2012年4月。
 うららかな春の日。
 満開の桜が咲き誇り、晴天の青と見事なコントラストを描き出していた。
 温かな日差しが降り注ぎ、あつくなる体を冷ますようにそよ風が優しく吹いて行く。
 そんな絶好の花見日和。
 花見にはやや上品過ぎる印象の庭園の前に、一台のバスが停車した。

「さあ。みんな。ついたわよ」
 バスの中でツインテールの少女の明るく、そしてやや「甘ったるい」声が響く。
 そして彼女が先頭になって降りて行く。
 もっとも彼女が行かねば話にならない。
 会場の庭園の入り口で警護している者たちも、彼女の姿を認めると態度を改める。
「お待ちしておりました。姫子様が中で」
「ありがと」
 慣れた様子で先を行くツインテールの少女。
 その後ろをおっかなびっくりで少年少女達が大挙してついて行く。

 和風の庭園。それによく合う桜が咲き誇っている。
 所々にシートではなく「ゴザ」が敷かれ、まさに花見の様相を呈していた。
「姫子ーっ」
 愛らしい顔立ち。まちがいなく美少女でとおる。
 きれいな球形の顔によく似あうツインテール。
 ピンクのワンピースの少女は、中学時代からの親友でこの宴の主賓である少女の名を呼ぶ。
「まりあさん。よくいらしてくださいましたわ」
 青い振袖の少女。長い黒髪を切りそろえた「姫カット」の北条姫子が笑顔で迎える。
「みんなもつれてきたけど大丈夫よね」
 まりあ…高嶺まりあは関係者をみんなつれてきた。
 それに対して返答する姫子。まるでこの日の天気。
 よく晴れた春の日差しのような柔らかい笑みを湛えて言う。

「もちろんですわ。何しろ今日は『城弾シアター』の百万ヒット記念の宴ですもの。お客様は歓迎ですわ」

城弾シアター百万ヒット記念

−UTAGE−

 およそ十代後半の少年少女ばかりが二組。
 姫子のいるシートは『PanicPanic』組。
 そしてまりあの率いる面々は『PLS』組だった。
「あれ? ちょっと待てよ? それじゃオレなんで男の姿で?」
『PanicPanic』主人公・赤星瑞樹(♂)が声を上げる。
 シャツとジーンズは男物なのだが、普段のイメージゆえかブラウスとレディースパンツと錯覚する。
 彼の指摘は年齢設定。
「PanicPanic」の面々と「PLS」の面々は同じ世代。
 だから「PLS」に「PanicPanic」の面子が出る時は、二年生の時の設定である。
 そのころのみずきは、それまで『オレは男だ』と突っ張っていたのが、少女の自分を受け入れた反動で女子として自分を可愛く見せたい心理。
 男子として女の子を可愛く演出したい心理が重なり、むやみやたらに女性的だった時期だった。
 私服すら女性服で通していた始末。
 だから『PLS』キャラと同じならそれに準じるはず。
「いや。もしかしたらあっちがこちらに合わせているのかもな」
 相変わらず見た目が実年齢をぶっちぎっている榊原和彦が、メガネを光らせて『往年のように』言う。
「ああ。今日は無礼講らしい。だから設定とかにこだわらないで、メインだった時の設定に合わせてあるらしいよ」
 上条明がそう説明する。ものすごく重そうなブーツを履いている。
 どうやら今は「アクエリオンEVOL」にはまっているらしい。
「そう言うこと。丁度いい機会だ。城弾シアターの全てのキャラと友達になるぜ」
 右手で胸を二回叩いて、それを前方に突き出して風見裕生が言う。
「わぁ。風見君以外にも可愛い男の子が一杯いる」
 目を輝かせている優介に、ドン引きのパニパニ男子チームだった。

「なぁるほど。だから僕は男のままなんだね」
 メガネの少年が言う。ただし服装は女子制服のジャンパースカート姿。
「だったらちゃんと男の格好でこい。押川」
 怒鳴りつける長身の少年。
「いいじゃない。キヨシ。無礼講なんでしょ」
 お招きと言うことでおしゃれしてきた少女がいさめる。
「ふん。ルール無用と言うのはお前の得意じゃないのか。高岩」
 こちらはジャケットとパンツ姿。オールバックの少年。
「お。なんだ。花見の余興でバトルでもしたいのか? 伊藤」
「野暮なことを言うな。高岩。みんな好きにすればいいじゃないか」
「で、でも、さすがにこれだけの面々だと」
 豪放に笑い飛ばす番長。岡元三郎と対照的に少し引き気味の森本要。
 「戦乙女セーラ」のチームだ。

「しかし…作品ごとに呼んでいるとしたら敵キャラも?」
「もちろんですわ。榊原さん」
「それってちょっとまずくない?」
 金髪の大柄な少女。村上真理が言う。
「呉越同舟でござるな」
 細身で射抜くような鋭い眼光の少年。風間十郎太がまとめる。
「無礼講ですもの。今日は細かいことはいいっこなし。それにお酒の都合もありますし、大人の人は大人の人でまとめてありますわ」

 その大人の席。学園物が多いこともあり、教師キャラでまとまっていた。
「ふん。気は進まんが今日の所は停戦だ」
 陰鬱な口調は言うまでもない。中尾勝に成りすました殺人鬼。「PanicPanic」の「ラスボス」斑信二郎だ。
「もぉー。辛気臭いこと言わないの。無礼講でしょ?」
 半ばからむような調子は二村司の姉。幸だ。
「く、くっつくな」
 意外にも女性は苦手らしい。
「そうですね。楽しむ事が最優先事項よ」
 きれいな声の木上以久子は、富乃宝山を氷も何もいれずにグラスに注いでいた。
 酒に強いわけではなく、むしろわかってなくての行動だ。
「でもいくら無礼講でも生徒達の飲酒はいけませんね。指導しないと」
 メガネを直しながらここでもスーツ姿の大原乙女が言う。
「それにしても…メガネの女教師の多い作者ですね」
 彼女…北原瀬奈(本名・誠治)もそうだった。
 同居人である甥が女体化した事から、巻き添えの形で女教師になってしまったのだ。

 特に開催宣言もなく始まっていた。
 いや。プロレスで言うなら、ゴング前に戦っていた形の「とらぶる☆すぴりっつ」勢だ。
 仕掛けたのはもちろん吉野桜子である。
「さぁー。酒井君。お花見なんだから飲みなさいよ。んもう。大体どうしてスーツ姿なのよ?」
「いっただろ。メインの時の姿と。俺達はこれがデフォルトなんだし」
 言いつつ酒井真澄はなんとかして飲まないようにとしていた。
 これがいつもどおりなら「身内」ばかりでもう諦めているが、ここには他作品のキャラも多数いる。
 そんな前で女性化して醜態を晒すのは避けたかった。
 だが最大難関は「いつもどおり」の桜子。そしてこのムード。
 同僚達は花見と言うことでネクタイを緩め、飲んでいる。
 イトコでもある山崎きららも例外ではなく、既にかなりの量を飲んでいる。
(まずい…こんな席では酒を断りにくい。どうしたら……)
 そこに救いの手が。
「酒井君。ちょっと来てくれ」
「おっと。課長のお呼びだ」
 うまく逃げおおせた。そのまま上司の元に行く。
「なんでしょう?」
「ああ。息子を紹介しようと思ってね」
「息子さん?」
 酒井も話は聞いていた。自分と似たような体質の息子が課長にはいると。
「初めまして。二村司です」
 詰襟姿の少年が挨拶する。中肉中背。そして何より「女顔」が特徴的だ。
 美少年と言うより、男装の少女のように見える。
「あ。酒井真澄です」
 年下相手だが初対面の上に上司の息子。一応は他人行儀に敬語。だがすぐにフランクな口調になる。
「そうかぁ。君が服に着られて女の子になるという『着せ替え少年』?」
「あなたがお酒に酔うと女性化すると言う…」
 方や学校でみんなのおもちゃと化している司。
 方や就業中に飲まされて接待を強要される酒井。
 あっという間に意気投合した。
「司君。今日は飲もうっ。ウーロン茶だが」
「はい。同じ苦労を分かち合いましょう」
 それを傍らで「お疲れ様」と言わんばかしの表情で見守る二村課長。

 カラフルなメイド服の一団は「アンテナショップ」のメイド達だ。
 こちらは一名のぞいてそわそわしている。
「どうした? 愛美子。無礼講だぜ。もっと楽しめや」
 花見の席。本来は男と言えど、この時点では心身ともに美女と美少女の一団で舞い上がり気味の千堂。彼だけがくつろいでいる。
 後輩の変化した金髪ツインテールのツンデレメイドに言う。
「は、はぁ。でも先輩。なんか落ち着かないっすよ」
 閥が悪そうに愛美子は言う。
「あみちゃんも? 私もなの」
 肉体的には中学生のメイド。ラビも相槌を打つ。
「私達はメイドなのにこんなお客様のように」
 憂う様子も大人の女性。沙羅。
「あーもう。我慢できない。あたしいってくる」
 とうとうピンクのメイド服の麻耶が立ち上がった。
「そうね。私も包丁持っていたほうが落ち着くわ」
 コック姿のナツメも立ち上がる。
「それじゃみんなで行きましょうか」
 黒いメイド服のかなめがメガネを光らせる。

 結局メイド達は全員もてなす側に混ざってしまった。
「……職業病だな……」
 缶ビールをちびりと飲みつつ千堂はつぶやいた。

 ちなみに「湯の街奇談」宝田温泉の面々も客扱いに落ち着かなくて、酒や料理を運ぶ側に回っていた。

 酒によった挙句、乱暴を働くものもいるものだ。
 しかし彼は一滴も飲んでいない。その上でこう切り出す。
「高岩ぁ。今日こそ決着つけてやる」
 リーゼントの秋津明義が因縁の相手。高岩清良に食ってかかる。
「やめとけよ。恥の上塗りだぜ」
 本当にやる気のない様子の清良。
 普段が人間でないものと戦っている。
 ただの「不良学生」などものの数ではなかった。それゆえのローテンションだった。
「うるせえっ。いくぞ」
 まさに激突の寸前だったがそれを止める「女子高生」
「やめなさい! こんなところで喧嘩なんてしないの!」
 ロングヘアのセーラー服の少女…?
 それに注視する清良と秋津。
「お前…そんな服着ているけど実は『なんちゃって女子高生』じゃ?」
「いっ!?」
 一発で見抜かれ言葉を失う私服警官。遠山舞。
 女性化して痴漢相手のおとり捜査をしていた。
 その「後遺症」でコスプレが癖になり、職務でもないのに女子高生姿で来場したが、つい警察官の本能で喧嘩を止めにかかってしまった。
 今回はメインの時の姿と言うことで女性化バージョン。

「な、なんで一発で?」
「そりゃあ…」「なぁ」
 なんとなくなぁなぁで顔を見合わせる清良達。
 清良はアマッドネスの犠牲者達で。
 秋津は変わって行くクラスメイトで「元・男の女」をなんとなく見分けられた。
「うわ。痛いな」
「二十歳過ぎてないか? それで制服ってのは」
 何故か矛先が自分に集中して戸惑う舞。
 乱入者に救われる。
「にゃははは。いいんだにゃん。コスプレは崇高な趣味なんだにゃん」
 ネコミミと尻尾をつけたメガネの少女。里見恵子がどこからともなくよってきた。
「そ…そうよね。あなたわかってくれる?」
 痴漢相手にしていたら、どういうわけか視線を浴びるのが快感になった舞。
 コスプレが趣味になっていた。
 その「同類」の匂いをかぎつけた恵子がよってきたわけだ。
 あっという間に意気投合。コスプレ談議を始めてしまう。

 ぽかんとして見送る秋津と清良。突っ込み慣れのせいか、秋津の方がすぐに戻ってきた。
「なんだったんだ? 今のは。とにかく行くぜ」
「仕方ねぇ。相手してやる」
 互いに拳を繰り出す清良と秋津。だが
「迷惑だ」
 2メーター近い巨漢。大地大樹がそのグローブ…ミットのような手で受け止めていた。
(で…でけえ。アマッドネスにもこんな奴いなかったぞ)
(こ、コイツもリーゼント。キャラかぶってんじゃねぇか)
「あっちでやれ」
 指差すほうを見ると大乱闘が。
 大半が『ガクラン』姿だ。
「なんだ。ありゃ?」
 唖然とする清良。
「ああ。あそこはバトルエリアだな。このサイト。バトル作品多いから、その腕前を存分に振るえるように配慮だとよ」
 秋津の言葉に清良は口をあんぐりとあけた。
 確かに。「PanicPanic」の悪漢高校。総番以下四季隊など大暴れだった。
「オレは最初はあそこだったんだが、てめーを優先したんだ。ありがたく思え」
「喧嘩なんてダメよ。秋津クン」
 すんだきれいな声がする。硬直する秋津。
「い、いつの間に」
 背後を取ったのは大原・ゴッドファーザー・乙女だ。
「あなたがこんなことをするなんて先生悲しいわ。ラストで私をしたって同じ女教師の道を歩んでくれたのに」
「わざわざ『女』をつけるなっ。それに今日はメインの姿だろうがっ」
「ああ。だから」
「私達はもう女なのか」
 開始早々女性化した尾藤美優と近田千鶴は、女子高生姿だった。
「ふう…しらけちまったぜ。もういい」
 秋津は自分たちの場所へと戻る。

 入れ替わるように「セーラ」チームの方に招かれざる客が。
「ちっ。またかよ」
 立ち上がる清良。だがその男は彼を無視して礼に向けて木刀を振り下ろした。
「なんだ? 無礼講にも程があるぞ」
 左手で飲み物を持ちながら右手で受け止める礼。
「気にすんな。ほんの余興だ」
 ガクランを纏ったオールバックの男…秋本虎次郎がにやりと笑う。
「聞いているぜ。お前、凄腕の剣士なんだってな? いっちょ俺と殺りあわねぇか?」
 終盤の丸い雰囲気ではない。「メイン」の狂戦士モードだ。
「秋本。お主」
 身構える十郎太。
「へっ。今日はてめーじゃないぜ。さぁこい。俺が怖いのか」
「……いいだろう。相手してやる」
 礼まで立ち上がり応戦の構えだ。しかし、突如として発生した「オーロラ」でそれどころでなくなる。
 その「オーロラ」が引くとその場にいきなり建物が。
 どうやら写真館のようだ。
 その出入り口から「女子高生」が出てくる。
「くそっ。なんだここは。どこなんだ?」
 悪態をつく「美少女」。
 身に纏っているのは無限塾女子制服だった。
「つばさ君。先に行かないでください」
 長身でロングヘア。やたらメリハリの利いたボディの女性が後を追いかけてくる。
 それを一同が見ていた。秋本と礼も戦いを忘れた。
「こ、ここはまさか…!?」
 つばさと呼ばれた少女は青くなる。
「ちょっとぉ。いくら無礼講でも喧嘩はダメですよ」
 メガネの女教師…該当者が結構いるが(笑)この場合は大原乙女が注意しに来た。
 さらに青くなるつばさ。
「逃げるぞ。ココナツ。ここにいたら本物の女にされる」
「え? ちょ、ちょっとつばさ君」
 あわてて建物の中に逃げ込むつばさ。そしてココナツと呼ばれた灯 小夏も続く。
 建物がまたオーロラに消えていった。
「な、なんだったんだ? 今のは」
 呆然としてつぶやく秋本。
「ああ、単なる通りすがりの仮面ライターだろ」
 礼の言葉がものの見事に的中していた。

 宴が進む。未成年はソフトドリンクではあるが、まだ肌寒い屋外で飲み続ければもよおしてもくる。
 利尿効果のあるビールなど飲んでいる大人はなおのことだ。
 トイレを求める。
「はい。今日は大人数なので仮設トイレを作らせていただきました」
 なぜかしきっている北条姫子の妹・愛子。
 姉と瓜二つだが髪の長さとアクティブな表情。そして何より洋装で見分けがつく。
 示された方角にはトイレが6つ並んでいる。
 最初は男女共用かと思われた。
 だがよく見ると左二つが青い色の男性を示すピクトグラム。
 右三つがスカートを図案化した赤いピクトグラム。女子トイレらしい。
 後の一つは一見すると男性用の図柄だが、胸が膨らんでいる。
 そして何より「紫色」だった。
「だってこのサイト。男なんだか女なんだかわからない人が多いじゃないですか。だからいっそ専用にと」
「……それってある意味、差別じゃね?」
 該当者である瑞樹が言う。
「うーん。赤星先輩と言うよりむしろ」
 問題のトイレの冽には「美少女」達が。
 赤星薫。倉田正宗ら「男の娘」が仲良く並んでいた。さらに
「男子用よりは、こういうほうが使いやすくていいですね」
 本来は女子なのだが、17歳でいるうちはしきたりにより男性化している早乙女空(GTB)も並んでいた。
「……」
 瑞樹は呆然となる。
「まぁ広い意味であれば共用ですけどね。やはり女子が男性もいる列に並ぶのはつらいですし」
「それはわからなくはないが…」
「だから自分の性別に迷ったらあちらで。もちろん自信持って女性と言うのであれば女子トイレもOKですけど」
「まぁいいけど」
 どうでもよくなった瑞樹である。

 しかし面白い物でこれで薫と正宗が意気投合してしまった。
 「PanicPanic」のエリアに戻らず、正宗のいるエリアに薫は乗り込んで「ガールズトーク」に。
「コスメはなに使ってるんですか?」
「うーん。普段はそんなに使わないの。やっぱり男の子だし」
 説得力のまったくない正宗の発言。頭がくらくらしてくる。
 桜の季節だからか「ピンク」と言うより「桜色」と表現したくなる色のワンピース。
 多段フリルのスカートが愛らしい。
 一方の薫も負けてない。
 ピンクのブラウスに白いワンピース。
「パーティー」と言うせいかフェイクピアスまで。
「あたしが言うのもなんだけど、男の子とは思えないですね」
「それなら彼はもっと凄いかも。なんにもしてないのにこれだけの。ねっ。桜ちゃん」
「ちゃん付けするな。オカマの仲間にするな」
 桜と呼ばれたのは「少年」。
 シャツとジーンズなのに、顔だけ見ていると女性であるかのような錯覚を起こす。
 彼、加々美桜はれっきとした少年。しかし色白の肌と女性的な顔立ちのせいで、高校生にもかかわらず女子と間違われることも多々ある。
 天然の「男の娘」と言えた。
「ねぇー。楽しそうだね。僕も混ぜてよ。友達つれてきたから」
「お、おれはTSキャラであって男の娘じゃ…」
「戦乙女セーラ」の押川順が「おりおん」の片桐伊織をつれてきた。
 ともに女子に変身できるのだが、この時点では男子の肉体。
 しかし順は来場したとき同様の女子制服姿。
 一方の伊織は和服姿。
 カツラと化粧で本格的な「女装」であるが、自主的な物ではないらしい。
「きゃーっ。みんな可愛いわねぇ」
 伊織の姉。早織がはしゃいで言う。
「本当にみんな男の子なの? 伊織お姉ちゃんにも負けてないわ」
 こちらは妹の香織。騒ぎを見てついてきたのだ。
 二人とも振り袖姿。早織は左にまとめたサイドポニー。香織はツインテールだ。
「ね。もっと綺麗になってみない?」
 伊織をメイクするために持参したらしい化粧道具をちらつかせる。
「いいんですか?」
 目を輝かせる薫と正宗。
「綺麗になりたい」と言う女子らしい願望を持つ「少年達」だった。
「あ。あたしも。あたしもきれいになりたい」
 ハスキーボイスの男の娘。中森静香(「あたしの気も知らないで」)が哀願する。
「あらぁ。ごめんなさい。ちょっと人数が多くて」
 申し訳なさそうな早織。がっかりとする静香の肩を叩く存在。
「?」
 見上げると一分の隙もないスーツ姿の美女がいた。
「任せて。お化粧ならあたしがしてあげる」
「え? でも…こんなあたしでもいいんですか?」
 早織は嬉々として自分の弟を女装させているくらいだ。
 だから自分に対しても抵抗はないだろうと静香は思った。
 けどこの美人は…
「いいわよ。昔のあたしみたいで」
「そ、それじゃあなたは」
「男だからできる女装趣味だけど、女だとただの身だしなみと普段着よね。つまんないわ」
 萩原麻衣子はため息をつく。一言断ってからすっかり癖になったタバコに火をつけ、紫煙を吐き出す。
「楽しみなさい。その趣味」
「は。はいっ」
「それじゃ始めるわよ」
「お願いします」

 だがその後、静香もとんでもない事態で女性化するのであった。

 こんなにこやかな席もあれば、一触即発の席もある。
「やくざが来るとはな。招かれても飲めやしない」
 スリーピースの口ひげダンディ。三田村警部が忌々しそうに言う。彼の後ろには配下が。
 警視庁の刑事であり、アマッドネスだった者達だ。
 もっとも刑事以外もいるのだが。

「それはこちらのセリフだぜ。ポリがいると酒がまずい」
 一方は関東帝江州組の面々だった。
「警察」と「やくざ」。そりゃ「呉越同舟」とはいかない。

 まさにこれから喧嘩にでもなりそうな状態。それを止めたのは凛とした女子の声。
「てめーら。堅気の衆に迷惑かけたらいかんと何度言えば」
「あっ。久美ちゃん」
「お前達。なにを騒いでいる?」
「はっ。ロゼ様」
 それぞれのトップが前面に出てきた。
 方や「久美ちゃん」と呼ばれた少女。
 年のころなら13〜4.
 城弾シアター定番のツインテールのたぶん一号。それぞれの根元を赤いリボンが飾る。
 白いブラウス。赤いミニスカート。ピンクとみずいろのボーダーニーソックスと言う愛らしい少女。
『美少女組長奮戦記』の主人公だ。

 そしてもう一方。「ロゼ」と呼ばれたのは、もっと幼い7〜8歳の少女。
 赤い髪がソバージュになっているが、顔立ちが幼女なのでどこかアンバランス。
 服も真赤なワンピースドレス。靴まで赤い。まさに「お人形さん」のような幼女だ。

 一瞬。時か止まる。だがやくざ達はロゼを見て叫ぶ。
「「「「萌えーっっっっ」」」」
「萌え言うなっ。恥ずかしいッ」
 普段は自分が言われている久美だが、それを他に言われて、不覚にも嫉妬した怒りを混ぜて叫ぶ。

 方やアマッドネス陣営。その久美に全員が片膝をついて臣下の礼をとる。
「なんと美しい。成長している分だけロゼ様より…」
「……貴様、封印してしまうぞっ」
 不機嫌な女王様である。
「むう。しかし」
「そうだな。お互いのクイーンのために」
「ここは一つ休戦と言うことで」

 休戦となった。
 年端も行かぬ少女達の美しさは、天敵同士の諍いすら止めてしまう。

 余興が用意されていた。その準備が進み始める。
「司ぁ。あんたもほのかちゃんと出てきたら?」
「何に? 姉ちゃん」
 幸は黙って紙を差し出す。そこには「ミス・ツインテールコンテスト」と。
「作者の趣味でとにかくツインテールが多いからねぇ。誰が一番可愛いか決めるみたいよ」
「だからってなんで僕が? ツインテールはトレードマークじゃないよ」
「細かいことはいいっこなしで」
「あの、司君も嫌がってるし」
 助け舟を出したのは酒井。似たような境遇ですっかり「年の離れた友人」になっていた。
 互いに「わが身の不運」を吐き出していたのである。
「あらあら。それじゃ酒井君が代わりにでる?」
「よ、吉野さんっ。いつのに!?」
「ハイ。かんぱーい」
と、いいつつコップ酒を飲ませる。
 不意をつかれた酒井は口に含まされて飲んでしまう。
「はい。後はちょっと待てば従順な真澄ちゃんに」
 待ってても酒井は女にならなかった。だが

「へぇー。面白そう。それじゃ僕、ちょっといってくるよ」
 やっと自分の所に戻った順が、告知ビラをみてまた立ち上がる。
「へいへい。好きにしてくれや」
 順の女装癖はもう熟知していた清良が投げやりに言う。
「お言葉に甘えて…変身!
 ポーズをとるが順は男のままだ。
「あれ? もう最終回の後だから変身能力は無くなったのかな?」
 誰も反応しない。フリーズしている。
「どうしたの? みんな?」
 怪訝に思った順が尋ねる。
「じゅ、順。後ろ」
「なに? 番長」
 番長。岡元三郎だけではない。みんな目を丸くして驚いている。
 順が怪訝に思い振り返ると、そこにはジャンス(エンジェルフォーム)がいた。
「えーっ? 僕?」

「もぅー。桜子さん。ひどいじゃないですか。無理やりなんて」
「な、なんで二人いるの?」
 そう。酒井は男のままなのに、そこに女の真澄が出現していた。
「無礼講だからじゃない?」
 さらっと片付ける幸。

「ま、まさかこんなことに。はっ。もしかして?」
 ジャンスは思い立ったことを実行に移す。
「キャストオフ」
 ジャンス(エンジェルフォーム)がかけ声をかけるが二段変身をしない。
 だがそばにツインテールのメイド…ジャンス・ヴァルキリアフォームが出現した。
「な、なにぃ?」
 驚く一同。
 今までもさんざん理屈で片付かない現象は経験したが、ここまで来ると驚くしかない。
「凄い凄い。二人ともやって見たら」
 対象的にはしゃいでる二人のジャンス達。
 顔を見合わせる清良と礼。好奇心が勝った。
 それぞれにポーズをとり叫ぶ。

「「変身!」」

 予想通りだった。清良のそばにセーラ・エンジェルフォーム。(以下セーラA。他も同様)
 礼のそばにブレイザAが。
 さらにキャストオフして゛セーラV。ブレイザVに。
「もしかして」
 それぞれ「超変身」するとセーラF(フェアリー)。セーラM(マーメイド)。ブレイザAl(アルテミス)ブレイザG(ガイア)。ジャンスR(ロリータ)ジャンスAl(アリス)になる。
 大混乱である。
「まぁ、オーズのガタキリバでそれぞれ変身したのを思えば」
「説明になるかっ」
 暢気に言う順に怒鳴りつける清良。

「わぁー。自分の顔を自分で見るのって新鮮」
 基本酔っ払いなので、とろんとした口調と表情の真澄が酒井に迫る。
 緩慢な動作で酒井の首に腕を回す真澄。
 酔いのせいで赤く染まった頬と、潤んだ瞳が劣情をもたらす。
 酒井は理性を総動員して踏みとどまる。
「ま、まさか? よせ。いくらなんでもそれは変態以外の」
 いえなかった。キス魔である真澄によって口を塞がれたのだ。
「んっんんーっ」
 今までさんざん自分がやった記憶があるが、まさか自身に「食らう」とは夢にも思わなかった酒井がもがく。
「じっ、自分自身とのキス。こんなシチュエーションは滅多に」
 興奮する桜子だが一つ気がついた。
 酒井でさえこうなのである。その手のタブーが希薄な山崎だと。
 振り返ると既に濃厚なキスをかわしていた。
 唇を離してもなお見詰め合う。きらら(♀)はうっとりとして言う。
「ああん。われながらイイ男たい」
 それに対して山崎(♂)もかっこつけた口調で返答する。
「ぼくも君とあえて嬉しいよ。いつも鏡を通してだったからね」
 二人(?)で見詰め合う。やがて気持ちが高まり立ち上がる。
「それじゃ続きは休憩所で」
「楽しみタイ。お互いツボがわかっているし」
 腕を組み、嬉々として歩いていく「二人」
「ちょ、ちょっと。さすがにそれはまずいわよっ」
 さすがの桜子も「本人同士の行為」にブレーキをかける。

「ちょっと愛子ちゃん。これは?」
 七瀬が愛子に尋ねる。
「だって変身後のみなさんも立派な登場人物じゃないですか。それなのに入れ替わらないとでられないと言うのは寂しいなと思いまして。それでちょっとした術でこの庭園の中なら変身ではなく、かりそめの肉体で別人として現れるようにしました」
「なんじゃそりゃあっ?」
 まさに驚天動地。

 しかし冷静になる。自分達もマリオネットと言う超常現象を扱っている。
 このくらいなら「アリ」かと。
「それが本当なら」
 いつの間にか七瀬の手には水の入ったバケツが。
「お、おい。七瀬。なに考えてる?」
 返事の変わりに水を浴びせられた。
「つめてぇぇっ。なにしやがるっ!?」
 いつものように甲高い声でほえた。瑞樹の横でみずきが。
「「はぁ!?」」
 顔を見合わせる二人(?)
 この時点ではいつもの体は女で心は男。だからかリアクションも同じだった。
「やっぱりこうなるんだ」
 喜ぶ七瀬と目をぱちくりさせているみずきと瑞樹。
 女の子の方は無限塾女子制服姿。髪は短く、襟足でまとめているのも男の方と同じ。
 だが白いきめ細かな肌と、たわわに実った二つの果実が、今は女子であることを知らしめている。
「そして」
 さらに七瀬はみずきに水を浴びせる。
「きゃーっ。つっめたぁい」
 やたらに女の子じみた口調の「もう一人」が出た。
 こちらは腰に達する髪をツインテールにして、メガネと言うのが大きな違い。
 17歳当時の最も女子化した時の姿だ。
「やぁんっ。もうっ。乙女を水浸しなんてひどいじゃない。ブラが透けて見えちゃうじゃないのよぉ」
 母譲りなのか女性化が進むと、どこかおっとりした感じになるみずき(17)
 それを青い顔で見ている瑞樹と赤い顔のみずき(16)。
「あ…あんな風になるのか? オレ」
「か、完全に女じゃねーか」
 それをよそに七瀬がチラシを見せる。
「キャーッ。ミス・ツインテール? 面白そう。あたしちょっとエントリーしてくるね」
「あ。ボクもいくぅ」
 いつの間にかお下げ髪をツインテールに直した綾那がついて行く。

 会場は無礼講と言うより「無法地帯」と化していた(一部は「無法痴態」だが)
「美しい。まさに理想の女。今までは鏡越しでしか逢えなかったが、こうして触れ合うことが出来て嬉しいぞ。ミチル」
「はい。満さん。私もずっとお慕いしてました」
 理想の女子に化けていたらなりきってしまい、本来の人格を封印してしまった形の「不屈のスケベ」篁 満とその変身した姿。高村ミチルが、恋人同士のように寄り添っていた。

「そうかぁ。君はお姉さんと」
「スクランブルアイドル」の須湾美月。中身は兄の陽司が相手にジュースを注ぐ。
「はい。須湾さんは妹さんとですか」
「ベッタベタ」の柴田優香里…中身は弟・龍太郎がそれを受けていた。
 入れ替わり作品同士だった。
「おーい。オレも混ぜてくれーっ」
 小柄な女性。しかし胸元はメロンかスイカのようだ。
 美月(陽司)はグラビアアイドルで、その手のプロポーションの女性にはなれていたはずなのに、思わず見とれるサイズだった。
 内藤麻美子。中身は後に伴侶となる桐原那智だった。
 同じ境遇同士で意気投合した。飲み始める。

「変身と違って入れ替わりは段階を経ないからなぁ。おれなんか「いきなり『F』」カップだぞ」
 麻美子(那智)が胸を持ち上げる。
「それに相手になりきらないといけないから大変なんだぞ」
「そうそう。いつばれるかと思うとひやひやで」
 相槌を打つ美月(陽司)。
「……僕の場合、ばれていたどころか、むしろ狙われてましたけどね」
 陰鬱な表情になる優香里(龍太郎)
「今日は飲もう」
「おう。嫌なことは忘れて…あ。でも顔がむくんだりしたら仕事に差し障りが」
 このあたり心から「グラビアアイドル」になりかけている美月(陽司)だった。

 つき詰めた面々もいる。
「やっぱり…元・男だと結婚生活も難しいですか?」
 小柄な女性。中学生で通用しそうな幼顔だが、これでも人妻である桜田りん。
 まさに「奥さまはTS娘」と言うわけだ。
「うーん。あたしの場合は世界全体がそうなったから、比較的楽だったかもね」
 なにしろ世界の人口の四分の一が性転換して、男女のボーダーレスが進んだ世界。
 そこで元は男でありながら女性として結婚した佐藤純子…旧姓。田島。否。旧名。田島耕也。
 ともに男でありながら、女として妻になったもの達だ。

 いきなり人数が増える。
 そうなるとどうしても運ぶ手が足りなくなる。
 元々いた「お運びさん」に『Twinkle Star』のメイド達。
 それでも足りない。
「そこのピンク髪。もっときびきびしろ。メイドなめるな」
 怒鳴っているのは芦谷あすか。
 外見はメイドモード。中身は鬼主将と言うとんでもない状態だ。
「そうは言うけどさ芦谷。こりゃちょっと人手不足だよ」
 広い庭園のせいか自転車で料理を運んでいた綾瀬なぎさである。
 彼女も実家の中華料理屋でお運びをしているゆえか、手伝いに加わっていた。

「それじゃこの二人も連れて行きなさい」
 三人のメイドがいた。その中の一番年下そうに見える少女が二人に指示を出す。
「はいです。ご主人様ぁ」
 山中真彩香は素直に答えるが
「なにしきってのよ。ありす。あんたも来るに決まってるでしょ」
「ちょ、ちょっと。あたしはあんた達の…」
 もう一人のメイド。繭村沙紀にを引っ張られた『ありす』は「ご主人様」と言う言葉を呑み込んだ。
 そう。本来は彼女達の主である伊達逸郎と言う若き社長がその正体。
 趣味で女体化するようになっていたが、その事実は沙紀だけ知らない。
 知られたら窒息するまで笑われる。
 だから正体をあかしそこね、ありす自身も働く羽目に。
 しかしメイドは働く姿こそが美しい。おもわずメイドさん燃えである。

 そして料理を作る手も足りなくなる。
 既にナツメが手伝っていたが間に合わない。
「お手伝いします」
 七瀬と
「任せてください」
美鈴が助っ人だ。
 特に美鈴は普段のトロさがウソのように料理となると手早い。
「俺も手伝う」
 だが思い人である大樹が来てしまうとプレッシャーでちょっと怪しい。
 それでもこの三人は料理作りの助っ人としては申し分なかった。

「あらあら。すこし騒がしいですわね」
 相変わらずのほほんとした口調の姫子。
 その眼前に小柄な影。
「姫。ここにおいででしたか?」
 それは少女だった。「くの一」だ。
 忍び装束。覆面はしてないので素顔が露わになっている。
「………どなた?」
 記憶を全てたどってもこんな少女はみたことがない。
 それが姫子に言わせた言葉。それを聞いて「くの一」は絶望したような表情をする。
「ひ、姫。お戯れを。拙者ですよ。烏丸かすみ。女の園のお庭番。笠間次郎太でござる」
「笠間…次郎他? まぁ。(風間)十郎太様とよく似たお名前ですね。」
 それを聞いてかすみは悟った。
「……もしかして東条姫乃様では?」
「?……いいえ。北条姫子ですわ」
「し、失礼いたしました。しかしよく似ておられる。いや。とにかく失礼」
 人違いをさとりかすみは去って行く。
 気のせいか頬が染まっていたようにも見えた。
 その後ろ姿を見送り姫子はつぶやく。
「あの方…もしも十郎太様を女の子にしたらあんな感じでしょうか」
 まさにそのままだったとは知るよしもない。

 食べ物の供給が追いつかなかったが、やや落ち着きを見せはじめる。
 例のコンテストが始まるのだ。それで食べる手を休めて見物に着ていた。
「お待たせしましたぁ。『城弾シアター』ミス・ツインテールコンテストの開催です」
 司会の女性の宣言で歓声が上がる。
 エントリーされたツインテール少女達が次々と段上に上がる。
 第一号と思われる久美を皮切りに「PanicPanic」からはみずき(17)。
 それがありならと通常はお下げで、ツインテールはバリエーションに過ぎないはずの綾那も続く。
「PLS」からはなんと言っても「作品」「城弾ツインテールキャラ」二つの代表格。高嶺まりあ。
 もう一人、天然の金髪を持つアンナ・ホワイト。
「はぁーい。チヒロ。フタバ」
 舞台の上で手を振るアンナ。
 他人の顔をしたかった二人だが、そうも行かずこわばった笑顔で返す。

「戦乙女セーラ」からはジャンス・ヴァルキリアフォームとアリスフォーム。
(エンジェルフォームのそれは二つお下げとみなされてエントリー不可)
「着せ替え少年」の後半から出てきた司の従姉妹。本剛ほのかがかわいらしく笑う。
「ゴッドファーザー乙女」からは堂島だりあ。
「べ、別にあんた達の票なんていらないんだからねっ」
 ぷいと横を向くと、ツインテールが揺れて格好のアピールであった。
 舞台でもツンデレ振りは相変わらずである。
 彼女にとってツインテールはツンテレの象徴だったゆえだ。

 ツンデレツインテールなら「アンテナショップ」の瀬能愛美子を忘れてはいけない。
 だりあのは演技でのツンデレだが、彼女のは天然だ。
「くっ。どうせなら静香が出ればいいのに」
 そうつぶやくのは「人の気も知らないで」の中森伊吹・女バージョン。
「あたしのトレードのマークはポニーテールだもーん」
 屈託なく笑う静香。これは「最大の悩み」がクリアされた状態のそれ。心身ともに女の子。
「仲良し姉妹なんだね。でもうちも仲いいよ」
 そう話しかけるのは「おりおん」の主人公・片桐伊織の妹。香織だった。

 半分以上は「本当は男」だがかなりの数のツインテール少女達が客席を盛り上げる。
 しかし最大に盛り上げたのは

「えっと…さかい ますみです」

 たどたどしい声でしゃべる酒井真澄・幼女バージョンだった。
「「「「「萌えーっっっっ」」」」」
「だからてめーらも、それをだれかれ構わず叫ぶな。恥ずかしいなっ」
 段上から久美が叫ぶが帝江洲組の面々はお構いなしだった。

 少女専用と言うより童女用の髪型ゆえか。
 ぶっちぎりで子供のますみが優勝していた。
「は…ははは…」
 あれも自分自身の痴態の一つ。それを客観的にみた酒井は乾いた笑いを上げた。

 余興も終わりキャラ同士の交歓が進む。
「あら? あなたも弟さんが?」
「ええ。とっても可愛いんですよ」
「やっぱり、抱き締めたくなります?」
「うふふっ。お風呂だって一緒に入る仲ですわ」
「それはとても仲がよくて素敵ですね」
 栗原美百合が片桐伊織に向けて言った言葉に皮肉の意図はまったくない。
「おっとりお姉ちゃん」同士で意気投合していた。

「よう。そういえば初顔合わせだな」
「あ、あなたは…伝説の不良」
「よせや。くすぐったい。オレにゃ大原修と言う名前がある」
「あ、逢いたかったぜ。オレのヒーロー」
 秋津は幼いころ自分かを助けた「ヒーロー」との再会をここで果たした。
 思わず抱きつく。
「おいおい。野郎同士でくっつくなんて気持ち悪いぜ。だが…そうなる運命って奴か」
「え? どういうことです…んがっ」
 修の視線の先を追うと、修の女性化した姿。乙女。そしてそれと秋津の女性化した姿の愛が堅く抱き締めあっていた。
「先生。お会いしたかったです」
「うふふっ。あなたも立派な先生になったようで嬉しいわ」
 完全に女同士の関係だった。
「……」
 絶望的な気分に陥る秋津。それを静かに見守る修であった。

「まったく…見苦しいな。どいつもこいつもあっさりと女になりきって」
 珍しく言葉に出した中尾…否。斑信二郎。下戸ではないが人前でぼろを出さないようにアルコールを口にせず、お茶を口にしていた。
「あら。そんなこと口にしていいんですか」
 その声に盛大に噴出してしまう。
「お、お前はっ!?」
 丸いメガネ。ウェーブの掛かった髪型。優しく柔らかい雰囲気。
「はぁい。あなたの未来の姿。高橋愛でぇす」
「……クッ。作者め。あの女(秋津愛)はもろかぶりじゃないか。少年少女文庫なら通じるとでも考えていたのか?」
 まさか自分の最後の姿と対面するとは思いもしなかった斑であった。

「あー。いたいた。ねー。記念写真撮らない?」
 ジャンスAが七瀬に声をかける。
「わ、私と?」
「ええ。あっ。槙原さんも」
「私もですか?」
 この三人でどんなつながりが? そう思う二人。三人で並ぶ。
「ジャーん。ジャンスカトリオ」
「ああ…」
「そう言うことですか」
 脱力する二人。
「それでしたら私は第11話からブラウスとロングスカートがデフォルトになったんですけど」
 メタなコメントを発する詩穂理。
「いいからいいから」
 押し切られる。
「それじゃ順くん。よろしくー」
 シャッターを切るのは変身前である押川順。こう言うのも「セルフ」タイマーとでいうのだろうか?
「はい。ポーズ」
「え? はい」
 二人つられて同じポーズを取る。胸を強調したそれを。しっかりと撮られた。
「きゃあああっ」
「そ、それは処分してくださーい」
 二人とも立派な胸をしていたのだが、それが逆に恥ずかしいのも一緒だった。
「えー。とてもかわいいのにぃ」
 不満そうなジャンスA。
「恥ずかしいんですっ」
 詩穂理が意外に可愛い声を張り上げる。
「もっと自信持って行こうよ。せっかく大きな胸なんだし」
 ポジティブなのは「本来は男」ゆえか?

 それを遠巻きに見つめている金髪縦ロールの少女剣士。ブレイザAだ。
「くっ。ジャンスさんてば…あんなに胸を強調したポーズ。わたくしへのあてつけですの?」
 やはり胸の薄さがコンプレックスだった。
「ですが私は剣士。剣を振り続けるもの。胸の筋肉が刺激され、いずれは」
「あまり期待しないほうがいいよ」
 背後からの声に右を振り向くとピンクのひらひらフリフリのワンピース姿の綾那。本編当時のままなのでAAカップ。
 同情するかのように涙していた。
「美鈴も色々試したんですけど、こういうの体質と言うか遺伝みたいで」
 長袖ブラウスなのにミニスカート。水色ストライプのニーソックスの美鈴。現役ヒロイン。Aカップ。
 こちらは全てを悟ったような表情だ。
 両者ともに生粋の女子として過ごしてきて、そしてでた結論である。重い。
「うう……」
 ブレイザは絶望してうなだれる。綾那も美鈴も続く。トリオ・ザ・つるぺったん。落胆す。

 とんでもない状態だがニコニコと見ている姫子。
「にぎやかでござるな。風流とはとてもとても」
 傍らの十郎太が静かに語りかける。
 まだ桜は散るには早いのか、少々の風なら舞い散ることもなく空を彩っていた。
「そうですね。何しろ百万のお客様をお招きした方々ですもの」
「このくらいのバイタリティはなきゃダメって?」
 いつのまにか、まりあもそばにきていた。
「でもまだ大事な人が来てませんよね」
 こちらも和服姿。それでやまとなでしことして分身が出たつかさである。
「それじゃあたし達で迎えに行こうか」
 エンジェルフォームのセーラが元気に言う。
「それがいいな」
 みずき(♀)が言うと、四人の少女達が出入り口に歩を進める。

 そのころ…会場の外壁に二人の少年。
 一人はぼさぼさ頭の元気そうな男子。もう一人はメガネが知的なイメージを与える色白の少年。
「ええなぁ。楽しそうやな。なぁ。俺らもいかへんか?」
 関西なまりだった。
「あほんだら。僕らが100万に貢献したか? これっぽっちもしとらんやろ」
「うう。100万ヒット記念の宴会やしなぁ。ここは諦めるか」
 とぼとぼと歩き出す。
「…けど、仕掛けをしたがるこの作者や。これが伏線になっていずれは俺らも」
「出られたらええな。この作者。何本頓挫させとると思ってんねん」
 メガネの少年が釘を刺す。
「うう。ほんまに出番あるんやろな」
 不安そうにつぶやくと二人は消えて行く。

 そして…入り口で一人の人物が入るかどうか迷っていた。
「ああ。いたいた」
 おしとやかになってしまったつかさが見つけた。
「もうー。なにしてんのよ。あなたがいなくちゃ始まらないでしょ」
 その背中をセーラが押す。
「なんたってあなた達がいたからこその百万ですもの」
 まりあがにこやかに微笑む。
「行こうぜ。さぁ」
 みずきに引っ張られ、読者の「あなた」は宴の場に連れて行かれた。



 宴たけなわでございますが、このあたりでおひらきとさせていただきます。
 どちらさまもお気をつけて。
 そして城弾シアター。まだまだ続きます。次の宴をお楽しみに。



あとがき

 50万ヒットの時と同様にクロスオーバー。
 ただし50の万の時が設定を調整したのに対して、こちらは逆にあくまでメインだった時の設定で。
 中には忘れている存在もあり、ちょっと難航も。

 過去にも似たような企画をしているのもあり、それよりあとに出てきたキャラ中心で。

 いつにもましてむちゃくちゃですが、まぁ今回限りの設定と言うことで(笑)

 元々花見のネタは考えていたのですが、ちょうど2012年の春に百万に達したこともあり、これを記念作としました。
 まぁキャラが宴会しているだけなんですが(笑)
 ただ「あのキャラとこのキャラがであったら?」
 そんなシミュレーションで進行してました。

「トリオ・ザつるぺったん」は元々イラスト企画。
 それに文章をつけた形で。
 対称的にジャンスカチーム。巨乳トリオ。
 カップサイズで言うなら真理なんですが、ジャンス。詩穂理と合わせると七瀬の方がしっくりきたので。

 せっかくのクロスオーバーですので、似たタイプをまとめても見ました。
 お姉さん繋がりとか、男の娘とか、入れ替わったのとか。

 キャラが宴会しているだけなので伏線とかはなくアドリブで進めてました。
 ただ一つだけ。ラストの謎の関西弁コンビ。
 果たして、この伏線は回収されますかどうか(笑)

 お読みいただきましてありがとうございました。

城弾

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