第15話「Just One Victory」Part4

「何してんのよ。このばかっ」
 パァンっ。
 いうや否や小気味よい「ハリセン」の音が鳴り響く。
 その流れも海老沢瑠美奈が右手を差しだすと、後輩の高須奈緒美が音もなく差し出してきれいとすら言える動作だった。
 瑠美奈。奈緒美と辻。土師の四人は今、それぞれの陣地から離れたところにいた。

「いってぇなぁ…高嶺まりあを困らせるようにしたのになんで叩かれるんだよ」
 「実行犯」の辻が後頭部をさすりながらいう。
 背の高い辻を女子として普通の背丈の瑠美奈が叩いたためこうなった。
 さすがに顔面は避けたので後頭部。
「それで水木君を困らせてりゃ世話ないわ」

 文化祭に不参加のクラブは廃部。
 そこで辻はまりあの所属するテニス部を廃部に追い込むべく、テニス部員を騎馬戦で狙い撃ちしていた。
 ところかその巻き添えで軽音楽部のメンバーを、優介以外の全員を負傷させてしまった。
 おまけにテニス部は大所帯なので何人かの男子部員が負傷しても、文化祭不参加という事態にはならないので見当違いの襲撃もいいいところである。
 まさに誤爆。だから叩かれた。
「しかし瑠美奈さん。軽音楽部の廃部で水木先輩がフリーになれば、あの人を生徒会に招き入れしやすくなりますよ」
 クールな土師が、この時は妙に熱っぽくいう。
「……それもそうかしら?」
 それであっさり怒りの解けた瑠美奈である。
「まりあを困らせる」より「優介に接近する」のほうが優位になっている。
 それが最終的にまりあをなぶるのにもつながるなら一石二鳥というものでもある。

「いい友達を持ったわね。辻。それにしても土師がこんなに熱心にかばうなんてね」
 瑠美奈の見当違いだった。土師は別に辻をかばったのではない。
(あの人が瑠美奈様と近くなれば僕とも…知らなかった…あんな世界があったのか…)
 騎馬戦の一件で「目覚めてしまった」土師だった。

 困った事態はまりあの方にも起きていた。詩穂理が行方不明なのだ。
「詩穂ちゃーん」
「詩穂理さぁーんっ」
 トイレ。教室。保健室まで探したが見当たらない。
「シホ。どこに行きやがった?」
「あんたがあんな恥ずかしい声を出させるからでしょ」
 なぎさに突っ込まれる裕生。
 そう。裕生のマッサージの際に盛大に「色っぽい声」を挙げてしまった彼女は、いつの間にか陣地から消えていた。
 トイレなどで校内に入ることはできる。だから中を探したが見つからない。
 また競技にも出るのでなかなか捜索に専念できないのもある。

 では当人はどこにいたか?
 それは体育準備室。
 見つかりそうだが、使うものはほとんど出してある。だから逆に体育祭の間は出入りがない。
 そしてスポーツが壊滅的な本人のイメージから「ここはない」と盲点になっていた。
 場所に合わせたわけではあるまいが「体育ずわり」で詩穂理は一人頬を赤くしていた。
(人前であんな声を…いやぁあぁぁあっ。恥ずかしくてもうみんなの前に出られない)
 何しろ毎日顔を合わせるクラスメートである。その前で盛大に「エロ声」を発してしまったのだ。
 思わずここに逃げてしまった。
 理論派の彼女が「何も考えない」で飛び込んだ。
 もちろん、自分が穴をあけた出場競技のことも頭にない。
 今ただ、このむやみに熱い頬のほてりを鎮めたいだけだった。

 二人の教師が探索を続け、生徒はそのまま競技は進められる。

 二年の綱引きだ。A組女子対B組女子。そしてC組女子対D組女子。
 この勝った方同志が対戦して一位と二位が決まる。
 負けた同志も戦い勝った方が三位。

 ところが対戦相手が悪かった。
 相手陣営には芦谷あすかがいた。
 女子空手部の鬼主将である。
「ふん。足では負けたが力ではどうかな?」
 自信満々である。
 どちらかというと不機嫌な表情の多い彼女が、ここでは妙に生き生きとしている。
「一対一じゃ難しいけど団体戦だよ。あんた一人の力じゃどうしようもないよ」
 こちらも血が騒ぐのか受けて立つなぎさ。
 視殺戦を繰り広げる。とてもではないが美少女同士の所業ではない。
 別にこの二人は険悪な関係ではない。
 だが例え「陸上」と「空手」でジャンルは違えど同じスポーツ少女。
「負けたくない」という思いはある。

 クラスメイトはハラハラしてみているが、時間も迫り双方それぞれの位置に戻る。
 まるでボクシングでそれぞれのコーナーに戻るかのようだ。
「なぎささん。大丈夫?」
 思わず尋ねるまりあ。
「平気だよ。それより気合い入れていくよ」
「えー。自信ない」
 スポーツは万能だし、英才教育も受けてきたが、こういう闘志を前面に出すものとなると温室育ちの彼女には若干きつい。
「何すっとぼけたこと言ってんだよ。男だろ。気合入れな。まり太」
「だからそれは忘れてと」
 抗議をするが戦闘モードのなぎさは聞く耳持たず。
 完全に体育会系のノリになっている。

 D組女子はなぎさ。C組女子はあすかが先頭に立つ。
 互いに綱を握る。そしてピストルが鳴ったとたんに、C組は力を緩めた。
「わわっ」
 フェイントは警戒していたものの、まさか号令と同時とはおもわず。
 半ば条件反射で号令と同時に引っ張ったところに「支え」となる相手の力が入ってない。
 結果として全員見事に尻もちをついた。
「いったぁーいっ」
 大半は綱を離している。握っているものも力は入ってない。
 それをやすやすと引っ張るC組。D組はあわてて抑えにかかるが時すでに遅し。
 3メーターは持っていかれた。
 こうなるともはや無駄だ。
 懸命に引っ張るがC組も余裕だ。
 そして時間切れ。C組の勝利。
「汚いぞ」
「私を『押す』だけと侮っていたのではないか? それが貴様の油断だ」
 柔道は「引く」力を要求されるが、空手は「押す」力だ。
 それを言っている。
 もちろんストレートな意味ではない。
『力押し』ではなく『戦略』で負けた。
 あすかに対するイメージ。その思い込みでまんまとやられた。
 確かにこんな手は考えてなかった。
 腹立たしいものの負けを認めるしかない。
 なぎさ以外の女子はそこまでは憤慨してない。
 打ち付けた腰の回復で手いっぱいだ。

 結局、この対戦で勢いのついたC組は決勝でも勝ち上がり優勝。
 逆にここでダメージを受けたD組は、三位決定戦も敗退して無得点。だが

「あわわわわわ………」
 二年男子の綱引きにそのまま移行する。
 組み合わせは女子と同じ。
 D組先頭は大地大樹だった。
 195センチ100キロの巨漢。しかもいかつい顔。
 これが眼前にいるだけでも脅威である。
 C組男子は戦う前に戦意喪失していた。
 これで勝負になるはずがない。
 女子とは反対に優勝して挽回。仇を討った。

 体育用具室の詩穂理は未だに復帰できないでいた。
 今までにも河原で上半身裸になったり、お姫様抱っこで商店街を突っ切ったり、ブックトレードフェスティバルではどぎつい悪役メイクのコスプレして人前に出たり、色々と恥ずかしい思いはしていたが、全校生徒の前というのはさすがになかった。
 その前で「嬌声」を上げたのである。
 さすがに顔を出しにくい。
 本当は逃げたかったが、校門は教師が不審者対策と同時にエスケイプ防止で番をしている。
 そのまま陣地に戻されるのが目に見えている。
 詩穂理の運動神経では塀を乗り越えてというのは無理。
 ならばこうしてここでやり過ごすのみ。

 そのまま詩穂理が戻ってこないままでとうとうリレーの順番になる。
 この時点でトップは全B組。瑠美奈のいるチームだ。
 15点差でまりあのいる全D組。
 つまりラストのリレーで優勝すれば体育祭そのものも逆転優勝。
 だがメンバーが足りない。
「どうする? 誰か代役立てないと」
 なぎさの言うとおりである。
 しかし人数に余裕がない。
 四人一組のリレー。しかし女子は17〜8名というクラスが大半。
 一人だけ補欠にするくらいよりはと、全員参加になるように第5チームがある。
 何名かは二度走る。
 言い換えればポイントゲッターを二度投入できる。
 だから俊足のなぎさ。そしてまりあが最初と最後に出場である。
 ならば代役は逆に最後に走る面々からだ。

「理子さん。お願いできる?」
「私?」
 まりあの意図が読めない。理子は怪訝な表情をする。
「どうして?」
「一緒に頑張りたいの」
「それならあっちの長谷部さんにしたら?」
 ショートカットの少女を指し示す。
「里緒さんは確かに速いわ」
 長谷部里緒。高嶺まりあと同じテニス部所属。
 だからそのフットワークをまりあは知っている。
「でも部活中に腕を怪我をしたの」
 いくら脚力を競うと言えど腕を振るのだ。影響はある。
「なるほどね」
 負傷ということなら筋は通る。

「それにね…あなたともお友達になりたいわ」
 より多くの競技を共に出てきずなを強める。
 ならばこの選択も理解できる。
 反面わからないのが自分にかかわること。
 どうしてまりあの好きな少年が関心を寄せる自分に、活躍の場を増やすのか。
 意図せずまりあが答えを言う。
「なんでかしらね? どこか近いものを感じるの。似た思いというか」
 まだ理解できない理子。しかし漠然と見えてきた。

「とにかく頑張りましょ。優介に勝利をプレゼントするの」

 理子はかろうじて動揺を顔に出さなかった。
 この言葉でかなり見えてしまったのだ。
 まりあとどこが近いのか。
 それを認識したら不意に協力してもいいような気がしてきた。
 この思いをはっきりさせる意味でも。
「そうね。いいウォーミングアップにはなりそうだわ」
 意地でクールさを装う。
「本来は男」の立場としては認めたくなかった思いだ。

 体育用具室。やっと詩穂理は落ち着いてきた。
 冷静になると競技をすっぽかしたのが申し訳なくなってきた。
 その耳にアナウンスが流れてくる。
「ただいまから、最終競技。全校生徒の400メートルリレーが始まります」
(ああ。もうそんな時間!? でも…今更どんな顔して逢いに行けばいいの?)
 今度はその思い故、戻れなかった。

 一学年男子も女子も5チームずつ。それが三学年。
 都合30チームが走る400メートルリレー。
 単純にトラックを100メートルずつバトンリレーをしていく。
 1年女子・男子。2年女子・男子。3年女子・男子の順である。
 1年の男子がすでに半分は走って、2年女子が待機エリアに行く。
「詩穂ちゃん…間に合わなかったね」
「いないのは仕方ないよ。あたしがその分カバーするから」
 なぎさの言葉を「傲慢」ととるには、あまりに彼女は速すぎた。
「うう。足引っ張ったらごめんね…」
 詩穂理もひどいが美鈴もかなりのものである。
 幼児体型が示すとおり全体的に非力なのである。
「謝る暇があったらウォームアップでもすることね」
 辛辣な理子の言葉。落ち込む美鈴。
「とにかくあなたはきちんとバトンさえ渡してくれればいいわ。だから全力で走りなさい」
「う、うん。それだけなら」
 バトンを渡すだけなら何とかなる。後はこの三人に任せればいい。
 気の小さな美鈴も、これで気楽になった。

 心中でなぎさは首をひねる。
(裸まで見たから確かなはずだけど、こいつ…本当に男なのかなぁ?)
 いうまでもなく理子を評してである。
(いまのってどう見ても男子が女子に対する感じじゃないよね。まるっきり女子。まぁ確かに今は女のようだけど)
 詩穂理ほどではないか自身やまりあを上回る胸元が「女子」をアピールしていた。
「2年女子。そろそろ準備してください」
 体育祭の準備委員の言葉でなぎさの思考は切り替わる。
 すでにアスリートのものだ。
 第一走者。第二走者。第三走者。最終走者(アンカー)がそれぞれの待機位置につく。

「引き続き、2年生の400メートルリレーを行います」
 アナウンスが流れるとうずくまっていた詩穂理は居ても立っても居られない。
 女子からなのは知っている。

 その瞬間にすべてを忘れ、ただ友のもとへと駈けていく。

 2年女子のリーが始まる。
 第一組は美鈴。まりあ。理子。なぎさの組だ。
 緊張の面持ちの美鈴。
 はたから見ても震えているのがわかる。
(うう…怖いよう…)
 自分が足を引っ張るのを恐れて、固まった手足がまるで他人のもののようだった。
(逃げたい…)
 そこまで気持ちは追い込まれたが
「頑張れ!」
 ひときわ大きな、野太い、そして一番聞きたかった声が男子の陣営から聞こえた。
(大ちゃん?)
 声のほうを見る。
 巨漢が全員の目を集めていた。
 無口な男の声援に全員が驚いていた。
 当人はいつもの無表情…やや頬が赤い。
 恥ずかしくても励ますために声を出してくれた。

 美鈴が抱いていた、失敗を気にする『恐れ』が、気持ちにこたえたい『勇気』に変わる。

「位置について」
 スターターピストルが空に向けられる。
 もう美鈴が考えているのはただ一つ。
 手にしたバトンを第二走者・まりあに渡す。それだけだ。
 破裂の音がスタートを告げる。
 火薬のにおいが漂う頃、すでに少女たちはいなかった。
 美鈴も小柄な体を駆使して走る。しかし悲しいかな。脚力に差がある。
 ぐんぐんと差をつけられる。絶望し、泣きたくなって行く。
 それでも走ったのは文字通りまりあが手を差し伸べていたからである。
「まりあちゃん。ごめんなさいっ」
 一番最後でバトンタッチになったことを詫びる美鈴。
「後は任せて」
 そんな暇自体ないが最下位を責めずまりあは走り出す。

 もともとの脚力が優れている。
 テニス部で鍛えてもいる。
 その健脚は一人をとらえ最後尾へと追いやる。
 だが距離が足りない。
 次を抜くのは第三走者に託すしかない。

「理子さん。お願い」
「わかったわっ」
 さすがの理子もこの熱い空気に動かされた。
 斜に構えた態度ではなく、ほとばしる思いのまま走る。それは男としての闘争本能か?
 そして二位に躍り出る。
 だがトップとの差はかなりある状態でアンカーのなぎさに。

「頼むわっ」
「オッケー!」
 リレーも数多く経験している。
 その大半がアンカーだ。
 この程度の差も問題ない。
 オリンピックに出られるとまで言われる俊足はあっという間にトップランナーをとらえる。
 観客の熱狂の中、ゴール前10メートルで抜き去り、終わってみれば独走で1位をとっていた。

 スローダウンして係員の誘導に従いかけたときだ。
 力を抜き損ねた。
 そんな感じで固まっている詩穂理の姿を見た。
「詩穂理? あんた何やってんのさ?」
 二重の意味である。
 姿を消していたことに対するそれと、このポーズである。
 友たちのレースを見届けようと応援しているうちに、熱くなりすぎて戻れなくなったのだ。

 このレースでD組の士気が上がったのか、1位を多数獲得。
 リレーで優勝となり、そのポイントで土壇場で総合優勝を勝ち取った。
 まさに優勝を決めたたった一つの勝利だった。

 体育祭の終わった夕暮れのグラウンド。
 まさしく祭りの後の静寂。
 D組。その2年の陣地。
 大半は引き上げたがまりあたちは残っている。
 その前で頭を下げているのは詩穂理。

 詩穂理は姿を消していたことを詫び、深々と頭を下げる。
 心配かけたこと自体は咎められたが、裕生が自分のせいと庇ったこと。
 そして言葉は悪いが元々戦力としては員数外だったこともあり、そこまで非難はされなかった。
 しかし詩穂理は罪の意識が消えない。

「困ったなぁ。謝ってくれたからもういいのに…」
 体育会系らしい割り切りの速いなぎさの言葉。
 だが詩穂理は自分を許せない。
「なんでもしますから」とまで言う。
 免罪符を求めているのは理解できた。
 しかしそれでも困り果てた一同。

「ねぇ。詩穂理さん。本当に何でもする?」
 まりあが口を開く。
(ああ。また何か思いついたな…)
 もうそんな認識をされているキャラだ。
「はい。できることでしたら」
「それじゃあさ…わたしとバンドやらない?
「…………はい?」
 絶句したのは詩穂理だけではなくその場の全員だ。
 ただし『当事者』の優介は別の意味で。

 まりあは、優介の所属する軽音楽部のメンバーがこの体育祭で負傷して、文化祭に出られなくなったこと。
 そのため軽音楽部が廃部の危機にさらされていることを説明した。
 文化祭不参加は廃部という通達がすでに出ていた。
 文科系クラブとなるとなおさらである。
「話は分かりましたけど、どうして私なんです」
「前に聞いたわよ。中学の時ベースを弾いていたと」
 確かに話した。それは理子がおのれの正体を語るときに、場所として提供された軽音楽部のスタジオでの余談という形。
「でもでも、それからは全く弾いてないし、それに私左利きですよ」
 左利き用の弦楽器は右利き用に比べて希少だ。それをたてにまりあに諦めさせようとしている。
「雪乃さん。うちのリース会社で楽器も取り扱ってたわよね」
「はい。至急手配いたします」
 傍らにいたメイドは返事を終えるとすぐさま携帯電話を取り出した。
「はぁ」
 このお嬢様がそんな程度で諦めるはずがない。
 それを思い知った詩穂理はため息をつく。
(大勢の人の前で演奏するの? 仕方ないわ。今回の罪滅ぼし。エッチな声よりはましよ)
 自分で自分を説得していた。

「ブランクがあるなら練習で埋めるわ。それに一人じゃないわ。わたしもキーボードで参加するわ。いいでしょ。ね。優介」
 ここに至らなくてもまりあの意図は見え見えだった。
 廃部の危機を救い『恩を売る』
 いや。単純にその練習を口実に長い時間を優介とともにいたいだけかも。

「ドラムはどうすんだよ?」
 もちろん優介はとっくに見抜いている。つっけんどんに言う。
 不機嫌なのはまりあの思惑通りというところ。
 しかしそれに頼らないと廃部が待っている。
 実は優介の歌は「非常に残念」で、弾き語りの単独参加は難しいものがあった。
 一応は廃部は免れるかもしれないが、自分一人で軽音部のレベルを低く見せかねない。
 それよりは代役立ててでもバンドのほうがよかった。
 少なくともまりあのキーボードは以前に見たとき様になっていた。
 練習で何とかものにはなるだろう。

「それも当てがあるわ」
 まりあはその場にいた理子のところに行き、後ろからその両肩をつかむ。
「天才女子高生ドラマーならここに」
「わ、私も?」
 こちらはなにしろ一度見せている。腕は確かだ。

「はぁ……」
 癪だがまりあの言うととりにするしかない。
 その割にはあまり嫌でもないのに自分でも戸惑う優介。
「悪い。理子。手伝ってくれない?」
 彼自身が直接助っ人を依頼する。
 真正面から見据えられた理子は、不意にそっぽを向く。
 拒絶かと一同は思ったが「いいわよ。手伝ってあげる」
 そっぽを向いた方には夕日。それが染めたからか。あるいは別の理由か頬が赤い。
(なんでなの? 困っている優介を助けてあげたい気持ちが…)
 だから「彼女」をしてステージに立つ決意をさせた。

 軽音部存続にはこの手しかない。
 これもまた『たった一つの勝利』だった。

次回予告

 学園祭ライブに向けて猛練習を開始したまりあたち。
 一方、双葉は兄へと募る思いが高まっていく。
 血のつながりがないことを知らない大地兄妹は…
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 恋せよ乙女。愛せよ少年。


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