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 闇――

 人里離れて明かりの全くない山の中、そこは光もなければ音も虫の声以外聞こえない静寂の中にあった。
 突然、轟音と共に空に稲光が光り、大粒の雨が落ちてきた。
 雨粒は地面に落ちて流れを作り、稲光がそれを照らす。

 ゴロゴロゴロ…………バシイィィィィィン!!

 そして稲妻が走り山肌より顔をのぞかせている岩の一つに落ちた。


 それは珍しい事ではあるかもしれない、だがごく普通の自然現象だった。
 しかしそれから暫らくして起きた現象は明らかに自然のものとは異なっていた。
 雷の落ちた岩が淡く光り始めたのだ!!
 岩はゆっくりと明滅を繰り返しながら確実にその明るさを増していく。
 そして光に呼応するかのように稲光が激しさを増し……

 バシイィィィィィ――ン!! …………ドオォォォ――ン!!

 先程よりもさらに大きな稲妻が再び岩に落ち、岩は爆発し粉々に砕け散った。
 そして……岩のあった場所からいくつもの不気味な「手」が這い出るように現われた!!


 それは……このあと繰り広げられる壮絶なる戦いの幕開けを告げる合図だった。



Masked Riders !!

第一章 Kuuga

作:ライターマン



 群馬県富義(ふうぎ)山――
 道らしい道がなく滅多に人が近づかないこの場所に今は大勢の人が集まっていた。
 そのほとんどが紺色の作業服に身を包んだ警察の鑑識課係員たちだった。
 彼らは全員、緊張の面持ちで周囲の写真を撮ったり、金属探知機などで不審な物がないかを探していた。
 そんな現場に一人の男が現われた。
 年齢は20代後半、落ち着いた雰囲気ながら強い意志を秘めた目を持つこの人物は鑑識の人たちの間を抜けて中心部にいる中年の責任者らしき人物に声をかけた。
 「木暮(こぐれ)警部!!」
 するとその責任者、木暮警部は声をかけた人物の方を見て人のよさそうな顔を見せた。
 「よう来たか。久しぶりだな一条警部補」


 長野県警所属の警察官一条薫(いちじょう・かおる)、現在の階級は警部補。
 警察関係者の中ではかなり有名な名前である。
 地方警察の一警察官が地域を越えて名を知られるという事は滅多にないのだが、こうなった理由は4年前に遡る。
 その年、長野県の九郎ヶ岳で発見された遺跡で謎の生命体が出現、調査隊を全滅させた後、長野そして東京周辺で殺戮を繰り返した。
 「未確認生命体事件」と呼ばれた一連の騒動の中で、一条警部補は彼らの仲間と見られていた「未確認生命体第4号」といち早く協力関係を結び、装備を与えるなどの行為を行なった。
 当初は批判も多かった。しかし未確認生命体第4号が次々と他の未確認生命体を倒していった事実に賛同者は増え、ついに警察は組織として第4号を支援する方針を決定した。
 そして一条は「未確認生命体合同対策本部」の中心メンバーとしてその卓越した推理力と行動力を発揮した。
 その時の様子は現在でも「伝説」として語られるほどである。


 「お久しぶりです」
 一条は木暮の前まで来ると礼儀正しく挨拶をしながら敬礼をし、木暮は微笑みながら頷く。
 木暮は過去に一度、群馬と長野の合同捜査で一条と行動をともにした事がある。
 この時はまだ未確認生命体が現われる前のことだったが、その際に見せた一条の情報分析能力と洞察力に木暮はひそかに舌を巻いていた。
 人々の中には一条の事を「型破りな刑事」と言う者もいるがこれは間違っている事を木暮は知っている。
 彼は確かに型破りな方法をとることもあるがそれは他に方法がない場合のみで、彼自身は組織の重要性を認識し組織の一員であることに誇りを持っている。
 だから木暮は自分よりもずいぶんと若いこの青年に敬意をはらい、そして親しみを感じていた。


 「初めまして一条警部補」
 二人が挨拶を交わしていると木暮の隣にいた人物が一条に向かって声をかけた。
 「紹介しよう。彼は警視庁の特殊犯罪捜査課に所属している北条警部補だ。彼もたった今到着したところだよ」
 「北条です。よろしくお願いします」
 木暮の紹介で北条は一条に自己紹介をし、右手を差し出した。
 「長野県警の一条です。北条警部補のお噂は長野でも耳にしています」
 握手をしながら言った一条の言葉に、北条は皮肉交じりともとれる笑みを浮かべた。
 「あまりいい噂じゃないでしょう?」
 もしかして照れているのかな? などと考えつつ一条は北条に向かって首を横に振った。


 世間一般にはあまり知られてはいないのだが、未確認生命体と同種の事件は2年前にも起きていた。
 「アンノウン」と呼称された謎の生命体の正体はいまだに謎に包まれているが、その目的は「特殊能力を有する、またはその可能性のある人物の抹殺」だと言われている。
 この時、警察は完成したばかりの対未確認生命体用特殊装備「G3システム」を投入すると共に専従捜査班を発足させた。
 そのメンバーの一人が北条だったのである。
 この時の警察の対応は未確認生命体事件の時に比べて決してよいとは言えなかった。
 上層部は明確な方針を打ち出せず、また統率も取れていなかったために内部での衝突もあったと聞いている。
 一条としては多少のもどかしさは感じていたものの、部外者が口を出すべき問題ではなかったので静観していた。
 そして一年後、アンノウンによる事件は終結し、以後同様の事件は起きていない。
 終結の話を聞いた時、一条は安堵してホッと胸をなで下ろした。
 「あいつ」が好きだった世界、人々が笑顔で生きることができる世界が守られた事に……


 「それより木暮警部、例の件ですが……」
 一条が緊張した面持ちで木暮に訊ねる。
 「うむ、こっちだ」
 木暮が短く頷き2人を案内する。
 問題の地点の近くになると地面に板が敷かれ、一条と北条は板の上を歩くように言われた。
 「足場が悪いのは我慢してくれ。まだ足跡の採取が終わってないんでね」
 「足跡?」
 木暮警部の言葉に北条が訊ねた。
 「ああ、この辺は岩場なのでそんなに残ってはいないがそれでも多数の足跡が採取されている。……それも全て爆発地点から外に向かっているやつが……だ」
 それを聞いた一条はここにくるまでに抱いていた不安が一層増したように思えた。


 群馬の山奥で起きた爆発現象に長野県警、そして警視庁の刑事が同行する事になったきっかけは気象庁の観測データからだった。
 二日前の夜、気象庁の観測所が奇妙な電磁波をキャッチした。
 付近では雷雨が観測されそれが原因ではないかと言われたが、それにしては強弱のパターンが一定していた。
 そして、観測データを見た一人が思い出したように呟いた。

 「自分は以前、未確認生命体第0号を追跡するためのシステムの調整を手伝った事があるが、その時見せられたパターンがこれと似ているような気がする」

 未確認生命体第0号――
 それは日本、いや世界にとって戦慄すべき名前だった。
 以前から警察がその行方を捜していた第0号が人々の前に姿を現わした時、そこは一瞬にして地獄と化した!!
 第0号が発する強力なプラズマが人間を炎に包み焼き尽くす……その犠牲者は3万人以上!!
 第4号が戦いを挑み、死闘の末にようやく倒す事ができたのだが、第4号の方も多大なダメージを負い警察発表では生死不明となっている。
 もし今回観測されたデータが第0号の復活を意味するのなら……そしてかつての未確認生命体の如く人間に対するゲームを開始したとしたら……
 事態を憂慮した気象庁と警察庁は発生源と思われる地点に予備調査を行った。そして彼らの抱いた危惧は最悪の形で現実のものとなろうとしていた。


 爆発地点である山腹には大きな穴が開いており、洞窟となって奥へと続いていた。
 3人は洞窟内を照らす照明を頼りに洞窟の奥へと進んでいく。
 やがて内部の空間が広くなるとそこはちょっとした神殿のような造りになっていた。
 「このような地下にこのような遺跡がある事自体信じられないのだが、問題は……あれだ」
 そう言って木暮は遺跡の中の壁の一つを指差した。
 そこには壁一面に奇妙な文様が刻まれていた。
 「どう思う、一条警部補?」
 木暮の問いに一条は湧き上がる震えを抑えながら言った。
 「確かに似ています。…………私が以前未確認生命体B-1号を追っていた時に見たグロンギと呼ばれる者たちが使っていた文字に」


 洞窟を出た北条は持っていた携帯である人物に電話を掛けた。
 相手は小沢澄子(おざわ・すみこ)。2年前は警視庁で対未確認生命体用の装備としてGシリーズの開発を手がけた人物である。
 アンノウン事件終結前後に警察上層部との意見の対立を起こした彼女は、G5システムの設計図と辞表を叩きつけてからはイギリスのとある大学の教授として働いている。
 「未確認生命体の復活……しかも推定で100体以上」
 北条から話を聞いた小沢は硬い声で呟いた。いつもの彼女なら北条からの電話ともなれば皮肉や嫌味が必ず出るものなのだがとてもそんな余裕などないといった感じであった。
 「まだ断言はできません。しかし万一の事態には備えるべきでしょう。私はこれからG3−Xの使用許可を申請するつもりです」
 「そうね。残念だけどG−5じゃ1対1で未確認生命体と戦うのは無理があるものね。いいわ、G3−Xを使っても。でも装着者は……」
 「判ってます。もちろん『彼』にも装着者として今回の件に参加してもらうつもりです」


 Gシリーズは装甲強化服を中心とした装備のシステムである。
 強化服を身につけることにより装着者は普通の人間の何倍もの力を発揮する。
 だが、身体に密着した状態で装着者の動きを増幅しようとすればするほど装着者本人への負担は増大する。
 アンノウンとの戦いでG3の強化版として作られたG3-Xだが、その力を十分に発揮できたのは氷川誠ただ一人であった。
 そしてG3−X以上の能力を持たせようとすれば装着者自身の生命が危険にさらされる。
 この事実に警察はそれまでの方針を転換した。
 それは未知の存在による脅威に対して汎用化された装甲服を装着した複数の人間がチームを組んで対応するというものでG−5もその方針に従って設計したものである。
 ちなみにG3−Xは氷川が装着者の任を離れてからは半ば封印された形で保管されている。
 「残念だわ。すぐにでも戻りたいところだけどイギリスからじゃ数日かかってしまうわ」
 「そうですね。出来る事なら稼動前に装備のチェックと調整を行ないたかったんですが……」
 小沢の言葉に北条も残念そうに答える。その時、小沢はあることを思い出し北条に提案した。

 「そうだわ。私がMITにいた時に数多くの貴重なアドバイスをしてくれた人がいるわ。その人は生物学、機械工学、電子工学その他のエキスパートで1年前に母校である都内の大学に戻っていた筈よ。その人ならG3−Xの調整も可能だから協力をお願いしましょう」


 そして一条もある人物に電話を掛けていた。
 相手は城南大学考古学研究室の研究員、沢渡桜子(さわたり・さくらこ)。
 未確認生命体事件の発端となった九郎ヶ岳遺跡の調査メンバーの一人で遺跡の文字の解読を手がけた人物である。
 久しぶりの電話に喜んでいた沢渡だったが一条の話を聞いてその声が凍りついた。
 「そんな……本当にグロンギの文字なんですか?」
 信じられないといった様子で呟く沢渡。
 「まだ断定は出来ません。しかし早急に相手の正体を突き止める必要があります。写真を後でそちらに送りますので解読をお願いしたいのですが……」
 「判りました」
 一条の頼みに沢渡はすぐに承諾の返事をした。
 そして一条は思い出したように沢渡に言った。
 「あ、それからもし五代から連絡があってもこの事は内密にして欲しいのですが」
 しかし沢渡は一条の言葉にすぐには反応せず、一呼吸おいてからおずおずとした感じで話し始めた。
 「それが……」「どうしたんです?」
 「いたんです五代君。さっきまでここに」
 一条は沢渡の言葉に衝撃を受け自分のうかつさを呪った。彼が帰国したとしたら沢渡のもとを訪れる可能性はかなり高い。その事に気がつかなかったとは……
 「それで……彼は?」
 恐る恐る沢渡に尋ねる一条。返ってきた答えは彼の予想したとおりのものだった。
 「さっき飛び出して行っちゃいました。……多分そっちに向かっていると思います」


 「一条君何か言ってた?」
 携帯電話のスイッチを切った沢渡に榎田ひかり(えのきだ・ひかり)が尋ねる。
 彼女は科学警察研究所の主任だがちょうど休みだった事もあり、五代が帰国した事を知ると彼に会いに考古学研究室を訪れたのだった。
 その隣には彼女にそれを知らせたジャン・ミッシェル・ソレルが座っていた。
 「もし五代君と連絡が取れたら現場には行かないように言ってくれって。でも五代君、携帯持ってないし……」
 「今朝帰国したばかりだしね。私はこれから科警研に行くわ。神経断裂弾は無理だけどTRCSとBTCS、それにゴウラムをいつでも出せるようにしておくわ」
 そう言って榎田は立ち上がると考古学研究室を出て行った。
 「デモ、ゴダイサンッテ……」
 ジャンが心配そうな表情で呟くと沢渡も頷く。
 「ええ判ってるわ、もちろん五代君も。それでも行かずにはいられない。五代君ってそういう人なのよ」
 そう言って沢渡は表情に硬さを残したまま微笑んだ。
 そのとき、ノックの音と共に入口のドアが開かれた。
 「失礼、沢渡桜子君はいるかな?」
 そこから聞こえてきたのは太く、そして力強い男性の声だった。



 群馬県内のとあるキャンプ場――

 ここには20人ほどの男女が広場でボールを使って遊んだり、食事の準備をしたりしていた。
 「おーい、そろそろ始めるぞ」
 バーベキューのための火をおこしていた男が大声で言うと側にいた全員がそちらを向いて歩き始める。
 転がっていったボールを追いかけていた男もボールを拾うとみんなの所に向かおうとした。……が、
 ガサガサッ
 森の繁みから音がして男は立ち止まった。
 「な、何かいるのか?」
 男は恐る恐る近づいてみた。
 このとき男が想像したのは犬、猫、兎あるいは蛇の類だったかもしれない。
 だがその直後大きな音と共に繁みから出てきたのは……
 「ヒッ!! か、怪物っ!!」
 それは男の身長をしのぐ大きさの生物だった。
 シルエットは人間に似てはいたが顔の部分は黒い毛に覆われ顔立ちは何となく熊を連想させた。
 しかし胸部と両手両足を鎧のような装甲で身を包み二本の足でしっかりと立っているそれが熊である筈がない。
 怪物は指先から爪を伸ばして無造作に振り下ろし男の命を奪った。そしてゆっくりとした動作で人々が集まっている場所へと歩いていく。
 悲鳴を聞いた人々は一瞬何事が起きたのか判らず呆然としていたがその中の一人が突然叫んだ。
 「み、未確認生命体!!」
 その瞬間、そこにいた全員がパニックに陥った。
 4年経った今でも多くの人命を奪った未確認生命体という名前は恐怖のイメージと共に人々の心に焼き付いていた。
 冷静に観察すれば過去の未確認生命体とはいくつかの相違点があるのだが、目の前で男を殺した生物が自分達に迫っている事には変わりない。
 人々は走り出しその場から逃げようとした。
 しかし、森の中から別の異形の者たちが飛び出し、その行く手を阻んだ。

 キャンプ場に悲鳴と絶叫がこだました。



 警戒態勢中だった群馬県警に携帯電話による110番通報が入った。
 電波状態が悪く途切れ途切れだったがその中に「未確認生……」という言葉を聞き取った警察は直ちに発信源と思われる場所へ向かうように付近のパトカーに指示した。
 偶然にも最も近くを走っていたパトカーに乗っていたのは一条と北条だった。
 彼らは直ちに街道から脇道に入り、キャンプ場へと向かった。
 「最も恐れていた事が……」
 パトカーを運転する一条、そして隣に座っている北条の表情はどちらも硬かった。
 「神経断裂弾があれば」
 一条が思わず呟く。
 4年前、榎田らによって警察が開発した対未確認生命体の切り札である神経断裂弾。
 時間差をおいて爆発する炸薬により弾頭部分を体内に潜り込ませ化学物質により未確認生命体を活動停止に追い込む。
 通常の拳銃でも発射が可能であり、それがあればG5およびG3-Xの到着を待つことなく積極的な行動が出来たかもしれない。
 だがこの神経断裂弾は警察が制式採用するにはいくつかの問題がある代物だった。
 一つは保存がきかない事。
 弾頭部分である化学物質は劣化が激しいので製造してから数十日で効果が失われてしまう。
 そしてもう一つは危険すぎる事。
 普通の人間に使用した場合、化学物質は人間にとっても十分以上に致死レベルであるし、身体のどこに当たっても2度目の爆発の衝撃が心臓を直撃して即死してしまうのだ。
 以上の理由によりGシリーズの完成とともに神経断裂弾は廃棄処分となったのである。


 一条たちの乗ったパトカーが現場についたとき、そこに展開されていた光景は凄まじいものであった。
 あちこちで倒れている死体からはおびただしい量の血が流れ、衣服やテントが引き裂かれていた。
 そんな中で2つの影が動くのを見て一条と北条は拳銃を構えながら近づいていく。
 「誰だ!!」
 一条の声に反応して2人のうち1人が立ち上がり一条の方を向きニッコリと微笑んだ。
 「一条さん、お久しぶりです」
 4年前と比べて幾分たくましくなった様ではあるが基本的には変わらないその笑顔、懐かしくもあり……そして出来る事ならこういう場所では見たくなかった顔だった。
 「……五代」
 かつて未確認生命体第4号として人々の笑顔を守るために戦った男、五代雄介の姿を見て一条は小さく呟いた。


 「なぜ来たんだ!! これは警察の仕事だ。お前にはもう関係がない!!」
 久しぶりに見る五代に向かって一条は思わず怒鳴り声を上げてしまう。
 4年前、他に方法がなかったとはいえ一条は民間人の五代を未確認生命体との戦いに巻き込んだ。
 本来他人を傷つけるのを好まない五代はそのために心身ともに傷つき、一条は心苦しく思っていたのだ。
 だが五代は一条の顔をまっすぐに見るとこう言った。
 「呼ばれた気がしたんです」「呼ばれた?」
 「はい、何かが目覚め動き出そうとする。だから行かなくちゃならない。そう言われたような気がするんです。……多分ここから」
 そう言って五代は腹部の方に手をやった。
 「しかし……第0号との戦いでお前はもう変身できなくなってるんだぞ。ここに来たからといって何が出来る?」


 そう、一条の言うとおり今の五代は未確認生命体第4号に変身できない。
 第0号との戦いで変身に必要なアマダムと言われる霊石を砕かれた五代は変身能力を失った。
 復元する兆候も見られず、また全ての未確認生命体を倒し変身する必要性もなくなったので一条は当時の松倉本部長に頼み、事実を伏せて未確認生命体第4号を生死不明と発表したのだ。
 そして五代は普通の冒険家に戻り日本を離れて海外に旅立っていったのだ。
 その五代が呼ばれるようにして帰国してここに来た。一体なぜ?


 「一条警部補、この人は?」
 五代を知らない北条が銃口を上に向けて構えたまま一条に尋ねる。
 「彼は怪しい者ではありません。私が保証します」
 一条が言うとようやく北条は警戒を解いた。
 「それじゃああの人は?」
 北条がその場に居たもう一人の方を見て尋ねた。
 その人物は一条たちのやりとりをまるで気にしてないかのように現場の様子を調べていた。
 肩に一眼レフのカメラをかけていたがそれで写真をとろうとはしていなかった。
 一条が五代を見ると五代は首を横に振った。
 「あの人とはここにくる道の入口で出会っただけです。走っていたバイクを急に止め、『悲鳴が聞こえる』と言ってこの道に入ったんで俺もついていったんです」
 「入口? まさか街道でか?」
 一条は驚きで目を見張った。
 そこからここまでは1q以上の距離がある。そこから人の悲鳴が聞こえるなどとはとても信じられなかった。


 一条は少し警戒しながら男に尋ねた。
 「失礼ですがあなたは?」
 一条の質問に男は立ち上がって振り返った。
 「俺? 俺はただのカメラマンさ」
 肩にかけたカメラを持って男は微笑んだ。
 年齢は50くらいだろうか? もしかしたらもっと若いかもしれない。
 「5日前に日本に帰ってきたんだが、この先で起きた爆発現象というのに興味があってね。そこに向かう途中だったのだが」
 「街道から悲鳴を聞いたそうですが一体……」
 質問を続けようとした一条だったが男は急に表情を硬くすると呟いた。
 「何かが来る」
 「来る? 来るって何が?」
 尋ねる北条に男は首を横に振る。
 「判らん。だが森の中からこちらに向かってくる音がする。5…いや10体以上いるぞ」
 そう言って男は身構える。が、一条や北条にとっては何かが近づいている音など全く聞こえない。


 だが、男の言っていたのは嘘ではなかった。
 突然繁みが動いたかと思うと先程キャンプ場を襲った怪物たちが姿を現わした。
 「み、未確認生命体!!」
 北条が叫ぶが一条はそれに対して首を横に振る。
 「いえ、確かに似ていますが少し違うようです」
 そう言って一条はまず威嚇のために空に向かって銃を一発発射する。が、怪物たちはその歩みを止めない。
 次に北条が最も近い一体に向けて銃を発射する。
 弾丸は怪物に命中するがダメージを受けた様子はない。やはり通常の弾頭では奴らには全く効果がないようだった。


 そのとき、五代がゆっくりと歩きながら一条たちの前に出た。
 「よせ、五代!! お前はもう……」
 五代を止めようとする一条。だが五代は決意を込めた声で言った。
 「いえ、一条さん。俺はこんな奴らが自分の欲望や楽しみのためにみんなの命や笑顔を奪うのをどうしても許せません。だから……だから俺は戦います。もう一度……戦士として!!」
 そして両手を広げて腹部に向ける。すると五代の身体からベルト状の物体が浮かび上がった。
 ベルト状の物体には無数のヒビが入っていた。特にその中心部は砕けていると言ってもよかった。
 (守りたい……みんなの笑顔を……幸せを……)
 「はあぁぁ――っ!!」
 五代は中心部の丸い部分を両手で包み込むようにすると気合を込めながらゆっくりと息を吐き出した。
 するとベルト状の物体に変化が起きた。ヒビが急速に消えていき、砕けた部分がみるみるうちに復元されていく。
 そして全てのヒビが消えた時、中心部の丸い物体が赤い光を放ち始めた!!


 五代は左手を脇腹にあて右手を少し開いて左手前に突き出しゆっくりと右方向に移動させる。
 そして……

 「変身!!」

 「なにっ!?」
 五代の発した叫びに自称カメラマンの男が驚きに目を見張った。
 ベルトの中心部の物体は赤い光をさらに増し、五代は怪物の一体に向かってダッシュした。
 走る五代の体が変化していく。脚が、腕が、胴体が、そして頭部が変化を終えた時、五代はかつての戦士、クウガの姿を取り戻した!!
 五代は軽くジャンプをし、

 「おおおりゃああぁぁぁ――っ!!」

 叫び声とともに怪物にキックを放った。
 怪物は後方に吹っ飛ばされ、キックを受けた部分から光が全身へと広がり、そして爆発した。



 「あれは……まさか未確認生命体第4号!?」
 五代の変身に呆然とした北条が呟くと一条が頷きながら答える。
 「そうです。超古代の戦士クウガの意思を継ぎ、未確認生命体と呼ばれようとも人々の笑顔のために戦い続けた男、それが彼なんです」


 そして……一条たちのすぐ後ろで男も五代の変身した姿を凝視していた。
 「あれが……未確認生命体…第4号」
 当時、海外で活動していた彼はその後の資料などでその姿を写真で見たことはあるものの実際に動く姿を見るのは初めてである。
 額から左右に張り出し伸びた金色の角、身体のあちこちを赤い甲冑のようなもので覆い腰のベルトの中心部の物質は赤い光を放っている。
 その姿に見覚えはない。しかし怪物から人々を守ろうとして戦うその姿、そして変身前の五代という青年の言葉から感じられるその魂は彼にとって馴染み深い存在とよく似ていた。

 「まるで……仮面ライダーじゃないか」

 男は小さく呟きニヤリと笑った。

(つづく)
第二章へ


おことわり

この物語はフィクションです。劇中に出てくる人物、団体名は全て架空の物で実在の物とは何の関係もありません。
また、これは二次創作ですので本編および原作者、製作会社とも何の関係もありません。



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