「いよいよ狂将さまが出陣かい?」
 セーラたちが苦戦するさなかと同じころの都内。警視庁からさほど離れてない場所の路上。
 まるで女性のような美貌の男が猟犬のような目をした男に軽い口調で尋ねる。
「こんなところで話しかけるな。そうでなくても最近はお前とギルはマークされている」
 死将・アヌの憑いた軽部が麗将・ライと交じり合った秋野をとがめる。
「情報屋と言うことにでもしておいてくれよ」
「ふん。詐欺師だけに口は達者だな」
 この発言は軽部ではない。まだ暑いのに皮ジャンを着た男が二人に話しかけた。
 もっともブーツにバイクグローブ。オートバイに乗るのであればこの装備ももっともである。
 レイバンのサングラスで目元はわからないがニヤニヤとしているのは判る。
 大柄である。リーゼントがよく似合っていた。
「容疑はかかっても逮捕はされてないよ。それで、何か知っているのかい? イグレ」
「中屋敷純郎だろ。この姿の時は」
「ふっ。はぐれ者の名前なんてどうでもいいか」
 気取り屋の秋野がはき捨てるようにいう。
「そのはぐれものを六人がかりで。しかも闇討ちしたくせにな」
 中屋敷は挑発するように言う。いつもは飄々とした秋野も険しい表情に。
「また消してやろうか? サザもルコもスストもヨリシロと分離してしまったがもっと相性のいい相手を見つけさえすればすぐに復活してくる。そうしたらお前なんか」
「なんだ? 知らないのか? 奴らの魂がどうなったか」
「よせ。イグレ」
 路上というのにアマッドネスとしての名前を口走る軽部。それほど拙いことを言おうとしている。

戦乙女セーラ

EPISODE38「賢者」


 埼玉の山中。青ざめるギル。
「バカな? はるかに深く埋めたはず。例えこの笛の音が届いても蘇られるはずが…そもそも貴様の魂と合致するヨリシロがこの腐れきった世の中にいるはずがない」
「あまり人間を見くびらないことだ。邪心に満ちたものばかりでもない」
「人にそんな存在が……人?」
 突然ギルが哄笑する。
「ふはははは。スズ? スズだと? その姿のどこがだ。その惨めな姿はどうだ。まさに人間のようではないか。栄光あるアマッドネスの大賢者とまで言われた貴様が惨めなものよ」
 おかしくてたまらない。それとは違う。無理に笑って不安を吹き飛ばそうというのが本音。
 何しろかつては六人がかりで立ち向かって疲弊させただけ。手傷すら負わせていないのだ。そして自らは斬り捨てられている。苦手意識もある。
 だから相手は完全ではないと思い込むことで精神の平穏を保とうとしていた。
 それに対してスズは極めて落ち着いている。大賢者とまで呼ばれた者の風格は伊達ではない。
「そうだな。胸から下は人のままだ。翅もない。顔すらこんな仮面のようだ」
 綺麗だが大人びた低い声で冷静にいうスズ。
「だがこれでいい。私は貴様らのような『化け物』の姿はもうとらん。人として戦うから人に近い姿になったのだ」
「戯言を。大方は不完全な覚醒。融合だったのだろう。だからそんな中途半端。違うか?」
 ギルのいう通りでもあった。スズの言葉はそれをごまかす「はったり」の側面もあった。
 ただし彼女の言うこともまた真実。
「ふん。それよりも驚いたな。一度死んでもこれだけの愚行を繰り返すとは」
「蘇ったばかりでなぜわかる?」
 ここは冷静だったギル。
「そうか。そのヨリシロ。誰かは知らぬがわれらとかかわりがあるか」
「私が誰であろうと関係ない。問題なのは貴様らの過ちだ」
「ならばとめるか? 貴様の嫌う戦いで」
 暴力を暴力でとめる。大いなる矛盾。しかし
「既にこの拳は血塗られている。貴様らに向けるのにはためらう道理なし」
 戦意を形に示すべく剣先をギルに向ける。
「ふん。どちらにせよ人の部分が大きいならかつてほどの強さはない。あの翅を見ろ」
 スズの脅威はその飛翔能力にもあった。何しろ高速飛行をするルコでさえ敗れたほどだ。
 しかし今は肝心の翅がない。飛べないスズになら勝てるとギルは思った。
「やれ。まずは奴から倒せ」
 指示を受けてビートルとスタッグが襲い掛かる。
 ギルの切り札である魔笛だがスズもまた一応はアマッドネス。
 つまりギラとカーサだけでなくスズの戦闘意欲まで高揚させてしまうので使えない。
 もしもセーラとブレイザが無事なら笛で暴走させて混乱に乗じる手もあったが気を失っている。
 よりによって自身の魔笛がその状態に追い込んでいた。
 結局は2人の守護者に頼らざるを得ない。

 都内。青ざめている秋野。衝撃的な事実を告げた中屋敷はニヤニヤしている。
「そ、そんなバカな。奴らはもう…」
「ああ。クイーンに『食われて』いるはずさ」
 アマッドネスの異形に転じる力はクイーンから与えられた魔力によるものである。
 そして女王自身は戦乙女に受けたダメージゆえ完全復活には程遠い。だから力を取り戻そうとしていた。
「嘘だろ。アヌ。こいつの嫌がらせだろ」
 いつもの余裕がかけらもない秋野。それに対して軽部は首を横に振る。
「今まで倒されたアマッドネスに与えていた魔力を取り込むことでだいぶクイーンは復調してきている。だがまだ足りない。だからギルはまだ埋もれている魂を掘り起こしに出向いた」
 彼はそこまでいうと遠くへと視線を送る。その方角にはとある病院が。
「そ、それじゃスストたちは?」
 まったく余裕のなくなった秋野。
「ああ。今度こそ完全にくたばっている。ま、一度死んでいるんだ。ちょっとでも生き帰れていいじゃねぇか」
 これは中屋敷ことイグレの言葉。
「お前も気をつけるんだな。今度死んだらもうだめだぜ」
 その言葉で仮に死んでも別の肉体に取り付けばいいと気軽に考えていた秋野…ライは蒼白になる。
「そんなことを言いに来たのか?」
 既にその覚悟は出来ていた軽部ことアヌは騒がない。
「そうだな。本題にはいるか」
 真正面から軽部を見据える。
「俺を使えよ。108の魔星も残りわずかだ。ギルが掘り起こしているのはそれに入れず捨て置かれたくずども。そんな奴らでは戦力になるまい」
 図星だった。108と言うのはあくまでミュスアシを実際に攻めた敵兵の数。
 実際にはその前に倒れていた者たちもいる。合計で200を上回る。
 だが大多数は単純な物理攻撃で倒される程度の「人間より多少はまし」と言う程度の異形だった。
 はっきり言えば女王が復活のために取り込む目的でギルは下級戦士の墓を暴きに出向いた。

 とある病院。人として眠る女王。その顔色が見る見るうちによくなっていく。
 彼女は意識しないままにまるで植物の根が水を吸い上げるように下級戦士の魔力を取り込んでいた。

 中屋敷がやっと本題に入る。
「そろそろ手を打たないか? 闇討ちは水に流してやるからさ」
 上へのし上がろうというシンプルな願いだった。
「断る。お前のような危険な奴。われら六武衆の一員に出来るか」
 下手したらガラ。そしてクイーンにすら手を出しかねない。
 だから六武衆総出で闇討ちで葬った。
「六? 三人だろうが」
「一人でも十分だ。ガラ様には私一人がいればいい。私にとってもガラ様がすべてだ」
 忠誠心は女王より将軍に向けられていた。
「おーお。相変わらずお熱いことで」
 再びからかうようにいう。あろうことか頬を染める「アヌ」そして「軽部」
(そうだ。誰も私とガラ様の間には入り込めない。例えクイーンであっても)
 確かに忠心というよりは「恋している」ような表情だった。

 そのとき中屋敷の携帯電話が鳴った。
「ちっ」
 彼は舌打ちしてそれをとり通話。終わらせて
「話は後だ。表稼業でお呼びだからな」
「ああ。そういや一斉捜査だったな」
「そう言うこった」
 中屋敷はふざけて警察手帳を出して見せる。
 軽部や三田村同様の警察官が今の社会的身分だ。
 中屋敷が去っても秋野は青ざめたままだった。

 スズメバチの異形だからかまさに「蝶のように舞い蜂のように刺す」という戦い方だ。
 カーサの槍もギラの刀も獲物を捕らえられずにむなしく空を切り裂く。
 しかしスズの方も決定打がない。二体相手にかわすのが精一杯に見える。
(ならば)
 スズはカーサの槍を巧みにさばきながら背中をギラに向ける。
(がら空きだ)
 ギラは二本の刀をはさみのように交錯させる。クワガタのあごのように挟み込む目的だ。
 固定したところをカーサの槍が貫く。だが事はそれほど単純でもない。
(くくく。寸前で身をかわして私の槍でギラを貫かせ)
(あわよくばこの剣でカーサを斬りつけさせ同士討ちを狙っているのだろう。だが)
 コンビネーションは抜群。その手の状況の想定は出来ている。
 最初からその交錯した刀を狙って貫く。
 万が一かわされてもパートナーを刺し貫くことはない。だからためらわずに槍を突いた。
 そして予測どおりスズはかわした。
 右か左ならそのままギラの刀のどちらかが斬りつける。それ以外ならそのままカーサの槍が再び襲い掛かる。
 逆手にとったはずだった。
 なんとスズはその槍の柄に飛び乗った。恐るべき身軽さ。
「飛べないなら跳ぶまで」
 皮肉にもギラの双剣がカーサの槍を支えているので安定している。
 そして槍で押さえられて「はさみ」を解除できない。
「こ、こいつ!?」
 そのままスズはカーサの方へと駆けよる。
 そしてカーサが槍を手放す前に顔面にひざを追いきり打ちつけ鼻の骨を砕く。
「ぐあっ」
 これはいくらなんでもたまらずひるむ。そこへ追い討ちでスズの剣が腹部を十字に切り裂く。
 甲は頑強でも腹部は違う。戦闘不能に。
「カーサ」
 ギラが援護しようにもその獲物では届かない。その目前でカーサに弾丸が雨あられと浴びせられる。
「なに?」
 スズにばかり気をとられていた。ギルが弾丸の出所を見るとジャンスが復帰していた。
 いつの間にか超変身までしてロリータフォームで乱射していた。
「ぐおおおおおっ」
 断末魔の叫びをあげてカブトムシの異形が爆裂する。
「お、おのれ。よくもカーサを」
 相棒を失い激昂するクワガタムシの異形。だが時間経過で復活したのはジャンスだけではない。

「「変身!」」

 失念していた。これまたいつの間にか気絶から目覚めた清良と礼が変身。
 即座にキャストオフ。そしてブレイザはスタッグアマッドネスに。
 セーラは「ホーネットアマッドネス」に突進する。
「セーラさん。そっちは違う!」
 事情を知るジャンスが制止する。
「なにがだよ? アマッドネスじゃねぇか」
 目が覚めたら異形が増えていた。そういう認識である。
 さらに言うならギルの魔笛の影響が両者共に残っていた。だからこんな不意打ちに近い戦い方だ。

 そのギルだがビートルアマッドネスのカーサが倒された事で不利を悟る。
(くっ。この姿で魔笛を奏でるのは隙を作るだけだ。ジャンスがフリーだからな。ならば間合いをとるまで)
 遠方から魔笛による攻撃を試みるべくギルは早々に逃げ出した。
「あっ。こら」
 セーラと違いロリータフォームやアリスフォームを長時間維持出来ないジャンスはヴァルキリアフォームになっていた。
 あわてて二丁拳銃を撃つがまんまと逃げられた。

「だああああっ」
 ブレイザ・ガイアフォームが力任せに斬馬刀を振り下ろす。
 攻防一体の双剣で受け止めようとしたギラだが過信だったようだ。
 剣もろとも唐竹割りに真っ二つ。直後に爆発した。
 残るはセーラとスズの戦い。

 セーラは拳を見舞ったと思ったら足技。場合によっては背後をとって投げ技まで試みようとしている。
 それを軽やかにかわし続けるスズ。しかし足止めを受けてしまいギルの逃亡を許してしまった。
「よせ。ギルが逃げてしまうぞ」
「なにを寝言を。貴様もアマッドネスだろうが」
 過剰に引き上げられた闘争本能で聞く耳を持たないセーラ。
 すさまじい数の拳を繰り出す。
 それを見事に捌ききるスズ。受け流すと言う感じである。
「この」
 だがギルの笛の音が途絶えてだんだんに精神の女性化が始まっていた。
 そうなると冷静さが戻ってくる。
(あれ? こいつ…そんなに化け物じみてない?)
 化け物どもにしてはフォルムがやたら人間的と気がつく。
 間合いをとりつつ視線でけん制。しかし攻撃はやめて問いただす。
「あなたは人間なの? それともアマッドネス?」
「その答えは後だ。奴に逃げきられたら厄介だ」
 既にだいぶ距離をとられた。スズは走り出した。セーラが後を追うが意外に速くて追いつけない。

 スズの目指したのは不法投棄されたごみの山。
 その中のぼろぼろのバイクが目的だ。右のハンドルが折れたのかなくなっている有様。
「おまえも私と同じでうち捨てられていたのか?」
 優しい口調で語る。
「ならば私と共にこい。鉄の馬よ。私の足となれ」
 スズはそのレイピアを右ハンドルの位置に差し込む。
 セーラが伸縮警棒をマーメイドランスに変えるのと同様にそのオフロードバイクが蘇る。
 スズの体色と反対に黒地に黄色いラインが走る。
「まるで稲妻だな。よし。闇を破るもの…ダークブレイカーがお前の名だ」
 ひらりとまたがるとギルを追跡し始めた。

 直接戦闘に長けていないギルはほうほうのていで逃げ出していた。
(なんと言う失態だ。任務をしくじったばかりか敵を一人増やすとは。このままでは役立たずとしてわし自身が食われる)
 ギルは立ち止まり呼吸を整える。
(失態を補うにはなんとしてでもここでスズだけでも始末せねば。今なら戦乙女どもとスズだけ。奴ら同士で戦わせる)
 ギルは魔笛を奏でるべく構える。それが命取りであった。

「まちなさいよぉぉぉっ」
 キャロルが戦闘不能のためセーラはフェアリーフォームで飛んで追いかけていた。
 しかし山の中ゆえ木の枝が邪魔で思うように飛べない。
 スズの方は道を行くのでそう言う障害はない。
 ならばと低い位置を飛びたいところだが、自身が作り出す空気の衝撃波を受けてしまうためその手も有効ではない。
 結局はついていくのが精一杯だった。
 ついていくのが精一杯なのはスズの卓越したライディング技術も要因のひとつ。
(なんてバイクテクニックなのかしら。ヨリシロはバイクの心得がある?)
 以前に戦ったホッパーアマッドネスのケースを思い出す。
 ただスズはバイクが上手いと言うよりバランス感覚が鋭いと言うべきであるが。

 そして両者はついにローカストアマッドネスに追いついた。
「ば、バカな。そんな事まで!?」
 バイクの事をさしている。完全に予想外の早さで追いつかれた。
「観念して地獄に帰れ。貴様自身が言っていたのだ。闇に帰れと」
 敵対しているからか男言葉のきつい調子でしゃべる大賢者。ひらりとバイクから飛び降りてギルに向かい合う。
「おのれ」
 幸いにもセーラがついてきていた。それを暴走させて争わせてまた逃げようと魔笛を奏でようとする。
「無駄だ。もうその手は利かない」
 ダークブレイカーの排気音でかき消される。
「ううっ」
 ギルが狼狽した隙にスズはバイクからレイピアを引き抜き、そのまま斬りつける。
「ぎゃあああっ」
 そこは怪人の姿のときに魔笛を奏でる器官。勝負あった。
「わ、私は生きていたい。このヘイワードの持つ知識を吸収したい。それだけだ。もう人間を襲わない。見逃してくれ。スズ」
 恥も外聞もなく命乞いを始めた。
「貴様も私もこの時代に生きていていい存在ではない。あるべき所に帰れ」
 スズはかがむと右足の脛にレイピアをくくりつける。
「はっ」
 短い気合と共に彼女は跳んだ。空中で一回転。翅だったマフラーが躍動感をかもし出す。

「ホーネットスティンガー」

 高い位置からスピンしながらのキックがギルめがけて繰り出される。
 命中したそれはギルの腹を引き裂いた。
「ぎゃああああっっっっ」
 レイピアの先端がまさにドリルのようにうがつ。
(え、えげつない)
 非情な戦いにあろうことかアマッドネス怪人に同情してしまうセーラ。
 むしろスズの容赦のなさに反感を抱いたと言うべきか。
「セーラ。最後は君だ。早くしないとヨリシロが死んでしまうぞ」
「あ、あたしに命令しないでよ」
 「アマッドネス」に命令されてはたまらない。しかし実際に「虫の息」の相手がいる。
 こちらを優先せざるを得ない。
 セーラは左手のチョップを見舞う。凍てつくローカストアマッドネス。
「せーのっ」
 低空から太陽めがけての炎のアッパー。
 十字に切り裂いた部分から炎が噴出し、キリギリスの化け物は爆発した。

 狂将・ギル。戦死。六武衆の残りは死将・アヌと麗将・ライのみ。

「セーラさーん」
 ジャンスの声が聞こえてきた。ブレイザともども走ってきた。
「敵は?」
「倒したわ」
 セーラの指し示す方角には老婆が。ヨリシロのヘイワードが既に高齢だったため女性化しても美人とは行かなかった。
「終わったな」
 バイクにまたがるスズ。
「まって。聞かせて。本当にあなたは何者なの?」
 真摯に見つめるセーラ。仮面越しに受け止めるスズ。
「四人目。第四の戦乙女ではだめか?」
 スズは軽口をたたく。
「えっ? 四号? アナザーヴァルキリア?」
 食いつくジャンス。
「もうちょっとひねりなさいよ。勝利への力と言うならVictory Forceで」
「もう少し頭をお使いなさいな。四人目の戦乙女ならValkilia 4thで」
「「Vフォース」」
 綺麗にセーラとブレイザの声がハモる。顔を見合わせる2人。そして
「なにそれ? 信じられない。だっさいセンス」
「お黙りなさい。セーラさんこそ人のことはいえないのではありませんこと?」
 また喧嘩だがギルの笛の音によるものと違いじゃれあいのようなものだ。
「私はスズだ。それだけの存在。そして敵の敵は味方と言うことだ」
 確かにギルはスズを敵視していた。この言葉は信憑性があるなと三人は思う。
「でも信じられないわ。あたしたちを信用させる芝居じゃない?」
 セーラの言葉はもっともである。しかし仮面越しに哀しげな表情が見えるスズ。
「君たちがどう思おうとかまわない。だが私は君たちの味方だ」
 それだけ言うとエンジンをふかす。
「また逢おうう」
 まさに風のように消えていった。
 呆然と残された戦乙女たち。

 徒歩で仲間たちの元へと戻ろうとしている戦乙女たちは、スズの正体について話をしていた。
「何者だったのでしょうか?」
「アマッドネスの内部分裂かな?」
「とりあえず信用するのはまだ早いわ。味方なんていっていたけど」
(((味方?)))
 三人とも恐ろしい考えが浮かぶ。
(そう言えばお姉さま。正義のアマッドネスになら体を貸してもいいと)
(あの強さ。番長がヨリシロなら納得だわ)
(まさか森本が私を案ずるあまりあのアマッドネスの言葉に乗ったのでは?)
 既に一度憑かれていた友紀は除外されていたものの、きわめて身近な人物が謎の女戦士になった可能性を思うと勝利を喜ぶ気分ではなくなっていた三人だった。

 そして都内では
(やってやる。食われる前にこちらが逆に取り込んでやる。そのためには魔力を吸収して強化せねば)
 ライが保身のため裏切りを決意していた。そして標的は?


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