五月のある日である。
 パジャマ姿の少年は起きるとそのまま浴室へと向かう。
 奇妙なことに手にしているのは女物の衣類だ。

 その女顔の少年は台所で水を一杯飲んでから浴室へ。
 一糸纏わぬ姿になりぬるま湯を浴びて汗を流す。
 引き締まった肉体だが逞しいとはまだ言いがたい。
 それはやはり16歳という年齢ゆえか。
 髪の毛は男子としてはやや長い。女子だとショートカットという長さ。
 長く伸ばしていたころはその女顔ゆえ年中性別を間違われていた。

 ぬるま湯のお湯を切り水へと。
 冷たい水が引き締まった胸板を伝う。
 鳥肌が立つほど冷えたら今度は湯船に浸かる。
 46℃のお湯がことさらしみる。

 あたたまったために気温がさほど高くは感じない。
 そのまま「彼」は手にした下着を取る。
「さて…と」
 ショーツを腰まで引っ張りあげて意識を高める。
 すると股間の膨らみが消失した。
 同時に引き締まっていた胸板がふくよかなふくらみを形成する。
 全体的に柔らかい雰囲気に。
 そのふくらみにブラジャーを当てる。
 よりいっそう女性的なイメージが強くなる。
 キャミソール。スクールブラウス。チェックのプリーツスカート。
 制服姿になり鏡を確認。そこにはまごう事なき美少女がいた。
「よし」
 鏡を見て女性であることを確認して声が出た。

PanicPanic・改
パイロット版

 赤星いつき。正式表記は赤星樹。
 「彼」は自分の意思で性別を変える事ができる。
 その能力に気がついたのは中学3年の夏休み。
 幼馴染みの少女に戯れで女装をさせられたことがきっかけだった。
 女物の衣類をつけているうちに気がついたら性別まで変化していた。
 それ以来、意識すれば女の子へと変身できるようになった。

 高校ではとある事情から女子扱いでの通学。
 だからいきなり「女装」なのである。

「お兄ちゃん?」
 洗濯機の置いてある脱衣所の外から少女の声が聞こえてくる。
「恐る恐る」という感じだ。
「ちゃんと服着てるぜ。薫」
 すっかり美少女と化したいつきだが口調は男っぽい。しかし声は澄んだ高い女のものだ。
「よかった。もう『お姉ちゃん』になってたのね。男のまま着替えていたらどうしようかと思ったわよ」
 パジャマ姿の少女が安心したような口調と表情で現れた。
 今のいつきそっくりの美少女。ただし背丈は薫の方がある。胸はいい勝負。
 赤星薫。こちらは正真正銘生まれつきの女性である。いつきの妹である。
「毎朝大変ね。男ならこんな必要もないのに」
 彼女も朝のシャンプーのために来たのだ。
「仕方ねえよ。女で高校三年間通すって決めたんだから」
「愛の力ね」
「……からかうな」
 いつきはほんのりと頬を染めた。

 いつきは朝食を済ませ喫茶店の店舗部分から出る。家業は喫茶店なのである。
 そこには栗色のセミロングの少女が待っていた。
 濃紺のブレザーを纏っている。二人は同じ制服を着ていた。
「お待たせ。七音」
「いつき」
 七音と呼ばれた少女は顔を輝かせる。そして真正面から抱き締める。
(いきなりきたか……)
「うん。今日も可愛いわ。いつき」
 うっとりとしてつぶやく。

 及川七音(ななね)。いつきの幼馴染みの少女である。
 そして……実は同性愛者である。
 男が苦手というわけではない。しかし女に対して友情以上のものを感じるところがある。

 いつきの変身能力と七音の「趣味」は同時に判明した。
 そう。前述の幼馴染みはこの七音。
 可愛い顔をしている樹を冗談で女装させてみたのだ。
 七音の部屋で二人っきりというシチュエーションで流された樹。
 最初はスカートを履かされただけだった。
 上はTシャツだけ。
 ところがふざけて女っぽい仕草をして「なりきってみたら」いきなり胸が膨らんだ。
 Tシャツだからはっきりとわかる。
 仰天する樹と七音。
 慌ててTシャツを脱いで見るとたわわな二つの果実が。
「まさかっ!?」
 女のシンボルの出現で不安になった。少女の目の前だというのにスカートの中をまさぐる。
「な、ない」
 男のシンボルが消失していた。さらによく触って見ると固く閉じてはいるが「筋」まである。
「樹。声も」
「え?」
 それどころでなかったのだが言われて意識すると澄んだ綺麗な声に変化していた。
「これってまさか……」
「樹。お風呂場に行く?」
 つまり全裸になって確認するかという意味である。
 樹は青くなって頷いた。

 及川家のバスルーム。
 家人は留守だが念のために七音が見張っている。
 中には樹が一人。
「ぎゃーっっっ」
 古典的な表現をするなら「絹を裂くような乙女の悲鳴」。
「樹!」
 全裸の少年がいる。その可能性が悲鳴で頭から吹っ飛んだ七音が飛び込む。
 そこにいたのは姿見の前で気絶している美少女だった。
(えっ?)
 不覚にも七音はときめいた。
 幼馴染みの少年には抱かなかった感情をその美しい少女に持つ。
「樹……なの?」
 豊かな胸。くびれたウエスト。大きなヒップ。白い肌。
 女の記号に満ち溢れている。そして女の顔ではあったが確かに幼馴染みの「少年」の顔立ち。
 双子の妹という印象だ。
 気のせいかまつげが増えて長くなっているように見えたし、唇も桜色に見えた。
 しばらく見ほれていたらその少女は自力で復活した。
「大丈夫? いつき」
「ああ。怪我はしてないけど」
 可愛い声をしているが口調は幼馴染みと同じ。
「七音。オレ……」
 恐る恐る声を出す。そして自分の胸を見る。女のシンボルが誇らしげに存在していた。
「お、女になっちまった?」
「暗示かしら? それなら『男に戻りたい』と思えば戻れるんじゃ」
「そ、そうかも」
 ダメで元々。いつきは言われるままに強く念じた。
 その途端である。女のシンボルが平たく引き締まった胸板に戻る。
 ウエストもくびれもなくなり、お尻もすっきりと。そして男のシンボルが。
「ひっ」
 息を呑む七音。彼女には父と弟がいたから見た事がないわけではない。
 しかしそれでも彼女にとって「それ」はグロテスクな器官だった。
「いやぁーっ」
 今度は七音が悲鳴を上げる。慌てて女の姿になるいつき。
「落ち着け。落ち着け七音。ほら。女だから」
「あ、ごめんなさい。私ったら」

 この一件が分岐点だった。
 樹が「グロテスクな物を持つ」と認識した七音はどことなく態度がよそよそしくなる。
 途方にくれた樹が半ばやけくそで女の姿でアプローチをかけると平気。
 むしろ以前より友好的に。
(こいつ……そっちの趣味だったの?)
 はっきりとはしてないが疑惑が掛かる。
 こうなると男の自分では七音に近寄るのも難しい。

 七音に思いを寄せる樹は意を決して家族にこの体質を告白。
 そして進学予定の愛魅磨(メビウス)学園には女子としての通学をすると。

 父親は翻意させるべく説得したが樹の決意は固い。
 愛ゆえの行動ということもあり、最終的にはそれを認めたうえで学園長に話しを通してくれた。
 そして今に至る。

 樹の変身は意識すれば女になり、意識すれば男に戻る。
 つまり女の状態で眠っても男には戻らない。
 ただし男としてその特殊な状況が当たり前になってしまうと基本形態が女の方になりかねない。
 最終的には男と女の関係にと願う樹にとっては、自分が完全に女になるのはのぞみではない。
 だから髪型もあまり少女らしくはしたくなかったのでショートカット。
 だが元々女の子を欲していた母は、最初のうちこそ生粋の娘である薫がいたので抑えていたが段々にいじり始めてきた。
 その一環として髪を切ってくれなくなった。
 だから伸びてきた襟足を無造作に輪ゴムでとめている。

 こんな母ゆえに女物の服は喜んで調達してくれた。
 おかげで一通りのものはある。

 学校でも一部を除いて正体は秘匿。だから受ける授業も男女別だと女子の方に。
 もちろん体育は女子更衣室で着替える。
 そして女子の実態を知ってしまいすっかり女に対しての夢が砕けた。
 裸体も見慣れてしまった。

 男でいようと必死に抵抗するが、反対に七音との間を良好に保つために女のふりもしなくてはいけない。
 女に流されないように踏ん張っている毎日である。

 正門前。メガネの男がたたずんでいた。
 中年にしか見えない顔立ちだが、愛魅磨学園の男子制服のブレザーを着用している。
 これで髪型がオールバックじゃなければもうちょっと年相応に見えたのだが。
「よう。榊原」
「おはよう。榊原君」
「おう。相変わらず仲がいいな。赤星。及川」
「やだ。恋人同士に見える?」
 わざわざ腕を組む七音。いつきは押し付けられた胸の感触にドキドキする。
「赤星。ときめいているな。その88センチEカップに」
「うそっ? 七音。バストアップしたの?」
「や…やだっ。ばらさないでよ。榊原君のエッチ」
 赤くなる七音。
「いやいや。成長期だからな。不思議はないって」
「このセクハラやろうっ」
 甲高いハスキーボイスが響くと、普通の人には見えない茨のツタが榊原の首に絡まり、そのまま釣り上げる。
「真紀ちゃん。おはよう」
 七音はその金髪の少女に挨拶をした。
「おう。おはよ。七音。いつき」
 村上真紀。身長170センチはハーフゆえか。金髪も地毛である。
 短い金髪が逆立っている。胸元は七音より大きなFカップ(90)だが身長とのバランスが取れている。
「どうでもいいけど榊原がそろそろ限界なんじゃない?」
「あんたにも見えているんだろ。いつき。ちゃんとガードしてるよ」

 真紀の使った能力はマリオネットと呼ばれるものだ。いわゆる超能力。それにヴィジョンが伴っている。
 真紀の能力。ガンズン・ローゼスは本来は心を読む能力。
 相手に触れることでこのツタを接続して心を読む。
 また残留思念を読むのも可能。サイコメトラーと呼ばれるものだ。
 このツタの形状を利用してロープのように使ってもいる。

 マリオネットのルールはに「マリオネットはマリオネットマスターにしか見えない」というものがある。
 つまりいつきも、そして七音もマリオネットマスターだった。
 いつきの能力は「ストレンジャー」と名づけられたもの。
 他人に化けることができる。
 ただし当然ながら知らないと化けられない。
 逆に言えば接触が多いほど正確に化けられるが、それでも思考まではコピーできない。
 ただし声は完全に一致する。
 そして自分の肉体をベースにするため男になる時は男のとき。女になる時は女のときでないと出来なかった。
 いつきは自分の性別変化もこの能力の一環なのではと考えている。

 七音のは修復能力を持つマリオネット。
 復元なら致命傷ですら元に戻せるが、死んだものは戻せないし病気も直せない。

 そして榊原和樹もマリオネットマスターである。
 予知能力をする「ビッグショット」と呼ばれる人型のマリオネット。

 実のところこの二人にはマリオネットのせいで本来は男と見抜かれてしまったいつきである。
 だがそれが縁で仲良くなったのだから不思議なものだ。

「真紀。お前はまたそんな暴力をふるって。私はお前に愛情をたっぷり注いだつもりだぞ」
 突然スーツ姿の中年男性が真紀を背後から抱き締める。
 驚いて榊原の戒めを解いてしまった。その矛先は中年男に向けられる。
「いつになったら子離れしやがる。うっとおしい」
「まぁ。真紀。お父さんになんてことを」
 停車していた黒塗りの車の窓から外国人の女性が窘める。真紀によく似ている。
「いいんだ。マチルダ。これも愛情の裏返しなんだ」
 抱きついた中年は真紀の父親で会社の会長だった。
 マチルダと国際結婚。
 生まれた真紀の愛らしさに溺愛。
 だが当人がそれを鬱陶しく思い見事に「スケバン」と化した。
「早く行けよ。絵梨香が遅刻するぞ」
 家族で登校。そして出社というのが村上一家のパターンだった。
「く…仕方ない。皆さん。真紀をどうかよろしく」
 見事な親ばかぶりを発揮して立ち去って行った。

 入れ替わるようにもっととんでもない存在が。
 馬である。
「止まれ。疾風」
 馬を駆っていた少年が手綱を引く。
 細身で長身。何よりその鋭い目つき。同世代の少年と一線を画していたがそれもそのはず。
 彼は現代に生きる忍びだったのだ。
 ひらりと舞い降りるとまだ残る少女に手を差し伸べる。
「さぁ。姫。お手を」
「ありがとうございます。小十郎様」
 その手に助けられ少女は地面に降り立つ。
 長い黒髪。その全てが切り揃えられている。
 特に長い房が「お姫様」の印象であるが、実際に姫君であり、そして名前も北条姫乃だった。
 その名の通り北条家の末裔。それゆえ厳格に育てられた。
 元々の性格もありおっとりとしているが育ちも大きい。
 そして極端に世間知らずであった。

「よし。戻れ。疾風」
 命ぜられた馬は屋鋪へと自分で戻っていく。
 小十郎と呼ばれた彼のフルネームは風間小十郎。
 風間の姓が示す通り北条家に仕えた風魔一族の一員である。
 姫乃と同世代ということもあり遊び相手を兼ねた護衛であった。
 そしていつしか二人は互いに思いを寄せる間柄になったが、小十郎の方が身分違いと消極的。
 姫乃も現在はまだ早いと焦らず学園生活を楽しんでいる。

「皆さん。おはようございます」
 お辞儀をすると長い黒髪がさらさらと零れ落ちる。
「おはよう。姫ちゃん」
 口々に挨拶を返す。
「あんたいつになったら洋服になれるんだ?」
「申し訳ありません。なんだかわたくしは人よりお着替えが遅いらしくて」
 普段は屋敷で和服が普段着の姫乃。
 そのせいか着物だと同世代の少女より早いくらいだが、洋服となるととたんに手間取る傾向がある。
 ただし若干性格的に「トロイ」ところもある。

「そろそろ入ろうぜ。予鈴がなるころだろ」
 榊原が懐中時計を確認して言う。本来設置してある学園の大時計は修理中だ。
「そうだな。そろそろヤバイな」
 いつきがケータイの時計を見て同意する。
 そのタイミングを見計らったように少年と少女が突然出現した。
「わっ」
 驚いたのはその六人以外。マリオネットマスターである面々にはわかっていた。
「よう……おはよう…」
 春から夏に差し掛かるころというのにマフラーをした少年が挨拶をする。
「上条。またネトゲ?」
「ふふふ。段々リアルとネトゲの区別がつかなくなってきた…」
「恐ろしいことをいうなよ」
 いつきが返した途端に上条と呼ばれた少年は倒れこむ。
「秋葉君」
 傍らのツインテールの少女が悲痛な叫びを上げる。
「ま、真綾。頼む…」
「うん。みんなごめん。ボクにちょっと協力して」
「またか」
 仲がよいから言える榊原の台詞。
「急ごう」
 フォローするかのように言う真紀。
 とはいえど立っただけで何もしない。それでいいのだ。
 ツインテールの少女。若葉真綾のマリオネット。マドンナがその翼を広げる。
 黄金の粒子が集まっていく。これは生体エネルギー。
 そしてそれは上条秋葉に注がれていく。
「う…助かったぜ。真綾」
 むくりと立ち上がる。
「ボクも遅刻するところを助けられたからお互い様。でも徹夜はやめようよ」
「ははは。夕べ巡回していたら面白サイト見つけて。それからネトゲ始めたら朝になっててさ」

 上条秋葉。見た目はきわめて普通。強いてあげれば背は高めというだけの何の変哲もない少年。
 だが彼はその名が示す通りアキバ系だった。
 深夜アニメ。ネット巡回と通り一遍のことはやっているし、彼自身もサイトを運営していた。
 どちらかというと濃い目のオタクであった。

 彼もまたマリオネットマスター。その名はアクセル。
 現実の時間と彼の周辺の時間に差が生じる。
 彼の時間が現実より早く流れる。
 現実で一秒経つ間に彼の時間は100秒進む。
 超加速ではない。その証拠に衣類はなんともない。
 真綾もその時間の中にいたので恩恵を受けていた。

 だがこれは本人の体力と引き換えであった。
 ましてや徹夜していた状態。ダウンも当然である。
 それを救った若葉真綾の能力。マドンナ。
 生体エネルギーを備蓄して放出できる。
 それで六人から少しずつエネルギーをもらい注ぎ込んで回復させたのだ。

 チャイムが鳴り響く。
「やべ。予鈴だ」
 八人は下駄箱へと急ぐ。そして同じクラスへと。

 そのころ。
 不良の巣窟で名高い俗称・悪漢高校。
 もちろん正式名称ではない。だがこの名の方が圧倒的に通りがよかった。
 その校庭では一人の男が百人以上の不良たちに檄を飛ばしていた。
 そして気勢が上がる不良たち。それぞれ幹部である四人の配下であり、その指揮に従い行動する。
 目指す目的地は愛魅磨学園。

 一時間目はホームルーム。
 三十代前半の男性教師が入ってきた。このクラスの担任。中尾勝だ。
 担当教科は物理だが、どちらかというと体育会系の明るいのりで同僚の教師たちや生徒たちから慕われていた。
 挨拶を交わしてホームルームがスタート。
「よーし。出席取るよ。いない人は手を挙げて」
「せんせー。それはベタだよ」
 それで逆に笑いが起きる。
(今日も飛ばしてるね。中尾先生)
 真紀の斜め後ろのメガネの少女がそっと声をかける。
(そうだな。ゆかり)
 小声で返答する真紀。
 彼女。小山ゆかりはマリオネットマスターではないため声で返さないといけない。
 他の不良に絡まれていたのを助けたのが縁で仲良くなった。
 ただし実家のレストランの手伝いがあるので、ゆかりは放課後はフリーの時はすぐに帰宅してしまう。

 二時間目は音楽の授業。いつきたち1年2組は音楽室へと移動していた。
 やや遅れていたいつきと七音の前にワンピースを着た人物が現れた。
 背中まで伸びた栗色でウェーブの掛かった髪が柔らかくなびく。
 かなりの美人である。見た感じは二十代後半の女性である。
「赤星さん」
 柔らかい声で呼び止める。
「学園長」
 いつきも笑顔を作る。
 実は男と知りつつ女子としての入学を認めてられたのは、この学園長の裁量によるものであった。
「どうかしら? 女の子としての毎日は?」
「は、はいっ。それはもう…」
「もう?」
 ちょっと意地の悪い笑みの学園長。
「いえ…正直ここまで違うとは思ってなくて。同じ人間なのに」
「そうね。でもあなたの言う通り。同じ人間よ。優劣なんかないわ」
「学園長」
「だからあなたは自分の信じたままに行きなさい」
「は、はいっ」
 特殊な事情ゆえたまにこうして励ましてくれるのがこの学園長であった。
 何かとフォローもしてくれる。
 いつきにしたら感謝してもしきれない人物である。
「わたしもね、あなたの気持ちがわかるから」
「は、はは……(好きで女として通学しているわけじゃないんだけどなぁ…)」
 引きつった笑みを浮かべるいつき。

 音楽の授業では歌のテストを行っていた。
 単なる授業にもかかわらず一人の女生徒の歌声にみんな聞き入っていた。
 終わってから拍手が起きるほどである。
「すごい。すごいよ。愛亜(めあ)」
「大げさよ。ゆかり」
 謙遜する彼女の名は内藤愛亜。両親は「ナイトメア」という言葉を知らずに命名してしまった。
 スレンダーな美少女。黒いストレートロングが美しい。
「相変わらずすごいな。委員長は」
「ほんと。完璧超人だよな」
「つまりネプチューンマンやビッグ・ザ・武道と同じなんだな」
 真紀といつきのやり取りに変なボケで関わる秋葉。
 しかし「完璧超人」は大げさでもなく、テストは常に学年で五位以内。スポーツ万能。教養もあり人格も高潔である。真紀がいう通り委員長の役職にあり、おまけに美人である。
 まぁ若干胸元が寂しいのはご愛嬌。
 彼女は足を引き摺りながら座席へと戻る。
 学校ではない何処かで捻挫をしたらしい。
「私はただ歌が好きなだけよ。歌っていると私の中の汚いものが流されていくような感じがするの」
「へえ。委員長にもそんな感情があるんだ」
 何気ないいつきの言葉に愛亜は視線を落とす。
「ん? どうしたの」
「赤星さん。私だって普通の女の子よ。そんな特殊な目で見られて気分がいいはずないわ」
 怒っているというより悲しい目つきであった。
「あ。ごめんなさい。あたしったら」
 学校では一部以外には女子として通しているいつきは、基本的に女言葉で喋る。
「いいのよ。でも私にはあなたの方が特殊に見えるわ」
「え? 何で?」
 などととなりの座席で会話していたら七音の歌声が。
 この二人はクラス全体でも歌の上手い二人で模範で歌わされた。
 途端に会話を忘れて七音に熱い視線を向けるいつき。
(ほら。女の子なのにどうみても女の子に恋している目よ)
 愛亜はそれに対して偏見は持たない。
 人が人を愛することは素敵なことだと考えている。
 あまりにも清い少女である。その黒い部分は反動で……

 三時間目は体育。男女共に同じことをする。
 この日は校庭でソフトボールだった。
 左打者の少年の打球がライトの七音の元に飛ぶ。
「きゃーっ。来ないでー」
 あまり運動の得意ではないほうの七音が悲鳴を上げる。
 それをカバーすべくセンターのいつきが俊足を飛ばして捕球に向かう。
 だが降りてきたのはボールではなく人であった。
 小柄でサルを連想させる男だった。
「あんたは!」
 瞬時に険しい表情になるいつき。

「あやつは!」
 ベンチわきに控えていた小十郎は「襲撃」を認識した。そして殺気を感じ取る。
 長身痩躯の男が木刀と凶器を携えてトラのように疾走して詰め寄る。
 狙いは姫乃だが当然小十郎がブロックする。
「久しぶりじゃねぇか。風間ぁ」
「やはりお主か」

 上から無数の石が投げ込まれる。このままでは後方にいる女子たちに当る。
「龍気炎」
 秋葉の手から練りこまれた「気」が放出されそれをバラバラの方向に叩き落す。
 しかしそれは陽動。その硬直をつきモヒカンヘアの男が秋葉を急襲する。
「させないよ。フラッシュアッパー
 ツインテールをなびかせて真綾が走りモヒカンの男を迎撃に掛かる。
 それも読んでいたのか蛇のような目を持つその男は立ち止まった。

「真紀!」
「わかっているよっ」
 和樹の叫びに答える真紀。
 タイミングを合わせるように塀越しに太いチェーンが投げ込まれる。
 まるで象の鼻のように意思があるのか、真紀の右腕にまきつく。
「アタイを縛るんだったら両手両足縛りやがれ」
 ぐいっと右腕を引くとチェーンの主ごと引っ張り込んだ。
 それは2メートルを越す坊主頭の巨漢。
「ぐふふふっ。助けてくれてありがとよ。オレは足が遅いからな」
「けっ。この無精者」

 学校の外塀を百人の雑兵が取り囲んでいる。脱出したければこれを突破せねばならない。
 そして正門では彼らを指揮する男がゆっくりと歩み寄ってきていた。
 学生服を着ているが二十歳を越えている風貌。オールバックがますます大人びて見せている。
 その男が大きな声で宣戦布告をする。
「俺は悪漢高校総番。新(あらた)星(すばる)。貴様ら愛魅磨学園に対して宣戦を布告する」
 肉声のみでそれがその場に伝わるほどの迫力。
「だがオレの部下が手始めに借りを返したいという意思を尊重する。さあお前ら。闘いの火蓋を切れ!」

「風すら置き去りの速さの戦士。春日梵」
「山のごとく立ちはだかる巨躯。夏木外亭」
「炎のように全てを滅す剣の男。秋本万次」
「林に潜む蛇のような執念深さ。冬野五捨郎」

 そして一泊置いて冬野がそれぞれの背後にボールを投げ込む。
 背中で派手な煙を立てて爆発すると全員がポーズを取る。
「われら四季隊」

「ブラボー。おお。ブラボー」
 上条秋葉だけが喜んでいるが、後は「どん引き」だった。
 しかしこれも策略。生じた隙に乗じて先制攻撃が来た。
 春日が跳躍すると頭上からカギ爪を振り下ろしながら降下する。
 狙いはいつきの脳天。
 いつきはそれを手で払いのけるようにして受け流し、大振りのアッパーカットを繰り出した。
 だがそれをガードされ着地を許す。
 対峙するいつきと春日。
「あんたもバカだな。こんな動きやすい格好のときに襲撃なんて。調査しなかったのか?」
「くくく。わざとさ。スカートだから負けた。胸が揺れて負けたとか言わせんためにその格好のときを狙ったんだ」
「それで負けたら世話ねえぜ」
 挑発というよりやや呆れ気味。
「勝てばよいのさ」
 飛ぶかと思いきや正反対に地面を転がる。
「くっ。シューティングスター
 秋葉同様に気を練り上げたものを放つが、低すぎて狙いが定まらない。
 掻い潜り接近を許す。後少しで攻撃というところだったが
「いつきには何もさせないわよ。ダウンピッキング
 地面を踏みつけるような低い位置への七音の攻撃が春日を止めた。

 夏木はゆっくりと接近する。
 だが和樹や真紀には上条秋葉や赤星いつきのような「飛び道具」はない。
 むしろ似たようなファイティングスタイルの三者である。
 いまだ真紀の右腕にはチェーンが巻きついたままだ。
 その片方は夏木が握っている。
「上等っ! 力比べに乗ってやるよっ」
 真紀のほうからチェーンを引っ張る。今度は夏木は身を任せず大地に根を下ろしたかのように動かない。
「ぐふふふっ。お嬢様なのに言葉遣いが荒いな」
 余裕の口調だ。
「お嬢様とか言うんじゃねえ」
 真紀の親は会社重役。だからお嬢様で間違いないのだがそれが自分の柄じゃないと思っていた。
 言われるとどうにも照れがある。
「いやいや。女はやはりおしとやかな方がいい」
「古いんだよ。あんたは」
「アケミももうちょっとおしとやかならなぁ」
 チェーンを引っ張りながらの会話である。
「誰だよ?」
「ワシの女」
「にゃにぃ!?」
 驚いて力が緩んだ真紀。そこを引っ張られてしまう。
「おっと」
 それまで手を出さないでいた和樹がチェーンを押さえる。
「何やってんだ。つかまるところだぞ」
「あ、ああ、カズ。すまない。けど」
 ちらりと坊主頭の巨漢を見る真紀。憮然としている夏木。和樹は真紀の腕のチェーンを外した。
「ワシは別にお前の油断を誘うために言ったわけじゃないんだがのう。そんなにわしに彼女がいるのは意外なのか?」
 凄まじい勢いで首を縦に振る和樹と真紀。

「はっ」
 牽制でクナイを投げる小十郎。だが木刀の最小限の動きで払いのけた。
「はっ。そこのお姫様にゃ興味はねぇ。だがそっちを狙えばてめえも『守る』ために戦わずにゃいられんよなぁ。この俺と」
 かつて苦渋をなめた秋本は小十郎に執着していた。
「だがいつまで守りだけでいられるかな。攻撃は最大の防御って言うしな」
「戦場とあらば存分に相手いたそう。だがここではそうも行かぬ」
 攻め一方の秋本と守り一辺倒の小十郎。
 このままではいつか撃破されかねない。
 おとなしい性格の姫乃だが、それを黙ってみているほどではない。
 彼女のそのマリオネット「姫神」に自宅に置いてある「弓」と「矢」を手元に運ばせる。
 それを取るととりあえず小十郎の背後から秋本を目掛けて矢を放つ。
 この矢の先端には何もない。刺さることはないものの当れば大の男に殴られたくらいの衝撃はある。
「効かねえっていってんだろ」
 真正面の攻撃ゆえに見えていた。簡単に弾き飛ばす。しかしそれで隙が生じた。
 初めて小十郎が攻撃に転じた。
「疾風拳」
 腹部を目掛けて拳を叩き込む。それを三連続。
 懐に飛び込まれたことで無防備な腹部に攻撃を受けた。
「ぐふっ」
 したたかに効いて、さすがに間合いを取る秋本。

「な…なんて卑怯な手を使うんだ…」
 秋葉は歯噛みしていた。
「ふふふ。攻撃できまい」
 冬野のガクランははだけており、Tシャツが見えていた。
 そこにはマンガを原作としたアニメの美少女が描かれていた。
 重度のオタクである上条秋葉にとってはこれは「切支丹」に対する「踏み絵」に近い行為。
 そこに目をつけて買って来ていた。
「俺を攻撃するということはこのキャラに対する攻撃。それはつまりお前の愛は『その程度』ということの証明」
 オタク属性のない冬野だが、対上条に執着してここまで「勉強」した。
「まって。秋葉君。あの絵。ちょっと変じゃない?」
 この真綾もオタク属性はない。それどころかマンガアニメに限らずサブカルには疎い。
 しかし秋葉のことを好きなあまり、話についていけるようにとある程度は覚えた。
 ちなみに入学当初はお下げ髪だったのだが、秋葉に恋して彼の趣味に合わせてアニメっぽくツインテールにしたくらいである。
「なんだって?」
 指摘されて改めて見る。
「本当だ。(禁則事項です)で作られたニセモノだ」
 こうなると逆に怒りが湧き上がる。
「汚い…なんて汚い。クリエイターたちの智恵と愛の結晶であるキャラをパクってもうけようなんて。そんなものは全て万死に値する! 絶望した! 偽者に騙された自分に絶望した!
 コンボ技だった(笑)

 校舎内には多くの生徒がいた。
 授業を中断して経緯を見守っている。
 そしてその中には……

「いつき。大丈夫?」
 心配そうな七音の表情。いつきとしては複雑だった。
 身を案じてくれて入るが、それは恐らく女の自分に対して。
 男の自分は幼馴染みから進展できないままだと。
 それでもいいと覚悟したつもりで女としてこの場にいたが。
「ふん。いいぞ。女なら二人がかりでもな」
 実は以前の屈辱というのはこれとほぼ同じケース。
 入学式を急襲したら迎え撃ったのがいつき。
 しかしそのころはブラジャーに抵抗がありしていなかったために胸が揺れて苦戦した。
 それを七音が助けに入って逆転したのである。
 さすがに既に巨乳として知られたものをいきなり貧乳に変化させられなかったから苦戦した。
 今度は体育の授業中。スポーツブラで固定されている。
 それを倒すことで春日としては雪辱とするつもりであった。
「だったらいくわよ」
 七音のビンタを見舞いながらの前身が始る。スタッカートと名づけている。
 それは余裕でかわしていた春日だが
「スタークラッシュ」
 いつきの放つ無数の蹴りには捕まった。
「いくぞ。七音」「ええ。いつき」
 二人でとどめに行く。

「バカにしおって」
 夏木はチェーンをぶるんと震わせる。縦方向の動きで真紀は虚を突かれた。
「あっ」
 その身にチェーンが巻きつけられる。
 このまま空中に舞い上げ、そして地面に叩きつけるのが必殺技。エレファントノーズだった。
 それの阻止か。あるいは真紀をおとりにした形か。
 和樹が夏木にダッシュする。助走をつけてジャンプ。空中でひねりを加えてコークスクリューのように夏木の腹部にキックを見舞う。
「タートルヘッド」
「ぐあっ」
 さすがにまともに食らったらたまらずチェーンを手放して真紀は解放される。
 そしてのけぞった夏木を抱える和樹。
「アタイにもやらせろ」
 二人がかりで巨体を持ち上げる。

 姫乃自身が攻撃を仕掛けたことで小十郎は攻撃に転じられた。
 それだけなら五分五分だが、姫乃が時折矢を放ち牽制する。
 そのため小十郎だけ相手すればいい訳ではない。
(ちっ。姫さんを狙ったのが仇になったか)
 鬱陶しく感じた秋本は手段を変更した。
 姫乃を倒して小十郎の怒りを誘う手に。
 そうすれば心行くまで一対一の闘いが出来ると。

 何度目かの小十郎の攻撃をブロッキングして、姫乃に向かってジャンプする。
 だが姫乃は弓ではなくいつの間にかなぎなたに持ち替えていた。
 もちろんこれも姫神が瞬時に得物を入れ替えたからである。
 そして下から上に振るう薙刀を物の見事に食らってしまう。
「小十郎様」
「姫。共に参りましょう」
「はい」
 二人がかりの攻撃でとどめに。

 最強の盾から一転して攻撃目標に。
 秋葉の攻撃は熾烈を極めた。
 正確には冬野というよりパチモンTシャツに対してである。
「許せない。こんなニセモノ。消し去ってやる。ジェノキラーとまで言われたこの僕が」
 誰も呼んでないって。

 元々奇襲を得意とする冬野。反面真正面からこられるともろい部分がある。
 特にこうやって怒りに燃えているような油断しそうにない相手はやりにくい。

「秋葉君。あなたと、合体したい」
 秋葉が入り浸っているマン研で吹き込まれた台詞を口にする真綾。
「真綾。俺と合体しろーっ」
 意思の疎通ははかれているのだが本来アニメに疎い冬野にはエッチな意味に取れて仕方なかった。
 集中が途切れたせいか攻撃が当りだす。
 そして二人が自分に向けて気を練っているのを見て口にしていたのが「合体攻撃」の意味とさとるが、そのときにはもう逃げる体力も残ってなかった。

 その場の誰もが悪寒を感じた。とてつもない殺気を。
 それゆえ愛魅磨学園サイドは攻撃のチャンスを逸してしまい、悪漢高校サイドも一瞬は気をとられるが逃げ出した。

 校舎から学園長がゆっくりと校庭に歩いてくる。
 それに対して総番も歩み寄る。
 五メートルほどの距離を置いて向かい合う。
「今の殺気は誰だ? 貴様ではないだろう」
「親に向かって貴様なんていっちゃダメよ」
「ふん。そんななりになる前なら以前同様に『オヤジ』とも呼んだがな」
「これは私の意志でやっていることよ。誰にも口出しは許さないわ」
「その言葉遣いをやめろ。虫唾が走る」
「すばる。私はあなたをそんな偏見を持つ子に育てた覚えはないわ」
「親がオカマになった時の絶望を貴様は知っているのか? ぐれるには充分な理由と思わんか?」

 新 半兵衛。愛魅磨学園最高責任者。
 本来は50代の男性なのだが、その強固な意志で二十代後半の美女の姿である。
 なおこの姿になってからの俗称は新 舞(まい)。
 生徒たちは学園長の真実を知っている。
 女子の一部などは気さくに「まいちゃん」と呼ぶほどである。

 そしてそんな「彼女」故にいつきの事情を理解し、女子としての入学を許可した。
 もっとも玉石混合のこの学園。
 一芸に秀でていれば無試験で入学できるため行き場を失った不良が来てもいたが、自分から逃げ出してしまうか、更生して真面目になるか。
 さらには学園長自ら指導した結果「同じ道」を歩むことになった元・男子生徒が二年や三年にもいるという。
 もちろん女子扱いで在籍だ。

「お母さん。そんな子に生んだ覚えはありません。お尻を叩かないといけないわね」
「誰を産めるんだ。だが体罰上等。いくぞ」
 とうとう親子…いや。母子喧嘩になってしまった。
 すっかり興ざめした四季隊といつきたち。
 そしてその関心は「殺気の主」に向けられていた。

 校舎内。捻挫のため体育を欠席した愛亜。
 だがその表情がおかしい。
 顔つきは女のそれだが表情がまるで男なのだ。
(くそう。忌々しい。楽しそうな殺し合いをしているというのに怪我をしているとはな)
 この思いは愛亜のものではない。しかしある意味では彼女自身の思いだ。
(それにしても相変わらずこの娘は自分を押し殺しているようだな。おかげでこの私が生まれたのだから感謝だが)
 彼女。内藤愛亜は多くのものを求められていた。
 そして同時に多くの禁忌を課せられていた。
 その全てに答えていたが、やがて彼女の中の「ゴミ捨て場」から正反対の人格が生まれた。
 性別すら逆である。
 そして暴力と殺人をこよなく愛する存在は、同時に暴力の権化であるマリオネットも伴っていた。
 その名はゴーストフェイスキラー。そしてそのもう一人の彼女。
 校庭の乱闘を凍らせるほどの殺気を放ったその「男」の名は
(それにしてもやつらに当てられてますます破壊衝動が強くなったぞ。この斑信二郎は)
 斑信二郎。それが彼女の悪の人格の名前だった。
 最終的には母体とも言うべき愛亜を殺し、適当な男の肉体を奪うつもりであるがその時期はまだ来ない。
 斑は眠りにつく。そして入れ替わりに目覚めた愛亜には見学をしていたニセの記憶が残っていた。

 その夜。本来の少年の姿に戻った樹。ベッドに仰向けになり天井を見上げて考えている。
(七音のやつ、やっぱり女の俺にだけ関心持っているよな。わかってはいたつもりだけどなぁ)
 いっそ男として告白をしようかと考えなくはない。
 しかしやはり玉砕が恐い。
 それよりは女のままなら結ばれないまでも、男では入れないところまで踏み込める。
 結局ぬるま湯を選択してしまう。

(オレ、七音を諦めない限り女でい続けないといけないんだな。このまま本当の女になっちゃったら…)
 幾度となく感じた不安が彼を悩ませる。
 だがいつしか眠りに落ちる。
 朝が来ればまた少女の姿になる。
 つかの間の「本来の自分」だった。


製作秘話

「PanicPanic」のみずきの変身のキーを変更すれば「オリジナル」といえるのではないか。
 そう思ってかいたのが本作です。
 それに伴い極力商業作品の匂いを消す方向で。
 たださすがにマリオネットはそのままで。

 それと今度は時代背景も21世紀で。

 それではキャラごとの違いを。

 みずきならぬ赤星いつき。
 それぞれ名前が違うのは後述する姫乃の件と、オリジナルとの区別のため。
 水とお湯に代わる変身キーが思いつかず。
 結局自分の意思で変身と。
 若干衣類の助けを借りているのは「着せ替え少年」ですが、自作だからOKと。
 そもそもこの展開事態がオリジナルの二世のそれに近いし。

 冒頭のシャワーは水もお湯もキーではないと知らしめるため。

 そのあおりで「本当にそっちの趣味の人」になった及川七音。
 それ以外は変更はない筈なんですが、なんだか一番オリジナルとかけ離れている気が。

 名前が問答無用の感のある上条秋葉。オリジナルの明という名前を捩るうちにここにたどり着いて。
 あまり変更はないけどオリジナルか特撮に走りすぎて、それはもうPLSの風見裕生に行っているのでもう少しアニメ色を出してみました。
 ネットにケータイと彼が一番現代っぽい。

 若葉真綾は転校生ではなく最初からこの学園に。
 今なら間違いなくツインテールに。
 バトルシーンで入れられませんでしたが、トリプルチェンジは健在です。
 技に関してはほぼオリジナルのまま。
「聖闘士星矢」に対する「冥王伝説」というイメージですね。

 榊原和樹は最初からスケベがばれているくらいですね。

 真紀は真理の不幸な生い立ちを繰り返させないでというところから。
 だから正反対に溺愛からああなっちゃったと。
 なお金髪はオリジナル同様に自前です。

 こっちの世界ではマチルダさん健在。
 オリジナルで死んだりしたキャラは基本的に同じ名前で。
 だからゆかりもそのままで。罪滅ぼしもありまして。

 そしてマチルダさんと村上会長は結構な年ですがラブラブ夫婦です(笑)

 風間小十郎。名前以外に変更点は登校手段くらい。
 あの馬、疾風は下校時間になると単独で迎えに来ます。

 本当は小十郎もマリオネットマスターですが設定は出来てなくて。

 北条姫乃も名前だけ。
 オリジナルはもろに「風魔の小次郎」のキャラと同じで、とにかく名前を変更したかった。
 しかし名前だけで終わりましたね。

 他では今度は妬む必要がないため薫は最初から女の子。
 オリジナルで死んだ本物の中尾先生が生きているのも共に罪滅ぼしで。

 無限塾の名前が実在していたので学園の名も変更。
 無限からメビウスという連想です。

 四季隊の名前変更はむしろ初期案をここでやってみたというだけ。

 もろに「魁 男塾」の江田島平八そのものの大河原塾長。
 もちろん学園長とはまったくの別人です。
 何でああなったかというといつきが女子で通すのに対して理解を示すために本人もというと、息子である総番がぐれた理由で。
 新は「New」半兵衛の「半」は「Half」というネーミング。
 俗称は「新米」の洒落。

 そのあおりで総番も大河原慎とは別人で。

 そして斑信二郎。
 今回の彼は少女の中から生じた人格という設定です。
 まぁGIOGIOのディアボロとドッピオの関係で。
 それでも「日常に潜む悪意」というのは出来たと思い。

 もちろんその「悪夢」からナイトメアで内藤愛亜です。

 ギャルゲーで言うところの「二周目」を書いたらこんな感じかと思って書いて見ました。
 だから「改」「パイロット版」です。
 はっきりしてないキャラはとりあえずはオリジナルと同じと思ってくれてもいいでしょう。
 赤星秀樹・瑞枝とか。

お読みいただきましてありがとうございます。

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