓋をあけネットを引き上げる。銀色に輝るものがあった。指輪だ。
 それを取ろうとしたら青白い光がスパークした。
 「えっ?」
 まさか…外は良くても本来指が邪魔して入らないはずの内側は水に弱いとか…

 「うーむ…こんな結果になるとはのう…」
 「この体。どうしてくれるっ」
 翌朝。十時。オレはまだ女子高生のままだった。
 スパークした指輪だが一縷の希望を託して改めてはめなおしたが遅かったらしい。1時間程度なら『誤差』とも取れるが既に予定を2時間以上経過している。余談だがオレは一応は正体を隠すために(沙紀の奴。泊まって行きやがった)寝るときに真彩香の袖を通していないネグリジェを着ていた。冒険したが薄手過ぎて。つまりスケスケで本物の女が着るのをためらうようなものを。だから体が良く見える。作られたものだけに胸も尻もつんと上向き。ウェストもくびれていたし肌も滑らかである。
 どこから見ても恥ずかしくない女のままであったが35年も男をやってきた立場としては嬉しくない。
 「だーから言ったのよ。指輪をはずしたら戻れないって。ねー。教授」
 例によって偉そうに小夜子が教授に話しかける。指輪の回収に来たのだ。そして教授は説明のために本人が。
 「だがやはりきつめの指輪でも洗い物や入浴ではさすがに外れる危険性があるか。ならば制御パーツをもっと小型化して耳たぶ辺りに埋め込むのはどうじゃろう」
 「ピアスってのはどうです? 教授。防水さえできるなら指輪よりは外れにくいですよ。もっともそしたら水泳はまだしもお風呂がダメかしら」
 「研究は後にしろっ。男を女に変えたんだ。『女』を『男』にすることだってできるだろう」
 さすがにオレも切れた。怒鳴り散らす。
 「簡単に言うでない。いいか。人間は受精卵から細胞分裂をはじめてある程度まではみんな『女』なのだ。それが染色体情報により『男』なら胎内で男性ホルモンのシャワーを浴び男へとなり『女』ならそのまま成長する。いわば『女』が基本形なのだ。
 それを『本来の姿』へ戻すのがこの指輪と薬品の引き起こす効果。順調ならばその『偽りの姿』へ戻るはずじゃったが外したことによりそのデータが消し飛んだ。だから元には戻れん。そういうことじゃ」
 「な…」
 元には戻れない。そう言われてオレは目の前が真っ暗になった。へたり込む。
 「でもでも。それならどうしてこんな高校生くらいの姿なんです。そのままおばさんの姿じゃないんですか」
 「再構成をするからじゃ。高校生くらいと言うのは幸運じゃったな。小学生くらいやヘタしたら赤ん坊もありえたのじゃが。その時点で悪運を使い果たしたか。がーはっはっはっは」
 能天気に笑う教授にまた切れてしまった。おかげで正気に返った。
 「戻せ。元の姿が無理でも男に戻せ。高校生でも小学生でもいい。女で人生やりなおすよりはよっぽどマシだ」
 オレはこの非力な体のどこにそんな力があるのかと思うほどのパワーで教授につかみ掛かる。
 「わーっ。わかったわかった。研究してやる。しかし今からじゃとさすがに一朝一夕にはできんぞ。『予定通り元に戻す』は指輪をはめたままなら自動的にできたがこの状態からの『サルベージ』じゃ」
 「どのくらいかかる!?」
 「3年…イヤ。4年は待ってくれ」
 「4年…」

 そして半年が過ぎた。オレは今…着替え中だった。体操服を脱ぎ汗をぬぐう。そして丸えりのブラウスを着る。スパッツはそのままでプリーツスカートを。辺りでも同様の光景が繰り広げられていた。
 そう。オレは結局女子高生をしていた。しかもここは女子高。今は体育の時間だったのだ。
 あの後。教授やジローちゃん。そして真彩香の証言があり「ありす」がなんとか『オレ』と実家にもわかってもらえた。もちろんオレ自身の記憶がものを言う証言も手伝っている。
 元に戻るのが4年先なら社長業は無理。とりあえず南米支社に移動したことになった。
 そして遊んでいるわけにも行かず結局
 『転んでもただは起きるな。それなら女として過してその経験をビジネスに生かせ』と女子高に放りこまれた。
 ちなみに共学でなかったのはさすがにオレがこの間に心まで女になりきって男に…その…体を任せたりしないための処置だろう。
 11月に女になって半年。今は五月。まだ肌寒い。ブラウスの上からベストを着けリボンを首に。
 「ありす。あんたってホント着替えがとろいわね」
 でまかせの偽名がそのまま女としての名前になった。オレは『山村ありす』として通学していた。
 ちなみに通学初めて一ヶ月。女子高ということで開けっぴろげな生態にすっかり女に対するイメージが変わってしまった。
 男がいないとこうまで…最初は興奮を隠しきれない女子高生たちの着替えも今では『同性』のせいか何も感じなくなってしまった。
 ……このまま体に引き摺られて心まで女になってしまうんじゃないだろうな……。
 バストも少し減ったがそれ以上に体が華奢になった。時間が経ってますます少女化が進んだ気が…
現在は身長153センチ。体重40キロ。上から80 55 82だった。
 「ありすーっ。ホントにもうお弁当にいっちゃうよー」
 「あーっ待ってよ。香織。洋子」
 すっかりなじんでしまった女言葉であたしは二人に待ってもらうように言った。その前に鏡。良し。髪の毛もばっちりね。
 なんだか女として振舞うと心も女になってしまうみたい。あたしは内股で走り出した。

 お昼。お日様が気持ちいい。あたしたちは庭の芝生の上で座り込んでお昼にしようとしていた。ちなみにあたしの座り方は足と足の間に腰を落とすいわゆるぺったんこ座り。
 「ありすさまーっ。お弁当お届けにあがりましたー」
 校門で真彩香がにこやかに微笑みながら手を振り回す。あたしがうなずくと守衛(ちなみにこも女性)さんが通してくれた。
 「ご苦労様。真彩香。ね。あなたも一緒にどう?」
 「はい。そう思ってあたしの分も持ってきました。みなさんもいかがです?」
 「やったぁ。真彩香さんのお弁当」
 「あたし好きなのよね」
 あたしは男としての色々を無くしてしまった。けれど…引き換えにこうして新しく女同士の付き合いもできるようになった。
 『オレ』の16歳からは『英才教育』で学校には行ってなかった。だからこの時間がとてもいとしい。
 『高校生』をやりなおすのはオレの無くした何かを取り戻すようで。そして本当に新しい友達。香織と洋子が『女として』大事な友達になり…。
 長い人生だ。この貴重な時間のためになら4年くらい女で過すのも悪くないかも。それに最近はファッションにも目覚めてきて可愛い服も興味が。
 やがては『男の子の話』なんかもするようになっちゃうのかしら…時間がきても今度は男に戻りたくなくなるかも。

 眠くなるほどの陽気の中。あたし達は本当に他愛もない話をして。そして大事な時間を過していた。


『あなたたち読者の決定によってこのような結末になった。
だが本当にこれで良かったのか?
その答えはもう一つの『Maid』の物語が教えてくれる』

Fin


後書き

 どうも。城です。ここまでお付き合いありがとうございました。

 正直言って難しかったですね。というかもっとちゃんと構成してからやるべきでした。
 初めから2×2×2で8通りのストーリーを構成して。もう一度やるならそれを注意しましょう。

 そうそう。この形式は独占するつもりは毛頭ありません。どなたでもやってくださって結構です。と…いうか、僕も投票する側に回りたい。

 それにしても投票の経過を見て心で叫んだのが『読まれているぅぅぅぅ』
 最後だけはさすがにちゃんと初めから決めてましたが皆さん的確に『戻れない』結末へとプッシュ。
 『洗い物なら手袋するかも』と深読みしてくれるかと思いきや…さすがにお風呂はみえみえだったかな。
 果たしてこの結末はご期待に添えたでしょうか?
 ちなみにリクエストをいただきましたがこれは予定通りです。だからもし『お風呂』で『戻れない』をリクエストされても戻ってましたね。

 ではもう一つの『エピソードファイナル』(笑)のダイジェスト。

 『二人でお風呂に入るがはじめは普通に背中を流していたが手が滑ったと称して脇。胸。そして『大事の所』にまで侵入する沙紀の手。ボディソープを介して触れ合う柔肌。段々に高まるが耐えるために手を握り締めていたので指輪は抜けずにすんだ。
 そして予定時刻には元の姿へ。
 だがすっかり女としての経験にはまった『オレ』は教授に資金援助をして変りに変身セットの供給を受けていた。
 半年後。土曜の夜から『ありす』としてのワンルームマンションに戻る『オレ』は休みのたびに少女に変身すると目覚めから少女として沙紀や真彩香と過すようになっていた』

 一応は元に戻りますがこっちの方が自分から女になりに行く分もっと性質が悪いかも(笑)
 ○エンドは一応本人の意思でなく自分で自分を納得させている形ですし。
 もっともそっちの方がTSの王道かな?

 すいません。ラストはまた『龍騎SP』のパロです(笑)。でももしウチのサイトに再掲載するときはマルチエンディングにしますけどね。

 タイトルの『F』ですが『Final(最終話)』『Female(女性)』そして『Four(4)』の意味からです。

 それではここで最後の選択。番外編。
 この物語の続編を
 ぜひ読みたい…○
 別にいい…●

 なんちゃって。●が来たらさすがにへこむし○が多いと嬉しいけど大変。
 他にも『着せ替え少年』。構想中の新作(これがまた変化球)。なんといっても自分のところがありますしね。

 それではお読みいただきありがとうございました。


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